空想令嬢ガールはえちえちホームズを夢見るか? 作:何処にでもある
起きてる間の牢屋敷(5日目、エマとハンナで魔女殺しのやり方探し編)
「ココちゃんとの面会、断られちゃったね…」
「ムリも有りませんわ。わたくしが頼んだ結果相当酷い目に有ったみたいですもの。ヒロさんの判断は間違ってないと思いますわ」
「だけど、何が有ったかは知っておかないと。ハンナちゃんはその為に頼んだ訳だし……ココちゃんがあんな風になるナニカが潜んでいるのなら、ハンナちゃんが見てる夢は出来るだけ早く解決しなきゃ」
「……なんだかわたくしが悪いみたいな言い方じゃありませんこと?」
「え、そんなことないよ!? ハンナちゃんは今も巻き込まれてるワケだからさ、いつココちゃんみたいになるかも分からないよね。だからこれはハンナちゃんの為なんだよ!」
「ふーん…まぁ、エマさんのお言葉ですし信じるとしましょう」
(……解決の仕方は二つある。原因の魔女を殺すか、魔法其の物をどうにかするか。ナノカちゃんはミリアちゃんを私達をこの島に連れ込んだ黒幕と言っていた。けど……その理由は正直言って弱い。【入れ替わり】の魔法だけで確定するのはせっかちだ。ミリアちゃんはマーゴちゃんと一緒に本から魔女調べようとしているし、先ずはそっちの方で聞いてみよう)
「うん。その為にも先ずは……ミリアちゃんに会いに行こう。」
ー実質マーゴの生息地となった図書室にてー
「ミリアちゃんならアンアンちゃんとノアちゃんと一緒よ。レイアちゃんがみんなを元気付ける為に劇をしたいって言うから、先ずは脚本を描いてみようって話になったの」
「そうなんだ、ありがとうマーゴちゃん! 翻訳頑張ってね」
「ええ♡……ああそうだ、来たついでに一つ教えてあげる。この本にトレデキムの名前が有ったわ。スーパーじゃないけれど、魔女殺しに使える毒薬の名前としてね? 相当古い本の有った名前だから、スーパーの方を名付けた存在の考察に使えると思わない?」
「……マーゴちゃん、その本には誰か翻訳しようした痕跡はある?」
「そうねぇ…1行だけ、こう書いて有ったわ。
"大魔女になるためには"。
たったそれだけだけれど…どう? 参考にはなったかしら」
「……うん、ありがとうマーゴちゃん。ちょっと分かったかも知れない」
「ふふ♡ お役に立てたなら…そうだ、折角だから貸し1にしておくわね?」
ーアトリエ劇場 ミリア姫編ー
「おお! ミリア姫よ! あなたは何故そんなに美しいのか!」
「お…おー! レイア王子よー! あなたはなぜそんなにたくましいのか!」
「無常な程演技力の差があるな」
「のあは面白いと思うな」
「コントとしてか?」
「アンアンちゃん、それはのあがどう言い返してもミリアちゃんが傷つくことになるんじゃないかな」
「ぐふ…やっぱりおじさんには無理だよ…レイアちゃんの隣には相応しくない」
「そんな事はないさ、麗しの姫! さあ立って! 私と一緒にワルツを踊ろうじゃないか!」
「くっ顔が良い…! おじさんもう気絶しそう…!」
「役得と罰ゲームを同時に体験してるヤツ始めて見ましたわ」
「ミリアちゃん! 良ければハンナちゃんが変わろうか?」
「……はー!?」
「お願いハンナちゃん! おじさんを助けると思って! ホントこれ以上はおじさん持たないから!」
「ぐっ…ぐっぐっぬっ……ちょっとだけですわよ」
「ありがとう! やっぱりおじさんは木の役くらいが丁度いい…!」
