空想令嬢ガールはえちえちホームズを夢見るか? 作:何処にでもある
起きてる間の牢屋敷(ボイパin蓮見レイア)
エマ「ご飯が黒炭 お水ぬめぬめ お肉ぶよぶよ 散々悲惨ご機嫌悲観メルルも落涙朝食最悪 ゴクチョーも改善する気が一切ない! heyノア!」
ノア「うぇ? うーん……フードはイートそれだけでおっけー ノアはお絵描き出来れば最高 特に好きなのスプレーアート! ごはんはそこに置いてってー」
「それは違うよノアちゃん! 食事は大事アートも大事 だけどここでやってはみんなが困る! アンアン咳き込み鼻摘まみ! フードにコート! アートにアトリエ! ボクも一緒に探すからやめようノアちゃん!」
「ぶー……でもアンアンちゃんが困るなら……わかった。約束ね」
「oh yea…」(ストリートアーティストとセッションしちゃった!)
※遠野ハンナが収容されてる牢屋敷には、彼女を除き12名の魔法少女が居る。
番号順で桜羽エマ、二階堂ヒロ、夏目アンアン、城ケ崎ノア、蓮見レイア、佐伯ミリア、宝生マーゴ、黒部ナノカ、紫藤アリサ、橘シェリー、遠野ハンナ、沢渡ココ、氷上メルル。
以上13名が、魔女候補として囚われている。
「はんはははーん♪」
ハンナが成仏した次の日、シェリーはサンドイッチ用のベーコンと目玉焼きをジューッと軽く焦げ目が付く程度に育て、パンに挟んでいた頃。
「いい匂いですわ〜…」
「な〜ななハンナさん! 今日もこっちに来たんですね!」
「ええ、寝て起きたら椅子の上に立ってましたわ。踏んづけちゃってごめんなさいですわ」
「あ、それ私がハンナさんが消えた所に椅子を置いたんです。なるほど、出現位置に邪魔なものがあると上側にズレるんですね!」
「ちょっと? わたくしの謝罪返してくれません?」
重なったりしなくて良かったですねーとすっとぼけた顔でシェリーが2皿を机の上に並べ、サンドイッチを二つずつ置く。
「どうぞ! お詫びにシェリーちゃん特製サンドイッチをご馳走します!」
「……こんなのに釣られ……まぁ、許してあげないこともなくも…なくもなくもありませんわ!」
「それって食べるって事でいいんですかね。あ、ウィンナーもありますよ!」
「美味しそ……いえ、わたくしは決して釣られませんわよ!」
「そうですか? それじゃあ私は先にいただきますね!」
昼の分とまとめて作ったものだが、不慮の事故があわや発生するかも知れなかった相手を買収出来るなら安い出費である。
「あー……」
「うっ……」
ザク、パリ。
「ん〜〜! 美味しいですねー!」
「うー…! やっぱりいただきますわ!」
ハンナは目の前でパリッと音を当てるウィンナーと、ザクっとおいしそうな音を立てるパンに負けた。牢屋敷の黒ずんだナマモノとは比べ物にならない食事を前に、ちょっとくらい実験された過去は消え失せるのだ。
「って! こんなことをしてる場合じゃありませんの!」
「ごちそうさまでした。美味しかったですか?」
「ああそれはもう美味しくごちそうになりましたわ……じゃなくて!」
コーヒー片手にブレイクタイムに突入した所で、ハンナが違う違うそうじゃないと席を立つ。
実際トンチキな事態に巻き込まれてるので言いたい事は分からなくもなかった。
「確かに妙な事態に巻き込まれてるみたいですけど、別に焦って解決するようなものでもないのでは?」
「うっさいですわ! こちとら毎晩こっち来てたら寝た気がしませんの! ただでさえおっかない看守ばウロつく屋敷に囚われてるのに、いちいちコッチに来てたら身が持ちませんのよ!」
美味しい食事や魔女化を抑える薬剤など色々貰ってる側なのにこういうのは少し後ろめたくも思うが、だからといってずっと橘シェリーそっくりのシェリー・ホームズのお世話になる訳にもいかない。
実の所これ以上シェリーに迷惑をかけたくないから解決したいというのがハンナの本音ではあったのだが、それを正直に言うのが気恥ずかったハンナは自分勝手な理由を偽証することにした。
オマケにワガママ令嬢っぽく振舞えて一石二鳥である。
それ聞いていたシェリーは、知ってか知らずか指を鳴らして一つの結論を述べた。
「つまり、私に依頼をしたいということで宜しいですか?」
「それは……勿論協力してくれたらありがてーですが……」
断ろうとしたが、ハンナは自分がそこまでこの地の土地勘もアテもないことを思い出して言い淀む。
「眠っている間にこの街に迷い込む、魔法が絡んだ謎……なるほどこれは難事件ですね! いいでしょう、この名探偵シェリー・ホームズにお任せください!」
虫眼鏡を突き出し、パイプを咥えて決めポーズを取る。子供っぽくもあるが、随分とサマになっていた。
