泥蓮転生-ドロドロータスリインカーネーション-   作:環状線EX

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 この世界にある不思議な力である魔法。

 そんな力への手がかりとして新たに目をつけたのがこの農園で栽培されている木の実だ。

 そしてそんな木の実を手に入れるのはそこまで難しくはないだろう。

 そう俺はあたりをつけていた。

 

 俺たち子どもに課された主な仕事のひとつはその木の実の採取にあるのだから、それを手に持ったところで何らおかしな話ではない。

 それに一つくらい盗んでも分からないだろう。

 大量に収穫された木の実の中から一つそれが消えただけでは、到底気付くことなど不可能だ。

 

 一つ懸念するべきことがあるとするのなら、魔法についてだが……。

 農園主が袋を開けたのを感づいたときのように、木のみを盗めばその力でバレてしまう可能性はあった。

 俺の予想では、ほんのりと袋の紐が発光していたことを考えれば、彼一人の意思さえあれば使えるような力ではないのだろう。

 術を施した袋と魔法の使い手たる彼がいてこその力だろう。

 

 もしそうだと仮定して、彼が収穫用の籠などに魔法をかけない道理はない。

 一つ減ったことを感知できる可能性も十分にあった。

 いや、そもそも魔法が俺の身体や身に着けている物に掛けられていない保証もないのだ。

 しかし、袋を開けたとバレたのは前回だけ、他のおつかいの時はバレなかったのを考えると何かしらの条件があるのだろう。

 それを見極めることができれば、魔法による行動の制限も減るだろう。

 

 パッと見た感じでは、特に魔法の兆候のような光はない。

 ただ、おつかい中に袋の紐が光っていなかったことや、その光も直ぐに消えたことを考えれば、その魔法が発動するまでの間は俺には目視で魔法がかかっているかなど判断は出来なかった。

 

 俺は先日のおつかいの件ですでに目立っている。

 そのせいで大人たちの目が厳しくなっていることも事実だ。

 だから、迂闊に動くべきではないだろう。

 魔法をこの目で見ることの出来る機会はさほど多くはないだろうが、それでもそう言った中で少しでも情報を集めなければならない。

 どこまでが魔法に対して範囲内でどこまでが足を踏み入れても良いのかを見極める必要があった。

 

「おい、これを持って行ってこい」

 

 俺がルールを破って袋を開けて事になっているからか、案の定俺はおつかいには選ばれることなく農園で仕事をすることになった。

 予想していたので、特に思うところもないがスガレが選ばれていたので少し気になって意識を向けた。

 農園主からの指示のため、もう一人が選ばれた。

 

 リーダーだ。

 子供たちの内でリーダーを名乗る少年は堂々とした立ち振る舞いで指名に答えた。

 

 そんな様子を遠目で見て、俺は目を離した。

 そして、いつものように仕事を続ける。

 

「なあ、残飯野郎」

「…………」

「おい、聞いてるのか?」

 

 仕事中、妙に親し気にしてくる少年の声を無視しながら、手を動かす。

 

「おいってば!」

「なに?」

 

 ついに肩を掴んで、静止してきた少年の顔を見た。

 カタバだ。

 あの一件以降彼は、俺を好ましく思ったのか話しかけて来る。

 

「なんで無視するんだよ!」

「ごめん。集中してて」

 

 今までの行いを反省しているとは思えない蔑称で呼び続ける彼を鬱陶しく思っただけだが、せっかく痛い目を見てまで庇ったのだから穏便に済ませようと仕方なく波風が立たないように返答した。

 

「なんだよ。そんな仕事適当にやっても簡単にできるだろ」

「俺、あんま上手くないから」

「そうか?まあまあだと思うけどなぁ」

 

 彼は俺の仕事の出来を評価して言った。

 まあ、そりゃあ10歳かそこらの年齢の子供よりはうまいだろうが。

 そんな風に思っていると、彼は声を上げる。

 

「あぁー! そうじゃなくて。さっきのつかいの話だよ」

「ああ、スガレとリーダーの人が一緒に行ってたね」

「そうなんだよ。で、どう思う?」

 

 適当に相槌を返すと、俺よりも酷い返しが帰って来て返答に詰まる。

 そんな俺を見た彼は察しが悪いなと言いながら、言葉を続けた。

 

