◆ ◆
更に半年も経つと、Dチューブなる娯楽配信が流行し始める。元々は、探索者の安全や犯罪の証拠を残す為の配信だったのだが…どこぞの生産職が、おかしな映像を流すのでそのままコンテンツ化したモノである。
Dライバーとも呼ばれるソレは、若者を中心に流行し今では確実に視聴者を増やしている。
稀に、事故配信(死亡)になる事もあるけれど…概ね好意的に受け入れられていた。
人気なのは、どこぞの生産職のブチギレ配信が有名だ。いつかの、【素材回収】と呼ばれる配信の時に暴れたドラゴンが拘束を抜け出し生産職に襲いかかったヤツである。
アレは、今や伝説の配信となっていた。
何せ、雑魚生産職と名乗っていた者の真の実力が公開された配信でもあったからだ。
ぶっちゃけ、アレで【雑魚】なら今いる世界最高峰の探索者を最強とは言えなくなる。
だって、彼らでも未だドラゴンを討伐できたりはしないからだ。まあ、当人に言わせたら「自分も討伐はしていない」と言い張るんだろうが…配信を見ていた視聴者は、誰もその主張を認めたりはしない。それほどの衝撃と畏怖を彼らは目の当たりにしてしまった。
よって、人類最強の話が出ると必ずといってとこぞの生産職兼裏方が出て来る事になる。もちろん、最強の武具に関しても彼がその時に使った武器がランキング上位に食い込んで来る始末だ。それほどに、彼の戦い方は人々の脳髄を焼いてしまっていた。
◇☆◇回想◇☆◇
暴れに暴れ、拘束が緩んだ隙をみて力いっぱいに吹き飛ばした彼の竜はそのまま勢いに乗って生産職を薙ぎ払う。
油断していた彼は、「あ」と驚いてはいたものの薙ぎ払われて壁に激突するとゆっくり前のめりに落ちて行く。そこへ、トドメとばかりにドラゴンのブレスが叩き込まれて赤く燃え上がった。
ドラゴンが、憎悪の視線を向け油断なく唸っている中、彼がゆっくり起き上がり沈黙したまま立ち上がる。ドラゴンが、その様子を見て目を細め次の攻撃に備え動きをみせる。
〈Guruuuu…〉
そして、彼がおもむろに解体用のナイフをアイテムBOXへしまうと代わりに棘の付いたモーニングスターを取り出した。
「オールブースト、フルブースト」
ドバッキィーン!!!!!
次の瞬間、彼の振るうモーニングスターがドラゴンの鼻先に叩き込まれた。その一撃で、鼻先の鱗か゚砕け血飛沫が舞い上がる。
しかし、突然の激痛に悲鳴を上げる間も無く牙(頬?)を強打されたドラゴンは呆気なく横倒しにされた。慌てて起き上がろうにも、既に頭上へと移動していた彼によって頭を撃ち抜かれ地面に叩き付けられる。
混乱している間に、また鼻先へ攻撃を叩き込まれ何もできないまま地面を転がった。
一方的だ。
反撃も状況確認もできないまま、次から次へと激痛が襲いかかり…ついには、逆鱗を砕かれ激痛に悲鳴も上げられずドラゴンは壁へ叩き付けられた。
もう、コレまでか…と覚悟を決めたドラゴンだったが最後の一撃は無く攻撃が止まる。見れば、己を甚振った人間がスクロールを出して離脱する所であった。
〈……へ?〉
「あ゛?発動しない…マジかよ。離脱不可の結界か?アンチ・マジックじゃないだけマシだが面倒なシステムになってんなぁ?」
そう言って、ボスフロアへの侵入口まで移動すると問答無用に扉を殴り始める。
「こっちは、素材回収に来てんだ。殺したら、素材か゚消えちまうだろう?」
そう言って、ドンガンと扉を殴って叩いて開けようとし始めた。しかし、ボスフロアから外に出るにはそこを守る守護者を倒さねば出られない。
「チャンスだ!」とドラゴンは、思った。それと同時に、このまま出て行ってくれれば助かるとも思う。しかし、そこは強者のプライドが許さず途中で頭を振ってその考えを振り払う。
アレは、ここで倒さねばならない!!
