エア・ギア ~カズに転生した俺は、最速の炎を目指す~ 作:とらやす
世の中には、金で買えないものがある。
友情とか、努力とか、才能とか。まあ、そういうものだ。
だが。
「……やっぱ金は必要だよなぁ」
机に広げた小遣いを眺めながら、俺は深々とため息をついた。
数日前から、暇を見つけては中古のA・Tを探している。新品は論外。中学生の小遣いで気軽に買える代物じゃない。中古なら何とか手が届く……ものもある。
ただし、そういう格安品に限って、説明欄には不穏な言葉が並んでいた。
『動作未確認』
『現状品』
『修理できる方推奨』
最後のやつなんて、ほとんど壊れていると言っているようなものじゃないか。
「……うーん」
携帯を置き、天井を見上げる。原作では、イッキは野山野家にあったA・Tを使って、その世界へ足を踏み入れた。正直、羨ましい。
俺もあの家に出入りしているんだから、一足くらい借りられないだろうか。
……いや。駄目だな。
野山野家のA・Tには、色々と事情がある。俺はその一部を知っているが、向こうは俺が知っているなんて思っていない。下手に手を出せば、妙な警戒を招きかねない。
そもそも、イッキがまだA・Tを知らない時点で、俺が騒ぎを起こすのも避けたい。
「……やっぱ自分で買うしかねえか」
そう結論を出したところで、階下から母親の声がした。
「カズー! ちょっと手伝ってー!」
「はーい!」
返事をして立ち上がる。
……あ、そうだ。
手伝い。これ、使えるんじゃないか?
*
「……小遣いを増やしてほしい?」
「はい」
夕飯の後。俺は母親の前に座り、できる限り真面目な顔で頷いた。
「何よ、急に」
「ちょっと欲しいものがあってさ」
「ゲーム?」
「違う」
「新しい靴?」
「……まあ、靴ではある」
「靴?」
母親が首を傾げる。
嘘は言っていない。A・Tだって靴の一種だ。普通の靴とは比べ物にならないほど危険だが。
「それで、家の手伝いを増やすから、その分ちょっと小遣いを……」
「ふうん?」
母親が俺をじっと見つめる。……何だろう。妙に居心地が悪い。
二十五歳の社会人だった記憶があるせいだろうか。親に小遣いの交渉をするという行為が、何とも情けなく感じられる。
「別に、ただ増やしてほしいってわけじゃなくてさ」
「うん?」
「掃除とか買い物とか、ちゃんとやるから」
「……あんた、何か悪いものでも食べた?」
「何でだよ!」
「だってカズが自分から家の手伝いを増やすなんて」
……失礼な。
いや、カズとしての記憶を辿る限り、あまり反論できないのが悔しい。
「ま、いいけど」
「えっ?」
「その代わり、途中で投げ出したら駄目よ?」
「……マジで?」
「ちゃんと続けられたらね」
よし。交渉成立。
……と思ったのも束の間。
「それで、何の靴が欲しいの?」
「あー……」
しまった。そこは聞かれるよな。
「……エア・トレック」
「A・T?」
母親の表情が変わった。
「あれ、危なくないの?」
「……まあ、普通の靴よりは」
「普通の靴と比べないでよ」
ごもっともです。
その後、しばらく説明することになった。
最初は平らな場所で練習すること。無茶な走り方をしないこと。中古でも状態の悪いものは買わないこと。何より、危険な場所で勝手に使わないこと。
結局、購入する前に店で状態を確認するという条件で、何とか話をつけることができた。
もちろん、俺が将来、ビルの壁を走ったり、命懸けの戦いに参加したりするつもりだとは言っていない。そんなことを言ったら、購入どころか外出まで禁止されそうだ。
……まあ。俺だって、いきなりそんなことをするつもりはない。最初はちゃんと基礎から始める。
そこだけは、本心だった。
*