「次の姫はハンナくんだね! では──お手を拝借」
「はぁ……言っておきますが、わたくし踊りとかやった事ないので、足を踏んでも大目にお願いしますわ、お・う・じ・さ・ま?」
「構わないとも! 私もエスコートのしがいがあるというものさ!」
「で、これはどんな時間なの?」
「わがはいにネタを降らせる為の時間だ。レイアがやりたい劇の方向性を見せる時間でもある」
「のあはどうやったら映えるかなーって画角を考えてたの。アンアンちゃんは劇をやるには声量と体力が足りないから、脚本を作ってってレイアちゃんに頼まれたんだー」
「二人ともすっかり乗り気だね…」
「ハンナくん! 君本当にダンスは始めてかい!? 実は演武かなにか習ってたりしたのかな!?」
「わたくしあなたのこと嫌いですもの──殺す気でやれば動きを合わせるのは容易いのよ」
「…はっはっは!──実にいい! どうやらキミは私を目立たせてくれる野薔薇の姫の様だ!」
「死ね〜ですわ〜!」
「ハンナちゃんの様子が変になっちゃった!」
「おお、殺し愛…! 今、わがはいに天啓が降りたぞ!」
「荒々しいトゲトゲ…百合の王子と薔薇の姫…良い絵が描けそう」
「ホントにインスピレーション湧いちゃってる!」
(よし、二人はハンナちゃんとレイアちゃんの踊り?に夢中になってる。ミリアちゃんに聞くなら今がチャンスだよね。……でも、本当にミリアちゃんが黒幕なのかな? ナノカちゃんが【幻視】で見た通りの人なら……悪い人なら、こんな危険な屋敷には行かないんじゃないかな。でも……あれ?)
「アンアンちゃん、その空になった瓶は…なに?」
「?……ああ、これか。スーパートレデキムの瓶だ。道端に落ちてたから拾った」
「待って、まだ中身は半分は有ったよね? 残りはどうしたの?」
「さぁな。わがはいが拾った時にはもう空になっていた。大方独占したい誰かの仕業だろう。魔女化がノア、レイア、ココと続いたからな。次は自分かも知れない…ではない。
「………待ってアンアンちゃん。なんでそれを知って、普通にしてられるの?」
「何故か?──わがはいはまだ、昨日服用した分が残っている。きっと放っておけばマズいのだろうが……今はそんなことどうでも良いじゃないか。
──興奮していた。頬を赤らめ、声を上擦らせて、息を荒げて、酔っ払ったみたいに、寝惚けているみたいに、くらくらと頭を揺らしていた。
──眼の前のボクのことも見えてないんじゃないか。そう思わせる彼女の言葉の意味は、ボクにサイアクな未来を想起させるのに十分な物だった。
(──あ、だめだ。このことが知れ渡ったらみんな疑心暗鬼になる。魔女化が進むだろうし、殺し合いになる)
「アンアンちゃ──」
──声を掛けようとして、最後まで言い切れずに喉がヒキつく。一瞬の筈だ。ボクが考えるのに使ったのは、本当に短い時間だったのに。
──アンアンちゃんはその僅かな時間に、顔を青ざめさせて、覚束ない言葉を口にして、呼吸を乱して、意識を失いそうになりながら、寝付けない子供のように頭を抱えてしゃがみ込んでいた。
みんなと一緒に逃げる(死)
→アンアンちゃんに駆け寄る
「──は?……幸福? わがはいが、幸福?……は、はは。はははは。
……ダメではないか。わがはいがしあわせになっては」
「──みんな耳を塞いでアトリエから出て!!」
──虚構の幸福で築かれた舞台が崩れていく。みんながキョトンとした顔でボクの方を見てる間に、ボクは真っ先にアンアンちゃんの方へ駆け出した。