本能に刻まれた闘争が、敗北を許さない故に例え部の悪い賭けでも敵を倒す為に強迫観念に突き動かされて奮い立つ。
故に、己の抱いた恐怖を振り払う為に雄叫びを上げ渾身の一撃を…と、行動を起こそうとした所で人間の頭上の空間が割れ、恐ろしい恐怖の存在が舞い降りた。
【天兵】だ…天が遣わす史上最悪の兵隊だ!!思わず、沈黙して身を丸めた。
あんなモノと殺り合えば、無抵抗のままになぶり殺しにされるだけだ。あの人間にされた様に何もできないまま殺されてしまう。
闘争本能よりも死への恐怖が勝ち、大人しく黙って気配を消した。
アレは、ダメだ。アレだけは、敵に回してはならない。あんなモノと戦うくらいなら自決した方がマシだ!!
そんな思考が、頭を過る。怖い。見付かれば、一瞬で消し炭になるだろう。
「憑依合体、エンジェル・フェザー!!!」
天より舞い降りた史上最悪の遣いは、彼の人間に吸収される様に融合し…ドッパン!!!と衝撃の一撃で扉を抉じ開け去って行った。
それを黙って見送り、ドラゴンは安堵の息を付いた後、暫くして己の不甲斐なさを嘆きのたうち回るという醜態を晒した。
まさか、その様子がずっと配信されているなんて思わずただひたすら愚痴と文句を言ってゴロゴロとのたうち回る姿を世界中に晒すのだった。
〈のじゃあああぁぁぁぁ!!!!!〉
ドラゴンは、【のじゃドラ】だった模様。
以下、ミームにもなった【のじゃドラ】は本人の知らない所で永遠と擦られ続けるのだが…知らない方が良い事もある。
以上、回想終了。
生産職の【鬼畜の所業】より。
◆閑話休題◆
そんな、世紀の一瞬を視てしまった人々はひたすら【w】や【lol】を打ち捲る。
大草原だった。
画面いっぱいの大草原がひたすら打ち続けられた。アレほど、【w】や【lol】が打たれた配信も存在しないだろうと言われる程に打ち続けられる。
それだけ、とんでもない配信だった。
人々の歴史にも載っちゃうレベルの鬼畜っぷりだ…面構えが違う。
最終的にドラゴンの愚痴と文句は、ありとあらゆる言語に翻訳されて世界中で再生され続け、とんでもない再生回数を叩き出す。
それこそ、地球人口以上の再生回数にすらなった。ショート動画も、切り抜きも過去最高に出回り、今もアーカイブのカウントを回し続けている。
大いにバズったが、当人は知らぬ顔。入って来る収益は、ほぼ人類の為に使われているくらいだ。こうして、彼の伝説は本人の知らない所で永遠と語り継がれるのだった。
ま、正確にはドラゴンの失態がバズってただけなんだけど(笑)。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
時は流れ、ダンジョンが世界中に生えてから約2年の月日か゚経った。そろそろ、あちら側も終わりを迎えつつあるらしい。
使い魔達からの報告によると、あちら側は資源が枯渇したディストピア風の異世界らしい。荒廃した世界観に加え、ドーム状の住居区で生活しているとのこと。
環境は、終末期を迎えた汚染世界で…使うにしても、テラフォーミングは必須。
