空想令嬢ガールはえちえちホームズを夢見るか? 作:何処にでもある
起きてる間の牢屋敷(inみんなはシャワーをしている時間)
「むー…行きたくないー」
[断固拒否する]
「いいから行きなさい! シャワーも浴びないなんてばっちい真似は天が許そうとわたくしが許しませんわ!」
「……ふぅ、なんとか追い払えましたわね。取り敢えず錠剤は医務室に置いて置く事にしますわ。他の人も必要かも知れませんもの。パイプは……一応持っておきましょう」
ーハンナが離れてすぐの事ー
看守「…?」
(掃除の最中に見覚えのない瓶を拾う)
「……(クイ)」
(看守は魔女となった囚人の中から比較的従順な者を洗脳する事で利用している)
「……あれ、なんか身体も理性戻ったんだけどなんで?」
(錠剤はなれはてが摂取したくなるような誘引素材で創られている。対ゴキ用ホウ酸団子みたいなもの。勿論3錠以上飲めばそのまま死ぬ)
「取り敢えず【変身】して誤魔化さないと……」
(ただし、錠剤は魔女化を抑えてるだけなので1日経てば魔女に戻る)
「なのちゃんは…私が助ける!」
(↑この後魔女に戻る)
「はい、これがあまった分だよ。現場検証はもう大丈夫? 私も仕事を再開しないとだから、全部元に戻すけど」
「はい! もう十分確認させていただきました!」
「おぉ……! 押忍! このご恩は忘れませんわぁ!」
「わー、漢らしい。それじゃ探偵さん、ハンナちゃん、おねがいねー」
♧ ♠︎
「なるほど、ご協力ありがとうございました!」
ハンナはシェリーの聞いて回る間、助手として情報を書き込んでいった。
以下はその中でも重要な資料と証言と証拠を記載したものである。
「オペラ座のヴァンダリズム事件」
1、現場状況
1-1-時間系列
事件が発覚したのは先日の午前8時頃。その日に行う予定だった作業区画に来たノアが絵画にバルーンの作風で落書きがされているのを発見した。
現場は作業道具の用意や床や柱の養生の為に前日から予め封鎖しており、立ち入り禁止の区画整理がされていた。
作業については運搬等の雑務を除けばノア単独で行われており、他の人物は立ち入り禁止が言い渡されている。
1-2-依頼動機
このイタズラ自体はノアの【液体操作】で戻せる範疇ではあるが、そう何度もやられるといつか他の人が見た時にノアがやったと想起する者は多いだろう。その場合バルーンに悪評がつく事になるのは想像に難くない。
ノアはあまりそういうのは気にしてないが、犯人には「イタズラに人に迷惑をかけちゃダメだよ」と言ってあげたいらしい。その為、ノアは現場の自助努力として名探偵シェリーにこの事件の解決を依頼したようだ。
……これは探偵の仕事かと思うが、シェリーは「浮気調査に始まり殺人から迷子の子猫探しまで! どんな謎も解決するのが探偵のあるべき姿です!」と述べた。
2、「バルーン」に対する周囲の評価
2-1-オペラ座の施設保守監督
「アレは人気起用と聞いたな。実態が単なる保守作業でも、古さと新しさのコラボという題目はオペラ座に客が足を運ぶ理由になる……と俺は聞いたな」
「アレに仕事を任せたのは劇団長さ。最近先代から継いだ野心家の小僧。何を考えるかは老いぼれの俺には分からん」
「彼女一人にやらせる理由? いつ魔女化するかも分からない奴の隣に居たいと思うか? アレの価値は世にも珍しい魔法が描いた絵だと、そう聞いたな。俺としちゃ本人は真面目にやってるし手伝える事があれば人をやっても良いとは思うが……一人でやらせてこそと手出しは禁じられてるんだ」
「あんまり面白い話じゃないのはそうだな。多分劇団長以外ならちょっとは思う所がある筈だぜ?」
2-2-看板役者レイア(記名希望)
「フフ…皆まで言うな──私の独占インタビューだろう? 君達も潜入なんて実にワルだね──」
「え、バルーンについて聞いたい?……良いとも。このマリー・レイアでよければどんな事でも答えてあげよう」
「彼女について、私は個人的な感情は持ち合わせてないよ。私もあの子も世界的に有名だけど、今のあの子は私の舞台をより彩る為に来ている。感謝こそすれど恨みや不満なんて持ち合わせてないさ。そもそも、お互い会話したこともないからね」
「ただ……一つ気になることがあるとすれば、彼女は絵を継ぎ足している時の表情が強張っていた事かな。なに、一回仕事中の様子を見かけたことがあってね。一時の友柄だが、今の彼女は僕ら歌劇団の仲間だ。苦しそうに仕事をしているのは、仲間として助けられないかと思わずにはいられないよ」
「──なにより、あの子は私と同じ魔法少女だからね! 自分と同じ魔法のハンデを背負って尚大成した身としては、気にかけたくなるのもムリもない話だろう?」
「なに、私の魔法かい? そうだね……常に服用はしているから強い効果ではないが、【視線誘導】と呼べそうな力を持っているよ。まぁ、魔法少女に対する忌避感を相殺する程度の効果しかないから、あまり役に立つとは言えないんだが」
「魔女化が進むとどう強くなるか?──ワッハハハ!