「スガレとリーダーが一緒に行ったら仲良くなっちゃうんじゃないか?」

 

 そんなわけがないだろう。

 スガレがカタバも含めてあまりいい印象を抱いてないことを知っている俺からすればそんな感想しか出てこない。

 まあ、ただ、言葉の意味を拾い切れなかったので聞き返した。

 

「仲良くなったらどうなの?」

「だから、リーダーカッコいいからスガレが……えっと」

 

 言葉を詰まらせるカタバを見てなんとなく言いたいことを察した。

 カタバはスガレに好意を抱いており、リーダーに取られてしまうかもしれないと危惧しているのだろう。

 

「よくわからないけど。おつかいに一緒に行くだけで、好きにはならないんじゃない?」

「そんなこと分からないだろ!だって──」

 

 何かを言いかけた時、不意に彼は姿勢を変えた。

 まるで仕事をしているかに見えるその体勢はまさに、第三者を騙す物であった。

 俺も当然のことながら、視線すらもカタバに向けてはおらず黙々と作業をしていた。

 

 そして、人影が去っていくのを待った。

 

「あっぶねぇ」

 

 彼の言葉にこっちのセリフだと思いながら、ため息を吐く。

 そして、視界の端でとらえた女の姿を頭に浮かべた。

 農園主の男であれば、疑わしいと言うだけで殴られたかもしれないと思うとラッキーだった。

 そんなことを思いつつも、また話をしだすカタバに背を向けた。

 

 

 

 ◆

 

「思考が感情的になってきている」

 

 カタバを無視するように顔を背けてから、俺はそんなことを呟いた。

 もちろん、カタバに対して悪感情を抱くだけの土台はある。

 やつのせいで被った損失や痛みは多くある。

 

 だが、結局は子供。

 カタバに対しての悪感情を向けまでしても、大人気なく無視をして鬱憤を晴らすような真似はしなかったはずだ。

 カタバに対してどうこうという話ではなく、合理的でないという面から行動の自制が今までならできていたはずだった。

 少なくとも、農園に来たばかりのマインドはそう言った傾向があったはずだ。

 

 ──アリの精神に引っ張られているのか?

 

 未だ記憶がよびこされたりと言った兆候はないが、この姿で過ごしていく中で、俺の精神にアリという存在が影響を与えているのではないかと考えがよぎった。

 この状況をどうみればいいかは検討がつかないが、少なくとも感情に任せて下手を打ってはいけないと、自分に言い聞かせた。

 

 そうして一度葛藤を忘れるように仕事に没頭していると、スガレとリーダーが帰ってくる。

 二人はおつかいが終わったことを大人に伝えた。

 そして、スガレはいつものように俺の方に来ることなく──リーダーの方へとよっていった。

 

 それに疑問に思っていると、カタバが焦ったようにその和に加わった。

 スガレは基本的に分け隔てなく接する子ではあるが、俺の身の上もあって俺に近くに来ようとする傾向があったので少し気にはなったが、まあそんなこともあるかと俺は仕事を続けた。

 

 仕事を続けながら、俺は木の実を観察する。

 両手に収まらないくらいの大きさの木の実はそこそこの重量感がある。

 そして、まじまじとみればやはりその奥が光って見えた。

 奥底に光が見えて、植物の組織が浮かび上がっている。

 光がそれだけ強いのか、それとも果実自体の透度が高いのか。

 

 実際のところどうなのかはわからないが、光の原因は木の実に対してそこまで大きくない球体の形を保っているように見えた。

 だが、流石にこれを取り出して確かめることはできないだろう。

 では、隠れて中身を取り出してみるかと考えてみるが、持ち出したのが魔法でばれる可能性もあるし、そもそもこれだけの大きさの木の実を人目を盗んで誰もいないところまで持っていくというのは無理があるように思えた。

 

 ため息を吐いて、いつものようにスガレがこちらによって来ないことに少し首を傾げて、暗くなるまで仕事をした。

 

 

 

 ◆

 

 放課後の校舎を歩いていた。

 朝早く、誰もない教室の席についた。

 高校に行かずに働いていたコンビニ裏でスマホ片手にサボっていた。

 自室のPCで通信高校のオンライン課題を終わらせる。

 部活の帰り道、堤防沿いを歩いていた。

 

 別々の人間の視点が入れ替わるように情景が流れた。

 

 そして、ノイズが入るように情景が乱れた。

 

 ──デイカハ、サイテイルカ?

