量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
(なに、え? 何この状況……)
俺の名前はエレン……普通の村に生まれて今まで農民の次男として生きてきた。
隣に居るのはミラ……彼女も俺と一緒の村で幼馴染として過ごしていて、将来町に出て一緒に冒険者に成ろうって約束した仲だったんだけど、ある日山賊に村が襲われて、抵抗虚しく、村人皆捕まってしまい、このまま奴隷として売られるかもって思っていたら、なんか魔王軍を名乗る魔族が賊をぶっ飛ばして、俺とミラだけを連れて行くのを、他の村人を解放の条件にしちまった。
それに両親が山賊に斬りつけられていたのを治癒魔法でササッと治して……俺とミラは指示に従って魔族に付いていくと、賊の拠点で賊の虐殺を見せられて……。
最初の何この状況に繋がる。
「名前を聞いてもいいかい」
「は、はい! 俺はエレン」
「わ、私はミラです」
「ああ、落ち着いてくれ、別に君達を殺すようなことはしないから」
そう言われても、目の前で山賊が2人の魔族によって殺されまくっていたし……落ち着いて話せているのが奇跡だろう。
正直この場から早くミラを連れて逃げたいが、手を縄で縛られていて、急いで逃げようとすれば転んでしまうし……女の魔族がこっちをじっと見て出入り口を塞いでいるから逃げ出しようが無い。
「ボクの名前はバーン。こっちがスクエニー」
「どうも」
ペコリとスクエニーと呼ばれた魔族が頭を下げる。
黒光りしている角にコウモリのような翼……噂に聞く悪魔そのものだ。
一方でバーンと名乗った魔族は赤と黄色い角にドラゴンの様な大きな尻尾、そして真っ赤な翼に体の一部が鱗で覆われている。
男なのか女なのか……どっちかもわからない。
「俺らをどうするつもり何だ!」
「うーんとね……これから2人に魔法を掛けようと思う。できれば抵抗しないで欲しい。別に死ぬような魔法では無いからさ」
魔法……女の魔族……スクエニーだったか。
彼女が本を開きながら魔法陣を描き始める。
その真ん中にそれぞれ、俺とミラが置かれて、目の前でバーンと言う魔族が自身の立派な尻尾を剣で斬り落とす。
「やっぱり少し痛いな」
どくどくと魔法陣に血が流れていき、切り分けた尻尾を俺とミラの前にそれぞれ置く。
バーンと言う魔族は直ぐに俺の両親にしたように、治癒魔法で尻尾を生やして回復させると、スクエニーと共に呪文を唱え始める。
すると魔法陣から黒い煙が俺とミラの体に流れ込んで……そこで俺の意識は途切れるのだった。
目の前で人間だった少年のエレン、少女のミラに黒い煙が包んでいく。
徐々に煙が晴れてくると、エレンとミラの額には角が生えていて、エレンの下半身はタコの様な複数の触手が生えていて、一方でミラには天使の様な輪っかと白い翼が生えていた。
まるで天使であるが、赤黒い角が生えているのがそれを否定する。
煙が完全に晴れると、2人は直ぐに意識を回復させて、叫んだ。
「「な、なんじゃこりゃ!」」
どうやら人間の時の記憶は継承するらしい。
「君達は魔族に生まれ変わりました。おめでとう!」
「ちょ、ちょっと待ってください!? 俺らが魔族? あれ? さっきまで人間だったのに?」
「エレン、下半身や額に角が生えてるよ……」
「ミラだって翼が生えていたり、額に角が……」
「さてと……人間卒業したわけだけど、周りに散らばってる死体を見てどう思う?」
ボクがそう言うと、ミラが
「どうって……死体よね? ……あれ?」
「おかしい……おかしいよ! 何かがおかしい!」
エレンは頭を抱え、ミラは自身が死体を見ても恐怖を感じなくなっていると考えが至って、ゾクゾクっと体を震えさせていた。
「スクエニー、実験は成功みたいだね」
「そうだね。2人の感性はこっち側になっているっぽいし」
