不死なるプレイヤーズギルド   作:笑石

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第12話 蛇剣のジャック

 

 特にやる事がないので暇を持て余した俺はモモカさんの喫茶店でお茶をする事にした。店内に入ると、眉のない店員が席に案内してくれる。俺の定位置、モモカさんがよく見えるカウンター席だ。目付きが鋭い店員さんが注文を聞いてきたので、いつものように珈琲とサンドイッチでブランチといこうか。

 

 モモカさんが珈琲を淹れている姿で癒されながら、ふと店内を見る。割と大柄な体型の男店員さんが不慣れな手つきでテーブルを拭いている。エプロンを着けているが、見た目と印象がアウトローなので全く似合っていない。

 

「こちらご注文のお品になります」

 

 声も全く可愛くない。俺は珈琲とサンドイッチを届けてくれた癖っ毛の男にニコリと微笑んだ。立ち去ったところで、珈琲を一口。誰だあいつ。

 

「ぺぺさん、なんだか最近客足が悪いんですよねー」

 

 カウンターの向こうから少し困り顔で話し掛けてくるロリ巨乳さん。俺はその言葉を聞いて、コップ一杯の清涼な水に垂らされた汚泥とも言うべき存在に視線を向ける。間違いなくアレのせいだろう。俺だってこの店に入った時、例えるならば彼女の部屋に入ったら部屋の中央に燃えるゴミの詰まったゴミ袋が置いてあった時の様な気分になってしまった。なんですアレ?

 

「最近雇ったんですよ」

 

 し、趣味悪いですね……。はっきり言って、イケメンではない。更にはこの店の雰囲気を汚している。何らメリットがない、むしろ金を払わせるべきです。

 

「あの子は可哀想な子なんです……雨の日に身体中傷だらけで倒れてたんですよ、私ほっとけなくて」

 

 捨て猫感覚か。俺ならそのままゴミ収集所にぶち込んでやりますよ。くそっ、俺の聖域を汚しよって。ムカついてきた。俺は懐から石を取り出して床に転がす。椅子に踏ん反り返って大声で言う。

 

「おいおい、こんな所に石が落ちてるぞ〜? 掃除がなってねぇなぁ、いつもはこんな事なかったけどなぁ」

 

 拳大の石だ、普通に考えて店内に落ちているのはおかしい。俺は掃除のできないゴミ野郎を呼びつけてクレームをつけてやる事にした。ゴミ野郎が慌てて石を拾いに来るので、屈んで手を伸ばした瞬間に石を蹴っ飛ばす。

 おや、足が滑った。くくく、何してやがる? さっさと拾いやがれ! 睨みつけてくるゴミ野郎はモモカさんの手前、顔には出さない様にしている様だが瞳には怒りと悔しさが宿っている。ゴミ野郎が似合わない笑顔を無理矢理作った所で、俺はモモカさんに頭を掴まれて強引に首を捻られた。ち、千切れる……。

 ニコリとモモカさんが笑顔を浮かべるので、俺も笑顔で返し、手を離してもらった所ですぐに石を拾って懐に仕舞う。

 

「あっ! お前は!」

 

 何もなかったかの様に俺が椅子に座りなおすと、突然ゴミ野郎が俺を指差して叫んだ。どうやら俺の事を知っている様だ。確かにそう言われてみれば、なんか見た事があるような気がする……。だがどうでも良いのでサンドイッチを食べる事にした。

 

「あら? ジャックさん、ぺぺさんとは知り合いなんですか?」

 

 こんな可愛くない知り合い要らないけどなぁ。しかし、どこで会ったんだろうか? 全く思い出せない。

 

「店長、こいつこそ、俺をあの日ボコボコにした男の仲間ですよ」

 

 そう言われてピンときた。こいつ、レッドに負けたゴロツキの一人だ。なんか、蛇剣だか派遣だかよく分からん事を言ってた奴。あの日って雨降ってたっけ……? 降っていたということにしよう。

 

「あの後、仲間達は全員バラバラに散っていった……。虚しさから俺は孤独に朽ちていくのだと諦めていた時……パンの耳をくれたのが店長なんだ……!」

 

