量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「なるほど……ホムンクルスの集落だったか」
「はい、今集落で意思統一をしていますが、恐らくこちらの進駐を受け入れてくれるかと。あと使われていない建物とかも多かったので、修繕すれば寝床の確保は十分に行えるかと」
「うんうん、いい報告だ。2人が集落に行っていた間の動きについて話しておこう」
隊長によると、人間領の本格侵攻が始まったらしい。
ただ各村々にいる冒険者の活躍により、負傷兵とかが多い魔王軍の侵攻は上手くいってないのが現状らしい。
そんな中無傷で集落を落としたとなれば規模が小さくても功績は大きいと隊長は言ってくれた。
「よくやってくれた。というか私達の戦力はバーンとスクエニーを除くとウルフ、ポーク、モンキーの3人と一段階落ちてのエレン、ミラしか居ないからね。他の兵達は正直知能が低すぎるし……これなら他所に送りつけた方が良いかもな」
「集落側からも魔物に近い知能の魔族は受け入れないでしょう」
「だよね~、うん。そっちは私がなんとかしておく。ゆっくり今日は休みな」
「「ありがとうございます」」
スクエニーと共に報告を終わらせると、ウルフ達が休んでいる場所に移動した。
今日はミラとエレンが料理を作っていたらしく、ボクが教えた焼き飯が振る舞われていた。
「おーい、帰ったよ」
「バーンさん! スクエニーさん! お帰りなさい!」
「お、バーンちょうどいいところに」
エレンがお帰りなさいと言った後にウルフに呼ばれた。
「どうした? ウルフ」
「おいおい、交渉で終わらせたら俺達の出番がねーだろ」
「そうそう! まぁ今の戦力だと村を落とすのも苦労するかもしれないからちょうど良かったかもな」
ウルフの言葉にモンキーも同調する。
しかしポークが、
「戦わないで勝てるならそれに越したことはねーだろ。俺は集落規模だと食料の供給が間に合うのかの方がしんだいだっぺ」
焼き飯をかきこみながら喋る。
「今回行った村はホムンクルスの村だったから魔法に優れているし、農作物を早く実らせる魔法とか使えるんじゃないか?」
「ふーん、ホムンクルスの奴らは強そうだったのか?」
「普通の人間よりは強いんじゃないかな? とはいえボクもそんなに人間と戦闘経験は無いけど」
ウルフの質問にボクは答える。
スクエニーがボクの分の焼き飯を取ってきてくれて、ちゃっかり横に座っている。
「とりあえずボクとスクエニーは当分ホムンクルスの人達を魔族に転生させる作業が始まるから忙しくてご飯は作れないかも」
「「「ええ〜」」」
ウルフ達3人組が不満の声を出す。
「なんだ、俺とミラの飯じゃ不満?」
「あ、悪かったな。別に不満じゃねぇけどよ」
ウルフが焼き飯を作ってくれたエレンとミラに謝る。
エレンとミラも料理をボクと一緒に作っているから、少しずつ作れるようになっているけど、《オレ》ってアドバイザーが居ない分、ちょっと味が落ちるんだよね。
今度レシピ集でも作ろうかな?
「明日朝一には移動なんで、今日は早く寝ますよ」
「「「ういー」」」
そんな感じでボクもご飯を食べるのだった。
翌日……結局サキー隊長はボク、スクエニー、ウルフ、ポーク、モンキー、エレン、ミラの7名以外は他の部隊に派遣ということで追い出し、補給部隊でスクエニーの友人の元商人の人達を5名ほど連れて行く事に。
空を飛べば数時間で到着するが、歩いていくので半日近く集落に到着するまでかかってしまった。
いや、これでも荷物を背負いながら移動しているので、早いっちゃ早いが……。
「お待ちしておりました」
「君が集落の代表のジンかい?」
「はい、昨日いらっしゃったバーンさんとスクエニーさんの上司でよろしいでしょうか?」
「ああ、ハーピーのサキーだ」
「改めましてホムンクルスのジンです。こちらが昨日魔族にしてもらった」
「ヒトミです。バーンさんとスクエニーさんには昨日お礼を言えなかったので、改めて感謝を」
友好的な感じで村の中へと案内される。
昨日はゆっくり見れなかったけど、石造りの頑丈そうな家が多い。
ただ人通りが多い場所を除くと、手入れが行き届いていない家も目立つ。
壁に苔が生えていたり、窓の板が外れかけていたり……。
(掃除すれば1大隊……200人から300人くらいは生活できそう)
〈できるだろうな。まぁそうなったら更にサキー隊長が統治って話はなくなるだろうが〉
(だよね~。とりあえずボクらの小隊が間借りしてもらって、ホムンクルスの人達を魔族化させて、徴兵するって感じだろうか?)