「い…言っておきますが、わたくしお金とか持ち合わせておりませんわ。びた一文出せやしませんわよ」
「ああ、それは問題ありせん。代わりに身体で払って貰いますので!」
「なぁ…!?」
その言葉にハンナの顔が真っ赤に染まる。シェリーの口から飛び出た言葉に思わず、次の言葉の間に様々な空想が脳裏を駆けていく。
「お…女の子同士は不健全ですの!!」
「んー…? 私の助手として働いて貰おうという話ですよ?」
「あ…!? な…! それはならそうと先に言ってくださいまし!」
そんな訳でハンナはシェリーに協力して貰うため、名探偵の助手として働く事になった。
住まいと食事付き、家事と依頼の解決が彼女に与えられた仕事である。
しかし……そうなると人間とは不思議なもので、このシェリーハウスの隅に溜まっている埃や一部乱雑に積み上がった本の塔が気になってきた。
そもに先ほど食事を取った机の上なんて雑に書類等が端の方に積まれている。これはどういうことだと視線をを送ってみれば、シェリーはあははと誤魔化すように笑ってみせた。
「いやー、仕事が入ると片付ける暇がなくてですね? その上帰り際に気になる推理小説を見るとついつい買っちゃうんですよねー」
「そんなこと言ってたらいつまで経っても片付けられませんわ! ほら、誰か来る前にホウキの一つでも持ってくださいまし!」
「あー…それはまた今度にしましょう」
「なんですの、おサボりは許しませんわよ!」
「いや、そうじゃなくて……」
カランカランと扉に付けられた鐘が鳴る。
ハンナが振り返ればそこには──牢屋敷で見た事のある顔が、カラフルな傘を
「探偵さん。ノアね、お仕事をお願いしに来たの」
15の年に反してあどけない顔に、白い髪に付着した赤青黄の三原色。
これまたハンナが起きてる間に見かけた城ケ崎ノアと同じ服と顔をした少女が其処に立っていた。
♧ ♠︎ ●
「いやー、見事にバルーンの絵ですね!」
先ずは現場の確認だと街を歩いて数分後。
ノアに連れてこられたシェリーとハンナは、それはそれは見事な歌劇場──オペラ座のにあるというノアのアートを前にしていた。
ハンナとして出た時にはなれはてに追いかけられていた時と明らかに地形が変わっていることの方にツッコミを入れたかったのだが、シェリーが事前に「大家さんに好きな場所に繋がる魔法を扉に掛けて貰ったんです! 驚いたでしょー」の一言で封殺されていた。
どうもこの街では魔法も魔女も牢屋敷よりもずっと身近なものであるらしい。
ハ○ルの動く城かよとハンナは思ったが、一先ずノアの話を聞くことを優先する事にした。
「ノアはね、このオペラ座の壁や天井にお絵描きする仕事をしてたの」
「補填とリタッチですね。この前の地震で剥がれた分を有名アーティストのバルーンが直すと新聞にありましたが……なるほど、あなたがその人でしたか」
「そだよー」
「バルーン」
これはハンナも知っているストリートアーティストの呼び名だ。
牢屋敷の城ケ崎ノアも同じ名称で世界的に有名であり、彼女の描いた絵は億単位で取引されてるという。
そんな彼女だが、この街ではその二つ名の由来からすれば随分と格式の高い仕事を任されているようだった。
「ノアはね、描きたい絵しか描きたくないの。でもこの仕事はノアの魔法にしか出来ないって言われたから仕方なくやってたんだ」
「
ハンナが横目でチラリと件の壊された絵を見る。元は宗教的で厳かな絵だったのだろうそれは、今やあのバルーンらしい先進的で見るものに強い情動を覚えさせる物になっていた。ハンナからしたら元よりもずっと良い天使の絵に見えるが……元通りにする仕事としては落第だ。
一見、バルーンが本来任された仕事を放棄したように見える状況である。
「……そこは事件に関係ないよ? 探偵さん」
「おっと、それは失礼しました!」
ノアが言い淀んで否定した言葉にいつも通りの笑顔で謝罪した。
「しかし謎ですね、気付けば直した絵が自分の絵になっていたなんて。これは間違いなく魔法の仕業でしょう! この難事件、名探偵シェリーちゃんが華麗に解決してみせます!」
「うん。おねがいね、探偵さん」
躊躇なく依頼を受託したシェリーに反し、助手のハンナは怪訝な顔で考え込む。
このノアが牢屋敷のノアと同じ魔法を……【液体操作】の魔法を持つならば、それを使えば絵を元に戻すなんて簡単な筈である。なにより絵の具に水を使うのは常識だ。ならば、それで元に戻せはしないのか。
「ノアさんの魔法で戻せたりはしませんの?」
実際に聞いてみた。
「ノアの魔法は液体操作なんだけど、アレは油性なんだー。よく見たら立体感があるでしょ? 上書きされてない絵を見れば分かると思うんだけど、ここの絵は