──角が伸び、髪が増えていくアンアンちゃんを押し倒して、両頬に手を添える。こんな時、こんな時……ヒロちゃんなら、こうしてると思ったから。
「や、やめろ…わがはいに【近」「ごめんアンアンちゃん、ボクにはこれしか思い付かなかった」──〜〜〜ッ!!!??」
──魔女化したアンアンちゃんは、ボクなんか簡単に殺せてしまうだろう。力も、魔法も、今のアンアンちゃんの方が強い。だけど……心なら、魔女化して脆く砕けそうなアンアンちゃんを、ボクは支えられると考えた。
──挙句の発想。魔女化の初期段階ならまだ引き返せる。そんなあるのかどうかも分からない希望だけど、ボクはそれに全てを賭けた。この場に居るハンナちゃん、レイアちゃん、ミリアちゃん、ノアちゃん、アンアンちゃん……そしてボク自身の命を、全部。
──正しいことをすればヒロちゃんと仲直りできるかも知れない。幼い頃から一緒に居て、仲違いしたまま此処で再会したヒロちゃんと……そのキッカケに出来るなら、ボクは
「んあー……じゃーん、アンアンひゃんのしひゃー」
「ガッ…アっ……あっぁ…!?」
「んー……んぐっ…呑んじゃったぁ」
──ざらりとした舌触りと、深いところに甘さのある味。うっかり飲み込んだものが、お腹にズシリと存在感をしてしていた。
──赤い蝶がボクとアンアンちゃんの口元から舞い飛び交う。これで意識は持って来れた。アンアンちゃんを一人だけの世界から、無理矢理ボクを視界に入れさせた。……とても酷い事をしたと思うけど、洗脳を使わせずにアンアンちゃんに言葉を届かせる方法は、これが1番良さそうだったから。
──ごめんねアンアンちゃん。始めてのキスをこんな思い出にして。責任は取るから、ごめん。
「アンアンちゃん。ボクに言葉をちょうだい?」
「え…あ……えあ…ぁ?」
「ボクがしあわせにして、ふこうにしてあげないから。その代わりに、アンアンちゃんのお口をボクにくれないかな」
──理解が追いついてないアンアンちゃんの口元を指で拭う。蝶になれなかった微かな血が跡を残す。自分でも何を言っているか分からなくなってくるけど、必死に考えて言葉を紡ぐ。
──幸せになってはならない。アンアンちゃんはそう言っていた。だけど酔っていた時は幸せになりたがっていた。なら、アンアンちゃんに必要なのは幸せになっていいという無条件の赦し。
「ボクの側に居て、ボクを望んで、ボクに縋って、ボクに酔って……そうしたら、キミはしあわせになっていい。キミはボクと一緒にいる限り、幸せになっていいんだよ」
──今のボクには用意出来ないもの。だから条件を付ける。きっと昔にそう考えるだけの何かが起きたんだよね。だから、ボクを言い訳にして自分を赦せるようにしよう。
──先ずはそこから。ボクとアンアンちゃんのまだお互い知らない事ばかりだから、約束しか出来ないけれど。
「う……あ……えあ…エマ…ダ…だ、これは、わがはいが可笑しく」
「ボクは諦めないから──頷いてくれるまで、舌を貰うね」
「待っ──〜〜〜っっ!!!?!??!?」
──ところで、みんなはいつまで見てるのかな。ボクが頑張ってる内に逃げるなり助けを呼ぶなりあるんじゃないの? 幾らボクがたくさん食べられる方でも、アンアンちゃんは魔女化で幾らでも舌が復活するんだよ?
──うぅ……助けて、ヒロちゃん! ボク、このままじゃお腹いっぱいになっちゃう!
