量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
特に残してきた物とかもないとのことなので、瞬間移動の魔法で一瞬でサードアイの集落に帰還する。
「あら、バーン……また人間を連れてきたの?」
「スカーレット」
ちょうど今日の鍛錬が終わりなようで、ヘロヘロになったサードアイ達が地面に転がりながら、木刀を持って教官役をしていたスカーレットが声を掛けてきた。
「また私のように人間に恨みを持っている人?」
「いや、どちらかと言うとサードアイ達のように迫害されていたタイプ」
「ふーん」
スカーレットはフランのことをまじまじと見ながら、手を差し伸べる。
「私はスカーレット。理由あって人間から魔族に転生した者よ」
「あ、これはどうもだぜ。私はフラン。錬金術師をしているんだぜ」
ガッチリ握手をする。
フランはスカーレットの見た目がボクと同じドラゴノイドということで少し警戒していたが、握手はしっかりしてくれた。
「バーン、周りにいる三つ目の種族の魔族達も?」
「彼らが元ホムンクルスだった人達で、今はサードアイって種族になっている……とりあえず隊長のところに行こう」
ボクはフランを隊長のいる屋敷に案内すると、隊長は瞬間移動の魔法を覚える為に、スクエニーに教えてもらっている最中だった。
「おや? ずいぶんと早い帰りじゃないか。人間を連れてきたってことは訳ありかい?」
「いや、なんか運よくボクが探していた人物を見つけてこれたんですよ」
「じゃぁ君が凄腕の錬金術師のフランか……人間にしては若いように見えるが」
「フラン、彼女がボクらの部隊の隊長。差別するようなことは無いから」
フランは帽子を取って、耳を見せる。
「なるほど、エルフ……いや、人間に溶け込もうとしていたということはハーフやクォーターかな?」
「はい、ハーフだけど魔力量が少なくて、人間からもエルフからも爪弾きにされて」
「ふむふむ、それでバーンの話に乗ったと」
「そうなるんだぜ……です」
「ああ、別に敬語が慣れてないんだったらしなくても良い。私も隊長ではあるが小隊の部隊長でしかないからね。今はここの集落の責任者をやっているが」
その後、少し質疑応答をするが、フラン本人は自分が凄腕の錬金術師という自覚が全くないのである。
「本人はそう言っているけど、バーン。君から見てフランの評価はどうなんだ?」
「ボクの考えですが……人間側、魔族側のパワーバランスが大きく崩れる勇者とかより何倍も厄介な人物って認識しています」
「なんで私……そんな過大な評価を受けているんだぜ?」
フランは全くわからないって風である。
「ハーフエルフの寿命を持ちながら、錬金術師として特定の師を持つことなく独学で学んできたが故に理論を整理できずに、自己評価が低くなっているだけで、フランの錬金術技術は数百年先に位置している。既存の錬金術技術を飛び越えているが故に理解されていないだけ」
「そ、そう言ってもらえると……嬉しいんだぜ……」
「まぁ私としても技術力がある才能が増えるのは嬉しい。それに魔族になって魔力量が増えればやれることも増えるだろうからね」
「そ、そうそれ! 魔力量を増やしたいんだぜ!」
あとフランは隊長に自由に素材を使って錬金術の研究をしていいのか聞いていた。
ボクが採取の杖について話しているって伝えると、海の中の素材を大量に集めることができる伝説の杖を保有していて、それはここから離れた離島……エデン島に保管しているって伝える。
「そのエデン島を私達はここの方面軍が負けた時の避難場所にしようと思ってね」
「え? 魔王軍負けるの?」
「ここの方面軍の将軍様は戦術も戦略も理解していない強いだけの人で、その取り巻きも汚職を繰り返しているから人間側がまともだったら……遠くないうちに崩れると私は考えているよ」