しかも、汚染レベルか゚千二百年コースとのこと。つまり、惑星を食い潰した種族が住まう世界という事だ。ドーム状のコロニーから、移動する際は外ではなく転移魔法で一飛びしない限り移動することすらできない死の世界らしい。
更にいうと、あちら側はこちらの人間にも期待しているそうだ。何をこちら側に期待しているかというと、食料と労働力…というか、ほぼそれだけの価値しか見ていない模様。それを聞いて、俺が思ったのは「食人鬼&奴隷を求めるゴミ種族が居るんですね?」という一点のみ。
滅ぼしても、心を痛める必要の無い種族でホッとした。というか、食料と化した向こうの元人間共がヤバいらしい。
何でも、無限再生する生きた肉塊なんだそうだ。
それはそれは、人権も糞も与えてくれ無い頭おかしい種族でとても安心しますね!!そんな、ゴミ種族を唆した神様がどんな性格なのかも簡単に想像できる。
余程、その種族に自信がおありだったのだろう。しかし、今は絶滅寸前の弱小種族と化していた。
あ、別に俺や使い魔が何かした訳じゃないぞ?元々、限界だった世界にアホな神様が介入して唆した結果であって俺が滅ぼした訳じゃない。多少の支援があったとはいえ、元から限界だった世界が次元移動してこちら側にダンジョンを生やした時点で瓦解したんだと思われる。
瓦解というか、魔力が尽きて生活水準を維持できなくなったが為だろう。あちらは、何もかもを魔力に全振りしていたみたいだからな?そりゃ、魔力が枯渇したら生活も苦しくなるだろうさ。
その為、あっちは死力を尽くし必死にこちらを手に入れようとしているとのこと。
とはいえ、あちらの主力部隊はダンジョンを通ってこちら側に攻め入ろうとしている殺戮者だ。
俺らみたいに、世界の“外側”からダンジョンを辿って向こう側に回り込んだ訳じゃ無いから、攻略速度は遅々として進んでない。というか、攻略速度が異常なのは俺達の方だったりする。
尚、あちら側はこちらとの第一次接触は済んで撤退中だったりする。普通に、第一次接触で押し返しましたが何か???
ただし、自分達の世界に辿り着けるかどうかは…不明。体力的にも、食料的にもかなりギリギリだ。一応、ダンジョンモンスターで代用しているみたいだけれど。
それでも、何もかもが不足している状況では全滅も視野に入って来た位じゃないか?まあ、悪戯好きの脳筋に喧嘩を売った者の末路としては上等だろう。
これを【自業自得】という。
そもそも、こちらはどこぞの魔術師と連携している魔工技術者だ。アイツと、ほぼ同じシステムやカラクリを作ってる側の存在だ。使い魔なんて、どこぞの帝国様が夢想していた空想をそのまま起用して創ったガチモンの【不死軍団】。
食事不要(生理現象無し)。
不老不死(死なない老化しない)。
体力無限(不眠不休OK)の三項目が揃った…敵に回したら破滅確定の軍団だ。
勝てる訳ねぇじゃん(笑)。
そんな、知れば誰でもわかるヤバい存在に喧嘩を吹っ掛けたらどうなるかなんて…言うまでもない。まあ、そんな化け物が居る世界に喧嘩を吹っ掛けちゃった彼らは想定通りジリ貧ルートへ一直線。
そして、決死の作戦で敗走しちゃったダンジョン攻略隊は元の世界に戻って更に絶望するんですね?
