空想令嬢ガールはえちえちホームズを夢見るか? 作:何処にでもある
起きてる間の牢屋敷(実はリーダーをやってるレイアとバッタリ出会ったミリアとマーゴwith図書室)
レイア「ミリアくん…何故私は目立てないのだろう……リーダーもやっているのに、全然目立てないじゃないか」
「えぇっ!?……そんなに目立ってないかなぁ? おじさんはリーダーを頑張ってるのは見てきてるし、みんなレイアちゃんの脱出しようって提案の為に頑張ってると思うよ?」
マーゴ「あらぁ? レイアちゃんは私と一緒なのに満足できないのかしらぁ?」
レイア「できない! 私は沢山の人の視線を独り占めにしたいんだ! そろそろ真っ当にやって無理そうだから自分のスキャンダルの一つや二つ出そうか血迷ってるくらいには追い詰められてる!」
「うわぁ!?……そ、それ……はは、参ったな。それ魔女化ってやつ? 指先も黒いし……よしよーし落ち着いてー。レイアちゃんは十分目立ってるからねー。おじさんなんてもう夢中だよ! ファングッズとか有ったらバリバリ身につけちゃうし!」
レイア「うぅ……ミリアくんだけだよ。私の事を分かってくれるのは……あれ、だったらもうミリアくん以外、誰も私を見ようとしないこの世界は要らないんじゃ……」
「わぁー!? そんなことないからねぇ!? うん、みんなレイアちゃんのこと見てるよー! なんてったっておじさんが言うんだから間違いないよー! マーゴちゃん…! マーゴちゃん…!」
「…ああ、そういうことね? 【声真似による武道館ライブの大歓声とレイアを褒め讃える音の再現】」
「 !!?(思ったよりでかい規模の音声を再現され、見せろと言われたら出せずに終わるのを悟った顔)」
レイアレイア「本当だ! みんな私の事を見てくれてるよ! 姿は見えないけど…そうか、これは生放送の中継かな? きっと何処かにカメラがあって、それをおじさんはこっそり教えてくれたんだね。はは……そうか、私は今──目立っているんだ!!」レイアレイア
「──せぇぇふ! きぃも冷やしたーぁ…」
「ふふ♡ ミリアちゃん、嘘は大胆に付けば、向こうは勝手に納得するものよ?」
「おじさんはもう死んだかと思いました……ありがとう、おじさんだけだったら死んでたよ……」
「でもどうしようかしらね? あの子、もう限界みたいだし…いっそ殺される前に魔女裁判を開いて貰う?」
レイアレイアレイア「──声が、しないな」レイアレイアレイア
「キャー! レイアちゃん素敵ー! ええと……一曲踊ってー!」
「……ミリアちゃん、私が凌いでる間に何か対策を考えて頂戴? 【マーゴによる華麗なる音楽再生】」
「あ…無茶振りごめうわすごっ!……兎に角、急いで来るね!!」
レイアレイアレイア「…! ハハハ! 要望にお応えしてソロライブと行こうじゃないか!」レイアレイアレイア
ー同時刻、ハンナはアンアンに医務室で説明をしていたー
「──…以上が、ノアさんに貰ったスーパートレデキムの効果ですわ。効果も確認が取れましたし、ここに置いておきますので、欲しいなら好きにお取りなさいな」
「うむ……これから何も心配せず喋れるなら、吾輩は絵の具だろうと蟲だろうと飲み干してみせよう」
「それじゃあわたくしはコレからシェリーさんの前で熱を出して倒れる予定が有りますので、ごめん遊ばせー」
「熱…? まぁいいか。先ずは一つ…ごくん……おおぅ…なんだかテンション上がってきたぞ。
二つ……アッハハ! なんだこれは、とても清々しい! 吾輩は今! 自由になった気分だ!
