4代目に憧れて   作:ryyonn

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母が見つけた才能

 

 

レオンが纏を習得してから、数日が経った。

 

 ビスケット=クルーガーは、息子の修行を見守りながら、あることに気づき始めていた。

 

 ――この子、妙に感覚がいい。

 

 最初は、単に飲み込みが早いだけだと思っていた。

 

 しかし、そうではなかった。

 

 レオンはオーラの流れを感じ取るのが上手いだけでなく、いったん覚えた感覚を再現する精度が高かった。

 

 纏の維持。

 

 オーラの量の調整。

 

 身体の特定の部分へ意識を集中させること。

 

 どれも、普通の初心者なら何度も失敗を繰り返すものだ。

 

 ところが、レオンは失敗するたびに自分の感覚を修正し、次の試行へ反映させていく。

 

 まるで、自分の身体を使って実験しているかのように。

 

「……ねえ、レオン」

 

「なに、お母さん?」

 

「あなた、今、自分のオーラがどんなふうに流れているか分かる?」

 

「うん。なんとなくなら」

 

「なんとなく、ねぇ……」

 

 ビスケは腕を組んだ。

 

 まだ十歳。

 

 身体も小さく、念能力者としての経験もない。

 

 それなのに、オーラを扱う感覚は驚くほど鋭い。

 

 この先、どこまで伸びるのだろう。

 

 そんな期待が、胸の中に膨らんでいく。

 

 もちろん、才能があるからといって、何もかもが簡単にできるわけではない。

 

 念の世界では、経験も知識も、戦闘の駆け引きも重要になる。

 

 それでも。

 

 この子には、何かがある。

 

 ビスケはそう感じていた。

 

「よし。今日は少し違う練習をしましょう」

 

「違う練習?」

 

「ええ。今度は、纏を維持したまま歩いてみなさい」

 

「歩くだけ?」

 

「そう。最初はゆっくりでいいわ。身体を動かしても、オーラが乱れないようにするの」

 

「分かった!」

 

 レオンは立ち上がり、ゆっくりと歩き始めた。

 

 一歩。

 

 二歩。

 

 三歩。

 

 そのたびに、身体の周囲に維持しているオーラの状態を確認する。

 

 最初は少し乱れた。

 

 しかし、すぐに修正する。

 

 十歩。

 

 二十歩。

 

 三十歩。

 

 オーラは、ほとんど乱れなくなっていた。

 

 ビスケは思わず目を細めた。

 

 ――やっぱり、この子はすごい。

 

 自分の息子が才能を持っている。

 

 それは、母親として嬉しいことだった。

 

 けれど、ビスケは同時に、気を引き締めてもいた。

 

 才能があるからこそ、正しい方向へ導かなければならない。

 

 この世界には、強い者が大勢いる。

 

 そして、強さを手に入れるために、平気で他人を踏みにじる者もいる。

 

 レオンには、そうなってほしくない。

 

 優しさを失わずに、強くなってほしい。

 

 大切なものを守るために、その力を使ってほしい。

 

「レオン」

 

「はい、お母さん!」

 

「よくできました」

 

 ビスケは息子を抱きしめた。

 

「あなたは、本当に頑張り屋さんね」

 

「えへへ……」

 

 レオンは照れくさそうに笑った。

 

 その顔を見て、ビスケも笑顔になった。

 

 この子は、あたしの大切な息子だ。

 

 何があっても、守ってみせる。

 

 そして、いつかこの子が自分の足で世界へ羽ばたいていく日が来たら。

 

 そのときは、誰よりも誇らしい気持ちで送り出してあげよう。

 

 ビスケは、そんな未来を思い描いていた。

 

 *

 

 一方、俺はというと。

 

 母さんに抱きしめられながら、別のことを考えていた。

 

 念の操作が、思っていた以上に面白い。

 

 自分のオーラを感じ取り、調整し、狙ったとおりに動かす。

 

 この感覚は、前世で読んだ漫画の知識だけでは分からなかったものだ。

 

 実際にやってみることで、初めて理解できることがある。

 

 俺は、これからもっと多くのことを学んでいくだろう。

 

 纏。

 

 絶。

 

 練。

 

 そして、発。

 

 その先には、自分だけの念能力が待っている。

 

 俺はまだ、自分の念の系統を知らない。

 

 けれど、どんな系統であろうと、工夫次第でできることはあるはずだ。

 

 ……まあ、できれば放出系がいいのだが。

 

 何せ、俺が再現したい技は、空間を跳躍する技術なのだから。

 

 とはいえ、今からそれを母さんに話すわけにはいかない。

 

 まずは基礎を身につける。

 

 そのうえで、自分の適性を確かめる。

 

 そして、適性が分かったら、その系統を最大限に活かす技術を考える。

 

 焦らず、一つずつ。

 

 俺は母さんの腕の中で、静かに決意した。

 

 ――四代目への道は、まだ始まったばかりだ。

 

――第八話・了

 

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