「あ゛あ゛!?」
そんな風に、適当な妄想を広げていたらあちら側を攻略していた使い魔達から連絡が来ちゃった。何でも、あちら側の代表格が自決しちゃったらしい。
「あ〜らら…」
まあ、色々と戦術潰しちゃったから絶望の果てにもう無理だと判断したんだろうけど…つか、戦術もクソもこちらの使い魔が中枢に忍び込んで作戦の内容が筒抜けになっていたんだ。どんな天才軍師が居たとしても、戦術や秘策が筒抜けだったら負けても仕方がない。
そんな訳で、いつも通りの方法で相手の頭を押さえての撃滅戦法が彼らの心をへし折った模様。これによって、ダンジョンを通ってこちらへ襲撃しようとしていた軍団達が戻っても絶望しか残っていないってオチが確定してしまった。
「ふむ…ま、殲滅しちゃっても問題無いよね?どっちにしろ、前も後ろも押さえちゃってるから逃げ場もないし…」
例え、残したとしても代表格がアレだったんだ…自決しちゃったら、意味も無いから殲滅で問題ないだろう。
「殺ちゃえ!バー◯ーカー!」
ネタを挟みつつ、世界が終われば次は神々の領域へ攻め込むだけの簡単なお仕事です。ただし、俺自身は《神殺し》ではないのでそっちは専門家にお任せになります。
まあ、頑張れば殺せなくもないけど…所詮は、生産職。専門家に任せた方が、早いので馬鹿な事をした神の情報を上位存在経由でリークして正規《神殺し》に討伐をお願いしちゃいます。
尚、馬鹿な事を仕出かした神は神々の裁判に掛けられて降格か魂滅する事になるだろう。あー、クトゥルフのドリームランド送りとかでは無いぞ?普通の魂滅。
それに、流石にここまで証拠があるとどんな弁護をしても助ける事はできない。減刑も、在るにはあるけど…足の引っ張り合いが、大好きな神々が誰かの為に減刑を願う事はほぼ無い。
寧ろ、どこぞのチー牛よろしく飯が美味しくなるだけなので容赦なく叩き落とすのが最良だ。
とりあえず、あちら側の制圧が終わった事はこちらの人々に伝えた方が良いだろうから政府の役人に連絡しておく。
つか、金の亡者があちらから補填だクソだの塀だの言って来るだろうけど…あちらの状況を正直に説明しても納得してくれるだろうか?
………無理でした。
ですよねー(笑)。
「テロリスト同士で傷の舐め合いか!?」とか言われましたが…庇いもしてないです。そもそも、同情してたら虐殺なんてしてません。「どうせ、生き残りがいるだろ!?」なんて言われましたが…人っ子一人、生かしていません。
「利益を独り占めする気だな!?」なんて言ってましたが…あちらは、荒廃したディストピアです。テラフォーミングしても1200年は使い物になりません。
寧ろ、利益は確実にマイナスとなるでしょう。ぶっちゃけ、破棄したいです。
それでも、一切合切、全く、一ミリたりとも納得して貰えませんでした。
なら、もう自分達であちらへ行ってみて貰うしかないんですが…「ダンジョンを通って」と言ったら、一万倍になって反論が返って来ました。要約すると、安心安全に行けるなら行ってやってもいいけど安全性が保証されないなら行く意味はない!!と上から目線で言われました。
ぶっちゃけ、安心安全にあちら側へ行く事は可能です。
しかし、その為にはこちらのオーバーテクノロジー風の技術(魔工技術)を使って行く事になります。すると、こちらの技術を「金にできそうだから寄越せ!」と言って来るのは目に見えています。
とはいえ、この技術は【錬金魔法】を主体にしているので科学技術のみでは作れないというオチになっております。
ハッキリ言って、魔工技術は再現性の低い技術(職人技)なので設計図を渡したとしても同じモノができるとは思えません。
なら、錬金魔法の使い手を育てれば良いじゃないか!と言われそうですが…錬金魔法を習得する為には、まず錬金術を極めないとなりません。ぶっちゃけ、【錬金術】は金食い虫なのでお金を稼ぎたい方々にとってアレは利益になりません。
元より、散財前提の職業なので好まれないかと思われます。
大成するまで、どれくらいのお金を使う事になるかというと…職業、【錬金術】のみで、一億ほど。その上位職の【錬金術師】で、100億。他に、【調薬】【付与師】【鍛冶師】【機械技師】等、様々な職業を経てその主要スキルをカンストさせないと【魔工技術】には遠く及ばない。というか、それらを全てマスターする為には大体一兆円超ほど投資しないと難しい…と来たもんだ。
俺の場合は、ほぼお金は使ってないけど…それだって、使い魔が居てくれたからこそ何とかなったんだ。普通に一人だったら、今頃【錬金術師】止まりだったんじゃないかな?ホント、どこぞの悪の組織が絡んで来たお陰だったりもするけど。
あの出会いが無ければ、俺はもっと別の人生を送っていただろう。そう、神側に「神にならないか?」なんて勧誘とか受けて無かったかも知れない。
素材関連が、ほぼ無料(採掘、伐採、採取を使い魔が担当)だったからここまで来られたが…彼らが居なければ、もっと時間と費用が掛かっていたに違いない。
【付与師】の為に、魔法職にも手を出したけど…攻撃魔法は、ほぼ覚えられなかったしな?そもそも、俺に戦闘系の適正が無いから攻撃スキル自体が習得できないデメリットか゚ある。
だから、半端な状態を嫌って上位存在に頭を下げてデバックモードで才能を再構築させて貰った訳だしな?