みっつ!────吾輩はどうしようもない奴だ…人に堂々と言える事を成せず、恥ばかりの人生を歩んで来た…なのにどうして何もかも放り出し幸福に溺れる事ができようか。我が友すら操り糸で首を締め付けかけ、溺死の道連れを増やそうとしてばかりではないか? 川底から300尺ばかりの糸を地上に投げ出し、戯れに身体に巻き付けた者を引き摺り込む生き様は、妖怪や物の怪と言わずになんと言う。河童の様に純粋にもなれず、ただ一人で死ぬのが怖いからと、
「──…あーもー! 魔女化を治す薬とかどこかに置いてたりしないー!?」
「……それでも。誰かの助けを聴いたのなら、澱から這い出て、不恰好でも…お節介な河童の真似事はできようさ。泣き崩れる子供を、吾輩の同類にしない様、下から押してやるくらいは出来ようさ」
「あ、アンアンちゃん! そうだ、アンアンちゃんの魔法ならレイアちゃんの魔女化を止められたり…!」
「出来ない。だが──魔女化を抑える薬は此処にある。持っていけ。3錠以上飲ませば死ぬが、3錠も飲めば人に戻れさえするらしい薬だ」
「そんなの有ったんだ!? ありがとう、貰ってくね!」
「……ふふ。なんだ、人を台無しにした吾輩でも、人を助けられるのだな」
(↑トリップ【走馬灯】…アンアンが発病した副作用。これまでの人生を強制的に振り返らせる。当然【禁忌】を踏むが、魔女化は止められてる為問題はない。その結果酷く鬱になったり、ヤケに闘志が燃え始めたりと人によって受け取り方は様々だが、大体方向性は違えどハイになっている。今回は最終的にちょっと人生観が前向きになれた)
ー少し経った図書室ー
レイア「音響足りないよ!」レイア「もっと喝采を!」レイア「どうだい、私の踊りは!」レイア「視線をもっと寄越してくれ!」レイア
「コヒュー…コヒュー……【ノイズ塗れの雑音】」
レイア「……なんだいそれは」レイア「私の舞台が!」レイア「何をしてるんだ!」レイア「待て……ミリアくんは何処に行ったのかなぁ…?」レイア
「ふふ…♡ そろそろ限界…かしら…困ったわね…ケホ…まだ、本の解読が終わってないのだけど」
「ごめーん!────レイアちゃん、すごい舞台だし、すごい姿だったね! おじさんホントに感動しちゃった!」
「(そう…それでいい。よく私反応しなかったわね、ミリアちゃん……今のあの子は、少しでも眼を他に逸らせばアナタを殺しちゃうから……)」
レイア「本当かい? 私だけを見てよ 上っ面の言葉じゃないよね? どうせ何も見てなかったんだろ」レイア
「ホントだよ! よければ握手して欲しいくらい!……あ、レイアちゃんはおじさんが触れるには格が高いかな…あ、えと、ホントにやましい気持ちはないんだ! おじさんはずっとレイアちゃんの事を見ててすっかりファンになったし、これからもずっと応援したいんだよね……ダメ…かな」
レイア「……… 是非とも その手の物はなんだ? 応援してくれたまえ! なんだか惹かれるな。 これからも 握りつぶそうか? 末長く 私より魅力的な物があって良い筈がない」レイア
「うん、ありがとう────所で、ここで私と入れ替わったりしたらもっと注目されると思わないかな?」
レイア?「──よし、成功!」
ミリア?「なにが……【入れ替わる】魔法か!待──」
「ダメよ…♡ アイドルが観客から視線を逸らしたら」
ーミリアの身体がマーゴによって抑えられた。レイアの身体が、ミリアに握手された際に渡された錠剤を口に放り込むー
「はう──ごくん」
「お昼寝して来ましたわよー」
「こんにちはハンナさん。……ホントに来ちゃったんですね」
「今のわたくしはあなたの助手ですもの! 現実でも夢でも関係ありませんわ」
「それは……いえ、こうなったからには感謝しましょう。ありがとうございます! おかげでお仕事がラクになりそうです!」
「礼には及びませんわ! 気高き令嬢として当然ですもの!」
ノブレスオブリージュというものだろうか。シェリーはちょっとだけその言葉に引っ掛かりを覚えたが、すぐに頭を横に振って潜入へと意識を向けた。
真実の為に何度もやった事ではある。だが一歩間違えれば死ぬかも知れない行いだ。特に今回は戦闘なんてこれまで一度もやった事もないハンナがいる。
正直自分一人でやりたい所だが……探偵の勘が、この依頼のタイムリミットが近いと告げている。片方を任せるなんて不安だが、そうしないと死人が出そうな気配がするのは確かだ。
ハンナの安全か死人が出ない様にするか。
こうしてハンナが来た今でも、シェリーは未だに決めきれていないままでいる。
「それでは、ハンナさんの為に戦闘と潜入のチュートリアルを始めましょうか!
