量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
翌日からエレン、ミラ、エール、スクエニーを連れて拠点にする予定の無人島探索。
とりあえず最初は測量をして地図を作っていく。
スクエニーが見たり歩いたりしながら頭の中に地図を描く魔法を覚えていたので、地図に関しては彼女に任せて、ボクらは集落跡地を更に漁ってみることにする。
軽くの探索でも飲水を生み出す水瓶を見つけられたので、まだ魔道具が残っているかもしれない。
できれば魔道書とかあると良いけど。
《オレ》曰く書庫程はないだろうけど、幾つか魔道書が残されているはずだって言っていたし……。
それから数時間手分けして探してみると色々出てきた。
〈ライターだこれ〉
《オレ》が言うにはライターなる魔力を込めると火を灯す魔道具やライススライムやウィートスライム(小麦スライム)とかを粉末にする大型の製粉機が整備すれば稼働できそうな状態で残っていたり、スライムを入れると分裂させてスライムの卵状態にする魔道具が発掘できたり……。
「ここは徹底的に壊されているな……」
〈工場みたいな場所もあったのか〉
恐らく魔道具を量産していた工場らしき場所も見つけたが、徹底的に壊されていて、修復は不可能に感じた。
じゃぁなぜ魔道具の工場か分かったかと言うと、地下室を見つけて、そこに作られていた魔道具のリストが出てきたのである。
武器になりそうな物は作られてなかったけど、仕様変更で軍需物資になり得るってことで破壊したらしい。
ここが生きていればボクらでも魔道具を作れたのかな?
そうこうしていると、スクエニーが戻ってきて、転写の魔法で頭の中にあった地図を紙に写してくれた。
〈山手線一周くらいだな〉
(山手線?)
〈こっちの話〉
これが表層で、ダンジョンなる迷宮が地下に広がっていて、《オレ》によると更に3層くらいの広さがあるのだとか。
まぁ表層みたいに農業とかに適した土地ではないらしいからスライムとかの魔物の飼育にしか使えないらしいけど。
(やっぱり広いよね?)
〈まぁ500人、1000人は余裕で養えるな。まぁ資源が実質無限になる採取の杖がある前提だが〉
(ふむふむ)
あと上空から見て思ったが、島全体の起伏が窪地状になっている。
島の真ん中は浜風が当たりづらくて作物を育てやすいかも?
〈塩害に気をつけねぇといけないかもしれねぇが……〉
塩害……浜風に乗って塩気が土地に降り注いで植物を枯らしてしまうことだと《オレ》は言うけど、木々が生い茂っているからそんな心配しなくても良さそうだけど……。
〈窪地は開墾するけど、丘の部分は木々が生い茂っていた方が良いな。そうすれば浜風や高波を食い止めてくれる〉
農業も色々あるのだとか……。
《オレ》はそんなところまでよく知っていると常々思うよ。
さてさて、残る場所は砦だろうか。
上層部は崩れているけど、中に入ってみると、保護の魔法が効いていて結構綺麗。
地下に続く通路があり、ここを進むと迷宮……ダンジョンに繋がっていているらしいので、ここから下は後回し。
砦の中を見ていくと、食器や調理器具が比較的綺麗な状態で残っていて、洗浄の魔法を使えばまだ使えそうなのが多い。
集落とも近いし、ここが島民の食事処になっていたのかも?
他にも《オレ》が洋式のトイレがあると興奮していた便所や魔道書が残されていた書庫も見つかった。
これが一番の収穫かもしれない。
あとは大きな水釜? ……オレによると大浴場なる場所があり、昔の人間はここで体を洗って清潔にしていたらしい。
他にも2階には個室の寝室が幾つもあり、《オレ》はホテルみたいだなって言っていた。
宿みたいな役割をになっていたのかも?
