量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
「地図よし! 体調よし! 魔力量よし!」
昨日は出産関係で色々あったけど、今日からはボクの目的であるチンコを手に入れるための行動。
天才錬金術師フラン探しを本格的に行っていく。
サードアイの集落から瞬間移動の魔法でまずは中継地である将軍様がいる町まで飛ぶ。
そこからは空を飛んで人間領の奥まで入り込んでいく。
「なんというか……活気が無いな」
軽く将軍様がいる町を見ていくが、前よりも活気が無いような気がする。
前までは人間も多く出歩いていたが、その姿がだいぶ減って、魔族もあんまり出歩いていない。
〈別の場所に攻勢を掛けていて、人魔共に出払っているんじゃないか? 〉
多分そうだろう。
とりあえず空を飛んで、移動を始める。
飛ぶこと半日。
だいぶ人間領の奥まで来れたと思う。
「ようやく到着か……」
目的の町が見えたので、近くの森に隠れ、スクエニーから教えてもらった遠見の魔法を使って町の中の様子を確認する。
(大通りがあって、同じ色合いの建物が左右対称に並んでいて……)
〈大通りから脇道に入って本が並べられている……あの店だ〉
(どれどれ……本当に古本屋なんだね)
〈まぁ魔道書じゃなくて技術書みたいなものだからな……専門知識がないと何書いてあるかわからないし〉
そのまま町の様子を見続けていると、なんかボクの近くに誰かが走ってきた。
ボクは腰掛けている木の枝の下にボロっちい格好をした金髪の女性が。
「ふう……ここまでくれば追ってくることもできないだろうぜ!」
木の幹に腰掛けて魔法使いの様な大きなとんがり帽子をゴソゴソと漁って何か探しているが、見つからないらしい。
グルルと大きな腹の虫が鳴る。
「くうう、無駄に走ったからお腹が減ったぜ……」
強者の感じはしなかったのでボクは気配を消しながら彼女の肩をトントンと叩く。
「ひぇ! 追手か! ……ふぁ!? 魔族!」
「お腹空いているんだろ。飯与えるからちょっと話でもしないか?」
ボクは焼きおにぎりを見せる。
それを見た女性はグルルと再びお腹を鳴らして、手を伸ばし、おにぎりにかぶりついた。
「魔王軍の兵士なんかがなんでこんな場所にいるんだぜ。前線はもっと遠くなはずだぜ」
「いやぁちょっと探し人が居てな。その人物を探しに」
「魔王軍が攫うような人物ってさぞ高貴な方なんだろうぜ」
「高貴……うーんちょっと違うような」
焼きおにぎりを渡して、こっちも敵意がないことを示すと、女性も落ち着いたのか、ボクの横でお喋りを始めた。
ボクの方が強いのがわかっているから、話を合わせて、適当に逃げようって思っているのかも。
なんか《オレ》が興奮している。
(《オレ》どうした?)
〈目の前にいるのが錬金術師のフランだよ! 〉
(ふぁ!?)
まさかのエンカウント。
こんなこともあるんだな……。
どんな幸運だよ……。
見てみるが、とんがり帽子と長い金髪、青色の瞳、鼻周りにそばかすがある感じで……普通の人間の女性にしか見えない。
凄い美人ってわけでもないし……。
「えっと名前を聞いても、ボクはドラゴノイドのバーン」
「ん? 私か? 私はフラン! 魔法使いのフランだぜ!」
「魔法使いにしては……魔力量が凄い少ないような」
「うぐ! そっか魔族にはバレバレか……いや、魔族に嘘ついてもしゃーねぇな。本職は錬金術師をしているハーフエルフなんだぜ」
帽子で隠していた耳を見せてくれると、確かに耳が大きく尖っていた。
「ハーフエルフなのに魔力量が少ないからエルフの里からは追い出され、人間とは寿命の差から容姿が変わらないのをドッペルゲンガーと疑われて……町を転々としているってわけだぜ。で、今回も町の兵士に疑われて、捕まる前に逃げてきたってわけだぜ。ご飯を持ってなかったから助かったぜ魔族のバーン君!」
「いやぁ、ボクもまさか攫いたい人物が目の前にいるとは思いませんでしたよ……天才錬金術師フラン。ボクは貴女を攫おうと危険を顧みずに人間領に来たのです」
「……は? え? 私?」
「はい、貴女です」
「おいおい、確かに私は錬金術師だけど、同名の別の人物なんじゃないのか? 高名な錬金術師ってわけじゃないぜ?」
(あれ? 本人の反応的になんか違いそうだけど?)