 

 

 

 ◆

 

「っ……!」

 

 煮えたぎるような自らの熱にうなされて俺は目覚める。

 全身から汗が吹き出して、息が荒い。

 張り付く髪の毛を押し除けて自らの額に手を当てつつ目を開けばまだ暗い。

 

「ぐぅ……」

 

 同時にジクリと突き刺すような、肉を焼かれるような熱を感じて肩口の辺りに反射的に手で押さえた。

 ぬるりと嫌な感覚に指を合わせれば、何か液体が手についている。

 暗くて手元を確認できずにどうにかして光源を手に入れようと思考を働かせた時、不意に手元が光り、血に濡れた手が視界に映った。

 

 その瞬間、俺の脳みそに処理できないほどの情報が流れ込む。

 気付かぬうちの流血と、光源などない手が一人でに光を灯したこと唖然とする。

 同時に発熱の影響もあったのだろうか?

 頭を殴られたようにぐらりと被りを振っていつの間にか意識は途切れて……次に目覚めたのは、朝日が昇ってからだった。

 

 血が渇いて張り付いた手のひらを洗い流して、俺はいつものように仕事を始めた。

 しかし、頭の中は昨夜に起こった不思議な現象のことでいっぱいだった。

 光源もないのに手のひらから漏れ出た光。

 それは紛れもなく俺がこの世界で知った魔法に類するものだろう。

 

 訓練は続けていた。

 だが、それでも全くの兆候が見えない中での力の開花は少なからず俺に興奮を与えていた。

 そして、昨日の出来事を思い出すように俺は手のひらから光を放つように集中した。

 それと同時、右の肩口がジクリと痛んで、一滴の血が背を伝ったのがわかった。

 

 予想通り間光が手に灯るのを見て、俺は思考を巡らせた。

 昨夜俺は肩口に違和感を感じていたが、幾度か試した結果、魔法発動に大きく関与しているのだと予想していた。

 鏡もないので、なんとか首を動かして背中を見ようとすれば、視界の端に痣のようなものが見えた。

 まるで焼き爛れそうな皮膚は何かの模様のようにも見えた。

 そして、そこが昨夜流血した箇所であると結論づける。

 

 俺が再び手のひらから光を発せば、内側から焦がすような途方も無い熱が、肩口を焼いた。

 そこにこの世界特有の魔法を司る器官でも存在しているのだろうか。

 そう予想を立ててみても、結論は出ないが、力の一端を開花した以上、俺は更なる魔法の発展に思いを馳せた。

 これ以上伸びない可能性もあるが、少なくともホンハと呼ばれる老婆はタバコに火をつける程度の力を持っていた。

 この魔法がどこまでできるのかはわからないが、試してみる価値は十分にあるように思えた。

 

「おい、残飯野郎」

 

 感覚を掴もうと再度人目を盗んで魔法を使おうとした時、不意に呼ばれる。

 悟られないように体が動くと同時に「残飯野郎」という不名誉なあだ名に自信がなれてしまっていることに、なんとも言えない感情になりながらも、俺は顔をあげた。

 声の主はカタバだ。

 俺を恩人のように評価を修正し直したように見えたが、そんなことは忘れてまたちょっかいでもかけにきたのかと思うがどうも違うように見えた。

 カタバの表情は、悪趣味なそれではなく普段彼が仲間内でむけているそれに酷似していることに気づく。

 同時に眉が少し下がっている。

 

「どうしたの?」

「どうしたって、スガレのこと。お前、おかしいと思わないのかよ」

 

 その言葉に少し思いを巡らせる。

 一つ思い浮かぶことといえば、すぐに俺の方へとよってきたスガレが今日は一度もこちらにきていないということだろうか。

 思い返せば、昨日おつかいから帰ってきてすぐに俺へと駆け寄ってこなくなってから、一度も話していないかもしれない。

 つい、魔法のことに思考が裂かれていたが、十分彼の言う「おかしい」状況ではあるだろう。

 そうは思いつつ、それを俺に言ってくる理由もよくわからないと思い首を傾げた。

 

「昨日からスガレはそっちのみんなと仲良くしているとは思うけど……」

 