ーその後、エマが舌を五本食べた辺りでアンアンの魔女化も収まりなんとかなったー
「……………」
「戻れて良かったね、アンアンちゃん」
「……………」
「ねーねー、エマちゃんに食べられてた時のアンアンちゃん描いていい?」
「…………!(ポカポカ)」
ー元に戻れたアンアンはその日、ずっと口元を手で押さえることになったー
「あの…お、お昼…食べないんですか? おいしいですよ、ハンナさんが持って来てくれた料理」
「……今はお腹いっぱいかな」
ーエマはお昼を抜いたー
「これは…いったい…?」
獣も息を潜める丑満時。ハンナが夢でミリアと共にロンドンを探し回っていた頃。
「その島にどうして【遊園地】が…」
──只ならぬ気配に銃を構え、いつでも撃てる様にして。
──それから近くの草むらに潜んで、深い深い、遠くに観覧車の影が見える、霧の濃い寂れた遊園地を観察する。
「魔女の仕業ね……どうにか、ここから【幻視】出来れば……」
──この島に来てから4日を経て5日目に移ろうとする夜の時間。私、黒部ナノカは黒幕の眼を欺く為……看守に守られた牢屋敷から滞在しない為に、この島で最も危険な暗い森の中に潜伏し続けていた。
──危険なのは百も承知。それでも、私は看守に……魔女化したお姉ちゃんに守られ続ける牢屋敷に居るよりはマシな場所だ。
「ムリそうね……物音は聞こえない。気づかれないよう入り口まで近付いて、触れさえすれば……」
──私は、【幻視】の魔法を持っているせいでこの島に連れて来られた。
──触れたものの過去や…稀に未来を、不安定ながら見る魔法。
──これのおかげで、私は牢屋敷に隠されていた1日に1発装填される魔法の銃を見つけ、この暗い森を安全に過ごす場所を割り出して生き延びることが出来た。
「…………」
ジリ…ジリ…。
──お姉ちゃんは15歳にこの島に連れて行かれる筈だった私に【変身】する事で代わりに連れてかれ……【幻視】の魔法は私が姉の跡を追う様にここに来る未来を見せた。だから私はこの日の為に様々な備えをして、今日を迎えている。
「……発動はしない…か。もう少し触れ続けるか」
「いっそ、中に入って調べても良いだろう。大丈夫だ、チケットを買い客として入れば襲いは…」
反射的に発砲された銃弾が私の片目を貫いて、後ろの木に小さなクレーターを作る。
良い腕前だ。将来使う武器に合わせて射撃訓練でもしたのだろう。私は中身のある人間だったなら殺すのに十分な一撃だった。
「襲いはしない。例え自称でもテーマパークが不当にお客に害を与えるのは正しくないからな」
ギィ…ガタン。
ただ、私は歯車と仕掛け糸、それから木の骨組みで出来た人形。
眼に値する場所を貫通した所で、少し風通しが良くなるだけだ。
「近づかないで。それ以上近付いたら殺すわ」
「なら、キミの方が一歩下がった方がいい。ここは夢と現の狭間だ。現実の方に立てば夢は手を出すことも出来ない」
「信じられると思ってるの?」
「信じなければ言葉を交わす意味がない。言葉を交わすならある程度信用するのが正しい交渉術だと思うが……それに、距離があった方が逃げ易くもなるだろう。ああそれとも……こんな怪物の言葉には従いたくないかな?」
警戒される見た目なのはコチラも理解している。塗装が剥がれ錆び付き、霧の濃い遊園地から出て来た歯車仕掛けの人形を信じる者は少ないだろう。それも牢屋敷の顔見知りと同じ服を着て似た様な物言いもすると来れば尚更だ。
「折角この遊園地が出る時間帯を出歩き、偶然でもここに来れたんだ。会話の一つ、した方がいいと私が思うがね」
そう言うと、ナノカは銃を構えたまま一歩だけ下がって、私を睨むことにしたらしい。
膠着状態……と言うには隙だらけだが、別に殺したい訳でもない。
