自身の手で新たなる相棒・プロミネンスイフリートを作り上げた赤城竜斗。
時渡ユイとのリベンジを達成し、ベイブレード部顧問である門守バンからソウタについて話を聞くことが出来、充実とした1日となった。
新たなる時代への一歩を踏み出した彼に待ち受けるものとは――。
――根尾中学校――
竜斗がイフリートを手にしてから翌日、根尾中学校内の教室には生徒達の談笑が伝う。
「昨日のバトルもそうだが、お前のポテンシャルってのは未知数だ。なんてったってフュージョンブレード機構のベイを作って早々それで勝ったんだからな」
「ありがとう。でも、昨日のバトルは咄嗟のカバーが無ければ危なかった。君も含めて将来的に新たなベイを手にするブレーダー達は少なくないはず。僕としてもイフリートがどんなベイなのか、もっと知らなくては……!」
「俺も含めて……か。謙虚だなぁ」
ダイキと昨日のバトルについて話し合う竜斗。
彼はダイキからの評価に対し、礼を言いつつも将来を見据えた謙虚な発言をする。
ダイキはやれやれといった風に頭を掻きながら言うが、満更でもない様子だった。
そんな中、教室のドアが勢いよく横へ動かされた。
「赤城竜斗くん、鳥羽ダイキくんはいるかな?」
「ユイさん!?」
「ユイ?」
そこから教室へ入り、2人の名前を呼んだのはベイブレード部部長・時渡ユイだった。
「一体どうしたんですか?」
「君達に提案があってここに来たんだよ」
「提案?」
彼女は2人に提案があって教室へ来たと言うが……。
「それはね……君達をベイブレード部のメンバーとして迎えたいんだ」
「えっ……!?」
なんと、その提案は竜斗とダイキをベイブレード部のメンバーとして歓迎するというもの。
ベイブレード部部長直々の提案に思わず戸惑ってしまった。
「いいんですか……? 僕はベイを新しくしたばかりで少し不安が……」
「もちろんすぐにとは言わないよ。入るタイミングは君達に任せる。だけどこれは渡しとくね」
「これは……クッキー……?」
少し不安があることを素直に話し、ユイもそれを了承した後、リボン付きの袋に入ったクッキーを2人に渡す。
彼女の同学年とは思えない、寧ろ1個上の先輩のような雰囲気が彼らには眩しく感じた。
「それじゃ、またね」
用事が済んだのか、彼女は教室を後にしていった。
「いやぁ、まさかベイブレード部の部長さん直々から勧誘を受けるなんてな。入部してみてもいいかもなぁ……なんて」
「僕もどこかのタイミングで入部しようかな……」
2人が考えていることは同じだった。
ベイブレード部という憧れの場所に対する「興味」から「決意」へと変わる瞬間であることは言うまでもなかった。
――放課後――
学校のチャイムは放課後を知らせ、そのまま帰る生徒、部活へしに行く生徒が廊下内に入り混じる。
「もう放課後か、あっという間だね」
「全く、1日が過ぎるのは早いってのは本当だな……」
他愛もない会話をしつつ、校門を通っていく。
「そんじゃ、また明日な」
「また明日」
空を見上げれば夕焼けが広がるそんな時間帯。
言葉を交わして、2人はそれぞれの帰り道を行く。
――鳥羽グループ社長室――
「失礼します、父上」
「約束通り来たようだな、ダイキ」
父親に呼び出され、ダイキはノックをして社長室に入る。
数時間前まで学校で明るく振る舞っていた少年とは思えないぐらいの丁寧な言葉だった。
「はい。……早速ですが、聞かせてください。私を呼び出した理由は……」
「理由? 愚問だな。俺がお前を呼び出すことに理由などいらない。お前は呼び出されたことに対し、応じればいい。ただそれだけだ」
「はい……」
自身を呼び出した理由を聞くが、それに理由はないと突っぱねられる。
厳しい言い方に思わず歯軋りをしそうになるが、その気持ちを押し殺して最低限の返事だけをした。
「早速だがお前にはあるものを作ってもらう」
「あるもの……ですか?」
ダイキの父親は早速、息子にあるものを作ってもらうと言葉をかける。
「ああ。お前は『フュージョンブレード機構』についてはとっくに知っているな?」
「はい。最近発表されたばかりの新機構……。今回はそれに関する……」
「そういうことだ。お前にもフュージョンブレード機構のベイを作ってもらう」
あるものとは何か……それはダイキ自身が作る彼専用の新ベイのことだった。
「私だけの……ですか?」
