活動報告の募集は後に行う予定となっていますが、今後もよろしくお願いします。
「よっしゃぁぁぁぁぁ!!!ふげぇぷ!?」
雄叫びと共に、俺は真っすぐと落ちてしまう。
勢い良くボードから落ちてしまった事で、頭に来る衝撃に対して、頭を抱えてしまう。
正直に痛いと感じてしまうが、それよりも。
「おぉぉ!!よしっさっきので少し掴めそうだ!!オーリー!!!」
そうして、俺はスケボーの技の一つであるオーリーに失敗しながらも、先程よりも手応えがあるのを感じる。
「目指すのは、ナンバーワン!一番星!このままスケボーナンバーワンを目指してやるぜぇ!!」
そんなやる気に満ちた声を張り上げると同時に、その声以上に聞こえたのは、何かの金属音。
「んっ?」
俺は思わず、その音の元へと向かう。
そこには。
「なっなんだ、ありゃぁ」
見つめた先、そこに広がっていたのは現実離れをした光景だった。
夜のスケボー場で、ほとんど人がいないと考えていたが、そこにあったのは現実離れをした光景だった。
黒い蟻みたいな仮面にスワットを思わせる黒いジャケットを着ている奴らが戦っているのは、エイリアン。
「エイリアン?だよな?」
そう感じてしまうような謎の奴らがいた。
両手に頬を添えた骸骨顔の頭部と緑色のゴテゴテとした蛹のような装甲に覆われたフォルムに右腕の鋭い鉤爪など、気味の悪い奴らだ。
「……エイリアン、だよな?」
俺は呆然と呟く。目の前で繰り広げられているのは、映画のワンシーンか何かとしか思えない。だが、夜風に乗って鼻を突く鉄の匂いと、荒い息遣いが現実だと告げていた。
黒いジャケットの集団が骸骨のような顔を持つ緑色の装甲の怪物と切り結ぶ音が、乾いた夜気に響く。まるで街灯の光だけが切り取った異世界だ。
「────ッ!!」
不意に気味の悪いうなり声が、俺の鼓膜を震わせた。
エイリアンの一体が、ゆらりと俺の方へ向き直る。蛹のような装甲の奥、骸骨顔の空洞に窶めた光が──こちらを捉えていた。
「……っ!!」
背筋を駆け上がった悪寒に、俺の身体は反射的に動いていた。
走る。とにかく走る。
地面に転がったままだったスケボーを無我夢中で掴み上げ、デッキを蹴る勢いで乗り込む。車輪がアスファルトを噛む感触が足裏に伝わり、俺は必死にペタリングを繰り返した。
「うぉぉぉっ!!」
背後から迫るうなり声が、じわじわと距離を詰めてくるのが分かる。振り返りたくはないが、気配だけで奴が来ているのが分かった。夜風が頬を撫で、心臓が喉の奥で暴れている。
──助けてくれ、誰か。
祈るような気持ちで、スケボー場の出口へと向かう暗い路地へ滑り込んだ、その瞬間。
「──ッ!?」
足元に、何かがあった。
硬い音と共にスケボーの車輪がそれを捉え、俺の身体はバランスを完全に失った。浮かび上がるのは無様に両手を突く自分の姿と、アスファルトに叩きつけられる痛み。
「──ぐっ……!」
肩を強かに打ち、息が詰まる。視界が一瞬揺れた。身体を起こそうとして──俺は目の前にあったものを見た。
暗がりの中に転がっていたのは、スーツケースだった。
黒く、無骨な、どこか場違いなスーツケース。
俺がぶつかったのは、これだったらしい。路地の端に置かれていたのか、あるいは──誰かがここへ辿り着く前に落としていったのか。
背後のうなり声は、まだ遠くに聞こえる。だが、確実に近づいていた。
「……中身、か」
俺は震える手でスーツケースの留め金に指をかけた。金属の冷たさが指先に伝わり、心臓が早鐘を打つ。背後から近づくうなり声は、もうすぐそこまで来ていた。
──どうせ、逃げきれないなら。
最悪の結論が頭をよぎる。このまま走り続けても、きっと捕まる。それなら、せめて中身くらいは確かめてから死んでもいい。馬鹿げた思考だとは分かっている。だが、恐怖で凍りつきそうになる頭の中で、それは妙に理に適った結論に思えた。