笑えない冗談だね、ハンナくん。国から支給されているのに、より強い魔法を使う為に控えるなんて、仮に本当だとしたら私は即座に処刑されるだろう。勿論、毎日健康的に3錠キッカリ飲んでいるとも!」
2-3-夜間警備員
「最近変わったこと…ですか? いえ特に……ああいえ、些細な事ですが二つ……最近でないものも含めれば三つありますね」
「多い? いえいえ、最近魔女が増えてる影響か珍しい話じゃないですよ」
「……では先に大きな変化から。
あのバルーンという魔法少女が来てから、このオペラ座で血を出すと赤い蝶に変わるんですよ。多分彼女の魔法なんだと思います。気付いたキッカケはなれはてを追い返す時に怪我を負って……ああ、いえ、大した怪我じゃないですよ。もう治ってます。この街には治癒が得意な魔法少女が居ますので」
「知ってます? これって【消えない魔法】なんですよ。バルーンさんが言うには仕事に強めの魔法を使うから、その影響が広がっちゃったーとかなんとか。芸術ってヤツですかね、身体張ってるなーって思います。……正直いつ魔女化するか分からなくて近寄りたくないですけど」
「彼女には黙ってて欲しいと言われましたが、彼女の依頼で来てるなら知っていた方がいいでしょう。……え、そのなれはてですか? 確か……近くの肉屋の娘さんだったかな。当時は色々有ったみたいですが、今はもう国から薬を配給して貰って元気に過ごしてるみたいです。流石に切られた身の上で会いに行くのは怖いので又聞きですけど」
「最近の些細な事は、深夜にバルーンさんの作業区画で大きな物音がしたのに誰も居なかったこと。それからバルーンさんの魔法の範囲が広がっているのか、街を歩いていると赤い蝶を見かけることですね」
3、証拠
3-1-立ち入り禁止区画
現場に設置された侵入禁止の区分け。魔法のかかってない普通のコーンとポール。
作業準備は終わっているので、昼間は誰かが興味本位で覗こうとしない限りノア以外が入ることはない。
二日前にノアが家に戻り、昨日出勤する間にイタズラはされていた。夜間の警備員の証言から誰も居ないのに物音がしたとあり、犯行時刻はその間と見ていい。
3-2-劇団長
バルーンに補填・リタッチの依頼を出した。野心家で、依頼をしたのもバルーンの名前でより多くの客を率いる為。忙しいのか本人に聞き取り調査は出来なかった。
お金では動かなそうなバルーンをどのようにこの仕事を受けさせたのか、どんな考えなのかは不明。
3-3-赤い蝶
ノアの【消えない魔法】によって血が赤い蝶になった。
現在では街でも稀に見かけるくらいこの魔法の影響範囲は広がっている。
3-4-【液体操作】
ノアの魔法。この仕事の為に魔法の力を強める為、摂取する錠剤は少なくしている。
絵を描くという過程を踏む事で広範囲の液状化出来る物を操れる。
3-5-【視線誘導】
レイアの魔法。意識の誘導を行える……っぽい。
「以上がこの事件の概要ですね!」
「て…手が……ぜってー筋肉痛になりますわこれ」
「お仕事お疲れ様です! お昼にあんぱんと牛乳を奢ってあげますね」
「いやそれどっちかと言うと
かなり書き込まれた手帳をシェリーも確認した所で、二人はパンと牛乳を買い喫茶店のテラスに座って外食していた。雨も止んだ所で調査も一息いれてランチタイムである。
