仮面ライダーリュシオル   作:ボルメテウスさん

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空中戦

「レイくん、大丈夫か!?」

 

加賀美さんの声が背後から飛んでくる。俺は振り返らずに頷いた。マスクの奥で息が荒い。さっきのライダーキックの反動で、足の付け根がまだ痺れていた。

 

「大丈夫です。まだやれます」

 

「お前、本当にあんな技初めて使ったのか?」

 

「ああ。師匠の真似事ですけど」

 

言いながら、俺は足元に目を落とした。

 

そこには──スケートボードがあった。

 

蛍光グリーンの装甲が再結合したボード。キャストオフで弾き飛ばされた装甲が勝手に形を変え、俺の足元で静止している。まるで「乗ってくれ」と言わんばかりに。

 

「これ、乗り物になるんですよね?」

 

「田所さんが言ってたよ。キャストオフした装甲はボードになるって。でもレイくん、まだ使ったこと──」

 

加賀美さんの言葉が途切れた。

 

風が変わった。

 

さっきまでの静けさが嘘みたいに、空気が重くなる。耳の奥で「ヒュウゥゥ……」という音がする。風を切る音だ。だが、普通の風じゃない。もっと鋭く、もっと速い。

 

「上だ!」

 

加賀美さんの叫び声と同時に、俺は横へ跳んだ。

 

直後、俺のいた場所に影が落ちた。黒い影。いや、違う──実体だ。何かが高速で地面に叩きつけられ、アスファルトを粉砕する音が響いた。

 

「うわっ!?」

 

着地の衝撃で砂煙が舞い上がる。視界が一瞬白くなり、俺は構えを取った。加賀美さんが壁の陰に退避するのが視界の端で見えた。

 

砂煙が晴れた時、そこにいたのは──

 

「また、ワーム…!」

 

別個体だった。さっき倒したテントウムシ型のワームとは違う。より鋭利で、より速い。だが──どこか似ている。同じ種類か? いや、今はそんなことより。

 

ワームは上空へ舞い上がった。

 

まるで重力を無視した動きで、垂直に跳ね上がる。鉤爪が俺を狙い、空中から急降下してくる。

 

「来るぞ! 上からだ!」

 

加賀美さんの声。俺は反射的に左へステップを踏む。鉤爪が俺の頬を掠め、風圧だけでマスクが軋む音がした。

 

「くそっ、速い!」

 

ワームは地面に着くことなく、そのまま空中で体勢を変えた。次は体当たりだ。俺は地面を蹴って後退する。ワームの身体がアスファルトを削りながら突き進み、俺のいた場所を通り過ぎた。

 

だが──ワームは止まらない。すぐに高度を上げ、再び上空へ。

 

「チッ……!」

 

俺は舌打ちした。上空から来る攻撃を地上でかわすだけじゃジリ貧だ。さっきのライダーキックも、あの高さに届く距離じゃなきゃ当たらない。なのにワームは着地させようとしない。空中戦に持ち込んでくる。

 

「レイくん! あいつ、上から狙ってくるぞ!」

 

「分かってる!」

 

加賀美さんの声に応えながら、俺は視線を上げた。ワームが夜空に浮かんでいる。月明かりを背に、黒いシルエットが揺れている。いつ攻撃が来てもおかしくない。

 

地上で戦うだけじゃ──追いつかない。

 

俺は視線を下ろした。足元のスケートボードが、静かにそこにあった。

 

「これ……」

 

俺はボードに手を伸ばした。装甲の表面は冷たく、そして微かに脈打っている。まるで「準備はできている」と言っているみたいに。

 

上空から風切り音が聞こえた。ワームが再び動き出す。

 

俺はボードを握りしめた。

 

俺はスケートボードに足を乗せた。

感触が変わる。ただの板じゃない。装甲が足裏の形状に沿って微かに沈み込み、グリップが効いているのが分かる。だが──これだけじゃ飛べない。背中の推進器がまだ眠っている。

 

「レイくん! 上だ!」

 

加賀美さんの声。俺は視線を上げた。ワームが旋回している。次の急降下のために高度を上げようとしているのが見えた。

 