 そんな大層なイベントだったかアレ? お前ら金で雇われたタダのゴロツキだったろうが。涙をポロポロ零している燃えるゴミを冷めた目で見つめながら俺は考える。ふーむ、暇つぶしには良いかもしれない。

 

「そうか、つまりお前はモモカさんに恩義を感じているわけだ」

 

 俺の言葉にハッとした様な顔で頷く、しかし俺は頭を抱える様に溜息を吐いた。

 

「な、なんだってんだ?」

 

 お前……自分の存在が迷惑になっていると気付いていないのか? そう言われて疑問符を浮かべるゴミ野郎に俺は懇切丁寧に教えてやる事にした。

 普段は昼時になろうものなら店の外まで行列が出来るほどの人気店……しかし、今日の客足はまばら。何故かわかるか?

 

「一体、何故なんだ?」

 

 冷静に考えてみろ、お前がレストランに入ったとする。しかしだ、もし入ってすぐの所に大便が床に落ちてたら……トイレかな? と思ってその店から出るだろう?

 

「ぺぺさん、汚い例えはやめて下さい。それと外まで行列は話を盛り過ぎでしょう」

 

 飲食店内で便の話はこの世界でもよろしくない様だ。俺はモモカさんのデコピンで数メートル吹っ飛んで床を転がっていく。なんだか最近俺の扱いが雑だ。しかしまだ話は終わっていない。俺はすぐさま立ち上がり埃を払うと説明を続ける。

 

「つまり、お前の存在が原因でこの店の売り上げが落ちているのだ!」

 

 ガーン、と。効果音を付けたくなるくらい見事なアホヅラを見せてくれるゴミ野郎を見て俺は満足した。ほら、分かったら荷物をまとめてさっさと出ていけ。ゲシゲシと背中を蹴るが一向に動こうとしない。

 

「俺は……ここにいたい……! どうすれば良いんだ!」

 

 そうかい、ならば死ぬしかない。骨は店先に撒いてやる。俺は確信した、こいつもまたモモカさんの身体を狙う害獣……。

 

「当初からこんな感じで。低賃金で働くというので便利なんですけどねぇ。確かにぺぺさんの言う通り、この店の雰囲気を悪くしているのかもしれませんね」

 

 シレッとした顔で言ってのけるモモカさん。薄々気付いていたのだが、彼女は好みの顔でない奴に対しては手厳しい所がある。害獣はシュンと項垂れているが、少しも同情の気持ちが湧いてこない。外見ってやつがどれほど印象に影響を与えるかを物語っている。今も獲物の油断を誘う肉食獣にしか見えん。

 

「とは言え、一度拾った責任というものがあります。ぺぺさん、何か良い案は無いですかね?」

 

 モモカさんがそう言うのであれば、仕方なしとしましょう。良い案……か。チラリと俺は害獣ゴミ野郎を頭から爪先まで見る。身長は高い、筋肉もそこそこついており、髪の毛もなんか油っぽいウネウネした海藻みたいな感じ。顔は、虫っぽい。

 

「まずは、名前だな」

 

 え? と虫顔が素っ頓狂な声を出す。

 

「名は体を表すという言葉がある。つまり、名前を可愛くすれば自ずと可愛くなる」

 

 余りにも俺が自信満々に言うものだから、虫顔は思わず頷いてしまう。

 

「そ、それで? 一体どんな名前にすれば?」

 

 そうだな……お前は今日からムシムシムッシーだ。またもや、え? と言う害獣ゴミ野郎改めムシムシムッシー。略してムムム。

 

「むーちゃんですね、中々可愛いんじゃないですか?」

 

 名付けられた本人はとても不服そうなツラをしているが、主人であるモモカさんは好意的な反応だ。俺もびっくりしている。完全にふざけていたのに。しかしむーちゃんという響きがあまりにも似合わない。

 はっ! ならば、似合うようにすれば良いのでは? つまり、ゆるキャラだ。俺は確信する。着ぐるみの中に入れてしまえば、どんな外見だろうと可愛い事この上なし!

