量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
行きと帰りで3日ずつ……6日間かけての作戦でボクらの部隊は半分の15人になっていた。
途中で合流した者、基地に着いたらちゃっかり先に戻っていた者……ただし残りの15人は数日待っても帰ってこなかった。
ウルフさんはいつものことだという。
「これでも隊長の部隊は生還率が高いことで評判だぞ」
ボクはそういうものなのかと納得していたが、《オレ》の方は自前の知識では魔王軍側で半数戻ってくるようなら十分優秀な隊長だと言ってくれた。
〈人間側は激戦や罠にハメられたでもなければ9割は生還するんだがな〉
(魔王軍の損耗率は高いと)
〈その分お前みたいに量産兵が作られるんだろうな。あと魔王軍でも弱い魔族は出生率が高い。早く生まれ、早く育ち、早く戦力になる。その分数が揃えられるってわけだが……〉
ボク達の小隊にもゴブリンとかスライムとかの弱い魔族は複数いたが、そいつらは言うことを聞かなかったからほぼ使い潰された。
(テントの中が少し広くなったな……)
営舎のテントも人数が減って8人だったのが今は6人となっていた。
「おいドラゴ」
「は、はい! ウルフさん!」
「戦利品あるんだったら商人に売りに行くぞ」
「あ、はい!」
ウルフさんや他の帰還した隊員の皆さんと一緒に基地の中にいる商人達に戦利品を売りに行く。
〈魔道書以外と十字架のネックレス以外はうってしまっていい〉
(十字架のネックレスは何かあるの?)
〈ゲームでは治癒の魔法の効果を少し上げる効果があった。気休めかもしれないが、買いたたかれるくらいだったら身につけておけ〉
商人のいるエリアに行くと、人だかりができていた。
多くの魔族は馬鹿なので、計算ができない。
商人達もそれが分かっているから物々交換で食料や傷薬とかを兵に提供する。
女の魔族……サキュバスとかインキュバスとかは体を提供したりもするのだとか。
ボクは無性だから必要ないけど。
〈いつか子供作れるようになると良いな〉
(そんなに気持ちいいものなの?)
〈気持ちいいぞ〜〉
ボクにはわからない感覚だな。
《オレ》に、
「とりあえず魔石だったら大抵の物だったら交換してもらえるから、《オレ》の言う通りに買い物をしてみろ」
って言われた。
人間は金や銀、銅をコインにして通貨として使っているがそれは魔族も一緒。
頭が使える魔族は硬貨を使って取引をするが、前線基地は通貨の流通量が少ないから物々交換が基本だと近くにいた隊長が教えてくれた。
「ドラゴは何を買うんだい?」
「とりあえず……収納袋でも買おうかと」
「ほお……いい選択だと思うよ。質の高いものは交換できないかもだけど、そこそこの品だったら交換してもらえるんじゃないかな?」
隊長はそう言ってくれて、ボクは収納袋を扱っている商人を探すと、あの〜って声をかけられた。
悪魔族……デビルともいうか。
角が生えていて、細い尻尾に比較的整った容姿が特徴的な……。
でも話しかけてきたデビルは……なんというか自信がなさげというか……。
デビル族にしてはおっぱいが大きかったり、目の下に大きな隈があったり、自慢のハズの角が片方が折られて包帯が巻かれていたり。
「新人さんですよね?」
「あ、はいPL358番……いや量産型ドラゴノイドで周りからはドラゴって呼ばれてます」
「ドラゴさん……量産型……なるほど。いや、実は僕も似た感じでして……」
話を聞くと、彼女……周りからはサキュバスとデビルを混ぜたデバスと呼ばれているらしい。
ボクは研究所の装置で生まれてきたが、デバスは人間と悪魔のハーフで、魔族を増やすための収容所で生まれてきた存在なのだとか。
兵としてこの地に派遣されたが、戦果を出せずに人間にボコボコにされてなんとか基地に帰ってこれたけど、角が折られたせいで魔法が上手く使えずに、回復するまでは商人の真似事をしながら補給兵として振る舞っているのだとか。
「何か交換します? 補給兵は待遇が悪くて……」
「何があるか見せてもらっても良い?」
「見ていってくれますか!」
ぱぁと表情が明るくなって、手を繋いで彼女のテントに案内してくれた。
〈この子……仲良くしておいた方がいいかもしれねぇ〉
(そうなの?)
〈たぶん第三次魔王軍の幹部スクエニーだと思う……だいぶ知っている容姿に比べると若いけど〉
(第三次魔王軍?)
〈あー、魔王軍って何度か壊滅するから〉
(ええ!?)
《オレ》によるとゲームという物語だと人類と魔王軍の戦いはナンバリングというシリーズに分かれていて、勇者によって度々魔王が討伐されるのだとか。
〈勇者は魔王軍にとって災害みたいなもんだから、選択によっては防ぐこともできるかもしれないがな〉
(そうなの?)
〈勇者も人間だ。幼いうちに倒してしまったり、年老いてしまえば強くなても倒せる……魔族は強くなれば寿命すらも無くすことができるから……まぁこの話はよいとして、この今はデバスと呼ばれている目の前の子は将来魔王軍幹部にまで成り上がる〉
(この子が……)
服の合間から包帯が所々見えていて、いかにも雑魚そうなのが……。
「これが僕が出せるものなのですが……」
だいたい補給品の横流し品がほとんど。
「収納袋あるじゃん」
「あ、はい。普通の袋の10倍は入るかと……重さが粗悪品でして、3分の1にが軽減できませんが」
《オレ》によると内容量は100サイズの段ボールなる箱10個分くらい。
これくらいって脳内にイメージを送り込んでくれた。
粗悪品だからデバスでも取り扱えたのかな?
「とりあえずこれで買えるかな?」
ボクは魔石を幾つか渡すとデバスは喜んで、
「は、はい! あ、これだけくれるんだったらこれもつけます」
デバスはまだ育ってないミートスライムの塊とサバイバルナイフを付属として付けてくれた。
「これだけあれば治療費に充てられそうです」
「また顔を出してもいい?」
「はい! ドラゴさん! お待ちしています」
買うものを買って、ボクはテントでミートスライムに水を与えてから、魔道書を読み始める。
とりあえず治癒魔法の魔道書から読んでいく。
(ファイヤーボールよりも魔法の仕組みが複雑……覚えられるかな?)
〈ドラゴノイドだから才能的には覚えられるはずだ。《オレ》がお前に分かりやすくイメージを送るから頑張ってくれ〉
(うん、《オレ》にファイヤーボールを覚える時もわかりやすかったから……頑張って覚えるね)
〈治癒ができれば隊長もお前を重宝してくれるはずだから……頑張るぞ〉
(うん!)
ボクと《オレ》は2人で治癒魔法の魔道書を読みながら勉強を続けていくのだった。
その練習で助かったのはデバスがくれたミートスライムだった。
ナイフで傷を付けて、そこに治癒魔法をかければ徐々に肉が盛り上がってきて傷を塞いだり、肉を削っても、すぐに回復したり……。
練習の教材として習得の助けになるのだった。