将軍様に忠誠を誓っているわけでもないし、自分達は時間をかければある程度強く成れる要素が揃っているから、数年の時間が欲しいとのこと。
「逃げて罪に問われないの?」
「逃げても成果を出せば魔王軍は直ぐに戻れるよ。それに大きな部隊が丸ごといなくなったら問題になるけど、小隊が消えても特に気にされないから」
「人間の軍隊と違うんだ……」
「こっちとしては強くなるための時間と、潜伏生活中が快適に過ごせれば良い。フランは私達が潜伏する島で自由に研究をすれば良い……その代わりに私達がフランを魔族の仲間だと保障するから」
「うーん……まぁ各地を転々とするのは疲れるから定住先ができるのはありがたいんだぜ! じゃぁ仲間になるから、さっさと魔族にしてほしいんだぜ!」
スクエニーを連れて、ボクは隊長の屋敷から出た外に魔法陣を描き、ボクは尻尾を切り落とし、フランに持ってもらう。
そして呪文をスクエニーが唱え始めると、煙がフランの中に入っていき……姿が変わっていく。
「ケホケホ……ああ~おお! 尻尾がある!」
耳が横から頭に移動して、金髪の色と一緒のケモミミが生え、狐の尻尾が3本生えていた。
「化け狐……ウェアフォックスだね」
「なんか普通の化け狐と違って尻尾が3本あるけど」
隊長が魔族に変化したフランを見て呟く。
〈正式には三尾だな。成長するごとに尻尾の本数が増えていく。魔族だ〉
(へぇ……三尾ってことはそこそこ既に強いってこと?)
〈うーん……魔力量は増えているんじゃないか? 〉
《オレ》でもよくわからないらしいけど、九尾になると魔王軍の四天王とかの人達に迫る実力になるらしい。
三尾だとまだそこまで強くはないんじゃないか……とこのと。
「強くなる事に尻尾の数が増えていく魔族だったはず……尻尾が九尾になれば……魔王軍の幹部級の強さになるって聞いたことがあるような……」
「ふふふ……私の時代が来たんだぜ!」
フランは大喜び。
実際、火の玉を作る魔法を彼女が使うと、ボボっと大きな火球が現れた。
「おお、今までは指先に火の玉が灯る程度だったのに! 50倍くらいの大きさに!」
めっちゃルンルンでフランはこれなら誰でも勝てる!
ってボクに模擬戦してって言われたので、隊長立ち会いのもとで武器を使わないルールで戦ってみたが……。
「へぶ!」
尻尾で足払いからの顔を手で押したら頭から地面に倒れた。
「いっつうぅ……」
でっかいたんこぶを作っていたので、治癒魔法で直ぐに治してあげる。
「バーンはこの部隊の副官って話だったぜ! そりゃ強いか! じゃぁ普通くらいの人と!」
まだ諦めてないのかフランは別の人に狙いを定めるが……ウルフにボコボコにされ、エレンにボコボコにされ、最後はサードアイのヒトミに良いようにあしらわれて……。
「わだじは弱い……」
ギャン泣き。
強さにコンプレックスがあったのだろうけど、ここまで弱いと清々しいな。
「別にフランは強くなくてもいいでしょ……戦いの才能が無くても錬金術の才能が凄ければ、ボクらはフランに勝てない訳だし」
「そ、それもそうだぜ! いや! ここまで弱いときっぱり戦いには向かないってわかってよかったぜ! ただ魔力量は増えているから魔法は覚えておいて損はないはずだから、覚えておきたいんだぜ!」
「お、良いよ。今魔法練習していたりする人多いから一緒にやろうか。それと錬金術の技術、フランせっかくなら弟子取れば? 後継者がいたり、手伝いさんがいたほうがやりやすいでしょ」
「それはそう! 隊長さん!」
「フランと相性が良さそうな子を付けるから」
「やったーなんだぜ!」
というわけで錬金術師のフランが魔族になるのだった。
10万文字達成イエイ!
なおまだまだ続きます。