〈それが無難だろう。あとは魔法を使った農業の様子を確認したり、小隊の拠点としての整備に留めねぇと〉
(だねー)
程なくして、隊長がジンさんと交渉を終わらせたらしく、集落の人々も集まった中で取り決めが発表された。
・年齢が高いホムンクルスから優先的に魔族化の魔法を受ける。
・サキー小隊に加入を希望する者は部隊に参加する
・全員の魔族化が完了次第正式に魔王軍所属となる
・将来的には集落の破棄もしくは譲渡も行う
・ホムンクルス達はサキー隊長に忠誠を誓う
この様な取り決めが行われた。
全面降伏に近いが、ホムンクルス達はそれほど寿命と現状の生活に不満を溜め込んでいたのだろう。
内容が発表されるとなぜかホムンクルス側から拍手が巻き起こっていた。
そこからボクとスクエニーは大忙し。
ホムンクルス達を魔族化させていくが、前の死体漁りで確保した触媒の数やボクの尻尾を切断して魔族化の儀式をしていくとしても、在庫的に20人が限界。
そこからはボクの尻尾が無理なく再生できる1日3回か4回が限度となる。
触媒に格がないと弱い魔族になってしまうから仕方がないね。
ジンさん側もそれは了承してくれたし、寿命的に怪しかったヒトミさん以外の年配者……15歳以上の人達の分は在庫であるので、今日魔法を掛けていく。
最初に長のジンさんからであるが、彼も魔族の種族はサードアイになった。
というかホムンクルスの人達、性質が似ているからか、触媒に関わらずに、皆種族的にはサードアイ。
ただ個体差で翼が生えていたり、角があったり、尻尾が生えていたりというのはあった。
そして皆一斉に若返る。
ジンさんは初老の男性だったのがボクと同じくらいかちょっと上の青年の姿に、他のホムンクルスだった人達も年相応の姿へと変わっていった。
「おお、力がみなぎる! それに節々の痛みや視界がスッキリしている!」
「ジンさん、それは良かった」
「バーン、感謝するぞ。それにさん付けは不用。君の方がこれからは立場が上だからな」
「じゃぁジンって呼ばせてもらうよ」
「おう!」
10人魔族化させたところでスクエニーの魔力が尽きて、2日に分けることに。
予想よりも時間が余ったので、バーンに魔道書がある書庫へと案内してもらった。
「先祖達が使っていた魔法の多くはこの書庫に魔道書として残されている。私達はもっぱら戦闘用の魔法より生活を豊かにしたり、農業関連の魔法を覚えていたが……」
「じゃぁこれからは戦闘用の魔法も覚える必要がありますね。一緒に覚えよう! ジン」
「そうだな。ここの魔道書や書物には保護の魔法が強く掛かっているから、意図して破いたりしなければ傷つくことは無いから、ゆっくり読んでいくと良い」
「ありがとう」
ジンが部屋の明かりを灯してくれると、書庫全体が灯される。
〈広さ的には小中学校な図書室レベルだが……これが全部魔道書ってことを考えると価値は凄まじいな。まぁ殆どは下級、中級、良くて上級で、禁術とか聖級、神級の戦略的な魔法はないだろうが〉
(それでも個人単位の戦闘では優位を取れるよ!)
〈それもそうだな……よし、全部魔法を覚えるのは時間が掛かるから直近で必要になる魔法を《オレ》と2人で覚えていくぞ〉
(おー!)