泥蓮転生-ドロドロータスリインカーネーション- 作:環状線EX
二人でのおつかいの際にどうやって袋の中身を見るか。
そんなことを考えて最近は過ごしている。
魔法についてもいろいろと試しては居るものの、これと言っては成果はなく、現実的に達成できそうな袋の中身の確認を第一目標に掲げていた。
ただ、誰と行くか。
この一点が俺の思考を停滞させていた。
大きく分ければ、スガレか、他の子どもたちか。
スガレであれば、多少のことには目を瞑ってくれる可能性はある。
その反面で、事態がバレた際に彼女も共犯になってしまう。
彼女には多くの面で助けてもらっている関係上、あまり不義理なことはしたくなかった。
そして、他の子どもたち。
これについては、正直共犯になってしまったときでも、比較的心が痛まないという自分勝手な理屈だ。
この点に関しては、俺に嫌がらせをしてくる彼らが疑われようと特に思うところはない。
子供のすることであるが故に、そこまで悪感情はないものの、彼らを痛むほどの気持ちもなかった。
ただ、彼らの内の誰かとおつかいに行った場合、バレるリスクは大幅に上昇する。
と言うより、バレることを前提に動く必要があるだろう。
基本的に彼らは俺に袋を渡さないだろうし、こちらに袋があったとして目を離すことはないだろう。
故に、一番のネックは彼らの監視だった。
ただ、幸運と表現していいのかは分からないが、都合よくその障害が取り払われる事態に遭遇した。
「残飯野郎を誘って、袋の中身を開けるんだ」
それを聞いたのは偶々だった。
リーダーとカタバが属す子供たちのグループが円になってコソコソと話をしているところを目撃したのだ。
丁度俺のいる場所は木々の死角になっているようで、気付かれることはない。
「それで、大人たちにアイツが袋を開けたってバラすんだ」
それは、俺を嵌めるための策だった。
彼らは俺に袋を開けさせるように仕向けて、その上でばらすつもりだったらしい。
そうすることで、合法的に痛めつけると言う魂胆なのだろう。
とは言え、こちらにとっても渡りに船。
存分に利用させてもらうことにしようと考えた。
彼らの作戦では、俺と選ばれた子供の内誰が一緒になっても同様に作戦を実行するらしい。
故に、俺さえ選ばれて、もう一人にスガレが選ばれて一緒になることになければほぼ確定でそれはなされる。
「オイ、つかいだ!」
俺としても早く袋の中身を知りたいところであったため、比較的見えやすい位置に陣取っていた。
ただ、初めに指名されたのはカタバだった。
カタバは作戦について考えでもしていたのか、一瞬反応が遅れるも「っ……はい!」と返事をした。
正直まだ一人目の段階だ。
別に次回に期待と言う事でもない。
そのため、自分が選ばれる可能性はまだあった。
そして、指名する農園主の近くにいたことが奏したのか、俺が二人目に選ばれた。
そんな俺を見るカタバは分かりやすく口の端を歪ませる。
作戦のことを知らなければ、酷く不気味に映ったことだろう。
「行くぞ!」
冷たく接しながらも、笑みがこらえきれない様な声を出して彼は先導する。
確実に罠に嵌めたいのか、前回とは違いちらちらとこちらに注意を向けながら歩く彼の後ろについた。
本人は俺を見ているつもりはないのだろうが、明らかに意識がこちらに向いていることが分かった。
そんな彼の様子に気付かないふりをしながら、俺は袋の中身を予想して歩いた。
ビルを目印にして歩き、目的の店に入り彼は袋を渡した。
そうして店主は前回と同じように裏に行って商品を詰めた袋を持ってきた。
「ご苦労様~」
一切笑わない瞳で、こちらを見る店主に会釈をして俺たちは店を出る。
そして待ちきれないのか早々に路地裏にカタバは入った。
「どこいくの?」
形式的にでも、知らないふりをしつつ俺は彼についていく。
そんな俺に、彼は振り返り口を開いた。
