転生牟田口は無能なりや?   作:5の名のつくもの

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第4話 兵站を重視する

牟田口中将は再構築された第4軍の司令官に収まった。満州は返還されて関東軍も弱体化して尚も強大な勢力を維持している。したがって、軍隊の再編に合わせて牟田口を据えて本土と現地のパイプを設けた。中国情勢にも精通して独自の連絡網を有するため使い勝手が良い。異例のスピード出世だが世界情勢は加速を止めないため適切と評価した。

 

 

 

「どうせ本土の連中は頭が固い。今のうちに輸送を改革するのだ」

 

 

 

 ただの中将と侮ることなかれと言わんばかりに独自の改革を進めていく。共産党撃滅から得られた反省は山積して、これを一つずつ確実に解決していくが、特に重視したことが輸送の兵站だった。今回は中華民国軍が地上戦の大半を担当してくれ、大きな問題にはならなかったが、内陸部の戦闘では補給が届かないことが多々ある。北進する際は問題と残り続けて南進する場合も島々の移動や通商破壊作戦への対応が求められた。

 

 

 

 今は「あの牟田口が言うなら」と認めてくれる時期である。満州という絶好の工場を抱えて本土に察知されづらい環境が整った。今始めなければ日米開戦に間に合わない。トラックの機械化が進められているが不足気味で馬匹頼りはいただけなかった。

 

 

 

「輸送機で高速空輸と落下傘で即時投下。貨物自動車と半装軌車を量産、小型装軌車を開発とオート三輪の拡充を進める。各部門の専用輸送車を開発するが、母体は同じとし、ユニット式で組み替える。洋上は陸軍輸送船を整備して海軍と協同する。通商破壊は合同対潜部隊を組織して対潜兵器で封じよ」

 

 

 

「それは無茶です。いくらなんでも海軍とは…」

 

 

 

「それに本土が認めない…」

 

 

 

「やるんだ。君たちがやらんと言うならば私が独自にやる」

 

 

 

「できるだけ…やります」

 

 

 

「やらねば勝てん」

 

 

 

 早速と言わんばかりに行動を開始して「部下(現場)の声をよく聞く将校」の看板を掲げる。司令部の建物の中に閉じこもっているばかりでは身体が鈍った。面倒な書類仕事はぶん投げて任せている。デスクワークよりもフィールドワークだ。

 

 

 

 司令部に六輪自動貨車が付けている。九四式六輪自動貨車にしていすゞのトラックだった。貨物と人員を輸送する六輪トラックの代表格を務めている。民間用を流用しているため整備性に優れた。スパナ1本で解体まで可能な設計は素晴らしい。やや古めかしいが十分な性能を有して中華の大地で駆け回っていた。

 

 

 

「足りんな」

 

 

 

「性能ですか?」

 

 

 

「数が絶対的に足りない。これだけ良い自動車なのに生産数が足りない。これ程に優れているのだから各社を支援して吸い上げなければならん。民間用を軍用に吸い上げろ」

 

 

 

「それでは市民の生活が…」

 

 

 

「だからこそ大量に作るのだ。満州に自動車会社を置いて代わりに製造させる」

 

 

 

 国家事業として自動車産業の育成を行っている。まだ世界レベルには至らなかった。それでも十分な性能を有する自動車を生み出してくれる。あいにく、満州はおろか日本を埋め尽くすには足りなかった。国土の都合で走行できない事情に留意が求められる。副官は特有の道路事情があることを指摘した。しかし、九四式であれば悪路もスイスイと走破できて後部の四輪を履帯に変えて対応しよう。したがって、特に手は加えずに製造数を底上げすべく、内地の企業を満州に置いて現地生産と称した委託生産を展開した。本土組の許可を得ずに無理矢理引っ張って来る。あとで承認を得れば良いのだ。

 

 

 

「試製装軌車はウチで引き取る。それと合わせて大型と小型の半装軌車を作ってほしいのだ。三輪車も良いな」

 

 

 

「名目は?」

 

 

 

「そんなもんは後付けだ。私が認めるのだから勝手にやる」

 

 

 

「はい…」

 

 

 