パチンと留め金が弾ける音が、やけに大きく響いた。
「……なんだ、これ」
スーツケースの中に鎮座していたのは、銀色に鈍く光る金属のベルトだった。無骨で、いかにも重そうなそのベルトには、中央に何やら複雑なギミックが仕込まれているようで──いかにもSF映画に出てきそうな代物だった。
「……ベルト? こんな時に、ベルト?」
意味が分からない。だが、手に取った瞬間──その冷たい感触が、不思議なほど俺を落ち着かせた。まるで、これを持てと誰かに囁かれたような。
ふいに**──ピカッ**
空から一筋の光が降ってきた。
鋭い光の筋が、俺に迫っていたエイリアンの頭部を正確に貫いた。骸骨のような顔面が衝撃で仰け反り、蛹のような装甲が火花を散らして弾け飛ぶ。
「──ッ!?」
俺は思わず目を細めた。エイリアンはうなり声を上げながら光の衝撃に弾き飛ばされ、アスファルトを数メートル滑ってから動かなくなった。
空から降ってきた光の元──ゆらりと舞い降りてきたのは、一匹の蛍だった。
「……蛍?」
だが、俺の目はすぐにその違和感を捉えた。蛍じゃない。明らかに蛍じゃない。
淡く発光する腹部、翅の透けるような質感──だが、その輪郭にはあまりにも人工的な直線があった。金属の継ぎ目、関節の隙間、機械仕掛けの微小な駆動音。それは紛れもなく、ロボットだった。
「……ロボット? 蛍の……ロボット?」
呆然と見上げる俺の目の前で、その蛍型ロボットはふわりと舞い上がり、俺の手元──握りしめていた金属のベルトの前に止まった。
そして、喋らない代わりに──明確なジェスチャーで示した。
蛍型ロボットは俺の手からベルトへ近づき、次いで──自分の腹あたりを指し示して、ベルトを巻くような仕草をした。
「……巻け、って?」
俺は目を見開く。蛍型ロボットは黙ったまま、ただもう一度、俺の腹を指差し、ベルトを巻く動作を繰り返した。何度も。何度も。
遠くでエイリアンが再び起き上がる音がした。うなり声が夜気に滲む。
「……分かったよ」
俺は覚悟を決めて、金属のベルトを腰に回した。バックルがカチリと音を立てて固定される感触。冷たい金属が肌に触れ、腹のあたりでしっくりと収まった。
ベルトが腰に巻かれると同時に、蛍型ロボットがふわりと宙に舞い上がった。まるで吸い込まれるように、ベルト中央の空洞──確かにそこには空洞があった──へと滑り込んでいく。
「うおっ、ちょ──」
蛍型ロボットの身体がベルトの奥へと収まった瞬間、無機質な電子音声が響いた。
**『HEN-SHIN』**
「…は?」
思わず聞き返す暇もなかった。瞬間、ベルトを中心に、俺の全身を覆うように緑色の光が溢れ出した。光はすぐに形を変え、パーツとして俺の身体に纏わりついていく。
足元から、足首、膝、太腿、腰。胸部、肩、腕。顔面までを覆うように。
金属が擦れる音と何かがロックされる硬質な音が連続して響く。そして最後に、視界を覆うマスクのような装甲が顔面へと装着された。
──完了。
「……」
俺は呆然と自分の手を見た。そこには、人間のものではない。緑色の、無骨で流麗なロボットの腕があった。握れば金属音が鳴り、指を動かせば精緻な関節が微かに軋む。
全身を覆う装甲の重みが、奇妙な安心感となって身体を包み込んでいた。まるで、こうなるためにずっと待っていたような──そんな感覚さえあった。
「すっげぇ……!」
思わず声が漏れる。自分の声なのに、マスクの奥で反響して少しだけ低く聞こえた。足を踏みしめると、アスファルトが軋む。全身に力を込めると、装甲の隙間から微かな光が漏れた。
ロボットのような装甲。まるで映画の中の主人公になったみたいだ。