「当然だろう。俺達鳥羽グループは日本の経済を支える大企業。どんなことであろうと他の奴らに遅れを取るわけには行かないんだ。息子であるお前なら分かるはずだ」
困惑気味に質問するダイキに対し、呆れるような顔をして「他者に遅れを取るわけには行かない」と冷徹に言い放つ。
「……!」
父親からの圧にダイキは反論することも出来なかった。
更にはそれに漬け込むように父親は言葉を続ける。
「鳥羽グループのノウハウを詰め込んだクラフトマシーンは今のベイブレード界にとっての最適解に近い。息子であるお前が新たなベイを作り、我が社の優秀さをより広く宣伝できる機会であることを忘れるな」
「分かりました……」
鳥羽グループの優秀さをより広く宣伝できる出来るチャンスとしか捉えていないことに複雑さを抱えたが、父親が社長室を後にするまでこらえるしかなかった。
暫くして……。
「俺だけのベイ……か。誰かに指示されてベイを作ることに楽しさなんてあるのか?」
夜になり、ダイキはクラフトマシーンの前に立ち尽くしていた。
そこには虚しさを抱え、自身の心に迷いが生じている姿があった。
「今でも思うさ……父上。あなたは母上のことを本当に愛していたのか?」
「竜斗がいるから俺はまだ心を保てているというのに……」
ダイキの父親の手腕は確かなものだった。
しかし、それと同時に鳥羽グループの地位が揺らぐことを良しとせず、必要ないと判断した社員を容赦なく切り捨ててきた。
母親はそんな夫の冷酷無比さに耐えかね、ダイキが9歳の時に離婚して家を出た。
母が家を出てから5年経った今でも、彼の心の傷は癒えない。
今の彼にとって竜斗は幼い頃から出会った大切な友人であり、心の支えに等しい。
複雑な思いを胸にクラフトマシーンでベイを作っていくのだった。
そして……。
――根尾中学校(翌日)――
「……そういえば、ダイキはもうフュージョンブレード機構のベイを作ったのかな?」
珍しくダイキより先に教室に着いた竜斗は彼が来るのを待ちつつ、新しくベイを作ったのかを気にしていた。
「おや、早速俺について噂してたか」
「ダイキ……」
それに合わせたかのようにダイキが教室の中に入ってきた。
「竜斗、お前に話がある。アレについてのな」
「どうしたの? 急に改まって……。それでアレというのは?」
昨日とは違い、何だかよそよそしい様子で接する彼に竜斗は違和感を覚えた。
「俺もフュージョンブレード機構のベイを完成させたんだ」
「……! 君もベイを新しくしたんだね」
「ああ。それがこいつだ」
「『イレイズシグナス』。バランスタイプのベイだ」
「イレイズシグナス……!」
ダイキが新しく作ったフュージョンブレード機構のベイ「イレイズシグナス」。
白鳥の翼のように流れた形状の5枚のアッパー刃が竜斗の瞳に映り込んだ。
「とうとう俺もフュージョンブレード機構でのデビューというわけさ。放課後、校庭の練習場でバトルでもしないか?」
「……」
「どうかしたか?」
「ああ、ちょっと聞きたいことがあってね……」
「聞きたいこと?」
「うん。君は何かについて悩んでる……そんな気がするんだ。僕で良ければ話を聞きたい。一昨日のお礼も兼ねて」
放課後まで先ほどの違和感を持ち込むわけにはいかなかったのか早めの内に質問をすることにした。
その直後、ダイキはバレてしまったかと言わんばかりの表情をしてその真意を語る。
「……やっぱり分かっちまうか。実はな、シグナスは父上からフュージョンブレード機構のベイを作れと指示を受けて作ったベイなんだ」
「父上……。君のお父さんが?」
「そうさ。それだけならともかく、新しく作ったベイのことは鳥羽グループの宣伝代わりって言ったのさ。俺はどうしてもそのことに納得いかなくてな……」
「そうだったんだ……。けど、これで少し気が楽になったんじゃないかな?」
「ああ。だが、お前の言う通り少しは気が楽にはなったかな」
父親から受けたプレッシャーについて打ち明け、多少なりとも気が楽になった感覚を覚える。
2人の顔には自然と笑みが浮かぶのだった。
――放課後(練習場)――
授業が終わり、あっという間に放課後を迎えた。
そして、校庭にある練習場に2人の少年が相対する。
「夕焼けの下でのベイバトル……こういうのも悪くないな」
「そうだね。それじゃあ、行こうか……」
「「Ready……Set!」」
3・2・1 ゴーシュート!