「残飯野郎。この中を見たくないか?」
悪い顔をしているのだろう。
まだあどけない顔には凄みを感じないが、それでも悪意によって醜く歪んでいた。
「そりゃ気になるけど……。でも、ダメだよ」
関心はあることを匂わせつつ、俺は制止した。
ここで簡単に俺が開けてしまっては意味がない。
形だけでも、俺ではなく彼に開けさせたかった。
共犯と主犯では意味が違う。
もしバレた時に、どちらが開けたかなんてわからないだろうが、念を入れておくべきだろう。
それに、彼は俺が乗り気でない仕草を見せても乗ってくる。
「バレなきゃいいんだよ。お前も気になるんだろ」
彼がこの作戦を考えたということはない。
盗み聞いた時の話ぶりでは、少なくともカタバは発案者側にはいなかった。末っ子のように扱われる彼は、ただ話を黙って聞いていた。
故に、彼の想定する成功は、袋をあけることにある。
作戦を考えたのが彼であれば、最悪次回に持ち越すと言う手もあるだろう。
徐々にこちらの関心を高める方法だってある。
ただ、年齢ゆえに彼はそこまで頭が回らない。
その上に、興味自体はあると俺が思わせぶりな言動を取れば食い下がることは確実だ。
完全な否定ではないのだから。
「気になるけど……」
承諾は絶対にしない。
ただ、二度目の発言で彼には明確に俺が中身に興味を示しているということを意識するはずだ。
そして、最悪俺が袋の中身を見たと言うことを密告するのならば、共犯であっても構わない。
俺が何かを口走る前に、チクればいい。止めようとしたが、俺が中身を見たと。
そうすれば、俺が言い訳をしようとも、見たと言う事実を覆すことは出来きない。
この歳の子供が大人に問い詰められれば、「俺も見たけど」なんて言葉の頭につけて、彼の非も問おうとすれば信じてもらえるわけがない。
更に皆を代表して俺を罠に嵌めようとしていると言う自覚があるのならば。
「わかった。俺が開けるから!」
手段である袋の中身を俺に見せると言うものが目的と入れ替わり、それを確実に実行しようと動き出す。
彼は予想通り、我慢が出来なくなり袋を開けた。
これで少なくとも主犯は彼だ。
ただ、そんなことよりも俺の意識は袋の中身に向けられた。
「なんだこれ……?」
その声はカタバのものだった。
俺はと言えば、声も出さずに呆けていた。
「小さい木と瓶?」
カタバは珍しそうに袋から取り出してそれを見た。
小さい木──苗木と小瓶を見比べるように見た。
苗木はきっと、農園で植えるものだろう。
そして瓶は肥料か何かだとあたりをつけた。
思ったよりも珍しくないものが出て来たため、肩透かしを食らった気分だ。
ただ、小瓶に書かれた文字は暗記するように努めようと。
そう考えた時、つい動きを止めた。
「これは……」
不意に出た言葉にそばにいたカタバが怪訝な顔をすることにも構わずに俺は目をその文字に走らせた。
読める。
確かにそこには『液体肥料』を意味する文字が書かれている。
アリの記憶によるものだろうか。
一度は音声言語については記憶と照らし合わせるようにして、理解したことは事実だ。
ただ、それはこの身体の持ち主であるアリと言う少年の記憶、あるいは経験にそれが蓄積されていたからだ。
今回はそれには当てはまらないだろう。
アリは文字を知らない。
それは、鍵の男が持たせたメモの文字を見ても分からなかったことを考えれば、明白だ。
可能性とすれば、前世の記憶だろうか。
だが、こんな文字は見た覚えがない。
一体これは……。
暫く考え込んでいた俺であったが、やっと我を取り戻したのはカタバの不機嫌な声を掛けられてからだった。
とりあえずの第一目標である袋の中身の確認は済んだ。
あそこに書かれていた文字について、何故読めたかと言った疑問は尽きないものの、いったんその考えは打ち払った。
そして、農園に帰りながら新たに考えるのは帰った後の事だった。