正直魔女化ギリギリチキンレースを制した者が勝つ。みたいな所は有りますけど、抑えられるだけ抑えた方が良いですからね!」
「おおう、急にゲームみたいな導入が始まりましたわ…」
「という訳でシェリーちゃんハウスの裏手に来てください!」
真面目な話ただの普段使いの訓練所を使った研修なのだが、そう言って無駄に緊張して失敗し、死んだら困るのはシェリーちゃんである。こういうのはリラックスと楽しく覚えるのが大事なのだ。
「ここでハンナさんの魔法の使い方を学びましょう! 最低これを今すぐできなければ、潜入調査なんて話になりませんから」
「うわあ…物騒な物をよくもまぁこんなに…」
そうして訓練所にやって来て目に映ったのは、あちこちに罠の仕掛け糸や奇妙な置物がある地下室だった。どれもこれもどう動くか定かではないが、碌でもない気配はどれも負けていない。
シェリーとしてはここで悲鳴の一つでも上げてくれれば失格に出来たので、ハンナの割と覚悟が決まってる様子は残念なものだった。
ハンナさん死ぬのが怖くないんですかね。もしかしたら夢の中だし本当に死んだりしないと考えているのかも? そんな推理をしたが、その理論を否定する材料を持っていないシェリーは放っておくことを選んだ。
「潜入して最初にやるべき事は罠や監視の配置観察。厳しい所だと一見普通な品物に魔法が掛けて眼や罠にしてますので、それを見抜くことが肝要です。これは廊下や部屋といった各フロアで毎回やる事で、一度通った所も時間経過で復活してないか再確認します」
「はえー…なんだか泥棒になった気分ですわね」
シェリーの聞いててハンナが令嬢的にコレはセーフなのかどうか脳裏で悩んだが、人生のバイブルである少女マンガで似た様な場面があるからセーフという判定が降りた。なんだかんだハンナも本格的な訓練所を前にするとワクワクしちゃうお年頃なのだ。
「探
はーぁ。もっとビシッと推理だけで全部分かったら、こうして裏取りする必要もないんですけどねー。【怪力】の魔法に頼ってたらドンドンこっち方面のスキルが伸びちゃいました」
世知辛そうに言っているが、普通の探偵は素人レベルの尾行と張り込みと書類仕事が殆どな事を考えると、これでも創作の超人レベルの事をやっているのは間違いない。
惜しむべきは望んだ安楽椅子方面に対しインポッシブルな映画の方向に成長しちゃった事だろう。
「今回のオペラ座なら、私が事前に集めた情報を参考に侵入すれば問題はありません…が。ここまで説明したら一先ず実践ですね。初見でどこまでやれるか見せちゃってください!」
「唐突!? 罠の説明とかありませんの!?」
「今回は無いと思いたいですが、魔法の罠は初見殺しが多いです。求められるのはその場その場の対応力。魔法をどれだけ使ってもいいので、此処から向こうの部屋まで罠に掛からないようにして下さいね! では、シェリーちゃんは奥の部屋で待ってますので、なるべくお早めにお願いしまーす!」
シェリーはそう言うと、罠に溢れた地下通路を身軽な身のこなしであっという間に奥の部屋まで渡りきった。途中でハンナの方にピースしながら空中バク転をキメる余裕っぷりである。
そんなシェリーは、相変わらずニコニコと楽しそうにしつつも、その眼の奥では失敗したら連れて行かなくて済むよなぁと上から目線で観察中だ。
「ぐぬぬ……ぎゃふんと言わせてやるから首を洗って待ってなさい!」
そんな空気がなんとなーく伝わったハンナは、シェリーにぎゃふんと言わせる8割、助手を任された責任感2割で一歩を踏み出し──。
「おわぁっ!?」
「危ないですねー。
「──んな訳ないでしょ!? どこの世界で建物の中に落とし穴を掘る施設が有りやがりますの!」