ランチャーからスタジアムへと放たれた2つのベイ。
イレイズシグナスがプロミネンスイフリートの後ろを追いかけ、ブレード外周のアッパー刃とともに迫りくる。
「イレイズシグナスはバランスタイプ。幅広い軸先でより強力な静と動の動きを使い分けられる。お前のイフリートはどう戦うんだ?」
「それは今から分かるさ」
そう言っている内にブレードの金属同士が小突き合い、互いにスタミナを削り取っていく。
イフリートとシグナスの実力は拮抗。
互いにスタジアムから目を離さずに見守る中――。
「……!」
2機はほぼ同時に回転を止め、バトルの終了が戦場を通して伝えられた。
「ドロー……」
「フッ……。アッハハハハ……ハハハ!」
結果はドロー、先ほどまで対戦をしていた2人は互いの顔を見ながら笑い合う。
「ドロー……か。だが不思議と清々しい気分だ」
「ダイキ……」
「竜斗。やっぱり俺はベイを楽しみたい。それが俺の答えだ」
「ベイを楽しみたい……。その答えが聞けて良かった。いつかまたどこかで決着をつけよう」
「ああ」
「……!」
互いにベイを拾い上げようとする中、ダイキはあることに気づいた。
よく見るとイフリートのブレードにはところどころ傷がついていたのだ。
それは自身の戦い方を確立するための確かな向上心を意味するのだった。
(がむしゃらな奴だな……。だが無理だけはするなよ)
「……」
竜斗のがむしゃらな姿勢を認めつつも、無理だけはするなと心の中で忠告をする。
幼い頃からの友人として……。
一方で、そんな2人を校舎から眺めていた者がいた。
――鳥羽グループ社長室――
時計の針は深夜近くを指し示し、多くの町民は睡眠を取っている時間帯となった。
鳥羽グループ社内の別室でダイキが寝ている中、彼の父親は足音を立てないように歩きながら自身の社長室に向かう。
入室して電気をつけた後、スマホを取り出して電話アプリを開いた。
「もしもし、俺だ。『K』、あんたに話があって連絡をさせてもらった」
「おや。あなたから私に連絡をしてくるとは……。珍しいこともあるものですね」
彼は「K」と呼ばれる人物に電話をかけ、Kも珍しいというコメントをしつつ応対する。
「珍しいって……。まぁいい。早速話に入るが俺の息子もフュージョンブレード機構のベイを完成させた。……だが決着もつけずに帰ってきやがった。しかも、それにも関わらずベイを楽しみたいと吐かしていた」
「もっとも、俺はそれを見て聞いていただけだったが、あいつはまだ甘いということを改めて実感したよ」
「それはそれはお気の毒に」
「話は変わるが『アレ』はまだ試験段階か?」
Kとの電話を通じて、ダイキの父親は息子に対し「甘い」と評価を下し、その直後に話題を切り替えた。
「ええ。『アレ』はまだ世に出せる段階までには至っていません。ですが完成さえすればこの町……いや世界が変わることもまた事実。我が社とあなたの鳥羽グループが『経済の頂点』に立つのも夢ではありません」
「『アレ』を完成させればベイブレード界に更なる革命ひいては社会情勢は大きく変わる。そのためにはどんな犠牲も厭わない。最後に、あんた達の進展を祈るよ」
「フフ……楽しみにしていてくださいね?」
2人が言う「アレ」はまだ未完成であるということだが逆に言えばそれは「経済の頂点」に立つことも可能にするという。
社会情勢の変化を期待するような言葉を交わした後、電話を切った。
――???――
「フフフ……。フュージョンブレード機構だけではベイブレード界にとっての革命にはなり得ない……。更なる革命というものを私達が証明してみせましょう。根尾町内の皆さん」
フュージョンブレード機構を作り上げ、竜斗とのバトルで本当の思いを見つけた鳥羽ダイキ。
しかし、その裏に「大いなる闇」が彼を含めた根尾町内の住民に迫りつつあった。
それはベイブレード界にとっての「革命」か「破滅」か――。
__イメージCAST__
赤城竜斗:伊藤節生
鳥羽ダイキ:古川慎
時渡ユイ:瀬戸麻沙美
ダイキの父親:小山剛志
K:???
(ダイキの父親と電話をしていた人物。)
ナレーション:森川智之
新規登場ベイ
イレイズシグナス.Hr4.WU
(ハリケーンフォー・ワイドユナイト)
(白鳥座モチーフのバランスタイプ。)