 そう俺が言葉を詰まらせていると、カタバは表情に苛立ちを増して声を返す。

 

「それがおかしいって言ってんだよ!」

 

 怒鳴るように彼はそう言うが、俺はともかくカタバにとってはむしろ好都合な状況では無いだろうか。

 気になっているスガレが自分のグループと仲良くしてくれるようになった。

 それだけで話す機会も増えるだろう。

 俺も少し思うところがないわけでは無いが、カタバから見れば憂うことなどないだろう。

 

「なんかずっと、リーダーとすごい仲良さそうなんだよ。きっと、つかいにいった時に仲良くなったのかも」

「ああ。そう言う」

 

 自身の好意を向けるスガレが一緒のグループに入ったものの、リーダーとばかり喋っているから困っているという話だろう。

 カタバからしてみれば、自分よりも大人で色々とできるリーダーがスガレに好かれてしまったのではないかと気が気ではないということだ。

 だが、まあ……。

 

「気にしなくていいと思うけどね」

 

 実際、スガレはリーダーを好きにはならないだろう。

 そもそも先の一件で、俺に言いがかりをつけてきた際にスガレが仲裁してくれたが、その時彼女から聞いたリーダーの評はそこまで芳しくないように感じた。

 スガレに限って嫌っているということはないだろうが、好意を寄せることはないように思えた。

 

「お、お前はいいのかよ?」

「俺?」

「お前も、スガレが……」

 

 言葉を詰まらせる彼が言いたいのは「お前もスガレが好きなんだろう」だろう。

 察しながらもとぼけたような顔を浮かべていれば、ゴニョゴニョと言った後カタバは諦めるように、口を閉じた。

 確かに、前世であれだけ気にかけてもらっていれば好意を抱いたかもしれないが、精神年齢で言えば17歳の俺がスガレを恩人と思っても、そう言った感情を向けることはないだろう。

 俺ではなくアリなら話は変わるだろうが。

 そんなことを思っていると、カタバは「とにかく!」と仕切り直すように言葉を吐いた。

 

「スガレがリーダーと仲良くしないように手伝ってくれよ!」

 

 そう懇願する彼は自分が何を言っているのかわかっているのだろうか?

 自らが可愛がってもらっていて、尚且つ憧れているリーダーとスガレの人間関係を壊してくれと言っているようなものだ。

 彼の言うことを聞いたとして、必ずしもそうなるとは限らないが、それだけのことをしようとしているのは確かなのだ。

 もっと広い世界での話であれば違ったかもしれないが、この狭い農園という世界の中では、とれる選択肢は酷く強引だ。

 きっと、彼は全くそんなことを考えてはいないのだろう。

 年齢的に仕方がない。

 そうとは思う。

 だから、少しでも先が予想できる俺はその願いにそう簡単に答えることはできない。

 

 そんなカタバとの話をしたのは、朝早く。

 仕事をしだしてすぐで、話を切り上げた後会話の間に遅れてしまった作業を巻き返すように俺は仕事をした。

 そして、しばらく木々の影に隠れるカタバの背中を見つけて、近づいた。

 

「あ、残飯野郎」

 

 彼は俺が話しかけるより先に、こちらの存在に気付いたように顔を向けた。

 そんなカタバに俺は頷きだけ返して、並ぶようにその場にかがみ込んだ。

 カタバが覗き込むようにみる先には、何人かの影が仕事をする様子が見えた。

 そんな姿に目を凝らす。

 

「それにしても、お前が手伝ってくれて助かったぜ!」

 

 声だけ耳で聞きながら、俺は数人の中に、スガレとリーダーがいることを確認してから、一度視線を話す。

 

「約束は守ってよ」

「わかってるって! 本の話だろ」

 

 任せとけと自分の胸を叩くカタバをみながら先ほどのことを俺は思い出す。

 

 

 

 ◆

 

 カタバが俺にリーダーとスガレを引き離す手伝いをしてくれと頼んできた時、俺は一度断った。

 だが、そんな俺にカタバは対価を持ち出した。

 

「わかった。代わりにお前の本を返してやる」

「俺の?」

 

 反射的にそう言ってしまったのも仕方のない話だった。

 ここにきてから本なんて単語を聞くことはないとなんとなくどこかで思っていたし、そこに「お前の」なんて言葉がつけばさらに理解が遅れることになった。

 そんな俺に、カタバは忘れてしまったのか?と半ば呆れたような顔を見せて、言葉を続けた。

 