それからの日々は、思っていた以上に忙しかった。
朝は学校。放課後は軽い走り込み。帰宅したら家の手伝い。寝る前にはストレッチと、原作知識の整理。
もちろん、毎日全力で走ったりはしない。初日の筋肉痛で懲りたからだ。練習する日と休む日を分け、少しずつ身体を慣らしていく。
……地味だ。実に地味である。
漫画なら、ここは見開き数ページで終わるところだろう。だが、現実ではそうもいかない。
走ったからといって、翌日いきなり速くなるわけじゃない。筋トレをしたからといって、すぐに身体が変わるわけでもない。むしろ、疲れが残って思うように動けない日もあった。
それでも。
「……よしっ」
ある日の放課後。校庭の直線を走り終えた俺は、小さく拳を握った。
以前より、最後までフォームが崩れなくなっていた。まだまだ改善できるところはある。けれど、走り終えたときの感覚が明らかに違う。
足が前に出る。身体がついてくる。無理に力を入れなくても、自然に加速できる瞬間が増えてきた。
……こういうの、結構楽しいな。
「カズくん!」
声に振り返る。陸上部の練習を終えたらしい安達が、こちらへ歩いてきた。
「ああ、安達」
「また走ってたんだ?」
「ああ。ちょっとな」
「最近、よく見かけるよね」
「まあ、暇なときは」
「へえ。続いてるじゃん!」
「……何だよ。その言い方」
「だって、最初は三日坊主かと思ってたし」
「ひでえな!」
安達が笑う。
このところ、放課後に何度か顔を合わせるようになっていた。きっかけは最初の競走だ。それから何度か勝負をしているうちに、自然と話す機会が増えた。
もちろん、安達には陸上部の練習がある。俺も毎日一緒に走っているわけではない。ただ、部活が終わった後に少し話したり、たまに競走したり。そんな関係が続いていた。
「そういえば、カズくん」
「ん?」
「この前言ってた競走、まだやってなかったよね?」
「あー……そういやそうだな」
筋肉痛で延期して以来、何だかんだで機会を逃していた。
「どう? 今日」
安達が、にやっと笑う。
「リベンジしてみる?」
「……いいぜ」
「おっ、やる気じゃん!」
「今度は負けねえからな」
「ふふっ。言ったね?」
そして、数分後。
「……っ、はぁ……はぁ……!」
「やったー!」
安達が両手を上げた。
……負けた。また負けた。
ただし。
「……危なかったぁ」
安達が笑いながら、額の汗を拭う。
「カズくん、前より速くなってない?」
「……そうか?」
「うん。最後、結構ギリギリだったよ!」
俺は自分の足元を見た。
確かに、以前よりずっといい走りができた。最初の加速も、最後の踏み込みも。少なくとも、前みたいに足がもつれることはなかった。
「……次は勝つ」
「またそれ?」
「今度こそ」
「はいはい。楽しみにしてまーす!」
安達が笑う。その笑顔を見ながら、俺も少しだけ笑った。
悪くない。こうやって、少しずつ速くなっていくのは。それに、同じ目標を持って走っている相手がいるというのも、思っていた以上に励みになる。
「……安達」
「ん?」
「さっきの走りなんだけどさ」
「うん?」
「最後、ちょっと身体が浮いてなかった?」
「あー、そうかも。カズくん、加速しようとすると少し上に跳ねるんだよね」
「……やっぱり?」
「うん。もうちょっと前に進む感じの方がいいと思う」
「なるほどな……」
俺が真面目に頷くと、安達が少し意外そうな顔をした。
「……何?」
「いや、カズくんって結構真面目なんだなーって」
「今さらかよ」
「だって、前はそんなに走ること気にしてなかったじゃん」
「……まあな」
「何か目標でもできたの?」
その問いに、少しだけ言葉が詰まった。
目標。ある。とんでもなく大きな目標が。ただ、今ここで話しても理解してもらえないだろう。