ただ……遊園地の入り口に触れた上で森側から現れた私に対し一歩下がってしまったか。既に入場寸前なので、これ以上入らないでくれると良いんだが……。
「一つ目の質問よ。あなたは何者?」
「二階堂ヒロ。正確には、牢屋敷の彼女を模し、代用にする為に作られた
「二つ目、誰があなたを作ったの?」
「キミの後ろにある遊園地のオーナー。飾りっ気のない言い方をすれば、
「三つ、何が目的?」
「私のことなら正しくする為。オーナーの事なら…"大魔女になる為"だろう」
端的に、必要な事だけを伝えた。
あまり長く話しても余計だと切って捨てられそうな雰囲気がしたからな。おかげであまり信用は得られてないが、別に得たいとも思っていない。寧ろ、警戒してくれないと困るくらいだ。
ここで警戒せず遊びに来るのは正しくない関係だからな。
「……知り合いの魔法少女が、友達が夢の中から不思議な薬を持って来た事を教えてくれたの。あなた達との関係は?」
「桜羽エマからハンナのことを聞いたのか。そうだな、関係ある。というより此処が原因だ。
ああ、品々に罠はないことは保証しよう。どれも……S13以外はこの島の外からオーナーが引っ張って来たものだ」
「何故名前を…いえ、S13は噂の魔女化を抑える薬のこと? アレは一体なに?」
「オーナーが創意工夫と迷走の末に完成させた魔法の薬だ。効能としては「抑える」より「抜き取る」もの……要は魔女因子を下す薬…アルコール成分のある下剤だと思ってくれ。摂りすぎると精神が言葉にするのも憚れる事態になり肉体も死んだも同然になるが、適量なら本当に有益なんだ」
「そんなおいしい話があるとでも?」
まぁ、そうなるか。これは私がナノカ側でも同じことを言うから仕方ない。
だが、肉体に染み付いた魔女因子を物質化して体外に排出してるのも、完治は無理でも限りなく普通の人に出来るのも本当だ。
まだ生産体制こそ整ってないが、この遊園地の目玉商品として日夜量産しているし、より良くなっている。
「ある…と言うだけでは足りないか」
そうだな……この話は彼女の為にも信用させたいし、こうしよう。
「特別だ。私が遊園地を案内しよう。まだ調整中のアトラクションも多いが、1つだけハンナのおかげで遊べるようになったんだ」
「その手には乗らない。そうやって逃げられなくして殺すつもりでしょう。
それに、その薬とやらも怪しいものね。本当に魔女化をなんとか出来るなら、この森に居る魔女も元に戻せるはずよ」
「そうか、遊ばないか……あと、薬の方は言っただろう。まだ量産出来てないんだ。なにより、この島で戻した所で出来ることも知れている。オーナーの魔法で日々の生活を送れる様にしたって、社会復帰をさせるには政府の協力が必要だろう? コチラにも事情があることは察してくれ」
そこの判断は難しい所だ。最近作られた私にはとやかく言う権限が無いし、S13の制作には何人かなれはてを利用する必要もある。私も研究資料は読んだが、魔女因子の
そこに幾つかの魔法を組み合わせても居るから……現状だと作れて毎日小瓶一つ、30錠。
この牢屋敷だけでも13人だ。適量ではどうしても3人溢れるし、それを知った少女達が
「ハンナにはオーナーの理想も入った夢を見せているが……いや忘れてくれ。余計なことを言った。
兎も角、私達は君達に敵意はないというのは理解して欲しい。オーナーはオーナーなりに正しいことを成そうとしている。それは私が保証しよう」
「………横にズレなさい。私はもう帰らせて貰うわ」
ふむ……そう都合良く薬の効能を信じて貰うのはムリだったか。
だったら、お土産代わりにこれだけは言っておこう。
「分かった。魔法の都合でお土産を渡せたりは出来ないが代わりに一ついいことを教えよう。
"ナノカ、キミの姉にS13を3錠服用させれば人間に戻せる"」