「お前が隠してたやつあっただろ。親からもらったとか言ってたの」

 

 俺にはその心当たりはない。

 しかしながら、この体の持ち主であるアリであればそれに対して真っ向から跳ね返すことはできない。

 少なくとも俺がアリについて知ることは、転生してからの自らの行動とスガレから聞いた親のためにここで働いているということくらい。

 だけど、それより前にアリは彼らとここで働いていて、俺がこの体に入ってからの期間と比べればとても長い時間過ごしてきたはずだ。

 当然、俺の知らない事実がカタバから飛び出てもおかしなことはない。

 

「よくお前が自分で落書きしてたやつ。俺たちが隠したのは気付いてただろ」

 

 落書きというと、自由画帳の類いだろうか。

 いや、もしかすると本当に本に絵でも書いてたのかもしれない。

 カタバの語彙ゆえの本という表現なのか、実際に本なのかはわからない。

 だが、前者でも紙が欲しいと思っていたところだし、後者となれば貴重な情報源になり得る可能性は十分にあった。

 

 それにしても、残飯野郎呼ばわりをされる前から嫌がらせをしていたのか。

 アリ本人が俺にわからない場所に隠していれば見つけることは困難であったと考えれば、彼らが勝手に持ち出していたことに喜ベばいいのだろうか? 複雑な気持ちが湧いてくるだけだったが、とにかくそれを飲み込んだ。

 

 カタバの提示した対価は本来アリのものだと考えれば釈然としないところもあったが、考えた末に、仕方がないと彼に俺はうなづくことになった。

 

 そうして、一緒に物陰から様子を伺っていたのだが……。

 

「カタバはあっちにいてもいいんじゃない?」

 

 不意に俺はそんなことを呟いた。

 俺はともかくカタバはあそこにいても自然だし、あっち似た方が知れることも多くあるだろう。

 そう思ったのだが。

 

「いや、多分。俺、変な動きしちゃってバレるだろうから」

「……」

 

 自覚があったのかと思うと同時に、俺の時は騙せると思われていたのかと目を細めた。

 しかし、それならばと納得して俺は立ち上がった。

 

「お、おい! 残飯野郎、なにして」

「何って。とりあえず、スガレに話しかけにいってくる」

 

 昨日から様子はおかしかったが、俺は発現した魔法に夢中でそこまで気に留めていなかった。

 だが、よく考えてみれば、スガレがリーダーたちのグループへといってから口を聞いていない。

 とりあえず、彼女から情報を得ようと動き出した。

 ちょうど、スガレがグループの皆から少し離れたのを見計らって、俺は手を上げた。

 

「スガレ、あのさ」

 

 近づいた俺に気付いた彼女は、一瞬こちらに目を向ける。

 そうして、俺が言葉を発した時、顔を背けた。

 間抜けにも「え」と俺が声を漏らしていれば、スガレは移動を初めてこの場から去ろうとしているリーダーの方へと駆け寄っていった。

 それにいわれない感覚を覚えていると彼女らがいなくなったのを確認してカタバが顔を出して俺の肩を叩いた。

 

「ほらな。ちょっと仲良くしていたお前にももう興味ないんだよ」

 

 「やっぱ、リーダーのこと好きになっちゃったかもしれないだろ」と続ける彼の声に答えることもせず、俺は状況を大きく見誤っていることに気付いた。

 俺はてっきり、スガレは現状維持のままリーダーへの関係性だけが変わっていたと考えていた。

 しかし、先ほどの光景を思い返せば、俺のことを避けた上でスガレはリーダーと仲良くなっていると言えるだろう。

 

「おい、あんまショック受けんなよ」

 

 どんな道理でこんなことになったのか思案していると、何を勘違いしたのかカタバがぽんぽんと肩を叩いてきた。

 それを鬱陶しく払い除けた。

 

 カタバにそんな態度を取られたゆえだろうと一瞬、俺が彼女に何かをしてしまったのだろうと考えそうになって、そうではないと考え直す。

 スガレの行動が明確に変わったのはリーダーと行ったおつかいの後だ。

 その間に何かがあったとみるべきだろう。

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