「それが、なれはて対策で大きめの施設ならボタン一つで罠が起動する様になってるんですよね。
おかげ様で安全対策から罠エリアと警備エリアが別になって監視の眼が減ったのは有難いんですけど……これ、人の侵入者に対する安全面が疎かだと思いませんか?」
「それはそれでぶてぶてしい文句めすわね……」
「あ、そうそう。今のはセーフです。こういうのって朝に纏めて停止して確認しますから、起動しても侵入がバレることはないので安心してください!」
挙句に使った【浮遊】で落下速度を下げ、沈み切らない内に縁に身を寄せよじ登る。
自然と元の自然な地面に戻っていくのを眺めながら、無計画に進むのは得策では無いと身を以て味わうことになった。
「うーん…ハンナさーん! その魔法って完全に浮かないならどれくらい持ちますかー?」
「強弱に依りますが、大体歩いてても本気めで走ってるのと同じくらい疲れますわ。浮かんでると全力疾走くらい疲れますが」
「それなら強めに、浮かない程度に使って落とし穴の上を歩いてみてくださーい!」
「えぇ…?」
また落ちろと?…と思ったが、何か試したそうなのは察せた。意識して完全には浮かばずに使うなんて初めてだが……やってみると空を飛ぶよりは魔法の制御はし易く感じる。
なんだか出来そうなので言われた通りにして歩いてみると……今度は罠が動かずにそのまま通り過ぎる事が出来た。
「……あれ?」
「良かったですねハンナさん! その魔法なら重さで感知するタイプの罠は無効化出来そうですね! 罠の配置さえ分かればの話ですが!」
「うっさい、余計な一言ですわー!」
出来たのだから褒めるだけにしろとハンナは思ったが、とはいえ新しい魔法の使い方。そのコツは理解した。よく見たら落とし穴も地面の切れ目で分かるし、この調子なら案外簡単そうである。
「ふふ、案外チョロぉぉお──ッ!?」
ステップを踏もうとした矢先、横から飛び出てきた矢を【浮遊】による空中壁蹴り──正確には自身に掛かっている力に【浮遊】の横向きの力を加えその場で反転。空中での方向転換を実現した──でギリギリ回避する。銃弾でないだけマシとはいえ、当たったら洒落にならない罠だった。
「ちょっと、刺さったらどうするつもりですの!?」
「大丈夫です! 刺さんない様先は潰してあるので安心してください! あ、今回は侵入した物的証拠が残るのでイエロー1枚です! 本番はそもそも起動させないか、何処かに隠してくださいね。矢の罠って攻撃が当たるより何かが侵入した痕跡を遺したり、本命の罠のデコイにするのが本命ですから」
「命を刈り取る軌道をしておりましたが!?」
具体的にはハンナの首元……図体がデカければ横腹辺りに当たる軌道である。
「なれはて相手にこれで追い返せたら御の字ですよね!」
「寧ろ激昂して進みませんのこれ? 本当に効果ある罠か疑わしいですわね…」
さて、いつまでも乳繰り合ってたらキリがないので端折るが、その後ハンナは数々の罠に引っ掛かり掛けては攻略法を編み出してみせた。
触れれば天井と床が迫りぺちゃんこになる罠をできる限り軽くした上で飛び、壁を走って可能な限り反応を遅らせ、特殊な捕縛は事前に気付けたおかげでスルーして、天井裏や外壁を渡るのを想定したステージは軽くなった身体で順調に進み──。
「はぁ…はぁ……めっっちゃ疲れましたわ……」
「わーぉ、本当に一発で攻略出来たんですね! 正直無理だと思ってました! ハンナさんすごい!」
「へへ…わたくしをあまり舐めないでくださいまし……ひゅー…」
順当に魔法の使用過多で辿り着いた頃にはへばっていた。
これにはシェリーもビックリである。【浮遊】を最大出力で使わないだけでここまで出来るとは。
