4代目に憧れて   作:ryyonn

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届く距離

 

 

修行場に着くと、俺はまず自分の状態を確認した。

 

纏。

 

練。

 

そして、放出系の基本的な操作。

 

ここ最近、念の制御はかなり上達してきた。

 

それでも、まだ満足できる水準ではない。

 

特に、身体から離したオーラを維持することには、改善の余地があった。

 

「じゃあ、始めるわよ」

 

母さんが少し離れた場所から声をかける。

 

俺は頷き、右手を前に出した。

 

手のひらにオーラを集め、それをゆっくりと放出する。

 

小さなオーラの塊が、指先から離れて浮かんだ。

 

最初は数センチ。

 

そこから、少しずつ距離を伸ばしていく。

 

十センチ。

 

二十センチ。

 

三十センチ。

 

……ここまでは、以前より安定していた。

 

「いいわよ。そのまま維持して」

 

母さんの声に従い、俺はオーラの状態を保った。

 

だが、さらに距離を伸ばそうとした瞬間、オーラが揺らいだ。

 

集中が乱れ、形が崩れる。

 

「……っ!」

 

慌てて制御しようとしたが、間に合わなかった。

 

オーラは霧散した。

 

「惜しかったわね」

 

「あと少しだったのに……」

 

「距離を伸ばそうと意識しすぎたのよ。遠くへ飛ばすことと、安定させることを同時にやろうとしているでしょう?」

 

俺は苦笑した。

 

確かに、その通りだ。

 

「まずは、安定させること。それから距離を伸ばす。順番を間違えないの」

 

「わかった」

 

俺はもう一度、オーラを放出した。

 

何度も繰り返す。

 

失敗して、調整して、また試す。

 

そのうち、ひとつのことに気がついた。

 

オーラを遠くへ飛ばそうとするとき、俺は無意識に力を込めすぎている。

 

強く放出すれば距離は伸びる。

 

だが、その分だけ制御が難しくなる。

 

ならば、必要なのは出力だけではない。

 

少ないオーラを、効率よく扱う技術も必要なのだ。

 

俺は意識を切り替えた。

 

遠くへ飛ばすのではなく、できるだけ少ないオーラを、できるだけ安定した状態で送り出す。

 

すると、今までよりも滑らかにオーラが手元から離れていった。

 

三十センチ。

 

四十センチ。

 

五十センチ。

 

「……おお」

 

思わず声が漏れた。

 

母さんも目を丸くしている。

 

「今のはよかったわね!」

 

「うん。力を入れすぎないほうが、うまくいくみたいだ」

 

「自分で気づけたのは大きな進歩よ」

 

俺は浮かんでいるオーラを見つめた。

 

距離そのものは、劇的に伸びたわけではない。

 

だが、以前よりも少ない力で、安定した状態を作れるようになった。

 

これは大きい。

 

将来、何かを遠くへ届けたり、離れた場所で念を維持したりするなら、効率のいい制御は欠かせないはずだ。

 

ただし、今の段階でどこまで応用できるかはわからない。

 

俺は浮かんでいたオーラを消し、手を下ろした。

 

「母さん、もう一度やってみてもいい?」

 

「もちろん。でも、あと五回までよ」

 

「えっ、少なくない?」

 

「約束を忘れたのかしら?」

 

「……五回で十分です」

 

母さんは満足そうに頷いた。

 

やっぱり、母さんには逆らえない。

 

 

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