胸の奥から高揚感が湧き上がってくる。さっきまでの恐怖が、嘘のように薄れていた。
「これは一体?」
背後で、再びエイリアンが起き上がる気配がした。だが、今の俺は──振り返る余裕があった。
背後から鋭い風切り音が迫った。
振り返るよりも速く、俺の身体は宙を舞っていた──いや、正確には、身体が勝手に反応していた。まるで今まで眠っていた感覚が一気に目を覚ましたように、俺の視界はスローモーションのようにクリアだった。
エイリアンの鉤爪が、俺の右腕を薙ぎ払う。
金属同士がぶつかる硬い音が、夜気に響いた。
「──は?」
俺は呆然と自分の腕を見た。緑色の装甲には深い傷跡こそ残ったが──痛みはない。いや、それどころか衝撃すらほとんど感じなかった。鉤爪の攻撃が、まるで雨に打たれた程度にしか感じられない。
「マジかよ…」
俺は自分の腕と目の前のエイリアンを交互に見た。エイリアンの骸骨のような顔が、俺を覗き込んでいる。その空洞の奥の光が、何かを計りかねているように揺らいだ。
「…お前、俺の身体に何したんだよ」
口から出たのは、自分でも驚くほど落ち着いた声だった。いや、落ち着いているんじゃない。身体の奥底から、今まで感じたことのないほどの力が漲っているのが分かった。
俺は無意識に拳を握りしめていた。金属の関節が軋む音が、心地よかった。
「……っ!!」
エイリアンが再び吼える。気味の悪い唸り声が鼓膜を震わせ、再び鉤爪を振り上げる──その前に。
俺は殴った。
どう殴ったのかは自分でも分からない。ただ、エイリアンの骸骨顔面に向かって右拳を突き出した。それだけだ。
だが──ドォン!!
という音と共に、エイリアンの身体が軽々と宙に浮いた。まるでトラックにでもぶつかったみたいに、蛹のような装甲が火花を散らしながら数メートル、いや、十メートル近く吹き飛んでいった。アスファルトを削りながら滑っていったエイリアンは、最後に街灯の鉄柱に叩きつけられて、ようやく止まった。
「…え?」
俺は自分の拳を見た。緑色の装甲に覆われた拳。目に見えるダメージは、傷一つない。
「嘘だろ…おい、マジで嘘だろ…」
身体が震えていた。恐怖じゃない。興奮だ。心臓が早鐘を打ち、指先が痺れるような感覚が全身を駆け巡っている。まるで、俺は今までこんな身体で生きてきたことがないと訴えられているようだった。
「俺、こんな力で…」
だが──俺が呆然としていたのは、ほんの一瞬だった。
……グルルルッ!!
鉄柱に叩きつけられたはずのエイリアンが、再び立ち上がった。蛹のような装甲の至る所にひび割れが走っている。だが、その骸骨顔の空洞の奥の光は──怒りに燃えるように、赤く揺らいでいた。
そして、今度はただの鉤爪じゃなかった。右腕の鉤爪が伸びる。いや、変形している。まるで鞭のようにしなる、鋭利な刃へと。
エイリアンは地面を蹴った。さっきよりも速い。夜気を切り裂くような速度で、俺との距離を一瞬で詰めてくる。
迫るエイリアンを前に、俺はゆっくりと振り向いた。
時間にすれば、ほんの数秒だったはずだ。だが、マスクの奥の視界の中で、世界はやけにゆっくりと見えていた。エイリアンの鉤爪が振り上げられ、夜気を切り裂いて迫る軌跡までが目に見えるようだった。
「……来いよ」
俺は両手を構えた。
自然と身体が動いた。まるで最初からそうするように定められていたかのように。両腕を前方に突き出し、掌を──いや、手首の辺りを内側に向けると、装甲が動いた。
**カシャン!!**
何かが展開する音がした。両腕の装甲がスライドし、内部から露出したのは──二つの筒型の砲門。
「……キャノン?」
俺は自分の腕に生えたそれを、信じられない思いで見た。銃身のような、いや、砲身のような。無骨で、冷たく、そして確かに殺意を湛えた金属の塊。それが俺の両腕に生えていた。
