量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
寝る前にボクは《オレ》に聞く。
(ボク達は避難に成功したわけだけど、魔王軍……いや、魔王様の身に何かが起こるのって結構近い未来なの?)
〈そうだな……5年以内だな〉
(5年以内……思ったよりも早いね。幹部の皆さんは生き残るんでしょ?)
〈大半は……な〉
《オレ》によると魔王軍が壊滅する理由は魔王様が居なくなったことによる各方面軍の軍閥化によるもので、魔王様が居なくなってから15年かけて、新しく魔王を名乗るに相応しい人物が出てきて、第二次魔王軍結成って流れになるのだとか。
(それだと人間側に魔王軍は押し込まれるんじゃ?)
〈元々人間領だった場所の大半は解放されてしまうな〉
(それじゃあ……)
〈大丈夫。ここには人間は来ないし、魔王軍のゴタゴタにも巻き込まれない。正直言うと魔王軍への再度の参加は第二次魔王軍が結成されてからで構わない〉
(うんうん、それは理解したけど……魔族の初期領地って人間の国1つと同じくらいだけど……それで減った兵力で立ち向かえるの?)
〈内戦で魔族の質は上がる。量産兵の技術力も上がるからな。ただ人間側は銃で武装するから雑魚兵が肉壁にしかならなくなるからなぁ〉
とりあえず、ボクは定期的に戦局の情報を仕入れなければならないから、《オレ》の言うことは聞いておくのだった。
翌日、フランに言われていたから錬金術を行う部屋を見に行くと、砦近くに畑を作るために切り倒された木々を木材に加工し、それで小屋を作ったらしい。
そこそこしっかりしていて、住もうと思えば住めそう。
「どうだぜ! 私のアトリエは!」
「結構しっかり作ったね。ヒトミが手伝った感じ?」
「そうだぜ、ヒトミと私、あとジンやポークにも手伝ってもらったぜ」
近くに居たポークがドヤ顔をしている。
体は小さいけど、パワーは人一倍だからな、ポークは。
「でだ! 昨日頑張って作ったのがこの錬金釜!」
そこには純金製の大きな錬金釜が鎮座していた。
中を覗くと紫色の液体で満たされている。
「ふふふ……この世の錬金術師が一度は夢見る金でできた錬金釜だぜ!」
錬金術は金を作り出す学問であるが、触媒とするのは金を使うのが一番効率が良いのだとか。
海水から金を採取の杖を使って大量に集め、それを魔法を使って成形していって……ってので錬金釜だけでなく、釜の中をかき混ぜる棒とかも金で作ったらしいが、人間では扱えないくらい重くなったのだとか……。
「魔族になっておいてよかったぜ! 人間では到底扱えない代物だぜ!」
確かにかき混ぜる棒を借りてみたけど、結構ズッシリくる。
「さてさて、錬金術でガンガン作っていくんだぜ! まずは……各種スライムから食料をちゃんと集められるようにするんだぜ!」
はい、天才が動き始めた。
まずは海底で眠る石油なる資源を回収して、それを錬金釜にシュート。
するとフランの頭の中で描かれた図式に基づいて物質が生成されていく。
丸まった半透明なシートの束が出てくる。
〈プラスチックだな。初っ端から凄いの作るな〉
(《オレ》は知ってるの?)
〈《オレ》の世界だとありふれていた物だな〉
フランは他にもキューブみたいな物を作り出すと、それを持って、ジンが更地にした場所にキューブを置いて水をかける。
すると、キューブは一気に膨張して縦に長いテントの枠組みとなった。
これに先ほど作った半透明なシートを被せると、ちょっとしたテント……《オレ》によるとビニールハウスなる農業用の設備ができてしまった。
天井にヒトミが作ったスプリンクラーの魔道具を取り付けて、栄養たっぷりの水を撒けるようにして、その中に枠を作って、枠の中に食用スライムを入れていく。
これで簡易的なスライム養殖場の完成である。
肥料を含んだ水を与えることで、スライムはより早く成長する。
何なら小さな檻にすることで、穀物系のスライムは、はみ出した分が穀物として回収することができたり。
もしくは分裂することを前提に大きめに枠を用意しておいて、分裂した分を精米機や製粉機にぶち込むとスライムは粉々になってお米や小麦粉に早変わり。
というやり方もあったり。
ビニールハウスにしてあるのは気温の変化や潮風を浴びてスライム達が弱らないようにするためである。
「フラン……初っ端から凄いの作ったね」
「いやいや、まだまだこんなもんじゃないぜ! スライムだけじゃなくて普通の作物も土を使わない水耕栽培にすることで、畑を耕すよりも効率的に作物を収穫できる様にするんだぜ!」
勿論サードアイ達の行っている従来の農業も並列して行うが、水耕栽培だと塩害が完全に防ぐことができるし、連続して成長促進の魔法を使うと土地が痩せてしまう問題を解決することができる。
フランの錬金術と新しい農業のやり方、魔法を組み合わせることで、島の食料問題の大半が解決してしまったんだけど……。
(これが本物の天才……)
〈というか水耕栽培のシステムが稼働したらさ〉
《オレ》が言うには空気と海から作物が必要な肥料は作り放題。
水も海から作り放題。
光源は魔力を込めれば点灯し続ける技術が砦で使われているし、それはフランがもう解析済みだから再現可能。
水耕栽培だから地面という面の制限がなく、積み上げることで立体的に場所を活用することが可能。
そこに作物を成長させる魔法を使えば……無限収穫が可能ということである。
(足りない肉とかはスライムでなんとでもなる……というかサードアイの村で豚や鶏とかは居たから、それ持ってきているし……地下でミルクを生み出すスライムとかチーズを作り出すスライムとかもいたような……)
はい、食料問題ほぼ解決でございます。
恐ろしいね……。
フランが陣営のバランスを壊す天才っていうのをまざまざと見せつけられたけど、おかげで食料についてはなんとかなりそう。
あとは羊毛が生えるバロメッツっていう植物の魔物がいるんだけど、一応分類としては木綿に近い。
毛を剃れば数日後には再び生え揃っているし、外敵が居ないので、エデン島では結構な数が増殖していて、ジンの指示で移植。
柵で囲って、バロメッツの餌になる雑草を生やすグリーンスライムを一緒に解き放てば、バロメッツは個体を増やし続ける。
それにバロメッツは食べることができて、果肉は蟹の様な味がするのである。
そんなバロメッツを使えば上質な糸や布を量産できるってフランは言っていたが、直ぐに糸紡ぎ機と機織り機を作り出して、魔力によって半自動で動くようにしてしまった。
最初のうちは服にしたり、寝具やクッションやソファ、絨毯を作ったりして消費していたけど、明らかに生産量の方が多く、今はフランの錬金術の素材になっていた。
錬金術で加工すると収納袋になるからね。
フランの技術力と高品質な布を使うと、収納袋の品質も上がり、内容量50倍、保存性向上、内容量に対して重量を100分の1にみたいなことが普通にできて、今はもっぱら肥料や海から採れる物質の保管に使われていて、フランのアトリエの隣に倉庫が出来上がってしまった。
そんな感じで、なんか一気に生活が豊かになるのだった。
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