「あと六輪では大きすぎる時の四輪と小さすぎる時の八輪も作ろう。牽引車も小型から大型まで砲兵の要となった。時には人員と貨物を輸送できるように広く構える。機械化を止めてはならずだ。資源が無ければ満州で採取して製造するだけ。作った物を運べる体制を構築するのだ」

 

 

 

 いつ本土から怒られるかわからない。もう始めたもん勝ちと進めていった。牟田口は勝手なことを言っているように聞こえる。いや、意外と理に適っていた。大型車では過剰だったり、そもそも走破できないような地形だったり、コンパクトが求められる際は三輪オートを素体にした三輪車を投じる。ダイハツやマツダなど現代の大企業が製造した。零細企業も国土という事情に合わせた製品を生産している。日本らしいガラパゴスだが軍用に適さないとは言い切れなかった。荷台を延長して設けることができれば簡易的なトラックの完成である。民生品を組み込むことで価格は下がり大量製造が可能だ。零細企業を救うことにも繋がると日本人らしい慈悲の心を刺激して採択を得やすい。

 

 

 

「八輪は豊田あたりに作らせればいい。牽引車は小松だが三菱や川崎も入れ込むぞ」

 

 

 

「それでは鉄も油も金も足りません」

 

 

 

「要らんものを減らせばいい。満州で作ればいい。満州には鉄も油もあるではないか」

 

 

 

「それでは時間がかかります」

 

 

 

「時間は稼ぐものだ。何のために私が戦争を終わらせたのか。なんてな」

 

 

 

 ちょうど、彼らの上空を爆撃機が通過した。訓練中らしく綺麗な編隊飛行を見せてくれる。最新型の九七式重爆撃機を暫く眺めていた。新型爆撃機の構想が持ち上がると高速爆撃機と戦略爆撃機を明確に切り分ける。前者は双発機で後者は四発機と開発中だ。新型機が揃えば必然的に旧型機は前線から退くが捨て置くには勿体ない。

 

 

 

「爆撃機を用いた物資の空中から落下傘投下だ。これなら迅速に予想できる。不確実性に関しては目をつむるしかない。速度には代えられん」

 

 

 

「輸送機を拡充すれば高速輸送を確立できます。爆撃機を即席輸送機にすることは目から鱗が落ちました」

 

 

 

「実際にやれるかはわからんが航空輸送は拡充すべきだ。医薬品と食料を迅速に運べるだけでも変わってくる」

 

 

 

「空挺部隊の移動用と言えば説得できるかもしれません」

 

 

 

「調子に乗って来たな。その意気で頼む」

 

 

 

 航空機が進化している中で輸送に用いないことがあろうかと注目した。民間用旅客機から軍用機への転用が図られる。外国から旅客機や輸送機を輸入してライセンス生産も行われていた。とにかく数を揃えたいのである。中華内戦では爆撃隊が大活躍してくれた。数百キロを数時間で移動できる点は絶対的な強みだろう。戦闘機に比べて遅いと言うが車両の数十倍の速度を叩き出した。兵員輸送も重要であるが特に必要な医薬品と食料品を迅速に提供する。空であれば敵戦闘機に見つからない限りは確実に送り届けられた。

 

 

 

 しかし、敵が制空権を握っている場合は困難と言われる。ここは落下傘投下の出番だ。木箱に落下傘を括り付けて低空から投下すると地上部隊が回収地点で荷解きする。不確実性が高くて回収できるかの指摘がなされた。手段の一つして用意しておくに悪いことはない。爆撃機を改造せずに利用できる簡便性を有した。あくまでも、友軍が包囲されていたり、弾薬が不足していたりなど緊急性が高い場合に限る。非常時限定の対応とした。

 

 

 

「せっかく砲兵の充足も進めているんだ。輸送手段が追い付かなければ戦える時に戦えない。連隊長で現場を見て来てよかった。内地に居座っていたら到底も気づけないことが多くある。まさか左遷がこんな風に良い影響を与えてくれるとはな」

 

 

 

「そのうち本土に戻るでしょう」

 

 

 

「いや、それは拒むつもりだ。北進か南進か知らんが現場に立ちたい。私の仕事は現場の声を本土に送り届けることだ」

 

 

 

 まさに現場の声を聞く連隊長の姿である。

 

 

 

 日本陸軍をこえて大日本帝国軍はこの男にかかっていた。

 

 

 

続く

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