「……!!」
「既にハンナが試してくれた様でな、その時は1日でなれはてに戻ったが、1日…24時間置きに服用させ続ければその時間も伸びていくだろう。オーナーが自分で試した時の資料に寄れば3日続けたらその後5日間は人のままだったそうだし……久々に姉と話したいならそうするといい」
「…………」
彼女は私が横に退くや否や森の中へと消えていった。
さて、これで少しでもS13がいい物と広まれば良いのだが。
彼女は見たところそれほど感情的でもない様だし、一回話せばそれで満足するだろう。その間、森の魔女達を遊園地に引き付けておくようオーナーに頼まなければ。看守が弱体化している間に牢屋敷を襲ったら大変だ。
わざわざ姉を助ける為にこの島に来た子だ。このくらいのお節介は正しいだろう。
「受付も終わった事だし、ハンナのサポートに戻るとしよう。……いや、その前にココの方が先か」
まさかレプリカのココと同期するとは思わなかったからな。オーナーにも何事かと驚かせてしまったし……慌てて他のレプリカに指示を出して脱走だけは防いだが、かなりのトラウマになったのは想像に難くない。幸いハンナと同室である様だし、医務室から戻って来たらハンナと一緒に招待するとしよう。
そろそろ遊園地に招く客を増やそうと提案すれば、オーナーも乗り気になる筈。夢で包んでないとどう見ても廃園だが、包めば一端のロンドン風テーマパーク。元々オーナーが同期の少女達の心を癒す為に創った物なのだし、有効活用していこう。その為にも…一旦、今のココの様子を見なければ。
[業務放送、業務放送、【千里眼】と【念写】は望遠台へ。以上]
夢は夢、現実は現実。未だ不慣れなので片方だけでしか活動出来ないが、其の内同時に動けるよう慣れなければ。今はまだ私がオーナーの代わりに指示を出してなんとかしているが、他の同期のレプリカも夢から醒まさないと手が足りなくて仕方がない。なにより、真実から目を逸らすのは正しくない。
酷だとは思うが、牢屋敷の方も魔女化が激しくなって来た。発散された魔女因子の受け皿として早く育てなければ。
「か、かく……お…おじ……」
「める……なん……る」
「来たか。では、魔法の方を頼む」
入り口から霧を幾つか渡った先。高く積まれた本の塔の頂上、出鱈目に折れ曲がった望遠鏡の前に待機していた二人の人形と手を繋ぎ望遠鏡を覗き込む。片方は随分昔に死んだらしい者の人形だが、そこに積もった魔女因子の力は本物だ。
即ち、遠くの物を見る魔法とそれを映し出す魔法。その二つの魔法に反応した夢から取り出された望遠鏡はコチラの事を隠しながらも、まるでその場に居るかの様に遠くの出来事の観測を可能にする。
私も日中暇さえあれば良く使っているものだ。ココがついさっきS13を飲む前は【念写】と【読心】で動かしていたが……【読心】の代わりにココを入れれば映像も音もよく伝わるようになると踏んでいたんだ。良い機会だし試しておくとしよう。
やることが盗み見なので座り心地の悪い施設ではあるが、向こうの情報は知っておくべきだ。正しく動く為にもここは妥協するワケには行かない。
「……っ! ふぅ…魔法を重ねられる感覚は…いつまでも慣れないな」
繋いだ手から伝わる感覚に船酔いに近い状態に陥りつつ、眼を開ける。
すると私は遊園地ではなく牢屋敷に立っていた。肌色に塗られた木の身体は肉と皮の感覚を思い出し、カツラではなく本物の髪が頭皮から生えている。宝石が嵌め込まれた眼も柔らかさを取り戻し、本物の人間の身体……に限りなく近い、イメージの自分に変わっていた。
あくまでもイメージだ。魔法を使う感覚に対し勝手に思考が補完したに過ぎない。