ハンナもですわーと妙な鳴き声をこぼしながらもシェリーからパンを受け取りもそもそと食べ始める。美味しいが、冷製に考えると起きてる間に食べた分とコチラのモーニングを合わせてなんと5食目。歩き回ったから腹に入るものの、次から牢屋敷では控えるかどうか乙女的に悩み所だ。
「そこは安心して食べて良いと思いますよ? 多分、摂れた所で心の栄養になるだけでしょうから」
「うわ、シェリーさんの癖に心を読むなんて生意気な」
「えっ…その反応は酷くないですか!? 探偵らしく視線と表情から推理したのに!」
「わたくしからすれば、後ろからこっそり誰かが囁いてカンニングさせてる方が自然に思えますのよ」
橘シェリーとこのシェリーが同じであれば……の話だが。
「ハンナさんがイジワルします〜」とぶー垂れるシェリーを見て思う。
他人の空似なら失礼な言葉ではあるが、今日だけで牢屋敷に閉じ込められていた少女達から城ケ崎ノア、蓮見レイア、それっぽい奴の示唆で氷上メルルと、ハンナは牢屋敷と同じ名前の存在を三人も見かけた。
正直ここまで遭遇して無関係であると言う方が不自然な状況。ハンナ目線ではこのシェリーは相違点は有っても牢屋敷の橘シェリーと関係がある方が自然と言える。
「あ、因みに食事が問題ないと判断した理由は、ハンナさんに気づかれないように触れたら身体が透けたからです! やっぱり今のハンナさんは幽霊や精神体と言える状態であるようですね!」
「はっ!? い…いったいいつそんな真似を!?」
「手帳に頑張って書いてる時にです! 普段は普通に触れるようで、ハンナさんの【浮遊】が無意識に使われているんでしょう。この世界の物をそちらに持って帰れるのは、そうやって魔法で掴んでいるからだと推測出来ます。便利ですね!」
「さ………先にコトワリを入れてくださいましーー!!」
このロンドンは魔法少女達の夢が重なり出来た場所。
今のハンナにとって、この街はそういう場所に思えてならなかった。
一通りシェリーにあり得ない常識的に考えてもし途中で気付いてたらどうするつもりだと色々ガミガミ注意をして、改めて話を事件の方に戻した。
「はぁ…はぁ……それで、自称名探偵のシェリーさんは答えを出せたのかしら」
ハンナが若干イヤミったらしく問う。つまりジト目だ。
ただのジト目と侮るなかれ。これは何故かは知らないがこのシェリーは牢屋敷の橘シェリーより人の心というのが読めているようだし、この時点でまぁ大体の道筋は出来ているだろうという期待を込めた眼である。
ぶっちゃけハードルを不必要に上げていた。これぞハンナ渾身の仕返しだ。
「ふーん」
しかし……当のシェリーは指に顎を乗せ、したり顔なのか何も分かってないのか判別付かない反応を返していた。
「ふーぅん!」
「勿体ぶらずさっさと答えなさいな!」
「ぶっちゃけ分かりません!」
「おいゴリラ女!」
ぽふぽふ。
──ハンナ、怒りの台パン!
「というか、容疑者が依頼人のノアさん含めて三人いるんですよね。
実行犯はノアさんで確定ですが、ノアさんがそうするに至った経緯が幾つか考えられましてー」
「それは……どういうことですの?」
「例えば私がこうやって机を叩き割ったとして──」
バギンッ!!
──シェリー、謎の机割り!
