修行場に着くと、俺はまず自分の状態を確認した。
纏。
練。
そして、放出系の基本的な操作。
ここ最近、念の制御はかなり上達してきた。
それでも、まだ満足できる水準ではない。
特に、身体から離したオーラを維持することには、改善の余地があった。
「じゃあ、始めるわよ」
母さんが少し離れた場所から声をかける。
俺は頷き、右手を前に出した。
手のひらにオーラを集め、それをゆっくりと放出する。
小さなオーラの塊が、指先から離れて浮かんだ。
最初は数センチ。
そこから、少しずつ距離を伸ばしていく。
十センチ。
二十センチ。
三十センチ。
……ここまでは、以前より安定していた。
「いいわよ。そのまま維持して」
母さんの声に従い、俺はオーラの状態を保った。
だが、さらに距離を伸ばそうとした瞬間、オーラが揺らいだ。
集中が乱れ、形が崩れる。
「……っ!」
慌てて制御しようとしたが、間に合わなかった。
オーラは霧散した。
「惜しかったわね」
「あと少しだったのに……」
「距離を伸ばそうと意識しすぎたのよ。遠くへ飛ばすことと、安定させることを同時にやろうとしているでしょう?」
俺は苦笑した。
確かに、その通りだ。
「まずは、安定させること。それから距離を伸ばす。順番を間違えないの」
「わかった」
俺はもう一度、オーラを放出した。
何度も繰り返す。
失敗して、調整して、また試す。
そのうち、ひとつのことに気がついた。
オーラを遠くへ飛ばそうとするとき、俺は無意識に力を込めすぎている。
強く放出すれば距離は伸びる。
だが、その分だけ制御が難しくなる。
ならば、必要なのは出力だけではない。
少ないオーラを、効率よく扱う技術も必要なのだ。
俺は意識を切り替えた。
遠くへ飛ばすのではなく、できるだけ少ないオーラを、できるだけ安定した状態で送り出す。
すると、今までよりも滑らかにオーラが手元から離れていった。
三十センチ。
四十センチ。
五十センチ。
「……おお」
思わず声が漏れた。
母さんも目を丸くしている。
「今のはよかったわね!」
「うん。力を入れすぎないほうが、うまくいくみたいだ」
「自分で気づけたのは大きな進歩よ」
俺は浮かんでいるオーラを見つめた。
距離そのものは、劇的に伸びたわけではない。
だが、以前よりも少ない力で、安定した状態を作れるようになった。
これは大きい。
将来、何かを遠くへ届けたり、離れた場所で念を維持したりするなら、効率のいい制御は欠かせないはずだ。
ただし、今の段階でどこまで応用できるかはわからない。
俺は浮かんでいたオーラを消し、手を下ろした。
「母さん、もう一度やってみてもいい?」
「もちろん。でも、あと五回までよ」
「えっ、少なくない?」
「約束を忘れたのかしら?」
「……五回で十分です」
母さんは満足そうに頷いた。
やっぱり、母さんには逆らえない。