彼らが俺を嵌めるのに対して、どう切り抜けるかと言う事だ。
彼らの作戦によれば、俺に袋を開けさせたあと農園について早々に俺が袋を開けたと言うらしい。
そうすることで、俺は農園主の男から罰を受ける。
それを阻止しなければならない。
ただ、簡単な話こちらが先に口を開いてしまえばいいと言う話でもあった。
カタバは俺が作戦に感づいていることを知らない。
だからこそ、油断をしているところをつき、先駆けて発言すればいいのだ。
農園の入り口に入ったとたんに、大きな声で言えば十分だろう。
きっとカタバは農園主を視界に入れてから行動をするはずだ。
それまでの数秒でことが付く。
特に策を弄する必要もないと考えて、俺は農園の入り口へと足を踏み入れた。
ただ。
「どけっ!!」
一つ誤算があったとすれば、入り口に差し掛かったところで後ろ手に突き飛ばされたことだった。
声を出そうと考え吸った息は吐きだされ、危うく尻もちを搗きそうになる。
そんな俺を見ることもなく、カタバは走り出した。
彼にだって、考える頭はある。
だからこそ、自身が喋っているときに邪魔されないように、俺の脚を遅らせたのだろう。
完全に甘く見積もっていた。
子供だからと、そう考えてしまっていた。
完全に俺のミスだ。
そんな反省をするより前に、腰を上げて少しでも早く俺は足を動かした。
ただ、その時、もう一つの誤算が生まれた。
「アイツが──っうぐぅ!?」
「ガキィ!! オイ、袋を勝手に開けやがったなぁああああ!!!!」
視界が開け、俺の目に入ったのはカタバを殴る農園主の男の声だった。
激高し、真っ赤になった顔に血管を浮かべる。
殴られたカタバはいともたやすく吹っ飛ばされて、血を流していた。
「おい、嘗めてんのか? あァ!?」
状況が分からなかった。
まだカタバは農園主の男に俺が袋を開けたのだと伝えていなかったはずだ。
どうしてバレた?
残りの子供たちが、俺が袋を開けると言ったのだろうか。
だが、それでは意味がない。
言ったところでそれを信じるとも思えない。
信じたとして、あくまで可能性に収まるはずだ。
それだけでここまで怒ることはないように思えた。
第一、殴られたのは俺ではなくカタバだ。その事実が余計に俺を混乱させた。
ぐるぐると思考が回るも、処理が追い付かない。
ただ、残っていた奴らが、俺が袋を開けるだのと言ったのではないのだと言う事は分かった。
農園主の男の目は、明らかにカタバに向いている。
全くと言っていいほど、俺に向いていない。
なら、俺がすることもないだろう。
実際に袋を開けたのは彼だ。
それならば、俺がやったと言いづらいだろう。
弁明したとしても、俺が袋を開けたことが真実であればともかく嘘をついてそれがバレた時のリスクは計り知れない。
どういうわけか、男は袋を開けたことを知っていた。
ならば、どちらかが開けたと言うことを知る
ただ、自身が安全圏にいるだろうと予想した時、不意にカタバの顔がこちらを向いていることに気付いた。
そして、僅かに口が動く。
「よくも……!」
まさかこいつ、俺が嵌めたとか思ってないよな。
まるで、俺が何らかの方法を使い、農園主の男に言いふらしたとでも言いそうなその言葉に俺は顔をしかめた。
こいつに嫌われたところで俺が困ることはない。
だが、こいつは他の子供に気に入られている。
特にリーダ―を任される子供は、事情もよく聞かずに俺を詰めるような奴だ。
それでいて彼は他の子供からの信頼が高いように見える。
ここで彼が俺を犯人に脳内で仕立て上げ、勝手にそれを流布すれば俺のここでの生活は更に面倒なことが付きまとう。
今でさえ、嫌がらせは食事時などの行動の制限や、気を抜かないように意識を彼らに向けなければならない労力を割かれている。
なら、ここで俺が名乗り出れば、俺は彼の恩人になりあがる。