「これでも……魔法は使い慣れてるんですのよ…わたくしは…!」
これはシェリーの知らない話だが、ハンナは戦闘こそ不慣れだが幼い頃から空を飛びたいがために、【浮遊】に目覚めた時から暇を見つけては魔法の特訓をガッツリやっていた。
魔法を使いながらの身体制御、浮遊に失敗した時の受け身の取り方、手から滑り落ちた物を足で触れて魔法を使い落下音の近所トラブルを防ぐ挙句の反射反応、横着して軽くした物を足で蹴りキャッチする為のリフティング、遠くからボミ箱に捨てる際丁度いい重さにして勢い付ける……。
しかも弟妹達の面倒をみながら体力を消費するタイプの魔法を使い続けていただけあって、ハンナは地味に持久力もあるのだ。
「ふぅ……それで、コレでもうおしまいかしら?」
実際ハンナは既に息を整え元の調子に戻っていた。多少疲労は残っているが、そんなの普段の生活と比べたら全然マシ。寧ろ牢屋敷では弟妹の面倒を見る為の気を張ってない分いつもより元気なまであった。
「まだですね。最後に──コレを突破したら終わりです」
「……一応聞くけど、そのボールはなんですの」
最後の試験という言葉と共に、大量のボールの入ったカゴを背負ったシェリーがハンナの前に立つ。
ハンナもこの時点で何をするのか察してはいたが、それでもそうだったらやだなーという
「なんらかの遠距離魔法ですね! 火球でもペイント弾でも、想定は何でもいいですよ。事前に体験させられる魔法戦闘がこのくらいしかないというのもありますが!」
「お得意の近距離戦でやらないんですのね」
「確かに魔女化が進むと魔法少女は身体能力が上がりますが……私は力なら誰にも負けませんし、ハンナさんみたいな近距離戦に応用出来る魔法があるなら基本問題はありません。それとも組み技の一つでも学んでおきますか? ハンナさんなら触れた服に魔法でちょっかい掛けるだけでいい線行けると思いますよ」
「遠慮しますわ。そんなの令嬢らしくないですもの」
一応それらしくハンナが構えをするのを見て、シェリーが弾を片手に二つずつ
「勝利条件を教えて貰っても?」
「スーパートレデキムを飲ませることですね。戦おうとする魔法少女は大抵飲んでないか1錠だけか。オーバーすると殺してしまうので、1錠ずつ様子を見て飲ませましょう。今回はフリだけでいいですよ。私も魔法は抑えますので」
「無茶振り過ぎますわねーぇ…」
──静寂。
「「ッ!」」
動いたのはほぼ同じ、軍配が上がったのは読み合いが分からないので思い切って動いたハンナの方。魔法を使い体重を10分の1、僅か4キロの身体でふわりと回転して天井に脚を付け、初期位置に投げられた初撃を回避する。
「っとと」
即座に天井を蹴りつつ魔法解除、次弾を回避しつつ着地する直前に軽くした体で反動を軽減し、再度解除してジグザグと体勢を低くして走る。
「うーん、もうちょっと弾速上げちゃっても良さそうですね」
「勘弁してくださいまし!」
「と言ってますけど、脚を抜き倒れる勢いを利用して速度を出して、転び切る前に魔法で身体を持ち上げて走るなんてやってますし……どこで覚えたんですか? そのケモノニンジャ走り」
「乙女の秘密ですわ!」
と言いつつ、シェリーはストレートと緩い放物線を描く弾で弾幕を張る。そのまま直進したら弾幕に当たり、横に避ければ同時に投げたストレートに当たる調整。
それを立体的に天井を蹴っては閉所でスーパーボールを跳ねさせたように回避し、シェリーの裏を取る。
「ポテンシャルを感じちゃいます──ね!」
そのまま口に手を当て、一錠飲ませた判定を取る。ご丁寧に懐から錠剤を取り出すフリ付きだ。
身のこなしが明らかに歴戦のそれ。流石のシェリーちゃんもギアを一段あげたくなる手際であった。