〈《オレ》も本物のフランを見つけたのは初だから分からないけど……とりあえずどんな物を作れるか聞いてみてくれ〉
「フランは錬金術でどんな物を作れるの? それでボクが探している人物か人違いか分かるんだけど」
「どんな物……」
再び帽子の中をゴソゴソし始めて、ノートを幾つか取り出す。
(これって)
〈ああ、フランの技術ノートだ〉
ノートを開き始めた段階でほぼ本人確定だけど、話を続ける。
「私が作ったものだぜ? うーん、火薬って知ってるか? 洞窟とかにある硝石って物質と硫黄と炭を混ぜた物……アレの研究が錬金術師界隈だと盛んに行われているんだけど、その硝石を錬金術で大量に作り出す方法を作ったり、火薬をもっと高度にニトロって命名した色々なニトロ火薬を生み出したり? あ、人体の万能細胞ってのも作ったぜ! なんか私が作ったのどれも再現できないって、他の錬金術師からヤブ扱いされるんだぜ!」
なんか聞いているだけで意味がわからない単語が色々。
ただ火薬は前に《オレ》が空気から肥料を作り出す魔法で量産できるって言っていた気がするけど……アレの改良版が彼女は作れるってことなのだろうか……。
〈銃の技術が彼女の硝石を量産する錬金術が再発見された後に一気に広まるからな〉
(つまり本来の歴史だとフランは死後に評価された偉人ってこと?)
〈そうなる〉
というか彼女の中では簡単にできることが、周りは高度過ぎてできていないのだろう。
あと、彼女が町に定住して弟子とかを育成できる環境があればこんなことにはならなかったんじゃないだろうか?
「ほら、私じゃないだろ?」
「いや、確実に貴女ですよ。フラン」
「ええ? 魔王軍に狙われるようなことは一切していないんだけどなぁ……」
「あ、別に魔王軍じゃなくてボク個人が貴女を探していたので」
「個人で?」
「単刀直入に言います……生殖器……男根を作り出すことはできますか?」
「だ、男根」
「いえ、チンコです! ボクはそれが欲しいんですよ!」
「ふふ、あはは! 危険を冒してまで潜入した理由がチンコが欲しいからか! 面白いぜバーンは!」
ウンウンと一頻り頷いた後に、
「私ならできると思うぜ。もっとも時間は少しかけると思うけど」
「でしたらぜひボクらの部隊で貴女を保護しますが……なんなら魔族にせっかくだしならない?」
「魔族に?」
「はい!」
ボクは人間を魔族に変える魔法があり、魔族になれば寿命問題も、魔族から迫害されることも無く、堂々と生活をすることができると説明する。
「ここだけの話……海から資源を大量に集めることができる採取の杖っていう伝説のアイテムをボクらは保有しているんですよ。なんなら確実に安全な島を用意するし、好きに研究を続けていいんで」
「それは本当だぜ! とても魅力的なんだぜ!」
フランは目をキラキラさせながら、ボクの話を聞いてくる。
なんなら人間に迫害されていたホムンクルスの集団も保護しているので、感性は近い人が多いだろうし、ネックになっている魔力量が少ないのも、魔族に転生すれば改善する可能性が高いと利点を言いまくる。
「勿論デメリットもある。人間社会からは切離されることになるけど」
「別に切離されたところで痛くもかゆくもないんだぜ!」
「あまりに有益な技術は魔王軍が使う場合もあるけど」
「それは要相談ってことで……とにかく私は定住できる場所と食事や研究素材が確保できるなら魔王軍に寝返るのぜ!」
こんな簡単に引き抜けていいんかとか、フランを見つけるために計画を組んでいた苦労とか……全部吹き飛んだけど、本物のフランをボクらの仲間に誘うことに成功するのだった。