「……誰よりも速くなりたいんだよ」
「……へえ?」
安達が少し目を丸くした。それから、ふっと笑う。
「大きく出たね?」
「笑うなよ」
「笑ってないって!」
「いや、笑ってるだろ」
「ちょっとだけ!」
そう言って、安達は楽しそうに笑った。
「でも、いいんじゃない?」
「……ん?」
「そういう目標がある方が、練習も楽しいでしょ?」
「……まあな」
「じゃ、頑張ってね。カズくん!」
「ああ」
「でも、次の競走も私が勝つから!」
「……それはどうかな」
そう返すと、安達はまた笑った。
……うん。次こそ勝ってやる。そのためにも、もっと練習しないとな。
*
さらに数週間が過ぎた。
小遣いは、少しずつ増えていった。家の掃除、買い物、庭の片づけ。その他、頼まれたことはできるだけ引き受けた。
もちろん、全部が小遣いになるわけじゃない。親からすれば、家の手伝いは家族として当然のことでもある。そこは分かっている。
だが、約束した分はちゃんと増やしてもらえた。使っていなかったゲームや本も、家族に確認してから一部を手放した。
そうして貯めた金を、机の上に並べる。
「……よし」
計算する。もう一度。念のため、さらにもう一度。
「……届いた」
ようやく、中古A・Tの購入に必要な金額へ手が届いた。
……長かった。
いや、実際にはそこまで長い時間が経ったわけじゃない。けれど、欲しいものが目の前にあるのに、すぐ買えないというのは、思った以上に長く感じるものだ。
「……あとは、いいやつが見つかるかどうかだな」
問題はそこだった。安くても壊れていたら意味がない。むしろ、最初の一足だからこそ、ちゃんと動くものが欲しい。
そう思いながら携帯を確認していると、以前訪ねた中古用品店から連絡が入っていた。
『中古A・Tが一足入りました。興味があれば見に来てください』
「……おっ?」
思わず身を乗り出す。
来た。とうとう来た。
「……よしっ!」
俺は勢いよく立ち上がった。
……が。
「いって!」
机の角に膝をぶつけた。
……落ち着け、俺。まだ買えると決まったわけじゃない。
*
その週末。俺は商店街の中古用品店へ向かった。
店に入ると、以前話した店員が顔を上げた。
「お、君か」
「あ、こんにちは!」
「A・T、見に来たんだろ?」
「はい!」
店員が奥へ引っ込む。そして、しばらくして戻ってきた。
その手には、一足の靴があった。
「……おお」
思わず声が漏れた。
A・T。エア・トレック。
現実世界では、絶対にお目にかかれなかった代物。それが、今、目の前にある。
外装には細かな傷がついていた。色も少しくすんでいる。新品とは、とても言えない。
けれど、足元の車輪。内部に収められた駆動機構。普通のインラインスケートとは明らかに異なる構造。
間違いない。本物のA・Tだ。
「……すげえ」
「古い型だけどな」
店員が笑う。
「前の持ち主が買い替えたらしくて、こっちに回ってきたんだ。整備してあるから、基本的な動作は問題ないよ」
「……ほんとですか?」
「ああ。ただ、最新型みたいな出力は期待するなよ」
店員は一度、動作を確認してみせた。
低い駆動音が響く。車輪が滑らかに回転する。
……おお。思わず見入ってしまった。
「初心者なら、むしろこれくらいの方が扱いやすいと思うけどな」
「……なるほど」
俺は靴を手に取った。
思っていたより重い。ただのスニーカーとは、全然違う。
これを履いて、走る。壁を駆け上がる。空へ跳ぶ。
……いや。さすがに、いきなりそんなことはできないだろう。今の俺では、まともに立てるかどうかも怪しい。
それでも。
「……これ、買います」
気づけば、そう言っていた。
店員が少し驚いた顔をした。