「きゃあ!」
なので──【怪力】も併用した震脚で、妙な走り方をするハンナをコケさせ、その勢いを手に乗せ弾を
「あっっぶ──それアリですの!!?」
「言いましたよね、魔女化は身体能力が上がるって──結構あるんですよ、間合いを詰められるの」
挙句にコケたまま横に転がったハンナをシェリーが馬乗りになり、弾を握った手で殴られる──勿論フリだが──を、ハンナは
「あれー?」
上半身が倒れて、殴ろうとした手が空振りに終わる。
可笑しい、手は動いてなかった……ああ、魔法ですか。
「お見事です、ハンナさん」
──【浮遊】は、一人分の重さをごく短時間、ごく僅かにしか持ち上げられない。しかし逆を言えば、それだけの出力は担保されているということでもある。ならば自身を馬乗りになった人の上半身に限定すれば、姿勢を逆転するくらいは可能だ。
「──わたくしの勝ち」
背負っていた籠によりそのまま横向きになったシェリーの口に手が触れていた。
「で、いいですわね?」
「……既に1錠飲んでいる子なら、ですけどね。
ですがここまで見事に負けましたし……ハンナさん、合格です」
完敗だった。初めて戦闘をする相手にここまでされたら負けを認めざる負えないくらいに。
「ですが意外ですね。実は隠してただけで、ハンナさんの世界はこういうことが日常的に行われたんですか?」
「本当にこれが初めてよ! 必死こいてやったら上手くいって、自分でも驚いてるくれーですわ!」
「なるほど──つまりハンナさんはすごいって事ですね!」
シェリーが納得したようにうんうんと頷く。
今の戦いではハンナがやたら戦闘能力が高かったり、令嬢度合いがちょっぴり上がってたりと、普段と違う様子が見受けられた。
が、これは実はハンナにすごい戦闘の才能が眠っていたとすれば全てカタがつくのだ! シェリーちゃんの迷推理が光る!
「わたくしにそんな才能なんてあるねーですわよゴリラ女! 人を眠れる巨人みたいにしないでくださいまし!」
「あーこれですこれ。やっぱりハンナさんはいつものハンナさんが1番ですね!」
「どういう意味ですの!」
そんなこんで練習はこれにておしまい。
謎が一つ出てきたが、少なくともハンナが死に辛くなる謎なので暫く放っていても良いだろう。
シェリーは新たな謎を手帳に記しつつ、ハンナに訊ねる。
「それでハンナさん。劇団長さんとレイアさんかノアさんか。どちらをやりたいですか?」
「勿論──」
・劇団とレイアの方を受け持つ。(バッド)
→ノアの方を受け持つ。
「ノアさんの方をやりますわ」
「分かりました! それではノアさんの住所とオペラ座の警備経路、両方渡しておきますね!」
さて、此処からが肝心だ。
これまでの牢屋敷(マーゴの華麗なる活躍with初日)
マーゴ「ふふ…♡ ヒロちゃんは可哀想な事になったけど、悲しんでる暇は無さそうね? もし殺人事件が起きて、魔女裁判でボッチ吊りされたらたまったものじゃないし……でも好かれたい訳でも無いし、全員とうすーく関係を持っておきましょう」
ノア「ふんふんふーん♪」
レイア「ノアくん! アンアンくんが倒れてるっじゃあないか! 共同生活でペンキの匂いを撒き散らすのはやめたまえ!」
エマ「おろおろ……」
(……ここで本人の声で囁いたらどうなるのかしら)
まねエマ「選択肢は二つだよボク……このまま見てるか、ノアちゃんの鼻歌に対抗してロックで思いを伝えるか……二つに一つだよ、ボク!」
まねレイア「普通に言って伝わらないなら、いっそ音楽で伝えたらいいんじゃないか?」
「「ビートを刻
「ふん…ふーん?」
「……思ったより面白い子達ね?」
ーそれから次の日ー
