レオン・クルーガーとして生き始めて、数年が経った。
俺は、自分が転生者であることを誰にも話していない。
話せるわけがない。
突然、「実は俺、前世では日本人で、あなたのことを漫画で知っていました」なんて言ってみろ。
母さんに心配されるに決まっている。
それに、前世の記憶があること自体、今の俺にとっては大きな武器だった。
この世界には念能力がある。
そして、俺はその仕組みを知っている。
少なくとも、原作で描かれた範囲については。
問題は、俺が原作の細かな設定まで覚えていないことだ。
重要人物や大筋の展開は覚えている。
だが、脇役の名前や、細かい能力の条件までは曖昧だ。
つまり、知識だけを頼りに生きていくのは危険ということだ。
だからこそ、俺は決めていた。
この世界で生き残るために、強くなる。
誰よりも速く。
誰よりも正確に。
そして、大切な人を守れるだけの力を手に入れる。
俺の憧れは、前世から変わらない。
四代目火影、波風ミナト。
飛雷神の術を使いこなし、圧倒的な判断力と技術で戦場を駆け抜けた男。
あの姿に、俺はずっと憧れていた。
そして今、俺にはそれを再現するための可能性がある。
念能力。
この世界の常識を理解し、技術を磨けば、あるいは――。
「レオン?」
背後から声がした。
「何をそんなに真剣に考えているの?」
振り向くと、母さんが立っていた。
俺は笑顔を作る。
「なんでもないよ、お母さん!」
「そう? ならいいけど」
母さんは俺の頭を撫でた。
その手が、温かい。
俺は思う。
この人を守りたい。
いつか、母さんが困ったとき。
母さんが危険な目に遭ったとき。
誰よりも速く、その隣に駆けつけられるように。
そのために、俺は強くなる。
四代目火影のように。
――いや。
この世界で生きる、レオン・クルーガーとして。
俺だけの力を手に入れるために。
こうして俺の修行の日々が始まった。
そして、まだ誰も知らない。
この少年がいつか、あのネテロ会長と全力で戦い続ける存在になることを。
ましてや、少年が憧れた四代目火影の技を、念能力で再現しようとしていることなど。
この時点では、母さんでさえ知る由もなかった。
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