「──これが仮に他者の魔法によって身体を動かされた場合だったり、パワハラされた影響の殺人衝動の諸々だったり、魔法の暴走だったりしたら、一概に私が犯人とは言えなくなりますよね?」
「なにやってやがりますの! これは間違いなく怪力女の仕業ですわよ! どーすんですの弁償代ぜってーたっけーですわよこんなご立派なお店の机真っ二つにして!」
「この場合真犯人がいるか、もしくは単なる事故って事になります。ですがノアさんは私達に犯人を見つけろと依頼しました。これ、仮に事故だった場合私達が誰か犯人を仕立てないとノアさんと一緒に私達も"処刑"されちゃう事になるんですよね」
「机ぇ……は? なんで私達が処刑に?」
突如出てきた処刑という単語に、思わずハンナもシェリーの話の方に意識が向く。
「この事件の構造自体は「魔女と禁忌」の関係を知っていれば結構絞れます。
かなり低い可能性でノアさんが殺人衝動に支配され狡猾に人の姿を保ちながら人殺しを行うパーフェクト魔女な可能性もありますが、それはハンナさんに渡した錠剤の数を見ればあり得ないでしょう」
「この瓶が…ですの?」
ノアが作業を始める直前に渡した瓶を見る。中に30の錠剤が入った新品だ。
まさか丸々新品を渡されるとは思ってもみなかったから、深々と頭を下げた記憶は新しい。
「スーパートレデキム。国から毎月3瓶計90錠支給される魔女化抑制剤です。消費期限が一月半と短いのが難点ですが、その分なれはてにも効果覿面! 24時間以内に4錠摂取すると死んじゃうくらい効果があります!」
「便利さとおっかなさと名前のマヌケさが同居してますわね……」
「この錠剤ってなれはてが自然と惹かれて食べたくなる素材が入ってる危険物でして、雑に捨てたり水に流したりすると大惨事になるんですよね。なので魔法少女がこっそり魔法の成長を進めたい時は瓶から取り出した錠剤をそれはもうありとあらゆる方法で隠蔽するんです」
「もしかして私やべー犯罪の片棒を担がされてる感じですの?」
「ハンナさんはその点すごいですよ! 別世界に持っていけますし、13人の同朋を助ける為って大義名分も生えてきますから!」
「探偵としてそれはダメな奴ですわよね!?」
「ハンナさん、そうやって育てれた私の【怪力】のおかげで、なれはてから逃げられたのをお忘れですか? コレばっかりは魔法少女たるもの誰しも一度は通る道です。摂りすぎると死んじゃう性質も相まって純粋に怖がってあまり摂らない子も居ますからね!
バレても2回までは厳重注意で済みますし、やり過ぎて人を殺したり魔法を暴走させない限りセーフです!」
「価値観の相違が凄まじいですわー…」
呆れ混じりにため息を吐くが、浮遊の魔法で飛べるようになるまで特訓した事があるハンナからすれば分からないでもない話だった。
この世界にとって魔法は、やり過ぎて魔女にさえならなければ便利に扱えるものだ。
自分なら大丈夫と思う子は居るだろうし、ある程度使いこなせるようになりたいと思う子も絶対に出てくる。薬が致死性を纏っているなら尚更服用は控えたい。
そう考えると本当によくある話なのだろう。魔女予備軍として牢屋敷に囚われている身からすれば羨ましいことこの上ないが、同時に悩ましくもある問題だった。
「なので押し付けられるなら押し付けたいんですよね、これ。特にノアさんの場合ですと芸術活動で既に2アウトは貰ってるでしょうし、ここで敢えて渡す数を誤魔化す理由がありません」
「……で、それがどう事件に関わってきますの」
「1錠で平常時の魔女化の停止、軽い多幸感の副作用。3錠で魔女化の極度の抑圧と魔法の著しい弱体化、重めの生存本能の発作の副作用」
「……生存本能の発作?」
「これ以上摂ったら死ぬって本能が訴えかけてくるんですが、それに対する反応は人によってビビりになったり酔っ払ったりと、状況によってて多種多様です。
こほん……それで、ノアさんは毎日2錠飲んでいます。これは極度のストレス環境に居ても魔女化が進行せず、魔法が暴走する事がなくなります。副作用は1錠と変わりありません」
そこまで前提知識をスラスラと語り終えたシェリーは、ハンナに顔を近付ける。
それで気付いた。かなり長く喋っていたからか、ハンナの身体は薄く透き通っているではないか。
どうやらもう起きる時間のようだ。