因みに、生産特化。魔法適正は、オールで普通(C)…攻撃系は皆無にしてある。
だから、補助、支援、補正、拘束、回復、浄化、結界等々攻撃系以外は大体揃えた。
なので、おかしな魔法を構築したりはできるけど…攻撃だけは習得できていない。
それでも、攻撃系魔法でなければ構築する事は可能だが…主に攻撃の意図があると途端に弱体化したり使えなかったりする。
マジで、不便だ。その癖、オリジナルの魔法はすんなり覚えられたりするからとても重宝している。何だったら、新たな魔法を創っても問題なく起動させられるし面白おかしく楽しめると思われ…何て、ツラツラと余計な事を考えていたら良い方法を思い付いてしまった。
最近の流行りが、配信だったのを思い出した。俺自身、何度も素材回収の配信をしていたからやり方はわかる。要は、あちらの情報を映像化してリアルタイムでこちらに流せば良い訳だ。
そうすれば、あの糞ウゼェ官僚共も納得せざるを得ないだろう。CGとか抜かしやがったら、問答無用であちらの使い魔と場所を入れ替えてやれば良い。確か、転移魔法的な【フェアリーサークル】又は【チェンジ・リング】が使えたハズだ。
術式については、例の魔術師に見せて貰ったから使えなくはないけど…難易度が、そこそこあるタイプの魔法だから魔力制御がかなり面倒。発音に自信がないので、できるなら無詠唱推奨。
ま、多分無詠唱でもイケる…ハズ。
ちょっと、不安。
別に、ダンジョンを通さなくてもあちらとこちらを行き来する方法は幾らでもある。多少、膨大な魔力が必要になるとはいえシステム・ユグドラシルがある限り俺のMPはほぼ無限に等しい。
そりゃ、多少のフィードバックはあるものの糞官僚共を黙らせられるのならそれくらい我慢して見せれば良いだけの話。
とりあえず、ギャーギャー騒ぐ馬鹿共を尻目に俺はあちら側で安心安全に観光できる様に道具をアイテムBOXから出し始める。
すると、騒いでいた官僚共が物々しい装備に段々声を小さくした。
「それじゃ、逝きましょうか?」
「えっと?ど、何処へ?」
「え?あちら側へですよ?その目で見ない限り信じないんだろう?なら、その目で直接見れば良いじゃないか」
「い、いや、それは…」
「大丈夫。何かあっても、回復魔法に補助魔法その他諸々何でもござれだ。散々、文句を喚いたんだ。行く覚悟はあるんだろう?」
「え!?あ、や、私は…」
「とりあえず、酸素ボンベで呼吸は何とかなるんだ。二時間ほどしか持たないかも知れないけど…空気が、酸性で生身を晒しているだけで命が削られる酷い環境らしいけど…回復魔法で、ゴリ押しすれば二時間くらいはイケるハズだ。何だったら、安全性を考えて一時間で戻ってくれば…うん。イケる!イケる!」
散々、いちゃもんを付けてくれたんだ問答無用で連れて行くに決まっているだろう?
