量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
フランはとりあえず住む家が無いので、スカーレットとギムレットの親子が住む家で当面預かってもらうことになり、翌日からボクと共に書庫に籠もって魔法の勉強をすることになったが……。
「これがこうで、こうなって……ふむふむ、こうかな?」
錬金術と魔法は密接に結びついているからか、フランは普通の人が1を覚えている間に5とか10覚えて先に進んでいった。
隊長が苦戦していた瞬間移動の魔法も1日で覚えてしまって、才能の差に隊長も愕然としていたり……。
ボクとスクエニー、一般人代表エレンを並べて基準にすると魔法の覚える速度はこんな感じ。
ウルフ(0.2)
エレン(1)
サードアイの皆さん(2から3)
隊長(3)
ボク+《オレ》(5)
スクエニー(7)
フラン(10)
数字が大きい方が早く覚えられる。
3の隊長も普通の人に比べればだいぶ魔法を覚えるのは早いし、エレンも地頭が悪いわけじゃないし、サードアイの皆も元々ホムンクルスが強化人間ってことを考慮すると、普通の人間は0.5当たりだろうか。
魔族の普通がウルフであることを考慮すると隊長は普通に優秀だし、それを凌駕しているスクエニーが魔族としてはヤバい。
フランの学習速度は化け物である。
ただその分フランとスクエニーは近接攻撃が苦手なのでバランスは取れているのかな?
「僕の長所がフランに取られる……」
「大丈夫、スクエニーの方が魔法を教えるのは分かりやすいから……フランは本職の錬金術については説明できるけど、魔法は色々省略して感覚で覚えているっぽくて説明できないから……」
魔法覚えるの早いけど、フラン説明が下手。
錬金術のことはある程度独自の体系化をしていたから弟子を付けてしっかりフランのことを理解すれば覚えられるだろうけど、魔法の習得は天才のそれ。
色々すっ飛ばして覚えていて、他人に教えるのは無理だろう。
まぁ朝のランニングで毎日ヘロヘロになっているけど。
「魔族の食事って期待していなかったけど美味しいんだぜ!」
「まぁサードアイの人達が殆ど料理作っているけどな」
「へえー」
昼食を食べている時に何気なくフランが絡んできた。
ライススライムから取れるお米を興味深そうに見ていたり、スプーンとフォークを使って肉と一緒に食べているが、フランの横で食べていたヒトミが、
「あらあら、でも料理に関してはバーンさんがこの部隊の中で一番上手よ」
ってなんかボクを褒めてくれた。
フランが興味深そうにこちらを見てくる。
「料理は錬金術に通じているから、美味しい料理が作れるのは錬金術師の素質がバーンにはあるんだぜ!」
「うへぇ!」
それはボクではなく《オレ》の方だろう。
ボクは《オレ》の言われたことをやっているだけだし……。
〈まぁ錬金術はどうだろうな? 作れたら面白そうな物は幾つか考えあるけど……それとせっかくだからフランにアサルトライフルと女神のパンツとか伝説のアイテムを渡しておけ。上手くいけば似た性能の品を量産してくれるかもしれないから〉
(了解)
「ほほう……これはこれは……」
伝説の品の数々を見せると興味深そうに見ながら、これとまるっきり同じ品はアサルトライフルの方はできるだろうけど、女神のパンツは難しいだろうって言われてしまった。
「このパンツの素材がまず私の知っている錬金術で作れない。劣化コピーなら作れるだろうけど」
「それでも全然いいんだけど……」
「ふむふむ……書庫にある魔法を全部覚えたら錬金術の方を進めるから、それまで待ってくれるかい?」
「それは別に良いけど、ボクのチンコも作ってよ」
「ああ、勿論! ただここの書庫でホムンクルスの作り方の魔道書が見つかったから、これを応用すればもっと簡単に高性能な品が作れるかもしれないから待っててほしいのだぜ!」
「それは……しゃーないか。了解!」
「ふふ、まぁ期待を裏切らない一品を作り出すんだぜ!」
ある日のこと、ボクはスカーレットの鍛錬に参加していた。
近接戦闘をより強くするためのトレーニングである。
部隊で一番近接戦闘が強いスカーレットと組手を行う。
ボクは三日月の盾を手に持ち、片手はフリーにしておく。
対してスカーレットは小さい盾と片手剣の人間の兵士にとっては王道スタイル。
マーキングをした石を投げて、スカーレットが避けたのを確認すると、瞬間移動で距離を詰めて、盾を持たない右手でスカーレットの体に触れてマーキングを付けようとすると、スカーレットは尻尾で足払いを仕掛けてくる。
盾の死角になっていて見えずに、ボクはすっ転ぶと、スカーレットが木刀を振り下ろしてくる。
翼を弾いて横に飛ぶと、《オレ》が目眩ましの炎魔法を放つ。
ボワッとスカーレットとボクの間に炎の壁ができる。
その瞬間、スタート地点に付けたマーキングに瞬間移動を行う。
ボクのいた場所には木刀が一閃されていた。
(危ない危ない)
〈アシストはしてやるから1手ずつ詰めていくぞ〉
(おう!)
盾を構えながら突っ込む。
スカーレットはそれをひらりと避けて、裏拳の様に木刀を振るうが、盾を投げ飛ばして、剣を弾く。
スカーレットの体勢が崩れた瞬間に、盾の場所に瞬間移動をして体勢の崩れたスカーレットの脇腹に拳を叩き込む。
「かはっ!」
ゴリっと鈍い音ともに、スカーレットの体が吹き飛ぶ。
尻尾で受け身をとって、側転の感じで体勢を整えるが、脇腹を押さえて蹲る。
「そ、そこまで」
審判をしていたギムレットが慌てて制止する。
ボクは直ぐにスカーレットに近づいて治癒の魔法をかける。
「瞬間移動の魔法がキツすぎるわね……マーキングされた物が無数にあるから警戒できる許容量を超えるわ。瞬間移動の魔法を知っていてこれだから、初見じゃぁ対処できる人は相当少ないわね」
治癒魔法を掛け終わって、手を差し出すと、スカーレットは手を取って立ち上がる。
息子のギムレットが、
「大丈夫、お母さん!」
って心配そうに抱きつくが、スカーレットは笑いながらポンポンと頭を撫でる。
「大丈夫、お母さん強いから」
「いや、しっかし……魔法を使いながらだったから勝てたけど、近接の武芸だけだったら勝てないな……」
「筋はいいんだからもっと鍛錬を積まないと駄目ね。魔法ばっかりじゃなくて、武芸の練習の比率も上げないとね!」
「はーい」
それを見ていたスクエニーがボクの腕を握って、
「スカーレット! バーンは僕が魔法を教えるんだから!」
「あらあら、仲がいいわね……というかスクエニーも武芸に少しはやる気を見せなさい。あなたも瞬間移動の魔法が使えて、バーンと似た戦い方ができるんだから。逃げの手段だけに使うのはもったいないわよ」
「うぐ……精進します」
スクエニーも言われてるな……。
なんとなく今の僕の強さの立ち位置みたいなのを確認しながら、その後は木刀を持って盾を持ちながらの素振りを繰り返したり、盾や木刀を背負ってマラソンをサードアイの皆と走ったりして汗を流すのだった。