 

 という事でモモカさんに相談してみる。

 

「うーん、なるほど。ちょっと考えてみますね」

 

 じゃあとりあえず私の方でも探してきますね。俺は店を飛び出した。といっても、服飾系に長けた知り合いは居ない。どうしたものかと、薬屋のハゲ親父の所へ来て相談する事にした。

 

「はぁ? 何だそりゃ……と言いたいところだが、面白い物がある」

 

 ハゲ親父はニヤリと口角を上げると、店の奥に引っ込むんで何やらゴソゴソとしている。やがて大きな箱を取り出して来た。何だこれ?

 

「これはな、迷宮都市で出回っていたとある装備だ」

 

 装備……? 箱を開けると、何やら毛むくじゃらの物体が詰め込まれている。気持ち悪いなーと思いながら引っ張りだしてみると、それは何とオークの生首であった。俺はムカついて生首を蹴り飛ばした。

 

「それ、被れるんだよ」

 

 なに? そう言われてよく確認してみると、確かに頭がすっぽり入る様な構造になっている。仮装用のマスクみたいだ。着ぐるみとまではいかないが、確かに面白い物と言える。こちらの世界にもこの様なジョークグッズがあるんだな……それにしては中身が肉々しいが……。何となくドクドクと脈打っている気がする。

 

「迷宮からはこんな不思議な物が手に入るらしいぞ……なんでも、これを被るとオークの力を得る事が出来るとか」

 

 ほう? 眉唾物だな。まぁそれが確かなら大したものだぜ。オークの力と言われても鼻が利きそうくらいしか思いつかないが、せっかくなので被ってみた。するとあら不思議、まるで吸い付く様にフィットしていく。

 おお、面白い。ペタペタと猪頭を触ってみる、まるで自分の皮膚の様だ。更には身体から今までにない力が湧き出してくるのを感じる。これは……? 俺はおもむろに懐の石を取り出して握り込んだ。

 

「お、おお!」

 

 ハゲ親父が驚く。それも当然、貧弱極まりない俺の細腕が石を砕いたのだ。パラパラと破片が床に落ちるのを見つめて俺は呟く。

 

 これが、力か。

 

「でもそれ、一生外れないらしい」

 

 あ、ほんとだ。引っ張っても抜けないや。ハゲ親父にも一緒に引っ張ってもらうが、まるで抜ける気配が無い。てか痛い、首が引っこ抜ける。つまりは呪いの装備らしかった。猪頭に女児の身体の珍獣が今ここに生まれる。俺は憂さ晴らしに店のカウンターを破壊してから自害した。珍獣は死んだ。

 

「フザケンナ! そういう事は先に言え!」

 

「いや勝手に被ったじゃん……」

 

 俺は復活してすぐに店内を片付けるハゲ親父の所へ駆け込み怒声を上げた。床には無造作にオークヘッドが放置されているので蹴り飛ばす。ポンポン跳ねる猪頭、ふと少し考えてみる。俺達プレイヤーは、ステータスアップ系の呪いの装備を制限なく使える? そう思ったが、オークの力を得てもあの見た目ではすぐに討伐されそうだな。却下。

 

「それでダメだったら、後はこれくらいしか無いなぁ」

 

 片付け終わったハゲ親父がまた奥から何かを持ってきた。今度はあまり大きく無い箱だ。俺はそれを受け取って無言で開けてみる。……今度は、皮だ。何だこれ、さっきの件もあってかなり不気味なんだが。恐る恐る箱から出してみると意外とデカイ、一体どんなものかというと、全身タイツだ。

 

「これもまた、着ると呪われるタイプか?」

 

 どうせそういう流れだろうなぁと聞いてみると、ハゲ親父はとてもいい笑顔で頷いた。おい、着ないからな?