……ああ、やはり医務室か。ココと私…二階堂ヒロが居る。片方は眠れずに震え、片方はうつらうつらとうたた寝を漕いでいるな。それでもココの背中を撫でる手を止めない辺り、やることはやれているか。
後、ココの陰に隠れていたがシェリーも居るな。かなりぐっすりだ。今夜はもう起きることもないだろう。
「はっ…はっ…な、なぁヒロっち。あてぃしさ、最初に二つの景色が見えたんだよ」
「二つ…?」
「お嬢がシェリーと一緒にイオンで買い物してるのを見てるヒロっちと……はっ…はぁっ…うぐっ…!」
「落ち着け。ほら、水だ。飲んで深呼吸をするんだ」
「んぐ……すぅ…ふぅ……そ、それでもう一つがさ、あちこち錆びついてぶっ壊れた遊園地で…霧が濃くて、変な建物が並んでてさ。見てて不安になるって言うか、工場の廃油みたいに変な虹色でさ……あてぃしみたいな人形が有ったのよ」
「ココみたいな人形か…」
「そう。複眼で、爪が黒くて、まるで魔女になったあてぃしを観ている感じで、キモ〜って思いながら見てたら…ギョロって眼が合った気がしてさ。気付いたら見える視界が一つになって、あてぃし、あの人形の中に入ったみたいになって…!」
「落ち着け。ここは牢屋敷だ。誰もココを襲ったりしない」
「あてぃし怖くなって…! 屋敷に帰りたくて! 走って、走って、そしたらヒロっちみたいな人形と一緒にみんなに似た人形が追いかけて来て! なんなんだよアイツら! 巫山戯んなって出口が見えて森に逃げようとしてキモい音楽鳴ったと思ったら急に暗くなって!!」
『シッ』
「って! シッて誰か蝋燭を消したんだよ! そしたら急に真っ暗になって! 心音図の止まった音がずっとして! 一歩歩こうとしたら歩けなくて逆さまに落ちてもうムリだ詰んだってなってたら脚捕まれて!!!」
「落ち着け! ココ! ココ!」
「ぎぃ…って、クローゼットが軋みながら開いた音がしてさ……。
アイツが……アイツが居たんだ……あてぃしのかぞくみーんな殺しやがったあのクソヤロウがさぁ……にやにや笑ってあてぃしの脚掴んで包丁持ってんだよ。にやにや、にやにや、あてぃしを見て」
「ココ! 正気に戻れ! 思い出さなくて良いから!」
「『みつけた』って………言ったんだ」
「ココ! 沢渡ココ!……気絶している。思い出した恐怖に耐え切れなかったのか……頑張ったな、ココ。ゆっくり休め……今夜は私達が着いているから」
起きてる間の牢屋敷(ヒロとシェリーで魔女殺しのやり方探し編)
「……同行してくれるのはありがたいが良かったのか? ハンナと…桜羽エマの方は」
「大丈夫です! 離れるのはお二人には言っておきましたし、今のココさんとヒロさんを放っておくのは名探偵的にあり得ないので!」
「そうか……」
「……ピーン! シェリーちゃんヒロさんの考えてること分かっちゃいました! ココさんにはメルルさんが一緒に居ますし、大丈夫じゃないですか? 案外元気にしてますよ、多分!」
「だといいんだが……」
「ありゃー、心ここにあらずですね。これは名探偵シェリーちゃんが活躍する他になさそうです」
「喧しいと思ったら……森に何の用、二人とも」
「あ、ナノカさん! 初日以来ですね! 気になってたんですけど、お風呂や洗濯ってどうしてるんですか? 身体痒くありません?」
「それは…湖の方で……」
「くだらない事を訊くなシェリー。ナノカも答えなくていい」
「そう」
「てへ!」
「単刀直入に聞かせて貰う。ナノカ、"夢を見せる魔女の事を知っているなら教えてくれ"」
「………私に訊く理由は?」
「昨日ココがハンナと協力しその魔女の居場所を特定しようとした。その結果、彼女は逆に夢の中に囚われた。そして逃げ行った先で、出口から森を見たらしい。そして森の事ならばナノカ、ずっとこの森に居る君が1番知っている。だから訪ねに来た」
「……なるほど」
