ベイブレード部部長・時渡ユイとのバトルを経てソウタへの「憧れ」が「盲信」へと変わっていたことに気づいた赤城竜斗。
彼はバトル後に友人・鳥羽ダイキと一緒に学校を後にして、各々の自宅へ帰宅。
彼に訪れる変化とは――。
――赤城家――
「僕なりの答え、それを見つけるためには……」
自宅に帰ってきた竜斗はどんなベイにするかひたすらノートに書き殴っていた。
「……」
段々と眠くなり、視界が揺らぐ中……ドラゴンを模した置物がふと視界に入り、更にはそこに書かれていた文字に目線を移す。
「Ifrit……」
「イフリートだったかな……。でも、なんでこんなところに?」
見覚えはあるようだったが、何故このような場所に置いてあったかは分からずにいた。
その時のことだった……。
My power, into your hands……
「!!」
置物付近から何か囁くような声が彼を眠気から呼び覚ました。
My power, into your hands……
我が力をその手に……
「……それが僕の示すべき答えだと言うのなら……」
その声から何かを見出し、一心不乱にベイの形を描いていく。
そして……。
――根尾中学校(翌日)――
「竜斗。あれから何かアイデアは思い浮かんだか?」
「一つだけ思いついたのがあるよ。もし良かったら……」
「おっ! じゃあ早速見せてもらおうか」
竜斗が一つだけ思いついたアイデア……。
彼は早速カバンから一冊のノートを取り出し、ダイキに見せる。
――
名前:プロミネンスイフリート.Ft3.EF
(フェザースリー・エターナルフラット)
タイプ:フュージョンブレード機構のアタックタイプ
特徴:線対称な6枚刃で斬りつけるようなアタック+空力+フリー回転ギアで大きく暴れ回る!
――
設計図にはベイの名前、タイプ、特徴……そして線対称な6枚刃の形状のベイが描かれていた。
「いやぁ驚いたぜ。モチーフがドラゴンからイフリートになったってもそうだけどよ、フュージョンブレード機構をいきなり選ぶなんてな」
「まぁ……ね」
ダイキが興味深くノートを眺めているのを見て、どこか嬉しげな表情を浮かべる。
「こうしちゃいられないな。放課後、そのノートにまとめ上げたアイデアを形にしようじゃないか。鳥羽グループのノウハウを詰め込んだクラフトマシーンで作ったベイは格別だぞ?」
「そうだね」
(いよいよ新しいベイが手元に……! これがワクワク感ってやつなんだな)
――放課後――
「この町も随分変わったな……あれからもう10年。早いものだな……」
放課後の廊下、窓から町の景色を眺めている男性がしみじみとしながら思い出に耽る。
そんな中……。
「門守先生!」
「!」
「ん? お前達は……」
「2年a組、赤城竜斗です」
「同じく2年a組、鳥羽ダイキです」
「ああ、竜斗とダイキか。どうしたんだ」
「門守先生、僕達にクラフトマシーンの使用許可を出していただけませんか?」
「クラフトマシーンの使用許可……。まぁ、2人は一応『免許』を持っているから使えるが、丁寧に扱うってことだけは忘れないようにな」
「もちろんです」
「……」
――クラフトマシーン前――
「良かったなぁ、竜斗。門守先生から許可をもらえて。免許を取っておいたかいがあったな」
門守という教師からクラフトマシーンの使用許可を得ることが出来、遂に新ベイの開発に着手する。
(……僕はこのベイでソウタ選手にたどり着く。自分の答えはそれ一つだ)
クラフトマシーンからは金属を削っていく音が鳴り響き、新たなベイの鼓動を刻んでいることが伝わる。
そして遂に……。
「出来た……! これが僕の新ベイ・プロミネンスイフリート!」
「やったなぁ、竜斗! これでベイブレード部の部長さんとも渡り合えるな」
「そうだね、それじゃあ早速……」
数分かけてようやく完成した新ベイ・プロミネンスイフリートを手に取り、ベイブレード部の部室へ向かう。
「失礼します」
ノックを3回した後に入室、ユイとのリベンジ戦に臨む。
「おっ、ここへ来たってことはリベンジ戦の準備が出来たってことかな?」
「はい、新しく作ったベイであなたとのリベンジを果たさせてもらいます」
「この『プロミネンスイフリート』で……!」
「君もフュージョンブレード機構のベイを……」
「面白いね。……じゃあ行こうか」
「そんじゃ、審判は俺が務めさせてもらうぜ」
ダイキもついでに部室へ入り、自ら審判を名乗り出た。
「Ready……Set!」
3・2・1 ゴーシュート!