「2錠は魔法の成長を止めません。ノアさんが仮に服用時間を間違えて一錠しか服用してない時間の間に魔法の暴走を起こしていた場合、彼女は即座に処分されます。手を引くなら今の内にするのが懸命なんですよ。
そして処分が下された際、彼女の依頼を受けた私達も連座です。魔法少女は服用する限り人の姿のままでいられても、薄皮一枚めくれば危険な怪物。
人はその理性で現状私達を同じ人間として扱ってますが、同時に酷く恐れています。処刑の手続きは迅速でしょうね」
「……シェリーさんはどうするつもりですの」
「私だけならそのまま謎の解明に挑みますよ? ですがハンナさんはこの世界とは関係ない迷子で、私の助手です。雇ったからには私はあなたの暮らしを保証する必要があります。命の危険があるなら、これまで通りに挑むのは不誠実です」
つまり、こういう話だった。
シェリーはハンナがこれからこの世界で迷子にならない様、シェリーの助手で居られるように。
自らの好奇心と探偵としての在り方を……。
自分の信条を曲げてでも、ハンナのことを優先しようとしている。
「なので、軽い気持ちで決めちゃってください! 受けるか受けないか。
どっちを選んでも大丈夫です。貯金は有りますし、最悪の自体になったらハンナさんだけでも意地でも逃がします。ハンナさんは、軽い旅行気分で居てくれて構いませんので!」
シェリーからいつもと同じ笑顔で、軽くも重くも感じる選択を渡される。
聞いていてズルい話だ。これではどちらを選んでもシェリーは善い探偵のままでいられて、ハンナは選んだ責任を抱えなければならない。
「……んな」
「はい?」
実に癪に障るし、人の心の弱さをまるで分かってないやり方だ。
そもそも助手にしたばかりの人に依頼の受否まで決めさせるのはどういうものか。
やっぱりコイツは人の心を誰かからカンニングさせて貰っているのだろう。でなければ、こんなに橘シェリー"らしい"卑怯で自分勝手な話はすまい。
「ざけんじゃねーですわよこの脳筋ゴリラ!! 好き勝手人に選ぶ責任を押し付けやがりまして! そーいうのは私に任せてついて来いって言うのが粋ってやつですわ!」
「わ、わわー?」
むんずと前に出た事で後ろに倒れた探偵を前に、ビシッと指を指してみせる。
困惑していたが、そんな事より助手として、友達として言ってやるべきことがあった。
「それに──
その点、しっかり覚えておきなさい──"私のシェリー"?」
なーんて。
最後はちょっとカッコ付け過ぎたなーなんて思ったりもしつつ、ハンナはそのまま現実の方へ戻るのであった。実に、言いたいことを言えて満足である。
「……あはは。助手で友達で……参りましたね。
"あなたのシェリー"に、ちょっと妬けちゃいそうです」
起きてる間の牢屋敷(ノアに丁度いいアトリエ探し中の遠野橘桜羽城ケ崎with夏目氷上)
「ハンナさん、ハンナさんってちょっと強引なくらいの友達が好きなんですか?」
「ん?……まぁ、うじうじ一人で抱え込んでいるよりはそっちの方が支え易いですわね」
「なるほどー、参考にしておきます!」
エマ「ところでハンナちゃん。その錠剤はなに?」
「これはノアから貰った魔女化抑制剤ですわ」
「うぇー!? のあ、知らないよ? 勝手にお絵描きなんてしてないもん」
「うーん……知らない内に絵が実体化したとか?」
[吾輩はそんな様子は見てないぞ。メルル、もっとちゃんと背負え]
「ひ…ひぃ……すみませぇん…!」
「アンアンちゃん、あんまりメルルちゃんをイジメないでね?」
[吾輩はイジメてなどおらぬ。此奴が娯楽室に行こうとしていた吾輩を勝手に拾ってきただけだ]
「階段の途中で力尽きてたのでつい……でも、アンアンさんは軽いのでへっちゃらです!」
「それならいいんだけど……いや、人を勝手に拾うのはダメじゃないかな、メルルちゃん!」
「ひぃ…す、すすみません!」
「[今のメルルは牢屋敷定期周回便メルルバスだ。吾輩がそう定義した]…どうだ、かわいくなっただろ」
「な…なにがですか?」
「……! やーい、かとんぼー」
「!?………[吾輩は蚊蜻蛉などではない! 今すぐ訂正しろ!]…断固抗議する」
「のあむずかしいかんじよめなーい。とりあえずにげよーっと」
「ぬぅ…!? おいメルル! 吾輩の悪口を言った奴を懲らしめる為に【走れ】!」
「ひぃぃ……ま、待ってくださぁ〜ぁい!」
エマ(みんなが……自由過ぎる!)