「大切な人が——例えば
「そのチョイス俺用で合ってる?
「
北谷先輩は演劇サークルの——卒業生、でいいんだと思う。院生だから今も学生ではあるけど、サークルに籍は残していなかった気がする。その割にはよく男子チームの舞台に加わっているけれど、そのたびに助っ人を称しているから。
「俺は『時間を戻せたら』の実現可能性を検討しないうちはそういうこと考えないのよ。無人島に行くとか宇宙旅行とかならまだ実現性あるけど」
「そこは脚本の前提なんで目をつぶってもらえません?」
「何なら槍崎たちにもちょっと失礼だかんね」
たしなめられてしまったけれども、何だかんだで押せば折れてくれた。
「一般化するからややこしくなってるけど、君がここで想定している『取り返しのつかないこと』っていうのは復讐的なことなわけ?」
「復讐とか、過剰防衛とか、法律的には正当防衛でもいいですけど」
真面目な顔になっている先輩は、受けたからにはきちんと考えてくれるつもりらしい。
「槍崎にしても奥仲にしても、そいつと知り合うのも避けなきゃいけないほどヤワじゃないじゃん? そこまで極端なことしなくていいと思うのよね」
「
「……あー、そういう方向ね」
それで行くと、と首をひねる。
「前のサークルとマジでヤバいぐらい
龍生先輩も朔先輩も、それに北谷先輩も、最初は別のサークルに入っていたと聞いている。揉め事でもあったのか元から不仲だったのか、あるとき何人かがそちらを辞めてこちらに移ってきたという。あたしの入学前のことだから詳しくは知らないけれど——。
「……その場合って、うちに入るルートは完全になくなりますよね」
うちは本来、女性限定サークルだった、らしいのだ。人数が減って存続が危うくなっていたところだったから、龍生先輩たちを特例として受け入れたんだとか。
もし、彼らが最初から気の合うサークルに入れていたら——。
「マジな顔しなさんな。入り込める方が脚本家的には正解かもしれないけど」
取材中は現実世界にいとくれ、と呆れた風でなく笑ってくれたから、あたしも苦笑で返した。そう、今は例えばの話をしているだけ——だ。