量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「過去に魔法を研究していた島……」
「はい、確認した限りその産物が一部残っていることも確認しています」
「ふむ……明日私をそこに連れて行ってもらえるか」
「わかりました」
サキー隊長に一通り話をすると、その島に連れて行くように言われた。
ボクはそれを了承し、今日はゆっくり休むことにするのだった。
翌日、隊長とボクと同じく副官の地位にいるジン、それにボクたちの部隊で一番魔法を知っているスクエニーを連れて島の方に瞬間移動を行った。
スクエニーを連れて行くのは、瞬間移動の魔法を彼女も使えるから、ボクの予備としてね。
「これが……海」
「僕初めて見ました」
「海岸沿いでも侵攻していないと見ることもないからね……」
ジン、スクエニー、隊長の順に各々海を見ての発言を残す。
ボクも昨日初めて海を見たときはそうだったな……って思ったり。
とりあえず昨日はあんまり探索できてないので、探索をしながら、昨日残してきた魔法の杖の方に向かう。
「祠?」
「はい、ここに隊長には昨日言った魔族の未来を変える品が眠っています」
ボクは祠に納められている2本の魔法の杖を昨日《オレ》に説明してもらった通りに話す。
「採取の杖と魔石の杖……」
「確かに強力な魔石を取り込めば、それだけ取り込んだ人物の才能も開花するわけだけど……肉体の一部だけでもそれができるというのは凄いね」
「これ……弱い個体でも圧縮して纏めれば強力な魔石を作り出すこともできるんじゃ……」
スクエニーが思いついたことを話す。
それは……どうなのだろうか?
〈可能だ。《オレ》もそれでとあることができないか試してみたいって思っている〉
(試すって?)
〈精子から魔石を生み出す……精子も生物を作り出す素材だから生き物と言える。強力な魔族の精液であれば……それなりの魔石ができるんじゃないか? 〉
(強力な魔族が思いつかないけど……)
〈エレンに名前を与えて格を引き上げてしまえば良い。何ならミラとエールの2人にも名前を与えてしまえ〉
(……ちょっと考えておくよ)
ボクと《オレ》が考えている間も、他の3人は杖を触りながら、この杖の可能性について議論していた。
「確かに海から素材が大量に採れるのであれば、物質不足についてもある程度解決することができるかも」
「お待ちを隊長」
ジンが隊長に献策を行う。
これだけの物質が海から採ることができるのであれば、素早くこの島をサードアイの集落並みに整えることが可能。
それに隊長の話を聞いていると、現在下向している将軍様は相当な危険人物なのでしょうと語りかける。
冷静になった隊長はジンの献策を聞いてから、将軍様にこの魔法の杖を献上した場合の未来と、自分達の生存……どちらが可能性が高いか弾き出す。
隊長は魔王様に参加しているが、参加理由は強くなり成り上がる
という魔族の根本的な考えに基づいてであるので、別に今出向している将軍様に忠義もへったくれもなかった。
それにサードアイ達の戦力化とかはまだ時間が掛かる。
「隊長、遠くない未来に将軍様は負ける可能性が高いとボクに言ってくれましたよね? 逃げる場所を作るのが先決では?」
「……危ない。不必要に欲張るところだった。ジン、バーンありがとう……バーンは日帰りでこの島に行き来できるから、当分はこの島の探索を行なってくれ」
「は!」
「ジンは引き続きサードアイ達の戦力化を教官役をやってくれているスカーレットと共に頑張ってくれ」
「了解しました」
「スクエニーはバーンの補佐を頼むよ」
「はい!」
その後は集落の跡地を探して他にも何かないかと探したところ、結構ゴロゴロ出てくる。
魔力を込めると飲水が湧き出てくる水瓶だったり、野生化したミートスライムやライススライム、小麦のウィートスライムの食用スライムやバロメッツといった羊の姿をしたもこもこの毛糸や肉になる魔物の群生地を見つけたり……。
まだ探せば色々出てきそうだが、隊長や副官が部隊を長く離れるのはどうかとして、1時間程度で探索を切り上げて、今日はサードアイの集落に帰還するのだった。
拠点にしている家に帰ってから、エレン、ミラ、エールの3人を呼び寄せた。
「なんですか? バーンさん」
「いや、今後の為に3人に魔族として格を上げる名付けを行おうと思ってな」
「名付け……ですか?」
「魂の名前と言った方が良いか?」
「うーん、あまりピンと来ないわね……」
3人共に元が魔族ではないから名前を付けると強くなる……というのがピンと来ないらしい。
ボクが、魔族は上位者から名前を付けられると劇的に強くなると伝える。
ボクらはそれを成長と呼んでいるけど、赤子から大人に変わるくらい能力が劇的に変わると説明する。
「それを俺達にしてくれるんですか?」
エレンが嬉しそうに聞いてくる。
「そうだ。ちょっと3人には名付けの後に協力してもらいたいことがあるから、それに備えて名付けをな……。あと格の高い魔族から生まれた子供も格が高く成りやすいっていうのもある」
これも《オレ》に教えてもらって、隊長に確認を取ったらそうだと言われた。
上位魔族は子供が生まれにくい代わりに生まれた時から才能が高い子供が生まれてきやすい。
将軍様とかも生まれからしてエリートってやつなのだろう。
人間よりも実力主義の魔族では生まれからして強さが違うなら、下積みすっ飛ばして中核兵行きだからな……。
貴族よりも特権階級化しやすい仕組みかもしれない。
(まあだからなボクみたいなドラゴンと上位魔族の血を混ぜた量産兵が作られるわけだけどね)
「皆も生まれてくる子供が才能溢れていた方がいいでしょ?」
「それは……そうだな」
「私もそう思う」
「そうね! その方が子孫繁栄に繋がるわ」
エレン、ミラ、エールの3人もそこは同意。
ということで名付けの儀を行う。
儀式と言っても、ボクが魔力を込めて命名するだけだけど……。
名前は勿論人間時代の物を引き継ぐ。
エレン、ミラ、エール……。
〈せっかくだし家名でもつけてやれば? 〉
(家名って?)
〈一族単位の名前。エレンを旦那にミラとエールの2人が嫁なんだから一族の名前があった方が格好がつくんじゃないか? 〉
(魔族にそんな文化ってあるのかな?)
〈まぁ魔族は基本種族で一族が決まっているからな……〉
一応3人に家名を付けるか聞いてみたら、貴族みたいと乗り気。
人間の貴族は家名を付けるのね……。
(ちなみにどんな家名がいいの?)
〈土地の名前とか功名があった祖先とかを基本つけるけど……そうだな……元々聖女を産む両親だから神聖を意味するホーリーとかで良いんじゃないか? 〉
「じゃぁ3人の家名は神聖を意味するホーリーね。エレン・ホーリー、ミラ・ホーリー、エール・ホーリー」
「おお! かっこいい!」
エレン達ははしゃいでいたけど、呼ぶときは今まで通りエレンとかの名前で呼ぶことにする。
うわ、ごっそり魔力が持っていかれた気がする。
名付けるのも大変だ。
〈今の実力で付けられる名前はあと2人ってところだな〉
(残りは慎重に付けることにするよ。場合によってはミラとエールの子供に名前を付けるでも良いけど)
〈そこは父親のエレンに付けさせてやれ。名付けたことでエレンも格が上がって名付けられるようになったと思うから〉
(それもそうだね……)
というわけでエレン、ミラ、エールの名付けも終わり、翌日からボクとスクエニーを含めた5人で無人島の散策を行うことにするのだった。