「ふふふ♡…あれのせいで思ったより一致団結しちゃったわぁ。ノアちゃんの絵を描く場所を探す輪に入り損ねたし、今は適当に図書室でも見て回りましょう」
「あれ? き、奇遇だね…えっと、マーゴちゃん…? こ、こんな所に何の用だい?」
「あらぁ? ここでミリアちゃん? 意外だわぁ、てっきりアンアンちゃんかノアちゃんの所に居るかと思ってたのに」
「おじさんが一人称だからってちっちゃい子好きのレッテルを貼るのは良くないと思うなぁ…!?」
「そうね、自己紹介の時の熱い視線だけで決めつけちゃダメよね♡ 私は脱出の手立てでもないか調べに来たのだけど、ミリアちゃんは?」
「ホントに違うからね!? ただの可愛いもの好きなだけだよ!……ええと、私も似たようなものかな。魔女がどんなものなのかなって気になったんだけど……ほら見て、1番参考になりそうな本が日本語じゃなくて困ってるんだ」
「あら……13人の人の絵に中心に魔女らしき絵。それに剣に……確かに、だいぶ古そうだし参考に出来るでしょうね。童話や寓話にしては分厚いし…よかったら私が解読してみるわぁ。綴りがラテン語に似てるし、時間さえあれば可能な筈よ」
「ホント!? わぁありがとう! マーゴちゃんってすごいんだねぇ、語学とか豊富なんだ?」
(そうねぇ…それっぽいことでカモを言いくるめる為に学んだ…と詐欺師をカミングアウトするのは論外だし……ん? 私の
「魔法に目覚めた時、海外の歴史を調べた事があるの♡ 本職ではないけれど、何も知らないよりは出来るわぁ」
「頼もしいなぁ…! 私なんてそこまで物覚え良い訳じゃないし、途方にくれるしか無かったから助かったよ!」
「なら、コレは私が預かって……」
「あの! よ、良ければなんだけどさ……明日はここで一緒にやらない? マーゴちゃんの翻訳さ、私も手伝いたいから……だめ、かな?」
(んー…ああ、そういうことね♡ へぇ、鏡に触れてなれはてと入れ替わっちゃった…ねぇ? シャワールームの鏡で入れ替わっちゃって、自分の身体を追いかけてここまで来たのね。健気ねぇ。それなら……こうね)
「いいわよぉ?」
「ホント!? ありがとう!」
「ただし、条件付きよ? 一回だけあなたの魔法を見せて欲しいの♡ 最初の自己紹介で明かさなかったでしょう? 明日は一緒に居るのだし、そのくらいなら別に良いでしょう?」
「ああ、全然大丈夫! それならマーゴちゃん、手を貸して受け入れてくれないかな? 【入れ替わり】の魔法はお互いの承諾が必要なんだ」
「──モチロンよ♡」
(そう言って本を机に置いて手を差し出す──その動作の中で目一杯力を込めて鏡を割って手袋に仕込む。結構痛いけれど、これは後で氷上ちゃんに治して貰いましょう。割れて散り散りになった鏡の欠片やコンパクトミラーは本の後ろ、角度的に見えない死角に置く。そしたら後は私がやることは握るだけ。事前に鏡の振動を声にして本物のミリアちゃんと連絡はしてある。当然、鏡越しに入れ替わりを承諾している者同士が触れ合う訳だから──)
「────あ"り"がどう"ぅ"ぅ"ぅ"マーゴち"ゃ"あ"あ"あ"あ"!!! ごわ"がっ"だあ"あ"あ"!!!」
「はぁいよしよし♡ ミリアちゃんも頑張ったわねぇ」
「あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」
(後は手早く鏡に混ぜた手袋をぽいっとして終わり。私はミリアちゃんが本物かどうかなんてどうでもよかったのだけど……詐欺師に騙し合いを仕掛けたのに、騙し返される事に考えが及ばなかった。あなたの敗因はそ・れ・だ・け♡)
「落ち着いたら二人で鏡を処分しましょう? くれぐれも触れないように…ね?」
ー次の日、二人はレイアの魔女化をなんとかするハメになったー