頭を抱える2人であるが、2人に言い放つ。
「今の姿で人間側に戻ったとしても、君達は化け物として討伐されるよ」
「僕達と一緒に魔王軍で働こうよ」
ボクとスクエニーがそう誘いかける。
2人は拒否したいのだろうが、主従関係を結んでいるためボクとスクエニーの言葉に拒否できない。
「「仰せの通りに……」」
2人は片膝立ちの様なポーズを取り、ボクとスクエニーに忠誠を示す。
実験は大成功。
人間を魔族にする魔法はバッチリ決まるのだった。
「さてと、山賊が溜め込んでいた財宝を回収しますか」
「それ……俺達の様な村から集められた品なんじゃ……」
「魔王軍には関係ない! ささ、2人も回収するの手伝ってよ」
ボクがそう言うと、エレンとミラの2人も渋々と言った感じで財宝を集め始まるが、直ぐに表情が変わった。
「バーンさん! こっちの箱の中に銀貨がびっしり……」
「スクエニーさん! こっちには魔石が!」
すっかり財宝に目を輝かせながら2人はボクやスクエニーよりも進んで財宝を集め始める。
そのテンションの違いに若干スクエニーは引きつつも、お陰で山賊の財宝は簡単に集めることができた。
特にエレンの触手。
タコ足の様な触手からより細く小さい触手も下半身から生えていて、それを鍵穴に突っ込むことで、鍵を簡単に開けていた。
本人によると、全部の触手を手足や指の様に細かく動かすことができるとのこと。
それでいて神経は繋がってるわけではなく、うっかりミラがエレンの触手の上に銀貨の入った箱を落としてしまったが、特に痛そうな素振りはせずに、気をつけてって言っていた。
〈もしかしてたこ焼き作れる? 〉
《オレ》がなんかエレンの足を千切って料理を作るイメージを送り込んでくるけど、流石にエレンの許可を取ってからにしたい。
財宝や武器類を纏め、死体は一応燃やして火葬しておく。
ゾンビになられても困るからな……。
「ゾンビって魔王軍側じゃないんですか?」
ミラが質問してくるが、ネクロマンサーみたいにゾンビに指示を出せる司令塔が居ないと、ゾンビは魔王軍でも無秩序に襲いかかってくる。
「せっかく解放した村がゾンビに襲われたら嫌だろ」
「それは……そうですね」
ミラとエレンは納得してくれた。
そのままボクとスクエニーは2人を引き連れて、魔王軍の基地へと戻るのであった。
魔族に成り立ての2人が居るので、帰りのスピードはゆっくり。
山賊が持っていた財宝や武器は一番力があるボクが大半を持って、残りをスクエニーや他2人に持たせている。
魔族としての2人の強さは初期のボクと同じくらいかな?
いや、知能がある分だけ他の量産兵よりは強いだろう。
それに2人は人間時代の名前を引き継いでいるけど、ボクが名前を名付ければもう一段階は強くなれる。
まぁそこら辺は2人の働き次第だけど。
道中でミートスライムやライススライムを見せたら、若干引いていたけど、鉄鍋で焼き飯……卵が無いから塩、ミートスライム、ライススライム、風船エビをそこらに生えていたニラやギョウジャニンニク採ってきて、一緒に炒めた物を2人は気に入ってバクバク食べていた。
「魔王軍ってこんなに美味しい料理毎日食べれるの!」
「いや、ボクが趣味で料理作ってるだけで、ボクの部下なら食べられるけど」
「なります! バーンさんの部下になります!」
「私もなります!」
飯で釣られてしまっているが、君達数日前まで人間だったんだよね?
短期間に魔族側に感性が寄り始めてるよね?
ボク的には都合が良いけどさ……。
〈魔族にする魔法は人間性もぶっ壊すっぽいな〉
(こっちとしては都合が良いけど……)
〈あとは人間相手に戦えるかどうかだな……こればっかりはゲームと違って試してみるしかないけど〉
(そうだね……)
「バーンさん! お代わり!」
「私もいいですか!」
「はいはい」
ボクとしては完全に子分が出来たみたいで可愛いけどね……。