昨日と変わらず、ホロウクロノスはスタジアム中央を陣取って綺麗に回っている。
それに対してプロミネンスイフリートは、スタジアムを縦横無尽に暴れ回る。
「おぉっ……!?」
アタックタイプとはいえここまで激しい動きは見たことがなかったのか、ユイは興味半々驚き半々な表情をした。
「それが君の作戦ってことかな? なら……」
「こっちも対抗させてもらうよ! ホロウクロノス!」
ベイの名前を呼んだ瞬間、クロノスのオーラが現れる。
「タイム・オブ・ゼロ」
心なしか受け流し性能が強化され、イフリートの軌道を大きく逸らした。
しかし、それで終わりではなかった……。
「!!」
(笑っている……?)
竜斗は焦る様子を見せず、寧ろ笑っていた。
「僕の作戦は今ので『完成』しました……」
「完成した……?」
「ユイさん 、その答えはスタジアムにあります」
意味ありげなことを言い、スタジアムを見るよう彼女に促す。
「……!」
その言葉通りにスタジアムの方に注目した途端、あることに気づき始めた。
「クロノスがブレ始めた……!?」
「それだけじゃありません」
「……よく見たら、イフリートはまだスタミナを温存して……!」
攻撃を受け流したのにも関わらず、クロノスはブレードからギアにかけて大きくブレ始める。
それに対し、プロミネンスイフリートはまだスタミナを温存していたのだ。
「これが僕とイフリートの答えです。イフリートのブレードは線対称な6枚刃で相手を斬りつけるような攻撃を得意とし、なおかつエターナルフラットギアでスタジアムとの摩擦を減らして加速する……!」
「僕の戦い方は常にソウタ選手をなぞってきたと言っていいぐらいです。けど……ソウタ選手のように『土壇場での閃き』は持てませんでした……」
「だから……『この一撃に全てを賭けるッ!』それが僕の新たなる道です! プロミネンスイフリート!!」
竜斗の声に共鳴してイフリートのオーラが現れる。
「プロミネンスソニック!」
勢いを失うことなくホロウクロノスに激突し、バーストフィニッシュを勝ち取った。
「プロミネンスイフリート、バーストフィニッシュ! 赤城竜斗の勝利!」
ダイキの左手は竜斗の方を指し示し、その勝利を確かなものとするのだった。
「よしっ……!」
ガッツポーズをした後、イフリートをスタジアムから拾い上げる。
新たな相棒の初陣は見事勝利で始めることが出来たのだった。
「早速フュージョンブレード機構のベイを使いこなすなんてね……。いいものを見させてもらったよ」
ユイもクロノスを拾い上げ、竜斗の勝利を称える。
「ありがとうございます、ユイさん。僕のブレーダーとしての道は始まったばかり……プロミネンスイフリートでいつか必ずソウタ選手に追いついて見せます!」
「いいじゃん、その意気だよ」
彼の謙虚な姿勢は変わらない。
が、その瞳には紛うことなき熱意が宿っていた。
ユイとダイキはすぐさまそれを察知するのだった。
そんな中、それに割って入るようにドアが開き、誰かが入ってきた。
「門守先生……!」
その人物は「門守バン」。
10年前、根尾中学校ベイブレード部の部長を務めていた男で、現在は根尾中学校の体育教師として教鞭をとり、ベイブレード部の顧問も兼任している。
「フュージョンブレード機構同士のバトルか。2人ともいい戦いだった」
「ありがとうございます、門守先生!」
「……もしよろしければ一つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「答えられる範囲ならな」