言われた通りに観察してみると、確かに絵の具が重なっている。
「ということは……今回の絵にノアさんの魔法は使われてないんですか?」
「使えるよ? じゃないと頼まれないもん。描いてる間は水性や油性は関係ないんだ。
でも、普段は油性で書くと乾いた後は「絵」じゃなくて「油」になって使えなくなるの。だからノアは水彩絵具や水性塗料が好みなんだ」
どうやら液体かどうかより絵を描くかどうかが魔法を使う条件として大事であるらしい。
それよりも、ハンナは引っかかる言い回しをノアの言葉から感じた。
「普段? 調子が良い日は違いますの?」
「うん。魔女化が進行するとね、ノアは油でも霧でも操れるんだ。普段は錠剤を飲んで抑えてるんだけどね? 今はこの仕事をやる為に控えてるの」
「ハンナさん、この世界はハンナさんの方と違って魔女化は薬で抑えられる物として扱われています。魔法に目覚めた人は国から支給される錠剤の服用義務があるんですよ」
「へー…私の方でもそうなって欲しいものですわね…」
「欲しいの? よかったらあげるよ。1日3錠以上摂ると死んじゃうから、あんまり沢山持ってても仕方ないんだ」
ハンナは現実との大きなギャップをその言葉に感じた。
仕事の為に魔女化を敢えて進める世界と、魔法を使える者を問答無用で屋敷に閉じ込める世界。
街並みを始めに様々な要素が違う中で、ハンナはこの瞬間に最も異世界に迷い込んだという実感を感じた。
「捨てるくらいなら貰えるだけ貰いますわ!」
「それなら今から持ってくるよ。探偵さんはその間に調査とかよろしくね」
傘を片手に現場を後にするノアを見送り、改めて現場を前にする。
調査も大事だが、周囲の人から情報を集め容疑者を絞る作業も必須だろう。
「それでシェリーさん、先ずは何から手を付けますの?……シェリーさーん?」
自作自演でないのならどこかに犯人は必ず居る。見つける為にも先ずはどうするかと訊くが返事がない。
背中から前に回ってシェリーの顔を覗いて見れば、何やら眉をひそめて考え込んでいる。
「シェリー…シェリー!…おいゴリラ女! まだ考えるより情報を集める段階でじゃないですこと!? そろそろ…重…!…お顔をお上げな…さい!」
「わっ!……ビックリしたー。すみません、少しボーッとしてました!」
強引に顔を上げるとシェリーが驚いた顔で一歩下がるが、寧ろ顔を上げるのにこんなに力を使わされたハンナの方がドン引きしたかった。悩むにしたって全身に力を入れ過ぎである。
「全く、一体なにを考えてたんですの。そんならしくもない顔までして」
シェリーらしくもない反応だ。
まだ会って間もないとはいえ、ハンナが覚えた印象的にはシェリーはそんな悩むような顔はしない。いつも元気に謎に飛び込み素っ頓狂な推理をぶん回す脳筋探偵である。
例え実は別人だったりしても、仮にもシェリーの姿をしているのならそういう姿は出来るだけ見たくはなかった。
「すみません、ちょっと最悪なパターンを考えてました。普通に考え過ぎでしょうから気にしないでください!」
「はぁ…それなら私は別に文句はねーですわ。サッサと聞き込みに行きますわよ」
どうあれハンナにとっては初仕事である。
この世界に来なくて済む方法を探る為にも、ハンナはシェリーの部屋から持ち出した手帳を開いて準備した。
起きてる間の牢屋敷(in医務室)
アンアン[ノア、息苦しかったからもうお部屋でスプレーアートはやめろ]
ノア「ごめんねアンアンちゃん…ノア、全然気付かなかった」
「……いい。反省してるなら、許す」
「ねぇ、仲直りの印に蝶々描いていい? ノアにとってはおまもりの印なんだ!」
「……スケッチブックの予備がない」
「しょぼーん」
「……しかたない。【一枚だけだぞ】」
「わーい」
「……おい、【待て】。一枚だけだと言っ……ダメだ、【手を止めろ】! クソッ絵の事になると梃子でも譲らないな!」
「うぅ…イチマイカク…カイタラモウカケナイ…マチタクナイ……」
「アっっ……! ええと…ええと…! 【別に吾輩は今後ずっと描くなとは言ってない】! 【だから手を止めても大丈夫だ】! ええと…【一回ちょっと寝て落ち着け】!」
「ぅぅん……ばたんきゅー」
「……よし、よし……はぁー……なんだってその解釈で納得しておるのだ…ノアの奴め。……すまなかったな」
※夏目アンアン…相手が納得すれば通じる軽度の【洗脳】魔法が使える。城ケ崎ノアと同室。
城ケ崎ノア…絵を描くのに向いた【液体操作】の魔法が使える。アンアンが倒れたのが申し訳なくて洗脳が通じ易い状態になっていた。