「それで、何か知っていることは? 欲しいものがあれば可能な限り叶えよう」
「必要なものはない。私は、"あなた達と協力することはない"」
「あちゃー、断られちゃいましたね、ヒロさん」
「そうだな……」
(ふむ。思ったより難儀な性格だな……ここはハッタリを効かせた方が良いか)
「それは困ったなぁ、黒部ナノカ」
「勝手に困ってなさい。私は私のやり方で」
「"キミのやった事を黙っておく代わりに聞くだけで済ませてやろうと思ったんだが……どうやら私の口を止める気がキミにはないらしい"」
「……!?」
(この反応…やはりか。こんな危険な森に居るのは何か腹に隠し事があると言ってるようなもの。それが何か分からないが……間抜けは見つかったようだ)
「おや? どうしたその反応は。まさか、バレてないとでも思ったのか? そう思っていたならとんだ思い違いだな、黒部ナノカ」
「…………」
「それとも、キミの察しの悪さを私が見誤っていたか。そうだとしたら済まなかったな、次からはもう少し分かりやすく言おう。あぁ、殺すつもりなら不可能とだけ答えておこう。対策もなしに銃持ちと相対するほど、私達はバカではないのでね」
「…………」
「イェーイ、銃弾くらいなら素手で止められるシェリーちゃんでーす」
(ナイスアシストだシェリー。アドリブに合わせてくれるのは助かる)
「……何が狙い?」
「狙い? 最初に言った通りだ。夢の魔女の事について、知っている事を全て話せ。そうすればこの口は秘密を守るだろう」
「……分かった」
ーナノカは昨夜見た遊園地について話したー
「──…以上が私が知っていることよ」
「ありがとう、おかげでやるべき事に目処が立った」
「……脅しておいて、よくそんな事が言えるわね」
「ああ、脅し文句が苔むしてるのにしっかり言ってくれたからな」
「こけ…?………!!!」
「あー、
「なに、友人同士の軽い冗談だ。はっはっは。コレからも仲良くやっていこうじゃないか、ナノカ」
「…お断りよ!」
「行っちゃいましたね。嫌われたんじゃないですか? ヒロさん」
「必要無くなれば誤解は解いておくのが正しい。なにより、あのまま誤解したままよりさっきの方が仲良くなれる」
「そういうものですかね」
「そういうものだ。「油断ならない」よりも「気に食わない」方がまだ関係が近いし……ずっと森に居ては彼女の身が持たない。幾らゴクチョーや看守を警戒してようと、私達は若い女の子だ。軍人ではないのだからそう遠くない内に彼女は倒れる。そうなる前に、遠慮なく助けを求められる友人が今の彼女には必要だ。あの調子で仲を深められれば、彼女のSOSを拾いやすくなるだろう」
「ははぁ…ヒロさんって面倒見が良いですよね。昨晩もココさんが気絶した後も朝まで起きたままでしたし、大変じゃないんですか?」
「なんだ、起きてたのか?……まぁ、私は正しいと思ったことをしているだけだ。困っている人、助けが必要の人に手を差し伸べるのは正しいだろう? だから私はそうしているに過ぎない」
「なるほどー…ならなんでエマさんをあんなに敵視してるんですか?」
「悪だからだ」
「悪? とてもそうには見えませんが」
「やつは悪だ。魔女だ。邪悪其の物ですらある。桜羽エマは"ユキ"を殺した。殺人は悪だ。悪は正しくない。正しくない。正しくない正しくない正しくない正しく」
「シェリーちゃんビーンタ!」
「ブフォ!?」
「ご説明ありがとうございます! それでは引き続きココさんを助ける為にも頑張りましょー!」
「く…首が……そうだな、ああ、そうしよう。正しく生きる為に」
(うーん…どうやら何か誤解がありそうですね! 今度エマさんの方にも聞いてみましょうか。そのユキさんについても、ヒロさんに聞くよりは色々分かる筈です!)