3階より上は崩れていてわからないけど、防衛の拠点と言うより、研究所兼迷宮から魔物が溢れてこないように蓋をしている感じだろうか。
「掃除をすれば今でも住めそうだね」
「そうだね……食料も周辺に住み着いている魔物でなんとかなりそうだし……整備すれば住めるね」
スクエニーも同意してくれた。
エレンとミラとエールは洗浄の魔法を使って、寝室っぽい部屋を1部屋ピカピカにすると、そこで呑気に昼寝を始めていた。
「はしゃぎすぎて疲れたのかな?」
「エールも寝ちゃうなんて珍しい」
スースーと3人共にベッドに大の字になって眠っている。
気持ちよさそうなのでボクとスクエニーも少し仮眠を取ることにするのだった。
(これは……夢?)
ボクはふわふわと夢を見ているらしい。
「〈おい、どうやら普通の夢じゃなさそうだぞ〉」
ボクと同じ姿をしたら《オレ》がそこに居た。
夢まで出張してきたのかと思ったけど、意識がしっかりしているから、普通の夢でないのは確かだ。
何者から魔法攻撃を受けた?
「〈いや、恐らく夢見の魔道具だろう。夢で過去の出来事を見せる魔道具がある。本来は回想部屋にあるはずだが……〉」
また回想部屋とか分からないことを《オレ》は言っているけど、霧が晴れてくると、荷物を纏めている人間達がそこに居た。
『エデン島を放棄すると国が決めるなんて……我々が錬金術の研究をしていることに気がついたのか?』
『人造の魔物を作っていたのがまずかったですかね……人類の食料事情を改善するいい手段だと思ったのですがね』
そこに魔族っぽい白衣を着た研究者が現れた。
ここは人間の研究施設だったはずでは?
『クロスロード、お前も大変だな……魔王に言われてこんな場所に連れてこられて……あっという間に島の放棄だなんて』
『いえ、ここで得られた食用魔物は魔族では受け入れられる土壌があるので……有効的に使わせてもらいます』
『おう、人間側は頭の硬い奴ばかりで受け入れてくれねぇ……ああ、魔族の方が食料事情が悪いからな』
『ええ、皆飢えに苦しんでいるので……』
再び霧が濃くなってきた。
そして再び霧が晴れると、先ほどクロスロードと言われた魔族が目の前に映っている。
『魔王軍幹部の幽魔のクロスロードだ。今夢を見ている者に願い出る。この島の技術を魔族、人間問わず、争いではなく繁栄に使って欲しい。エデン島はそのための研究施設だった。魔王様は食料事情が改善し、魔族の個体数が増えたのを契機に人間領への侵攻を開始してしまった。人間は魔王軍や魔王様が考えているほど弱くはない。きっと泥沼の戦争に引きずり込まれて、個体数の少ない魔族が敗北する結果になるだろう。私は世界各地に魔族が絶えることが無いように転生の魔法を必ず開発して残しておく』
『願わくば見つけ出して魔族が絶滅しないようにして欲しい』
そこで霧は再び濃くなり、ボクは夢から覚めた。
外はすっかり夕方になっていて、結構眠っていたらしい。
「クロスロードさん、その魔法既にボクらが実用にこぎ着けていますよ」
ボクはそう呟くのだった。
なんとなく食用魔物は人間や魔族にとって都合が良すぎると思っていたし、多分それを生産する技術やホムンクルス技術、錬金術とか色々混ざり合った結果、魔王軍は量産兵を、人間側は人造人間を量産できる体制を整えて、100年以上も殺し合いを続けていることになるのではないだろうか?
(《オレ》、本当に魔王軍が負けるの? この拮抗状態から)
〈拮抗してるってことはきっかけ1つで大きく変化するんだよ。それこそ魔王軍の頂点たる魔王様になにかあれば一気に戦線は瓦解するぞ〉
(ふーん……)
もう一度部屋を確認してみると、ボクらが今いる部屋がクロスロードさんの使っている部屋だったらしく、机の奥から夢を見せる魔道具が出てきた。
(とはいえ、ボクらにそんな大局を動かせる力はないからなぁ……)
そう思わずにはいられないボクだった。