量産兵のボクにチートなアドバイザー(オレ)がつきました 作:星野林(旧ゆっくり霊沙)
ちょっと一緒に研究しているデバスも呼んで欲しいって言われて、ボクは翌日デバスを連れてサキー隊長の元に向かった。
「僕何かしちゃったかな?」
「いや、たぶん人を魔族に変える魔法について知りたいだけだと思うよ」
デバスを落ち着かせてから隊長のテントに入る。
「サキー隊長、連れてきました」
「うん、入ってくれ」
「失礼します」
隊長の部屋に入ると、幾つかの書類と作戦とかで使う駒がテーブルに山積みされていた。
「よく来てくれたね……えっと、ハーフデビルのデバス君だっけ?」
「は、はい。デバスって周りからは呼ばれています」
「よしよし、じゃあ2人から人を魔族にする魔法について教えてもらおうか」
デバスが魔道書を見ながら説明をしていく。
・人間の肉体、及び魂と魔法の触媒にする魔族の血肉が必要
・人間の肉体と魂、触媒にした魔族の血肉によって魔族化した人間の初期の強さが決まる
・人間の時と同等の知能と知識を魔族化した者は持つ
・触媒に使った魔族に服従する
「ふむふむ……これは使えるね」
「治癒魔法も使えるので、ボクの尻尾の一部でもナイフで切って使おうかと思ってました。痛覚があんまり無い部分なのでそんなに痛みとかもないですし……」
「ふむふむ……バーンだったらドラゴノイド……ドラゴンと高位魔族の遺伝子を含んでいるから強力な魔族を作り出せることができるってことかな。とりあえず……最初は名付けができる範囲で運用してみるか」
「名付けですか?」
「うん、バーンも名前がもらえたことで魔族としての格が上がっただろうから、どれくらいの人数か分からないけど、名付けができるようになると思うよ」
(そうなの? 《オレ》)
〈ん? たぶんそうだな……最初は5人か6人くらいだと思うぞ。名付けられる魔族の数が多くなればなるほど魔族としての格も上がっていくとみていい〉
《オレ》によると5人から10人で魔王軍の大隊長クラス。
10人から20人で基地長クラス。
30人以上名付けられれば魔王軍直属のエリート兵クラスになってくると教えてくれた。
幹部とか四天王とか言われるような人達は1000人単位で名付けができるとのこと。
魔王様は数万人単位に……らしい。
「別に名前を与えなくても主従関係で縛ることは可能ですよ」
「うん、それはそうなんだけど、今のバーンが扱い切れる人数って5人前後だと私は思うんだよね」
デバスの問いにサキー隊長はそう答える。
それに……と隊長は言いながら、
「デバス君、君も兵役復帰の書類が数日後に届くことになっていた」
「え? 僕負傷兵として復帰は当面先ってことになっていたかと……」
「そうなんだけど、今回の敗戦で兵士が不足しているから、負傷兵でも頭数を揃えないといけなくてね」
「なるほど」
「そこで私の部隊に復帰させようかと思ってね。バーンも見知った子がいた方がいいでしょ。あと人数減って営舎余ってるから2人で広い営舎使って良いよ」
「本当ですか!」
それは素直に嬉しい。
申し訳ないけど負傷兵だらけの今のテントの雰囲気暗いし、8人から10人定員のテントを2人で使えるのはありがたい。
ウルフさん達も広く使えるほうがゆっくりできるだろう。
「個人のテントは小隊の隊長にならないと持てないけど、今だったら書類をいじってどうにもできるからね。とりあえずそのテントで魔族化の研究を進めておいてくれると助かる」
「わかりました。デバスもそれでいい?」
「う、うん。サキー隊長。そんなに厚遇してもらっていいんですか?」
デバスはちょっと不安そう。
ボクは手を握って大丈夫って呟いてあげる。
「警戒させちゃったかな? 私としては弱くても頭が使える部下が欲しい。金銭管理や交渉をしながら物資を引っ張ってくることができるだけでも私としてはありがたいし……それに今は戦闘能力が低いかもしれないけど、強くなれる素養はあると思うんだよね。今ちょっと喋った感じでも」