今しかない。

 

俺は背中のバックパックに意識を向けた。推進器。キャストオフの時に展開した砲身ユニット。あれが──翼代わりになる。

 

「飛ぶぞ」

 

俺はスイッチに手を伸ばした。背中の装置が唸りを上げ始める。低い振動が背骨を伝って全身に広がる。

 

そして──噴射。

 

**ブゥゥゥン!!**

 

爆音が耳を劈く。背中に熱が走ったのと同時に、足元の地面が遠ざかっていく。身体が浮く。浮上する。だが──

 

「うおっ!?」

 

勢いが強すぎた。

 

噴射が俺の身体を真っ直ぐ上へ突き上げる。ボードの上で足が滑りそうになる。右足が装甲の縁をかけ、重心が左へ傾く。地面が目の前で回転し始めた。

 

(落ちる──!)

 

俺は膝を曲げた。反射的にボードに食い込む。足の裏を板に押し付け、重心を低くする。スケボーの基本だ。グラインドする時と同じ。安定させたい時は膝を曲げろ。

 

ボードが応えてくれた。

 

装甲が俺の足に沿って微妙に傾き、推進力の方向を修正する。真上向きだった噴射が、少しずつ前へ傾いていく。身体がボードに馴染んでいくのが分かった。

 

「……よし」

 

俺は息を吐いた。浮遊感はある。だが地面が──もう地面じゃない。空の中に俺がいる。

 

風が装甲の隙間を吹き抜ける。速い。スケボーで坂道を降りる時よりも速い風が顔を叩く。マスクの複眼の奥で夜の街が一望できた。街灯の光が帯になって見える。

 

ワームが見えた。

 

上だ。俺よりもさらに高い位置にいる。夜空を背景に黒いシルエットが揺れている。あいつも俺に気づいたらしい。旋回の角度が鋭くなった。

 

「逃がすかよ!」

 

俺は前傾姿勢を取った。重心を前に移す。スケボーの要領だ。前に体重を乗せれば加速する。ボードが応えて推進力が増した。背中のジェットが唸りを上げ、俺の身体を夜空へと弾き出す。

 

ワームが動いた。

 

急旋回。鋭角に曲がって俺の右側へ回り込もうとする。速い。だが──見える。ライダーフォームの複眼が、クロックアップ空間で見た時みたいに、ワームの軌道を光の帯として捉えている。

 

(見えてる……!)

 

俺はボードの先を右へ傾けた。スケボーでカービングする時みたいに。体重をかけてエッジを効かせる要領で、ボードが空中で弧を描く。ジェットの推進力が旋回方向へ向いた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ワームが急降下を仕掛けてきた。

 

「来い!」俺は身体を沈めた。ボードが傾き、噴射が上方へ向く。急降下するワームとの距離が一瞬で詰まる。鉤爪が俺を狙って振り上げられる。

 

俺は左へ傾けて回避した。風圧が装甲を叩くが当たらない。ワームはそのまま地面へ向かって落ちていく。

 

すぐに体勢を立て直す。ワームは再度高度を上げようとするが、今度は俺の方が速い。ジェットを全開にして追尾する。

 

ワームの背後へついた。

 

距離が縮まる。ワームが逃避行動を取るが俺のボードは食い下がる。

 

「もらった……」

 

俺はワームの軌道を読んだ。あいつは左へ旋回しようとしている。なら──カットする。

 

右へ回り込む。俺の身体はワームの進路上に位置する。

 

ワームの腹部が見えた。

 

昨日と同じだ。だが、今回は──空中だ。足場はない。地面を蹴れない。代わりにボードがある。ボードが俺の足場になる。

 

ワームがこちらへ向き直った。距離は──十分だ。

 

俺は構えた。

 

(行ける──)俺はスケートボードに足を乗せた。

感触が変わる。ただの板じゃない。装甲が足裏の形状に沿って微かに沈み込み、グリップが効いているのが分かる。だが──これだけじゃ飛べない。背中の推進器がまだ眠っている。

 

「レイくん! 上だ!」

 

加賀美さんの声。俺は視線を上げた。ワームが旋回している。次の急降下のために高度を上げようとしているのが見えた。

 

今しかない。

 

俺は背中のバックパックに意識を向けた。推進器。キャストオフの時に展開した砲身ユニット。あれが──翼代わりになる。

 

「飛ぶぞ」

 

俺はスイッチに手を伸ばした。背中の装置が唸りを上げ始める。低い振動が背骨を伝って全身に広がる。

 

そして──噴射。

 

ブゥゥゥン!!