 

「何でだよ、別に良いだろ? 理屈は知らんが、生き返れるんだから」

 

 俺は人を使うのは好きだが使われるのは気に食わん。とりあえず説明しろ。話はそれからだ。

 

「これは迷宮産でなく、何でも嫉妬の魔女が作った魔道具らしい……らしいというのも、嫉妬の魔女が生きていたのは随分昔の話だからな」

 

 嫉妬の魔女ねぇ。胡散臭さが更に増したぜ。

 ちなみに、魔女とはこの世界において生きる災害の代名詞みたいなものだ。そんな厄介者が作った道具って時点で信用ならない。

 

「これにな生き物の血を垂らしてから着ると、何とその生き物になれるらしいんだが」

 

 どう? と聞いてくるハゲ親父。手を顎に添えて一考。やってみるか。俺の気は変わり易い。ハゲ親父の店は薬屋さんなので、薬の調合に使えるものなら生き物の血を手に入れるのも苦では無い。と思って色んな血を見せてもらうが外見が全てキモそうなのでやめる。

 何かないかと店内をキョロキョロとしていると、商品を押し退けて我が物顔で鎮座する地竜の眷属さんを発見。カテゴライズでは小竜という、現実世界でいう所の子犬的存在のはずだがライオン並にデカイ。そう、俺のペットであるオリーブだ。

 毒々しい鱗にドブの様な瞳のオリーブは目を開けていても寝ているのか起きているのか判別し難い程無口だ。コイツの血にするか。

 

「おい、血をよこせ」

 

 主人である俺が話し掛けると、のっそりとした動きでこちらを見るオリーブ。起きていたのか。

 

『も……り……』

 

 喋れる様になってる……! 以前は竜語すら話せなかったはずだが、間違いなく竜語を喋っている。俺はまるで我が子が初めて寝返りを打った時の様に喜んだ。

 

『もり……』

 

 もり? 何だよもりって、もしかしてまだそれしか喋れないのか?

 

『もり……もり……』

 

 もりもり? 壊れたラジオみたいだなコイツ。

 

「森の事じゃないか? ほら、魔女の森」

 

 同じくもりもりもりもり言う俺に、見かねたハゲ親父が助け舟を出してくれる。俺はそれを聞いて合点がいった。確かにオリーブは嫉妬の魔女の森が好きだ、散歩に連れて行くと喜んでいる気がする。あそこには謎のキノコがいっぱい生えてるからな、それを食うのが好きなんだろう。

 

『も、り、も、り……森』

 

 わかったわかった、今度散歩に連れていってやるから。そう言うと伝わったのか、オリーブはベロを出して自分の牙で噛んだ。血が滲み出してきたので俺はそれを小瓶に受け取る。なんか瘴気が出ているが気にしない。

 

「どんどん化け物染みていくな」

 

 その原因の一端であるハゲ親父がボソッと言う。俺は知っている、俺が留守の間に怪しい薬を餌として与えていることを。しかし今はそれは置いておこう。俺は採取した血を謎タイツに垂らしてみた。

 すると変化が起こった、表面がまるでオリーブの鱗の様な色に変わったのだ。

 

「おお! これは期待できるぞ……!」

 

 ハゲ親父は変人なので、こういう怪しい品が大好きだ。かなりテンションが上がっている。期待に応えるのは癪だが、せっかくオリーブが頑張ってくれたので主人として答えないわけにはいかない。着てみた。

 

 先程のオークヘッドと違い、何も変化が無かった。サイズ的には大きい様で、ブカブカのまま俺は立ち尽くしている。

 

「おかしいなー、聞いた話だと着た人の体型にピッタリ収縮してから、変身するらしいんだが」

 

 ふむふむ……不良品か。それが正しかったのかタイツはオリーブの鱗色から元の肌色に戻っていった。さて、どうしたものか。

 

 

 

「というわけなんだが、どうだ?」

 

「え、そんなものを着せたの……?」

 

 所変わってモモカさんの喫茶店、何故か店主は留守だったので留守番を任されていたムムムことむーちゃんが信じられないと言った面持ちで俺をみている。彼は今、例のタイツを着込んでいた。何を隠そうこの俺に突然着せられたのだ。そして今、曰く付きだという説明をされたばかりなのだが……不満そうですね?

 

「当たり前だろ! こ、こんなもん着てられるか!」

 

 慌ててむーちゃんは脱ごうとする。その前にこのオークヘッドも被ってみない? とオークの生首を差し出すが手で払われてその辺を転がっていく。おいおい、扱いが雑過ぎるぞ、呪われちゃうよ?