例え、この場に居るアホ共があちらで死にそうになったとしても【パーフェクトヒール】でサクサク治してやるから安心しろ。
何だったら、他の病気や持病も治るから一石二鳥だろう。
そんな訳で、ゴチャゴチャ言い訳を並べて「行きたくない」を表明していた官僚共を連れて【チェンジ・リング】であちら側へ移転する。一瞬で、周囲の風景が変わり荒廃した世界へと俺らは来た。
転移と同時に個別シールドを展開し、更に大き目の結界を展開した。そこへ、アイテムBOXから更に酸素ボンベを出して噴霧する。これで、結界内であれば酸素ボンベ無しでも呼吸くらいはできるはずだ。そして、彼らはそれを見た。
荒廃し衰退した世界を…。
ぶっちゃけ、生物がマトモに生きられない世界をどうやってお金に変えようと思うのか俺には判別できない。それでも、彼らによればこの世界をお金に変えるのは簡単なんだろう。
「資源は、枯渇。自然も、観て貰った通り…ぶっちゃけ、俺らの世界に侵攻してきた理由は乗っ取りなんだよなぁ…で?コレをどうやってお金に替えるって言うんだい?」
「…………これは、滅んでませんか?」
「だから、金にならねぇって言っただろう?ほら、足元。靴が、溶け始めてる」
「うわっ!?革靴が……!!」
「とりあえず、近くのドームに行くぞ?アレを解体すれば、そこそこの金に…なったら良いよなぁ…(希望的観測)」
そんな感じで、ドームに移動した訳だけど。出迎えて来たのが、こちらに元々住んでいたと思われる人間共の成れの果て…即ち、手足の集合体みたいになってしまった肉塊だった。そう言えば、コイツが居たんだったな?一応、滅びては居ない模様。
しかし、アレでは対話とかは不可能っポイ。知性なんて残ってなさそうだしなぁ?
「な、なんだ!?アレは!!」
「この世界の元人間だな。乗っ取りを成功させた異種族によってあんな怪物に作り変えられちゃったみたいだけど…」
「……は!?乗っ取り!?作り替えられた!?ちょ、情報量か゚多い!!」
「元々、この世界は人間って種族しか居ない世界だったみたいだけれど…かなり前に別の世界からの侵攻があったらしくって、乗っ取られちゃったみたいだね?因みに、次がウチらの世界だったみたいだよ?」
「……マジか…」
「後、アレがこの世界の支配者共の食料なんだよね。つまる所、食料と労働力を狙って侵攻してたみたい…」
「……食料……労働力……」
「我々も、あんな風に化け物にされるはずだったのか…」
「とりあえず、逆に攻め入って追い詰めたら自決しちゃったからもう居ないよ?」
「自決!?というか、追い詰めた!?」
「かつて、日本大帝国が夢想した不死軍団を再現してるんだけど…それで、攻め立てたら絶望しちゃったみたい?」
「だから、情報量っ!!!」
「不死軍団?あの、妄想としか言い様のないアレを創ったと言うのか…」
「おう。食料不要、不老不死、体力無限の三拍子揃った不死軍団だ。それで、24時間730日徹底的に追い詰めたったら…自決しちゃった(笑)」
「「「「「…………………………」」」」」
何故か、得体の知れないモノを見る様な目で見られる。心無しか、一歩ほど下がられたんだが?ドン引き?ドン引きですか!?解せぬ。
一応、この世界が使い物にならない世界である事は納得して貰えた。それでも、補填は必須らしくドーム状の住居区を解体して持ち帰ると言い出した官僚達。
転んでも、ただでは起きない精神はとてもしたたかに見えた。しかし、補填って日本だけで決めちゃって良い話なんだろうか?なんか、他国を出し抜いている様にも感じるんだけど?