「ちゃんと値段見たか?」
「はい」
「結構ぎりぎりじゃないか?」
「……まあ、そうですね」
正直、財布の中身はかなり寂しくなる。だが、ここまで来て引き返す気はなかった。
店員にサイズや動作状態、整備内容を改めて確認する。その後、購入手続きを済ませた。
保護具についても説明され、必要なものを揃えることにした。予算はさらに厳しくなったが、怪我をして練習できなくなるよりはマシだ。
「ま、最初は無茶するなよ」
「はい」
「止まる練習を先にしろ。走るのはその後だ」
「……分かりました」
店員が笑う。
「みんな最初は走りたがるけどな。ちゃんと止まれないと危ないぞ」
「……覚えときます」
袋を受け取る。その重みが、手に伝わってきた。
……買った。
とうとう、自分のA・Tを手に入れた。
*
店を出た俺は、しばらく袋を眺めていた。
「……マジか」
実感が湧かない。いや、確かに買ったんだけど。
漫画の中で、何度も見たあの靴が、今、自分の手の中にある。
「……ははっ」
自然と笑みがこぼれた。
ようやくだ。これで、ようやくスタートラインに立てる。
……まあ、実際にはまだ立てるかどうか分からないんだけど。
そう考えていると、携帯が震えた。イッキからだった。
『おいカズ! 今ヒマか?』
「……ん?」
続けてメッセージが届く。
『うち来いよ。オニギリもいるぜ』
……こいつら。相変わらず急だな。
少し考える。せっかく買ったA・Tを早く家へ持ち帰りたい気持ちもある。だが、別に急いでいるわけじゃない。
……いや、気持ちとしては今すぐ履いてみたいんだけど。
それはそれ。これもこれだ。
『分かった。ちょっと寄る』
そう返信して、野山野家へ向かった。
*
「おっせえぞ、カズ!」
玄関を開けるなり、イッキが文句を言ってきた。
「呼んだの、ついさっきだろ!」
「何だよ、その袋」
「ああ、ちょっと買い物」
「何買ったんだ?」
「……靴」
「靴?」
イッキが首を傾げる。
「見せろよ」
「いや、今はいいだろ」
「何でだよ!」
……まずい。こいつ、こういうとき無駄にしつこいんだよな。
どう誤魔化そうか考えていると。
「おいイッキ! 玄関で騒ぐなって言ってんだろ!」
奥から怒鳴り声が響いた。そして。
「……あ?」
野山野みかんが顔を出した。
「またカズ連れてきたのか」
「あ、どうも。お邪魔します」
「別にいいけどよ。靴くらいちゃんと脱げよ、お前ら」
「分かってるって!」
「分かってねえから言ってんだろ!」
……相変わらずだ。
イッキが何か言い返そうとしたところで、みかんが俺の手元に視線を向けた。
「……何だ、その袋」
「え?」
「買い物か?」
「ああ、はい」
「ふーん」
みかんはそれ以上追及しなかった。
……助かった。
そう思った矢先。
「カズ、その袋こっち置いとけよ」
イッキが手を伸ばしてきた。
「おい、勝手に触んなって!」
「何だよ、減るもんじゃねえだろ!」
「いや、壊れたら困るんだよ!」
「……壊れる?」
イッキが眉をひそめる。
しまった。余計なことを言った。
そのときだった。
「おい」
みかんが、イッキの頭を軽く小突いた。
「いてっ!」
「人の買い物、勝手に漁んな」
「何すんだよ!」
「うるせえな。さっさと部屋行けよ」
イッキは不満そうな顔をしたが、やがて奥へ引っ込んでいった。
「……ったく」
みかんがため息をつく。
「悪かったな、カズ」
「あ、いえ。大丈夫です」
「で?」
「……はい?」
「何買ったんだよ」
……結局、聞くのか。
みかんは俺の顔を見て、にやりと笑った。
「別に言いたくねえならいいけどさ」
「……いや、その」
「妙に大事そうに抱えてるから、ちょっと気になっただけだ」
……どうする?
