4代目に憧れて   作:ryyonn

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十五歳、新たな一歩

十五歳になった。

 

この一年で、僕の戦い方は大きく変わったと思う。

 

螺旋丸は、動きながらでも使えるようになった。

 

念波はまだ円の代わりになるほど精密ではないが、戦闘中に意識を割きすぎず、周囲の変化を感じ取るための感覚として、少しずつ形になっている。

 

瞬身の術も、以前のように加速したまま止まれなくなることは減った。短い距離なら、踏み込みと方向転換を組み合わせて、相手の死角へ素早く回り込める。

 

そして、避雷針。

 

簡易型と通常型は、僕の戦闘に欠かせない技術になっていた。

 

問題は、設置型だった。

 

「……やっぱり、距離が伸びると消費が跳ね上がるな」

 

訓練場に置いた目印から離れ、僕は息を吐いた。

 

設置型の印は、神字を組み合わせた複雑な構造を持っている。簡易型や通常型よりも、遠くの地点との空間跳躍を可能にするために設計していた。

 

印そのものは、少しずつ安定してきている。

 

問題は、跳躍するときだ。

 

近距離なら、それほど大きな負担にはならない。

 

だが、距離を伸ばすと、必要な念の量が急激に増えていく。

 

しかも、単純に距離に比例しているわけではないようだった。

 

少し遠くへ跳ぶだけなら問題がなくても、そこからさらに距離を伸ばすと、急に消費が重くなることがある。

 

「これじゃあ、遠くに印を置けても、気軽には使えない」

 

長距離移動を一度成功させたとしても、その一回で念を大きく消耗してしまえば意味がない。

 

移動した先で戦闘になったらどうする。

 

敵の攻撃を避けるために跳躍したいとき、念が足りなかったらどうする。

 

帰るための念まで残っていなかったら?

 

考えれば考えるほど、無視できない問題だった。

 

「レオン、そこで何を唸っているの?」

 

振り返ると、お母さんが腕を組んで立っていた。

 

「設置型の問題です。印は前より安定してきましたけど、長距離の跳躍で念の消費が急激に増えるんです」

 

「なるほどね。それで、どうするつもり?」

 

「神字の構造を見直すつもりです。ただ……」

 

僕は言葉を切った。

 

神字の組み合わせだけで解決できるのか。

 

それとも、能力そのものに何らかの制約を設ける必要があるのか。

 

今までは、制約と誓約を使わず、技術と工夫だけで能力を発展させることを優先してきた。

 

それは間違っていなかったと思う。

 

けれど、ここから先は別かもしれない。

 

「そろそろ、制約と誓約について本格的に考えるべきなのかもしれません」

 

お母さんは、すぐには答えなかった。

 

僕のノートに目を落とし、設置型の神字の構造や、距離ごとの念の消費量を書き込んだ記録を確かめる。

 

「そうね。今なら、考える価値はあると思うわ」

 

「ただ、何を制約にするかは決めていません」

 

「当然よ。強化したい部分だけを考えて、制約を決めるのは危険だもの」

 

お母さんはノートを閉じ、僕を見た。

 

「制約と誓約は、便利な強化手段じゃないわ。自分に何を課すのか。その代わりに何を得たいのか。失敗したときに何を失う可能性があるのか。そこまで考えなければ駄目よ」

 

「はい」

 

「それに、あなたの能力は神字を組み合わせたもの。神字の構造そのものを制約に利用する方法だって、考えられるかもしれない」

 

その言葉に、僕は目を見開いた。

 

神字と制約と誓約。

 

今までは、それぞれを別のものとして考えていた。

 

神字は、オーラの働きを補助し、能力の仕組みを形作るもの。

 

制約と誓約は、自分に条件を課すことで、能力に大きな力を与えるもの。

 

だが、もし両者を組み合わせられるなら?

 

神字で能力の仕組みを定め、その仕組みの一部に制約を組み込む。

 

あるいは、神字によって条件を明確にすることで、制約と誓約の効果をより効率よく能力へ反映させる。

 

もちろん、まだ仮説にすぎない。

 

実際にどこまで可能なのか、何が起こるのかもわからない。

 

けれど、考える価値はある。

 

「……面白そうですね」

 

「でしょう? ただし、焦って実行しないこと。まずは、どんな制約が必要なのかを整理するのよ」

 

「わかりました」

 

僕は新しいページを開いた。

 

そこに、大きく書き込む。

 

『避雷針――神字と制約・誓約の組み合わせ』

 

ようやく、次の段階へ進むための課題が見えてきた気がした。

 

 

 

 

ビスケ---視点

 

レオンが十五歳になった。

 

初めて会ったときは、まだ小さな赤ん坊だった。

 

あの子が私の指を握りしめた日のことを、今でも覚えている。

 

それから十五年。

 

泣き虫だった子供は、いつの間にか自分で考え、自分で道を切り開く少年になった。

 

もちろん、今でも甘えてくることはある。

 

疲れれば私のそばで休むし、嬉しいことがあれば真っ先に報告してくれる。

 

私にとっては、どれだけ強くなっても大切な息子だ。

 

だからこそ、そろそろ考えなければならないことがある。

 

「レオン。あなた、今年はハンター試験を受けなさい」

 

夕食のあと、私はそう切り出した。

 

レオンは、飲んでいたお茶を置いた。

 

「……ハンター試験、ですか?」

 