エイリアンが目前まで迫っている。鞭のようにしなる刃が、俺の喉元を狙って振り下ろされる──その瞬間。
俺の意思とは関係なく、キャノンが火を噴いた。
**ドォォォン!!**
両腕から放たれたのは、目を焼くような緑色の光の筋だった。圧縮されたエネルギーの塊が、夜の闇を切り裂いて一直線にエイリアンへと突き進む。
音が遅れて追いついてきた。鼓膜を劈くような轟音と、そして──爆発。
エイリアンの身体が光を浴びた瞬間、蛹のような装甲が内側から弾けた。ひび割れ、砕け、散り散りになる。緑色の光がエイリアンの輪郭を飲み込み、夜空に火の華が咲いた。
「……嘘だろ」
俺は呆然と立ち尽くした。
爆風が頬を撫める。マスクの奥の視界に、舞い上がった火の粉と、アスファルトに残された焦げ跡が見えた。エイリアンは──いなかった。ただ、黒い scorched な跡だけが、地面に残されていた。
「一撃……かよ」
俺は震える自分の手を見た。キャノンはすでに装甲の奥に収まり、再びただの腕に戻っていた。
「俺が……やったのか?」
答えを返すものは誰もいなかった。ただ、夜のスケボー場に静寂が戻っていただけだった。
俺はベルトに手をかけた。
どうやってやるかは分からなかった。だが、不思議と手が勝手に動いた。ベルト中央の空洞に収まっていた蛍型ロボットが──カクリ、と音を立てて外れた。
瞬間、全身を覆っていた緑色の装甲が光の粒子となって散っていく。足元から、手先から、顔面から。まるで砂が崩れるように、俺の身体から離れていった。
夜風が肌に触れる感触が戻ってくる。Tシャツの袖を通り抜ける風。アスファルトの冷たさが足裏に伝わる。
「…戻った、のか」
俺は自分の手を見た。普通の人間の手だ。さっきまでの金属の質感も、関節の軋む音もない。ただの俺の手だ。
スーツケースの中に戻された蛍型ロボットが淡く明滅している。その光が、まるで呼吸をするようにゆっくりと強まったり弱まったりを繰り返していた。
「…おい」
俺は蛍型ロボットに向かって声をかけた。馬鹿げている。相手はロボットだ。言葉なんか通じるわけがない。だが──口にしないと、収まらないものがあった。
「助かったよ。お前がいなかったら、俺今頃あいつらの餌食になってた」
蛍型ロボットは明滅を一段と強くしただけだった。だが、それが何かの返事のように思えた。
俺はふうと息を吐いて、夜空を見上げた。星が見える。さっきまで気にも留めなかった夜空が、やけに綺麗に見えた。
それから、俺は蛍型ロボットに向き直った。
「そう言えば、自己紹介がまだだったな」
俺は蛍型ロボットに向かって、にやりと口角を上げた。
「俺はレイ!一星レイ!!なんでも一番を目指す男だ!」
夜のスケボー場に、俺の声が響いた。さっきまでエイリアンに追われて震えていた男の声とは到底思えないほど、馬鹿でかい声だった。
蛍型ロボットは──また、ただ淡く明滅しただけだった。
だが、俺には分かった。あれはきっと、呆れているんだ。一番を目指す男が、エイリアンにビビって逃げ回っていたなんて──似合わないと。
「笑ってんのか?」
蛍型ロボットの明滅が、ほんの少しだけ速くなった気がした。
「にしても、さっきのは一体」
「奴らはワーム、宇宙からの侵略者だ」
「えっ、誰だ!?」
俺は思わず反応して、見つめる。
そこには、男性が一人、立っていた。
それだけではない。
周囲にいた人達と似たような装備をした奴らが、俺を囲んでいた。
「…まさか、リュシオル・ゼクターの資格者が子供だとはな」
「リュシオル、なんだって?」
「…そうだな、君は知らない事ばかりだな。まずは自己紹介からだな。俺は田所修一だ」