それに気が付いたものの、その点を指摘したら今度は他国の奴らまでここに連れて来なければならなきゃイケなさそうなので黙った。そんな、クソ面倒な行為はノーサンキュー。
「とりあえず、嫌な予感がするから言っておくけど…荒廃した世界を見て、更にこのドームみたいな居住区を見ると…技術、合ってなくね?」
資源が枯渇する様な採掘をして、生命維持の為の技術や人間を理性なき肉塊に代える技術があったとして…貴金属は何処行った!?パッと見た感じ、装飾品の類は一切見当たらない。宝物庫みたいな所に集められているなら他にもあって然るべきだろう。しかし、使い魔の報告にそれらしい記述はなかった。
「…あの種族、一体どれだけの文明を呑み込んだんだ?一つや二つじゃねぇだろう?これ、色々混ざってないか?」
とても、嫌な予感がヒシヒシと俺の背筋を登って来る。周囲を見渡し、手足の肉塊を見上げ…痛くなった頭に手を当てた。これは、間違いなくアレだ。
「おい、官僚。これ、解体して持ち帰ったとしても金になりそうにないぞ?」
「……何故ですか?」
「憶測で良いのなら…これ、この壁…様々な金属が混ざってる。あっちとこっちじゃ、金属の強度が違っててマチマチだ。つまり、この世界を荒廃させた種族の頭はそれほど良くなかったんだろうな?寧ろ、下等だった可能性が高い」
これ、混ざってますやん…色んな金属が、ごちゃ混ぜになって固まってますやん。錬金魔法で、分解して特定の金属を抽出せな使い物にならへんわ。
「……どういう事ですか?」
「要は、脳筋だったんだよ。で、呑み込んだ文明や労働力として使っていた人間の方が優秀だったんだろうな?」
「…………」
「暴力と恐怖で支配された世界だったみたいだな?だから、外はディストピア。中は、高度な文明技術はあれど…それを扱うのは別種族。最終的に、食料が枯渇してコレを管理していた人間も食料に変換したんだろう。はぁ…滅ぼして、正解だったわ。後々、問題視されるかも知れんが…地球が、乗っ取られるよりかはマシだ」
「え゛!?ちょ、滅ぼし、た?」
「ああ。殲滅した。当たり前だろ?喧嘩を吹っ掛けてきたのはあっちだぞ?もちろん、神々も含めて、皆殺しだよ」
「…………」
「あ、俺がヤバい人間だって思っただろう?正解だ。地球の利益にならんもんは切り捨てる。この惑星も、消し飛ばした方が良いな。原子レベルで、陽子崩壊を起こさせて元素管理した方が良い」
「…………無茶苦茶だ…」
「無茶苦茶だとも…俺は、世界と世界の境界を護る守護者。他の世界が、俺達の住まう世界を侵すと言うならば問答無用で排除するに決まっているだろう?」
ドン引きする官僚を横目に、俺は淡々と事実のみを答える。ついでなので、俺が何処に所属していて誰の下でどんな活動をしているのかも告げておく事にした。
「因みに、俺はあの世界のどの組織にも属していない。一応、日本生まれで己の生まれ育った地域に住んではいるが…所属は、高位次元存在に拾われてそのまま神々の使徒になった」
「「「「使徒!?!?!?」」」」
「なので、世界のシステムに手を加える事はできるが…私的利用なんざした時には封印処理されて最短二百年。最長五千年は保管庫に保管される事になってる。だから、怖くて私的利用は無理だな。下手したら、ドリームランドで魂滅すらあり得るから…」
「ドリームランド!?こんっ…!?…マジで!?あ、いや…という事は、君は神々の膝元で活動しているって事で間違いない?」