 

爆音が耳を劈く。背中に熱が走った。と同時に足元の地面が遠ざかっていく。身体が浮く。浮上する。だが──

 

「うおっ!?」

 

勢いが強すぎた。

 

噴射が俺の身体を真っ直ぐ上へ突き上げる。ボードの上で足が滑りそうになる。右足が装甲の縁をかけ、重心が左へ傾く。地面が目の前で回転し始めた。

 

(落ちる──!)

 

俺は膝を曲げた。反射的にボードに食い込む。足の裏を板に押し付け、重心を低くする。スケボーの基本だ。グラインドする時と同じ。安定させたい時は膝を曲げろ。

 

ボードが応えてくれた。

 

装甲が俺の足に沿って微妙に傾き、推進力の方向を修正する。真上向きだった噴射が、少しずつ前へ傾いていく。身体がボードに馴染んでいくのが分かった。

 

「……よし」

 

俺は息を吐いた。浮遊感はある。だが地面が──もう地面じゃない。空の中に俺がいる。

 

風が装甲の隙間を吹き抜ける。速い。スケボーで坂道を降りる時よりも速い風が顔を叩く。マスクの複眼の奥で夜の街が一望できた。街灯の光が帯になって見える。

 

ワームが見えた。

 

上だ。俺よりもさらに高い位置にいる。夜空を背景に黒いシルエットが揺れている。あいつも俺に気づいたらしい。旋回の角度が鋭くなった。

 

「逃がすかよ!」

 

俺は前傾姿勢を取った。重心を前に移す。スケボーの要領だ。前に体重を乗せれば加速する。ボードが応えて推進力が増した。背中のジェットが唸りを上げ、俺の身体を夜空へと弾き出す。

 

ワームが動いた。

 

急旋回。鋭角に曲がって俺の右側へ回り込もうとする。速い。だが──見える。ライダーフォームの複眼が、クロックアップ空間で見た時みたいに、ワームの軌道を光の帯として捉えている。

 

(見えてる……!)

 

俺はボードの先を右へ傾けた。スケボーでカービングする時みたいに。体重をかけてエッジを効かせる要領で、ボードが空中で弧を描く。ジェットの推進力が旋回方向へ向いた。

 

ワームが急降下を仕掛けてきた。

 

「来い!」俺は身体を沈めた。ボードが傾き、噴射が上方へ向く。急降下するワームとの距離が一瞬で詰まる。鉤爪が俺を狙って振り上げられる。

 

俺は左へ傾けて回避した。風圧が装甲を叩く。だの当たらない。ワームはそのまま地面へ向かって落ちていく。

 

すぐに体勢を立て直す。ワームは再度高度を上げようとするが、今度は俺の方が速い。ジェットを全開にして追尾する。

 

ワームの背後へついた。

 

距離が縮まる。ワームが逃避行動を取るが俺のボードは食い下がる。

 

「もらった……」

 

俺はワームの軌道を読んだ。あいつは左へ旋回しようとしている。なら──カットする。

 

右へ回り込む。俺の身体がワームの進路上に位置する。

 

ワームの腹部が見えた。

 

昨日と同じだ。だの、今回は──空中だ。足場はない。地面を蹴れない。代わりにボードがある。ボードが俺の足場になる。

 

ワームがこちらへ向き直った。距離は──十分だ。

 

俺は構えた。

 

(行ける──)俺はスケートボードに足を乗せた。

感触が変わる。ただの板じゃない。装甲が足裏の形状に沿って微かに沈み込み、グリップが効いているのが分かる。だが──これだけじゃ飛べない。背中の推進器がまだ眠っている。

 

「レイくん! 上だ!」

 

加賀美さんの声。俺は視線を上げた。ワームが旋回している。次の急降下のために高度を上げようとしているのが見えた。

 

今しかない。

 

俺は背中のバックパックに意識を向けた。推進器。キャストオフの時に展開した砲身ユニット。あれが──翼代わりになる。

 

「飛ぶぞ」

 

俺はスイッチに手を伸ばした。背中の装置が唸りを上げ始める。低い振動が背骨を伝って全身に広がる。

 

そして──噴射。

 

ブゥゥゥン!!