「そうよ。十五歳になったでしょう?」

 

「はい。でも、今すぐ受ける必要があるんですか?」

 

「あるわ」

 

私はきっぱりと言った。

 

「あなたは長い間、私とネテロ会長のもとで訓練を積んできた。念の扱いも、身体能力も、戦闘技術も、同年代の中では十分すぎるほど高いわ」

 

「それは、お母さんとおじいちゃんのおかげです」

 

「そういうところは素直なのよね」

 

私は苦笑した。

 

「でも、あなたが経験してきた戦いは、私たちが用意した環境でのものが多いでしょう?」

 

レオンは黙って聞いていた。

 

「実際のハンターは、必ずしも自分に都合のいい場所で戦えるわけじゃない。情報が足りないこともあるし、相手の実力がわからないこともある。依頼人や仲間を守らなければならない場面もあるわ」

 

「……はい」

 

「あなたには、そういう経験を積んでほしいの」

 

私は彼の目を見た。

 

「それに、ハンターになれば、今まで知らなかった世界にも触れられる。あなたが目指す強さは、訓練場の中だけでは完成しないわ」

 

レオンは少し考え込んでいた。

 

彼が強くなりたい理由は、ずっと変わっていない。

 

大切な人を守るため。

 

その願いは立派だ。

 

けれど、守るべきものが増えれば増えるほど、必要になるのは力だけではなくなる。

 

経験、判断力、知識、そして人との関わり方。

 

ハンター試験は、そのすべてを教えてくれるわけではない。

 

それでも、新しい世界へ踏み出すための一歩にはなる。

 

「……わかりました。受けます」

 

レオンは顔を上げた。

 

「ただ、合格するだけじゃなく、ハンターとして何ができるのかを学んできます」

 

その答えに、私は笑った。

 

「ええ。期待しているわ」

 

そして、少しだけ声を柔らかくした。

 

「でも、忘れないでね。あなたがハンターになろうと、どれだけ遠くへ行こうと、あなたは私の息子なんだから」

 

レオンは一瞬きょとんとしたあと、照れくさそうに笑った。

 

「……はい、お母さん」

 

その笑顔を見て、私は胸の奥が温かくなるのを感じた。

 

この子が自分の足で外の世界へ歩き出す。

 

嬉しくないはずがない。

 

けれど、親というものは、いつだって少しだけ心配なのだ。

 

 

 

 

レオン----視点

 

ハンター試験。

 

原作でも、物語の始まりとなる大きな関門だ。

 

もちろん、僕はそのことを知っている。

 

ただし、知っているからといって、すべてが思いどおりに進むとは限らない。

 

僕の存在そのものが、この世界にどんな影響を与えているのか、正確にはわからないからだ。

 

それでも、ハンター試験を受けることには意味がある。

 

今まで僕が戦ってきたのは、主にお母さんやネテロ会長との訓練、そして限られた実戦経験の中だった。

 

試験には、さまざまな目的を持った人間が集まる。

 

強さを求める者。

 

金や名声を求める者。

 

自分の目的を果たすため、ハンターという資格を必要としている者。

 

そこには、僕がまだ知らない考え方や戦い方があるはずだ。

 

「まずは、試験の準備だな」

 

僕は机に向かい、必要なことを書き出した。

 

身体能力の維持。

 

念の基礎訓練。

 

戦闘技術の確認。

 

螺旋丸の実戦運用。

 

念波の精度向上。

 

瞬身の術の制御。

 

避雷針の各型の使い分け。

 

……多い。

 

自分で書いておいて、思わず苦笑した。

 

「全部を完璧にしてから受ける、なんて言っていたら、いつまで経っても受けられないな」

 

今の自分にできることと、まだできないこと。

 

それを把握したうえで、試験に臨めばいい。

 

設置型の避雷針についても、焦って完成させる必要はない。

 

長距離の空間跳躍には、念の消費という大きな問題が残っている。

 

制約と誓約を組み合わせることも考え始めたが、まだ具体的な条件は決めていない。

 

試験までの間に、少しでも理解を深めよう。

 

ただし、危険な実験を急ぐつもりはなかった。

 

僕が求めているのは、一時的な強さではない。

 

長く戦い続けられる力。

 

必要なときに、大切な人を守れる力。

 

そのためには、今できることを着実に積み重ねるしかない。

 

翌朝。

 

僕はいつもどおり、訓練場へ向かった。

 

「おはようございます、お母さん」

 

「おはよう。今日も元気そうね」

 

「はい。ハンター試験まで、できることをやっておきたいので」

 

「いい心がけね。でも、今日は基礎訓練からよ」

 

「……やっぱり、そうなりますか」

 

「当たり前でしょう!」

 

お母さんの拳が、僕の頭に軽く落ちた。

 

痛くはない。

 

でも、逆らう気にもなれなかった。

 

僕は苦笑しながら、訓練の構えを取った。

 

十五歳。

 

ハンター試験への挑戦が決まった。

 

螺旋丸は戦いの中でも使えるようになり、念波と瞬身の術も少しずつ形になってきた。

 

避雷針は、まだ完成していない部分を残している。

 

それでも、僕は前へ進んでいる。

 

そして、これからは訓練場の外で、自分の力を試すことになる。

 

「よし……お願いします!」

 

僕は地面を蹴った。

 

新しい世界へ向かうための、最初の一歩だった。

 

 

 

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