 

「むーちゃんさーん! ちょっと手伝って下さーい!」

 

 そうこうしているとこの店の主人が帰って来たようだ。だが何故か店の中まで入ってこない。大声で呼んでいるので、とりあえず服装はそのままで外に出る。

 

「うーん、ちょっと大き過ぎましたかねぇ?」

 

 デカイ鳥だ。モモカさんは何故か馬鹿でかい鳥を片手に引きずっていた。まだ生きているのかピクピクと足が動いている。

 これは……?

 

「この子の皮を剥いで、キグルミを作ったらどうかと思って」

 

 満面の笑みで言うモモカさん。着ぐるみっていうか……、俺は何か言いたかったが正直驚き過ぎて反応が遅れていた。それ程のインパクトある光景だった。鳥は白っぽい色に黄色いクチバシのスズメっぽい顔立ちをしている。確かに、鳥類の中では可愛い部類だろうけど……。大きさは人間大だ、さすが異世界。

 

「店長、こいつの毛皮を俺が着るんですか?」

 

 むーちゃんもドン引きだ。そもそもこれって空飛んでるんだよな? どうやって捕まえたの?

 色々と疑問が湧いてくるが、俺が思わず触ろうと鳥に近付いた瞬間。瀕死の鳥の目がギラリと殺意を帯びた。この中で最も弱い雑魚、つまりは俺を殺すべくクチバシを勢いよく突き出す。

 しかしそれに気付いたモモカさんの行動は早かった。目にも留まらぬ速さで、スズメっぽい大鳥の頭を地面に叩きつける。当然、鳥さんの頭は地面に落としたスイカの様に赤を飛び散らせた。一瞬びくんと身体を震わせて絶命する。

 

「あら、やり過ぎちゃいました」

 

 血まみれの手を口元に、うっかりやってしまったと困り顔のモモカさん。俺は全身を鳥さんの血で染めながら、揺れるお胸の余韻に浸っていた。

 ふぅ。どうしようかこれ。俺とモモカさんはジッと鳥さんの死体を見つめる。

 

「食べましょうか」

 

 食べれるんだ……。木にでも括り付けてぶら下げておけば血抜きは出来そうだな。とりあえず俺はこの血まみれの身体をどうにかしないといけない。そう思って、何気なく振り返る。後ろに鳥男が立っていた。

 鳥の頭に、羽毛の生えた人間の男の身体。鳥男としか表現しようがない。俺はまさかと思い目を擦ったが、どうやら現実の様だ。

 

「まるで、元々そうだったかの様に風を感じる」

 

 風が吹くと羽毛が揺れる、その感触はしっかり感じられるらしい。鳥男が黄色いクチバシをパクパクさせながら流暢に人語をしゃべった。声はむーちゃんだ。そういう事なんだろう。別の生き物になれるといっても体型は変わらないんですね。

 

「一つだけ聞きたい事があるんだが、いいか?」

 

 むーちゃんがクリクリとした目でこちらを見つめてくる。首から下は羽毛が生えてるだけで、指とかは普通に人間と同じ形なので新手の変態にしか見えない。

 

「これってさ、どうやって脱ぐんだ……?」

 

 ……。俺は目を伏せた。それでどうやら察したらしい。むーちゃんは空を見上げた。

 

「へー、むーちゃん可愛くなりましたねぇ。これならゆるキャラも目指せそうですね!」

 

 モモカさんの無邪気な声だけが響く。しかし店長が喜んでくれた事に感動したんだろう、彼の瞳から一筋涙が流れた。へへっ、と俺は鼻の下を指で擦る。大丈夫、ちょっと顔立ちが変わって毛深くなっただけさ。

 

 

 その後、モモカさんの喫茶店は謎の鳥人間が働く店という事で少し客が戻った。その鳥人間は、魔女にかけられた呪いによって姿を変えられた元人間だとか。ちなみに、その呪いが解けると中からイケメンが出てくると噂だが……その答えは彼の葬式で確認できるだろう。

 

 

 

 

 

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