 

爆音が耳を劈く。背中に熱が走った。と同時に足元の地面が遠ざかっていく。身体が浮く。浮上する。だが──

 

「うおっ!?」

 

勢いが強すぎた。

 

噴射が俺の身体を真っ直ぐ上へ突き上げる。ボードの上で足が滑りそうになる。右足が装甲の縁をかけ、重心が左へ傾く。地面が目の前で回転し始めた。

 

(落ちる──!)

 

俺は膝を曲げた。反射的にボードに食い込む。足の裏を板に押し付け、重心を低くする。スケボーの基本だ。グラインドする時と同じ。安定させたい時は膝を曲げろ。

 

ボードが応えてくれた。

 

装甲が俺の足に沿って微妙に傾き、推進力の方向を修正する。真上向きだった噴射が、少しずつ前へ傾いていく。身体がボードに馴染んでいくのが分かった。

 

「……よし」

 

俺は息を吐いた。浮遊感はある。だが地面が──もう地面じゃない。空の中に俺がいる。

 

風が装甲の隙間を吹き抜ける。速い。スケボーで坂道を降りる時よりも速い風が顔を叩く。マスクの複眼の奥で夜の街が一望できた。街灯の光が帯になって見える。

 

ワームが見えた。

 

上だ。俺よりもさらに高い位置にいる。夜空を背景に黒いシルエットが揺れている。あいつも俺に気づいたらしい。旋回の角度が鋭くなった。

 

「逃がすかよ!」

 

俺は前傾姿勢を取った。重心を前に移す。スケボーの要領だ。前に体重を乗せれば加速する。ボードが応えて推進力が増した。背中のジェットが唸りを上げ、俺の身体を夜空へと弾き出す。

 

ワームが動いた。

 

急旋回。鋭角に曲がって俺の右側へ回り込もうとする。速い。だが──見える。ライダーフォームの複眼が、クロックアップ空間で見た時みたいに、ワームの軌道を光の帯として捉えている。

 

(見えてる……!)

 

俺はボードの先を右へ傾けた。スケボーでカービングする時みたいに。体重をかけてエッジを効かせる要領で、ボードが空中で弧を描く。ジェットの推進力が旋回方向へ向いた。

 

ワームが急降下を仕掛けてきた。

 

「来い!」俺は身体を沈めた。ボードが傾き、噴射が上方へ向く。急降下するワームとの距離が一瞬で詰まる。鉤爪が俺を狙って振り上げられる。

 

俺は左へ傾けて回避した。風圧が装甲を叩く。だの当たらない。ワームはそのまま地面へ向かって落ちていく。

 

すぐに体勢を立て直す。ワームは再度高度を上げようとするが、今度は俺の方が速い。ジェットを全開にして追尾する。

 

ワームの背後へついた。

 

距離が縮まる。ワームが逃避行動を取るが俺のボードは食い下がる。

 

「もらった……」

 

俺はワームの軌道を読んだ。あいつは左へ旋回しようとしている。なら──カットする。

 

右へ回り込む。俺の身体がワームの進路上に位置する。

 

ワームの腹部が見えた。

 

昨日と同じだ。だの、今回は──空中だ。足場はない。地面を蹴れない。代わりにボードがある。ボードが俺の足場になる。

 

ワームがこちらへ向き直った。距離は──十分だ。

 

俺は構えた。

 

(行ける──)

 

ワームの背後を取った。

風が装甲の隙間を吹き抜ける。夜空が複眼の奥で広がっている。地上の街灯が帯のように見える。俺は今、その帯のずっと上にいる。

 

