量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
部隊員の補充が終わるまで、ボクは《オレ》と一緒に治癒魔法の練習を続けること1週間……ミートスライムではこれ以上の練習にはならないだろう……というところまで覚えることができた。
〈よし、これなら他の魔族にやっても大丈夫だろうが……せっかくだしデバスに治癒魔法をかけてやろうか〉
(好感を稼ぐため?)
〈それもあるが、デバスが取り扱っている物資の横流し品でも掘り出し物はあるし、《オレ》達が知らない時に売りに出された物を買っておいてくれるかもしれないからな〉
(なるほど……)
というわけでデバスのテントを訪ねた。
「デバス元気?」
「あ、はい……ドラゴさんですか……元気……ではないですね……」
なんか前よりもボロボロになってないか?
「どうしたのデバス……傷が増えているよ!」
「いえ……売る品が少なかったので補充しに行ったら乱暴されただけです……いてて」
ボクはすぐにデバスに近づくと、治癒魔法をかけてあげる。
「暖かい……治癒魔法……ですか?」
「うん、この前覚えたの。デバスとは仲良くしたいから、練習台として治癒を受けてくれない?」
ボクの言葉にデバスはポロポロと涙を流し始めて……、
「や、優しくされたことがなかったので……どのように恩を返せばいいか……分かりませんが……」
「いいよ、ボクも練習しているだけだし」
青痣になっていた部分が綺麗になっていく。
これで多少は痛みが引くはずだ。
「体でしか返せませんが……」
「デバス、ボク生殖器無いからそれ言われても困るんだけど……」
「あ……え?」
デバスはサスサスとボクの股を触ってくる。
排泄用の穴はあるけど棒は無い。
「ほ、本当だ……てっきり体目当てかと」
「失礼な。やましい気持ちはないよ! 友達として助けたいだけ!」
そう言うと、デバスは笑顔になり、より仲良くなることができたかもしれない。
「デバスは角が治れば魔法が再び使えるようになるの?」
「あ、はい……たぶんそうです」
「治癒魔法で治るかな?」
一応かけてみるが、かけている部分が丸みを帯びたくらいで、1回では完治とはいかないっぽい。
「駄目かー」
「いえ、魔力の流れを感じられるくらい良くなったので……無駄では無いかと」
「そっか! 無駄じゃないなら良かった。デバス」
「は、はい!」
「また遊びに来ていい?」
「え、ええ! もちろんです! お待ちしてます!」
練習と称して、デバスの治療を始めるのだった。
暇な時間は筋トレをするか、治癒魔法の魔道書とは別の禁書の魔道書の解読を続けていた。
解読の方は難航していたが、筋トレの方は本当にちょっとずつだけど力が付いてくるのが分かる。
1週間前までは腕立て伏せ500回でへばっていたのが、今は700回でへばるくらいにちょっとずつ成長している。
〈人間換算だと大きな成長何だけどな……元にドラゴン入ってるから成長力が半端ないな〉
(ただ《オレ》が居なかったら進んで鍛えるとかも考えなかったから……強くなれているのは《オレ》のアドバイスのおかげだよ!)
〈そ、そうか? ……ちょっと照れるな……〉
脳内で会話していると、隊長がボクの様子を見に来た。
「お、今日もやってるね!」
「こんにちは隊長。兵員の補充の方は順調ですか?」
「うーん、ぼちぼちかな? ゴブリンやスライムと言った下級兵が多そうかな」
「ありゃりゃ……」
「まぁ次の作戦までに数は揃えられるんじゃないかな」
「じゃあそれまでにボクも頑張って鍛えますから」
「うん、そうしてくれ……皆がドラゴみたいに勤勉だったらどれほど良かったか……量産兵を受け取ったけど、あれは駄目だね……知性を感じなかった」
隊長によるとドラゴノイドとは別の量産兵を受け取ったらしいが、指示しないとろくに動かないため、戦場で暴れさせるしか使い道がないとのこと。
「生産する場所の違いかな? いや~ドラゴの研究所は質が高かったみたいだね……」
「生産者のロゼリー博士は天才だったので!」
「ぜひともそのロゼリー博士が作る個体を部隊員にしたいよ……いや、ドラゴより弱くても良いから言うことを聞いてくれて、自分で考えて動ける個体だったらどれほど楽になるか……」
「あはは……」
隊長も苦労してるなー。
「とりあえず、次の作戦はうちの部隊だけじゃなくて、複数部隊合同になりそうだから、筋トレは良いけど、作戦時に筋肉痛で動けないってのはやめてくれよ」
「了解です」
隊長はそれだけ言うと、基地長のいるテントの方に歩いていくのだった。
(筋肉痛って言っても、ボクは治癒魔法ですぐに治せるんだけどね)
《オレ》によると、筋トレをすると筋肉が傷ついて、それを回復するときに、前よりも強い筋肉を作る超回復という現象が起こるのだとか。
ボクも筋肉のある生き物なので、それが効くらしく、筋トレして治癒魔法で回復して、再び筋トレしてを繰り返せば……筋肉がどんどん強くなっているんじゃないかな?
たぶん《オレ》は自主的なトレーニングの効率を良くするためにも治癒魔法を覚えさせたんだろうけど。
〈もうちょっと魔石か金が手に入ったら、能力を下げる代わりに筋力や脚力が上がりやすくなるギプスって魔道具を購入すれば、更に成長できるから頑張ろうな! 〉
(うん!)
筋トレをするとお腹が空く。
一応配給で3食提供されているけど、最近は足りなく感じていて……デバスから貰ったミートスライムを削って、ボクの尻尾に置いてから尻尾の温度を上げる魔法を使えば、1人焼肉。
ミートスライムは水と治癒魔法を使えば1日に豚1頭分くらいの肉を生み出してくれるので本当にありがたい。
おかげであんまり頭が良くない魔族とミートスライムの肉を交換して岩塩の塊とか、ハーピーからは自分が生み出した卵をもらったり。
もちろん隊長のではないよ。
同族が卵を大切にしないのを見て隊長は、
「はしたない……」
って軽蔑な目で見ていたし。
それをボク達兵士が食べるのには何も感じてないらしいけど。
そんな感じで自分の力で食べ物を生み出せる魔族とかとミートスライムの肉と交換。
あとデバスに頼んで鉄製の盾を譲ってもらって、それを鉄鍋代わりにして、尻尾を熱源に肉や卵とかを焼いて部隊の人達に振る舞っていたり……。
「はぁ……考えたなドラゴ」
「ボクもこんなに上手くいくとは思いませんでしたよ」
焼けた肉を摘み、ウルフさんの木皿に移す。
他の隊員……特に配給の量が足りてないと感じていた兵士達はボクの周りに集まって、よく飯をたかっている。
食べても良いけど、作戦で金目の物か魔道書とかあったら譲ってくださいって言ってある。
ウルフさん達部隊の古参達はそれを了承してくれている。
ちょろまかそうとするやつはウルフさんが牽制してくれるので、新人ながら、ボクは確固たる立場を手に入れられたんじゃないだろうか?
「たぶんドラゴはすぐに俺達を追い抜いて強くなるよ」
「そうそう、隊長の話についていけるってことは頭もいいだろうし!」
「偉くなったら俺達も引き上げてくれや! ガハハ」
ウルフさんだけでなく、カバの獣人の人やオークの人が笑いながら肉を食べていく。
「ボクも早く偉く成りたいですよ……でもそのためには強くならなくちゃ……」
「いっぱい食べて大きくなれよ!」
「はい!」
まぁ焼いてるのボク何だけどね……。