そして、嫌がらせはされなくなる可能性はある。
一度の折檻で、煩わしい彼らからの干渉をリセットできる。
くそ。
俺はため息を吐いて、言葉を紡いだ。
「俺がやりました」
静粛に投げられたかのようにして、その言葉は酷く通った。
「あ?」
カタバに追撃を食らわさんとしていた農園主の男の首がこちらを向く。
「俺が、袋を開けて中身を見ました」
男の顔が更に歪む。
そして、爆発するように彼の声はこの場に響いた。
「テメェ!!!」
一瞬で距離を詰めた男は拳を振った。
ただ、相当に早いらしく、俺には追い切れなかった。
「うがっ!? ゴホッ、うぐぅ……」
目がくらむ。
そう思ったときには、二発、三発と俺に打ち込まれていた。
曇った視界で、男を見た。
明らかに様子がおかしかった。
「お前がルールを破ったんだ。アリ。不当な暴力じゃないよな!!!」
弱者を相手にしていると言うのに、なぜか余裕なく見える。
憎くて仕方のないものを見るようにして、拳を握った。
俺は何とか立ち上がる。
そんな俺を見て、彼は絶叫した。
「おい、返事をしろよォ!!」
「は、い」
「そうだよなァ!!」
彼の拳は腹部へと叩き込まれる。
喉をせりあがる何かを抑えることも出来ずに、俺は膝をくづしてうずくまった。
「うげぇ、ゴホッゴホッ……」
「オイ、立てよ」
「ごほっ…………は、い」
男の言葉に立てば、また拳が飛んできた。
「不当な暴力じゃないよなぁ!?お前がルールを破ったんだからなぁあ!!」
「ごふっ……はい」
「お前が悪いんだ。お前が……!」
「うぐっ……はい」
殴られる殴られる殴られる。
地面に伏せれば、蹴られる。
吐いて、血を流す。
飛びそうな意識が痛みによって、覚醒する。
「……………………はぁはぁはぁ」
「オイ、まだ終わってねぇよ。立て」
「…………は、い」
「返事だけしても意味ねぇんだよぉ!!!立てや!!」
言う事を聞かない身体を起こそうとして、また蹴られる。
何とか立てそうと言うところで、また地面に伏した。
それから、先ほどよりも早く立てるように努めて意識した。
「おせぇ。けど、まあいい。じゃあ、終わり」
「…………は、い」
男の気が済んだのか。
そう思い返事をする。
「じゃあ、次はこっちだ」
男は、木の棒を取り出した。
投げ捨てるように置かれていた長い杭のような見た目の棒を握りしめる。
「おい。返事しろよぉ!!」
「……はい」
「お前が悪いんだからな」
男は再度念押しするようにして、棒を振り上げた。
◆
「ごめん。ごめんね、アリ」
もう指一本動かせなくなった体で横たわる俺のそばには涙を浮かべるスガレがいた。
「私が変わりになって上げれればよかったのに」
農園主の男の罰を受けてしばらく。
その場に放置された俺を甲斐甲斐しく労わってくれたのはスガレだった。
そして、そんな彼女はずっとこんな様子だった。
「だい、じょうぶ。だよ」
「でも……でも!」
俺だってスガレが心配してくれていたのは分かっている。
それに罠だとわかって利用した俺は受けて当然の報いであっただろう。
それでも気が済まないのか。
スガレは拳を握った。
そんな彼女の手に、なんとか動かした手を添えた。
「ありが、とう」
わかっているのだ。
本当に彼女はずっと俺が罰を受けている間も辛抱していたことを。
俺が言葉を告げると強く握ったせいか爪が食い込んで血のにじむ彼女の手からは力が抜けた。
自分が行っても、代わりになることどころか更に罰が増すだけだと言うことは彼女にはわかっていた。
だからこそ、彼女は何もできない自分にたまらなかったのだろう。
奇しくもそれは、俺が転生して初めて農園に来たときに庇われたときと入れ替わったような形だった。
反省を促すためか、俺の分の夕食は抜きだった。
農園主の男から鍵の男へと伝えられていたようで、皆の前で俺の名前が呼ばれた。
「アリ、であってるか?」