みかんは、普通の人間じゃない。眠りの森のメンバーだ。
A・Tを見せたところで驚きはしないだろう。むしろ、何かを隠そうとして変に怪しまれる方が面倒かもしれない。
「……A・Tです」
「……へえ?」
みかんの表情が、少しだけ変わった。
「お前、A・Tなんか買ったのか」
「あ、はい。中古ですけど」
「ふーん……」
みかんは袋をちらりと見て、それから俺へ視線を戻した。
「イッキには?」
「……まだ言ってないです」
「何で?」
「いや……自分でちょっと練習してみようかなって」
嘘ではない。実際、自分で練習するつもりだ。ただ、原作知識があることまでは言えない。
みかんはしばらく俺を見つめていた。そして。
「……まあ、いいんじゃねえの」
「……え?」
「別に、何始めようが、お前の勝手だろ」
あっさりした返事だった。ちょっと意外だ。
「ただし」
みかんが指を一本立てる。
「最初っから無茶すんなよ」
「……はい」
「あと、止まり方を先に覚えとけ」
「……え?」
思わず顔を上げる。
みかんは、面倒くさそうに肩をすくめた。
「何だよ」
「……いや、詳しいんですね」
「……は?」
一瞬、妙な沈黙が生まれた。
しまった。踏み込みすぎたか?
だが、みかんはすぐに鼻を鳴らした。
「別に、ちょっと知ってるだけだよ」
「……そうですか」
「走るのに夢中になって、止まれねえ奴って結構いるからな」
そう言って、俺の頭を軽く小突いた。
「怪我して帰ってきても、俺は面倒見ねえぞ」
「……気をつけます」
「おう」
みかんはそれだけ言って、奥へ戻っていった。
……ふう。何とか、変に怪しまれずに済んだらしい。
いや、最後の顔を見る限り、多少は気になっているのかもしれない。
それでも、今はまだそこまで深く考えなくていいだろう。
原作が始まるまで、あと一年近くある。
俺は俺のペースで、準備を進めるだけだ。
*
その夜。自室に戻った俺は、机の上へ袋を置いた。
中から、A・Tを取り出す。
「…………」
しばらく、無言で眺めた。
傷のついた外装。使い込まれた車輪。決して新しくはない。最新型でもない。
それでも、俺にとっては十分すぎる一足だった。
「……ようやく、か」
靴を手に取り、重さを確かめる。
手に伝わる、確かな感触。
漫画の中でしか見られなかった道具が、今はこうして目の前にある。
……やばいな。ちょっと感動してる。
「……いや、まだ何も始まってねえんだけど」
自分で突っ込んで、笑ってしまった。
そうだ。まだ、何も始まっていない。
A・Tを買っただけ。履いてもいない。走ってもいない。ましてや、炎の道なんて遥か先だ。
それでも、この一足があれば、ようやくあの世界へ踏み出せる。
「……よし」
俺はA・Tを机の上に並べた。そして、ノートを開く。
『A・T購入』
その文字を書き込んだ瞬間、不思議と胸が熱くなった。
一つ目の目標、達成。
次は、基礎操作の習得。まずは立つ。それから進む。そして止まる。当たり前のことを、一つずつできるようにしていく。
「……待ってろよ、イッキ」
小さく呟く。
あいつがA・Tと出会う頃には、俺はもっと先を走っていたい。
そのためにも、明日からいよいよ本格的な練習だ。
……もっとも。
「……転ばねえといいな」
目の前のA・Tを眺める。何だか、妙に嫌な予感がした。
いや、大丈夫だ。
俺には原作知識がある。カズの速度の才能もある。それに、ここ数週間で身体だって鍛えてきた。
だから、きっと初めてでも、ある程度は乗れるはずだ。
「……うん」
自分に言い聞かせる。そして、もう一度A・Tを見る。
……何だろう。
さっきより、嫌な予感が強くなった気がする。
まあ、気のせいだろう。
たぶん。