サキー隊長はデバスのことを買っていた。
デバスもそこまで言われるのでしたら、期待に添えるように頑張りますと編入手続きの書類に血印を押して、ボクと一緒の部隊に組み込まれるのだった。
「ここが新しいテントか」
サキー隊長は前に隊員が使っていたテントを使って良いって言ってくれたが、使い方が荒かったのか、所々穴が空いていたり、枠組みの木材が腐っていたり。
「デバス、テントの材料調達手伝ってくれるか?」
「はい! 中にある他の隊員の遺留品を売ってしまえば材料費にはなるかと」
「隊長からも許可が出ているし、撃ってしまおう。そんなに大金にはならないだろうけど……」
デバスが遺留品で売れる物かゴミを仕分けて、すぐに商人仲間と掛け合ってもらうと、他の部隊も空きテントが多く出ていて、テントの素材は安く出回っていた。
それをボクが運んで、テントの枠組みからほぼ新築で建て直していく。
木がしっかり刺さるように深めに穴を掘って、木の柱を立てる。
円形に柱を建てたら土嚢で壁を作っていき、壁を埋めたら、中央の支柱と側柱を木で繋いで枠組みを作り、厚い布を覆い被せる。
これで移動住居ことゲルの完成である。
あとは材料費が安かったので、思った以上に素材が買えたから、床に木の板を敷き詰めて、その上に絨毯を何枚か重ねた。
テントの周りに溝を掘って雨で泥だらけになるってことはこれで防げるだろう。
「思ったよりも立派なテントになったね!」
デバスも尻尾をブンブン振って興奮気味。
それに毛布も余っていたから中古品だけど数を集められたから、毛布1枚じゃなくて、木枠を組んで即席の寝台……ベッドを作って、その上に毛布を何枚か敷くことで背中が痛くならなくて済む。
ボクの場合は寝台の腰あたりに穴を開けることで尻尾がぴったり入って寝やすく工夫したり。
「ふかふかだぁ……こんな贅沢してもいいのかな〜」
「良いんじゃないか? その分魔法を早く覚えて成果を出そうぜ」
「おー!」
こうしてボクはデバスと一緒の新居生活が始まるのだった。
それから数日間、ボクはウルフさん達の治療をしたり、隊長から水を生み出す魔法を教えてもらったり……デバスは隊長から物資調達だったり、ボクが頼んだ略奪品の売却を頑張っていた。
必ず4から5時間空き時間ができるので、その時間で魔道書の解読や禁術習得を行なったりしていたある日……名付けられたことで体に魔力が循環して成長したのがわかった。
「んん? おお?」
朝起きると何だかテントの天井が近い気がする。
「ばばば、バーン! 大きくなってるよ!」
デバスにそう言われて、水瓶て顔を確認してみると、今までは幼さが目立っていたけど、人間で言うところの15歳から18歳くらいの青年の姿に変わっていた。
顔立ちは中性的なままだけど……。
「なんか力が湧いてくる感じがするし……今までよりも魔法が使いこなせそう。デバス、頭を出して!」
「こ、こう?」
ボクはデバスの折れた角に手をかざして治癒魔法をかけると、みるみると角が折れてない反対側の角と同じ大きさに治っていった。
「え? え?」
デバスはペタペタと角を触ると元に戻っていることに喜んでボクに抱きついてきた。
「バーン! ありがとう! これでまた魔法を使うことができるよ!」
「どういたしまして……あと今のボクならたぶん名前が付けられると思うけど……デバスに名前を付けてあげる」
「え……いいの? 私に名前の貴重な枠を使って……」
「うん、デバスも強くなってほしいからね」
〈名前はスクエニーにしろよ〉
(わかってるよ)
「デバス、君はこれからスクエニーだ!」
「スクエニー……うん! 僕の名前はスクエニーだね!」
こうしい生活が始まるのだった。