「そうそう。後、俺が持ってるモノの中にはアーティファクト…神器も含まれるから、それを奪ってお金にすると…良くて塩柱。悪くて砂塵に帰すから気を付けて?ちな、俺の持つ物の中には神々に下賜されたものもあるから…何が該当するか、俺もわからないんだよね…」
「……何処に地雷が埋まってるかわからないのか…こわっ」
「一応、金塊とか持ってるけど…ソレかも知れないから捨てるに捨てられなくてアイテムBOXの肥やしになってる…」
「…………金塊、いらないのか?」
「使わないからな。ぶっちゃけ、金塊と原油が一番要らねぇ…でも、貰ったモノかも知れないから捨てられねぇ…」
もう、マジでそういうのがあるから困る。ちゃんと、最初から分けて置いておけばと何度後悔したか…ガチ、地獄。
「後は、この世界の歴史とかに名前が載らないように活動してる。こっちは、命令とかじゃなくて任意。なので、ちょっと規模が大きいけど…引き篭もりをやってる。ああ、別に子供部屋おじさんって訳じゃない。つか、部屋に閉じ籠もる行為そのものが苦痛なので無理。寧ろ、引き篭もってる自宅警備員を尊敬するね。どうやったら、そんなに引き篭もっていられるんだよ?俺だと、三日も持たねぇぞ?まあ、今はそれ所じゃないけど…」
「ハハハ…マジか。君、テロリストじゃないのか…」
「テロリストじゃないよ。寧ろ、今回の事件を終息させようとしている側かな?終息させて、システムを調整して…また、普段の生活に戻るだけの存在だ。ダンジョンを消して、元の世界に戻せたら解決!じゃ、バイバイキーンってモブに戻るだけの話なんだよねぇ…」
「って、モブっ!?モブに戻るの!?」
「……モブに戻りますが?」
「嘘やろ!?普通は、俺TUEEE!するんじゃないのか!?」
「……人の夢と書いて、儚いって読むんやで?そう言うのは、厨二病とヲタクだけで十分やって…そういうのは、黒歴史でのたうち回りたい奴に任せるわ」
「えぇえぇぇぇ……」
◆閑話休題◆
深堀りはしてないよ?深堀り、は。
もっと、利益にギラギラシてるはずだから…こんなにアッサリは無い。もっと!もっと!!お金、利益、覇権!!ってなるだろうから…面倒臭くなった(本音)。
後は、資源を譲り渡せない理由として神様から下賜されたモノが含まれると…という話にした。本人以外が、それを得て己の欲望のままに利益にしようとすると良くて塩柱。悪くて砂塵化…砂塵化の場合は、最高の痛み止め(モルヒネ)が一切効かない上、数日間の激痛と共に砂と化して行く呪いが付いて来ます。細胞の一欠片ずつが、ポロポロと砂になって行くんよ。で、ポロポロすると激痛が絶え間なく襲い来るっていう…発狂モノの仕打ちだな。まあ、どこぞの真祖な吸血鬼よろしく狂いそうになっても激痛で正気に戻されるんだけどね?ある意味、拷問。絶叫の果てに死ぬ…マジの神罰。
とりあえず、金塊(国際プール1.5杯分)と原油(月の体積同等)は…マジ、アイテムBOXの肥やしになってるから(笑)。
因みに、(仮)のアイテムBOXは大体地球規模の惑星(体積)×3つ分の物資が入ってます。というか、それくらいが限界値。とりあえず、アイテムBOXに物資が無限に入るのがどうかを調べる為にいっぱいにしてみましたっていう…ね?
金は、金箔にして使う予定だったけど…それ以上のメッキを作っちゃったから要らなくなったし…原油は、そもそも使わなかったから……皇家の船(天地無用〜)モドキが優秀過ぎた結果(笑)。
誤字・方言あれば報告をお願いします。
m(_ _)m
感想もあれば、お願いします!
いつも、読んでくれてありがとうございます。