「はい」
「お前は飯抜きだ」
鍵の男には俺がルールを破ったことに思うことはないようだった。
とにかく自身に任された仕事をしただけだと言う感情を読み取った。
そして今日俺は飯抜きになったのだった。
「アリ。私の分けてあげるよ」
横で食べるスガレが俺にそういう。
その言葉に俺は首を振った。
「いいよ。バレたらスガレまで怒られるよ」
「アリのためならそれくらい……」
「俺が嫌なんだ」
一晩くらい我慢したってどうってことはない。
それに、彼女なら本当に大人たちからの折檻を承知で俺に分けてしまうだろうから。
未だに処置しきれていない彼女の手を握りこんだ痕を見ながらそう言った。
「じゃあ、俺のやるよ」
スガレの提案を断った時、不意にそんな声が掛けられる。
赤みがかった黒髪の少年、カタバだった。
彼は最初の殴られたことによる怪我はあるものの、俺のように全身痛めつけられたわけではない為か元気そうだ。
「いいよ」
「そんなこと言うなよ。お前庇ってくれたんだろ。俺本当はお前が俺のこと嵌めたんじゃないかって疑ってたけど、そうじゃなかったんだな」
煩わしく思い否定するも強引に俺に食事を分ける彼は平気でそんなことを言った。
やはり、勝手に被害妄想を膨らませていたのだと確信する。
他人を陥れようとしていたのによくもぬけぬけとそんなことが言える。
急に親し気に話す姿に寒気を覚えながら俺は愛想よく返答した。
「ありがとう」
「おう!もし明日も食事抜かれたらやるからな!」
その言葉に食欲を無くしそうになるも、俺は仕方なく栄養源を飲み込んだ。
彼が俺に譲った分はほんの二口程度であったため口にかきこむほどもなかったが。
就寝時間になり、体を丸めようとして激痛に悲鳴を上げそうになる。
その痛みを忘れようと俺は考え事をした。
とりあえず状況の整理からだろう。
一つは、袋の中身だ。
入っていたのは苗木と小瓶。
特に変わった物でもなかった。
なぜか読めた小瓶に書かれた文字も頭に留めておいたが、役に立つとは思えない。
それよりも、なぜ読むことができたのかというところが気がかかりだ。
次に、俺のここでの立場だ。
俺は残飯野郎としてここで嫌われていた。
今現在の感情については深くは知らないが、普段の嫌がらせの主犯とも言えるほど俺への大部分の嫌がらせをしていたカタバの犯行はなくなっていた。
そのため、いつものような不都合は起こらなかった。
少なくとも、カタバに対しては恩のある相手程度の認識には変わったのだろう。
最後に、これが一番俺の関心を惹いていた。
魔法だ。
まだ疑惑の段階ではあるものの、あの老婆の使ったモノ以外のそれを俺は知ることが出来た。
農園主が、袋を勝手に開けたのだと気づいた理由。
つまり、袋の中身を見たことを知ることが出来る魔法。
それを得るための手段でも、それこそが効果であるものでも構わないが、そう言った力があるのだと予想していた。
少なくとも男は直接俺たちの動向を知りえる手段を持ち合わせていなかったはずだ。
安易に魔法であると決めつけるのは迂闊ではあるが、それでも可能性の一つとして頭に置いておくべきだろう。
それに俺はあの時見たのだ。
カタバが殴り飛ばされたときに手放した袋の紐がほのかに光っていたのを。
弱い光でしかもすぐに消えてしまい一瞬の出来事であったが故に、見落としてしまいそうであった。
もしあの発光が何らかの魔法による副次的産物であったのなら、その可能性は高まるだろう。
そう言えば、農園の木の実もわずかに光って見えるが魔法に関係するのだろうか。
もしかしたら、あの木の実を得ることで魔法を使えるようになる可能性もあるのではないだろうか。
食すだけで力を手に入れることの出来るほどのものではないかもしれないが、魔法を使用するために必要な何かの材料である可能性もなくはないだろう。
「次の目標が決まった」