かつてベイブレード部の部長を務めていた男からの言葉に元気よく返事をするが、密かに聞きたいと思っていたことを質問する体勢に移った。
「門守先生から見て、ソウタ選手はどんな人でしたか?」
「俺から見たソウタか……」
「……」
質問の内容はバンから見たソウタはどんな人物だったのかというもの。
伝説となった男のチームメイトは一人の生徒からの問いにどう答えるのか……。
「あいつは『常に前に進んでいく男』だ」
「常に前に進んでいく男……!」
「ああ。全ての始まりは俺とあいつのぶつかり合い……俺が部長を務めていた時のベイブレード部は戦績は芳しくなく、更には周囲から冷たい視線を向けられていた。それ故に俺は一度、自ら廃部の決断を下した」
「廃部の決断を……? そこからどう立て直して……」
「立て直したというより、ソウタは俺に対し、このまま縮こまってもいいのかと言った。その時、ヒカルが部室に入ってきてベイブレードカップで神世学園と対戦することになった。結果は惨敗……だが、ソウタの諦めない心に興味を持った校長が廃部の取り下げを俺達に持ちかけた。そこで気づいたんだ、あいつの前を進む心がなければそのまま廃れていたのかもしれないなって……」
「……!」
バンにとってソウタはどんな人物だったのか……それは「常に前に進んでいく男」。
自身の経歴を交えつつ、嘗てのチームメイトとして穏やかな表情をしながら彼の人物像を振り返る。
「それから俺達は努力を重ね、ライバル達との激闘を乗り超えた末に神世学園とのリベンジを果たしたんだ。あの時のお前がいたベイブレードカップで……」
「そこから様々な経験をしてきて今があると……」
「そうだ。それから俺達は色んなブレーダー達と出会い、様々な経験をしてきた。ベイブレードの変革が行われた今、まだ見ぬブレーダー達がお前を待っているはずだ」
「門守先生……」
「俺は少し会議が入っている。思い出を語れて楽しかった」
バンは人生の先輩として竜斗に力強い言葉を贈り、部室を後にした。
「もしもし。お前にかけるのも久しぶりだな」
「おっ、その声はバンか? 久しぶりだな!」
「ああ。今日は面白いものを見ることが出来た。それをお前に共有したくて電話をかけさせてもらった」
「面白いもの……?」
「ああ。一昨日発表された『フュージョンブレード機構』についてだ。学校にあるクラフトマシーンで一からそれを作り上げた生徒が現れた。しかもその生徒は10年前にお前が助けた少年として知られている」
「10年前に俺が助けた少年……」
「あぁ……あの時の子か?」
「恐らくな。ベイブレード界に革命が起きた今、あいつがどんな道を進むのか……それは本人次第ってところだろう。時間があればあの2人にも頼む」
「ああ、分かったぜ」
電話を切り、少しだけ暗くなった空を見て言う。
「久しぶりに電話をしたが、やっぱりあいつは変わらないな。いつかまた4人で集まれる時が来ればな……」
意味深長な言葉を紡いだ後、廊下を後にしていった。
ベイブレード部部長・時渡ユイとのリベンジを果たした赤城竜斗。
新たな相棒を手にした今、彼が進む道とは――。
__イメージCAST__
赤城竜斗:伊藤節生
時渡ユイ:瀬戸麻沙美
鳥羽ダイキ:古川慎
10年後の人物
門守バン:梶裕貴
(髪型:赤と黒のツートンカラーの短髪/瞳の色:茶色/トップス&ボトムス:黒いジャージ/靴:スニーカー)
(根尾中学校体育教師及びベイブレード部顧問)
???:???
(バンと連絡を取り合っていた人物)
ナレーション:森川智之
新規登場ベイ
プロミネンスイフリート.Ft3.EF
(フェザースリー・エターナルフラット)
(イフリートモチーフのアタックタイプ。)