ワームが旋回しようとしている。左へ逃げるつもりだ。だの俺には見えている。複眼が捉えるワームの軌道。光の帯が左へ流れる。

 

「読んだ」

 

俺はボードの上で膝を深く曲げた。低く、もっと低く。スケボーでタックに入る時みたいに。重心を落として安定させる。ボードの先をわずかに左へ向ける。ワームの逃げる方向へ。

 

進行方向が定まる。ボードが風を掴んで安定する感触が足裏から伝わってくる。背中のジェットが低く唸っている。推進力がまだ残っている。これを使う。

 

胸元のリュシオルゼクターに手を伸ばす。

 

蛍の腹部。尻のあたりの小さな突起。指先が触れる。

 

「一つ」

 

ピッ。

 

押した。ゼクターの光が一段階強くなる。腹部の節が順に明滅する。足元から力が湧いてくる感覚。軸足に力が集まっていく。

 

「二つ」

 

ピッ。

 

二度目。光がさらに強くなる。右足に熱が集まる。蹴り足だ。地面を蹴るんじゃない。空中だ。足場はボードだけ。ボードを蹴って、ジェットに身体を押し出してもらう。

 

「三つ」

 

ピッ。

 

三度目。

 

ゼクターの羽が開いた。腹部の青いコアが強く発光する。全身の装甲が震える。来る。

 

『RIDER KICK』

 

電子音声が夜空に響いた。

 

俺は右足をボードに叩きつけた。

 

踏み切りだ。

 

スケボーでオーリーする時みたいに。ボードのテールを蹴り込んで、身体を空中へ弾き出す。だの今回は──地面がない。あるのは夜空と風と、背中のジェットだけ。

 

ボードが俺の足裏を離れる。

 

その瞬間──背中のジェットが爆発した。

 

ブォォォォン!!

 

噴射が俺の背中を押した。強烈な熱風が装甲の隙間から吹き込む。身体が加速する。地上の時とは比べ物にならない速度で、俺の身体が蹴りの軌道へと弾き出された。

 

(速い──!)

 

地面を蹴った時とは違う。ジェットが背中から推進力を供給し続けている。蹴りの軌道が真っ直ぐに伸びていく。空中で姿勢が保てているのはボードのおかげだ。ボードから踏み切ったあの一瞬で方向が定まった。あれがなかったら──今頃バランスを崩して地面に叩きつけられていただろう。

 

右足に光が集まる。蛍光グリーンの光が脚を包み、ジェットの噴射光と重なる。タキオン粒子のイナズマが足元から踵へと流れていく。光の筋がジェットの光跡に重なって、一条の流星みたいに見えた。

 

ワームがこちらを向いた。

 

遅い。

 

俺の踵がワームの腹部に突き刺さる。

 

**ドォン!!**

 

衝撃が足から腰へ、腰から背中へ走った。ワームの外殻が砕ける音が響く。ひび割れが全身に走り、青い装甲が光の粒子となって弾け飛ぶ。

 

ワームの身体が空中で弾けた。

 

光と衝撃が夜空に広がる。爆炎みたいな光が街灯の光を飲み込んで、一瞬だけ夜を昼に変えた。

 

俺は空中で体勢を立て直した。ジェットの残りは少ないが、まだ飛べる。ボードが下に見えた。落下していくボードを追いかける。ジェットを調整しながら下降する。風が顔を叩く。地上が近づいてくる。

 

ボードに足を乗せる。

 

着地。

 

アスファルトを足裏が叩く。衝撃が膝に来る。だのボードが吸い込んでくれる。スケボーで着地する時と同じだ。膝を使え。膝で衝撃を殺せ。

 

「──ふぅ」

 

俺はボードの上で立ち上がった。

 

呼吸が荒い。心臓が早鐘を打っている。だが──立っていた。

 

背中のジェットが唸りを止める。静寂が戻ってきた。夜風が装甲の隙間から入り込んで、汗ばんだ肌を冷やす。

 

ワームの残骸は──もうどこにもなかった。

 

夜空には何もない。ただ星と、街灯の光と、俺だけが残された。

 

「…やった」

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