「しかしほんっとすげぇ出来だな……」
「ねー。今開発中らしい3Dビジョンよりよっぽどリアル」
不審者が呼び出したユニット、レグナは魔導書を右手に持つ女性魔術師だ。それがまるで本物の人間のような質感でフィールドに立っている。一体全体どう言う技術かはたまたファンタジーかは知らないが凄いものだ。
「ターンエンドだ、貴様の番だぞ小僧!」
「分かってる、ドロー」
「チャージ」
グリモアは後攻1ターン目からターンプレイヤーのマナが1ずつ増えていく。これとライフ減少、効果によって増えていくマナを上手い事やりくりして勝利を目指すゲームだ。
「メイン、影竜の幼生を召喚」
「おっ回るねぇ」
初っ端出すのはこのデッキの潤滑油兼軽減枠、幼生。
影竜の幼生
(影竜)
【召喚時】自分のデッキの上から3枚を確認し、その中のコスト8以上の「影竜」1枚をトラッシュに置ける。残りのカードは好きな順番でデッキの下に戻す。
このユニットはアタックできない。
「召喚時効果、3枚見て……あーだめだ、外れた。全部ボトムへ」
「ダメじゃん!」
「いつもは何かしらヒットするんだがなぁ……」
魔法陣から這い出るように現れたチビドラゴンが踏ん張ってデッキトップが捲られるが残念な事に対象となる大型はヒットせず結果的にただ山札を入れ替えただけ、回るかと思ったが存外渋い。
「随分と幸先が悪いようだな小僧」
「言ってろ、続けて共鳴で1コス軽減、呪詛竜ツィツィミメを召喚」
次に出すのは幼生が成長したようなそうでもないような不気味な呪具を身に付けたシャーマンみたいなドラゴン。いつみても変なデザインだ。
呪詛竜ツィツィミメ
(影竜)
【共鳴:黒1】(このカードを召喚する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【召喚時】自分のデッキの上から3枚を確認し、その中の黒のアーツ1枚を手札に加えることができる。残りは好きな順番でデッキの下に戻す。
「ツィツィミメの召喚時効果、デッキの上から3枚……うーん、「黒曜の返礼」を手札に」
「うわぁ今欲しくない奴」
「今日はとことん機嫌が悪いな……」
ツィツィミメの祈祷と共にまたデッキトップが捲られる。今度もまたお目当てのカードは来なかったが幸い回収できるカードはあった、どうにも今日はサーチ運がことごとく悪いらしい。
「更に共鳴2で2コスト軽減、「黒煙竜テスカ」召喚」
3マナ使って残りは2、サーチ2種があまりにも渋かったのでこいつに全てを賭けるしかない。最近使わなかったからこいつら拗ねてんのか?
黒煙竜テスカ
(影竜)
【共鳴:黒2】(このカードを召喚する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【自分のライフ減少時】減少したライフ1につきデッキから1枚ドローできる。
【増幅3】+3000 (指定されたコストを支払うことでこのユニットのパワーを+し、追加で以下の効果を得る)
【ターン1回】自分がコスト8以上の「影竜」を召喚した時、自分のトラッシュから黒のユニットカード1枚を手札に加える。
【衝動】(このターン中自分のライフが減っている時、以下の効果を追加で適用する)
この効果で手札に加えるカードの色の指定を無視する。
追加で現れるはとぐろを巻いた全身が煙でできた竜、このデッキのメインエンジン兼貴重な回収係だ、1ターン目に着地できたのはかなりでかい。
「ターンエンド」
1ターン目から3体並んだわけだが下手に殴れば相手にリソースを与えるだけ、此処は大人しく守りを固めるとする。
「いきなり守りを固めるとは臆したか、私のターン!」
「ブロッカーが見えてるのに殴る馬鹿が何処にいるっての」
なんでこうこの世界は一度も殴らない→ビビってるの風潮があるんだ?下手に殴ればリソース与えるだけなんだから慎重になるでしょ。ホビーアニメ世界だからと言えば多分それまでだけど。
「2体目のレグナを召喚!」
あれもしかして相手も相手で事故ってるかこれ?序盤の盤面ならレグナを並べるより小型で手札を整えたいだろうし……うん多分事故ってんな。
「アタックステップ、攻撃せよレグナ!【迅雷】発揮!」
んでやっぱ殴ってくると。レグナは殴る時にアーツを踏み倒す黄のキーワード能力【迅雷】持ち、問題は何を踏み倒してくるかだが……
「キャスト「爆砕火炎」!」
「うっわ」
よりにもよって赤の破壊アーツ、嫌な所を的確に撃ってきやがる。
爆砕火炎
相手のパワー3000以下のユニット1体を破壊する。
「呪詛竜ツィツィミメを破壊!さらにレグナは【迅雷】を使用した時デッキから1枚ドローできる……良いカードを引いたぞ」
レグナが呪文を唱え魔導書から飛び出した火の玉がツィツィミメに直撃、敢え無く破壊となった。
本来アタックステップでは【対抗】を持つアーツしか使用できないんだが【迅雷】はそれを無視してアーツを踏み倒せる、これ本当に大丈夫なのか?って思うが案外バランスが取れてるのがこのゲームの妙だ。
「ライフで受ける」
そしてレグナのパワーは4000、テスカなら相打ちできるがこいつの役目はフィールドに居座ってもらうことなのでそう易々と消費する訳にもいかない、此処はライフで受けるに限る。
「っ……」
「痛いだろう?それが真のバトルにより生じる痛み、貴様のライフは貴様の命そのものに等しい!」
「んなこたぁ知ってんだよ……」
火の玉に続いて飛んできた雷光が直撃する寸前周囲に展開されていた6つのライフのうち1つがバリアとなって激突し粉砕、発生した衝撃波が地味に痛い。命そのものとか言ってるが別に死ぬ訳じゃねえんだよな。
「黒煙竜テスカの効果、俺のライフが減った時減った数だけドローする」
「わざとライフで受けたのは手数を増やすためか、だがこれだけでは終わらん!もう一体のレグナでアタック、【迅雷】発揮、キャスト「反雷の護符」!」
「うげっさっきのドローでツモりやがったな!?」
ユニットをレグナしか引けてないだけでアーツの質はすこぶる良好じゃねえか畜生!
反雷の護符
【対抗】(このアーツはお互いのアタックステップにキャストできる)
自分の疲労状態の黄のユニット1体を回復する。この効果で回復したユニットはこのターンアタックできない。
「今攻撃しているレグナを回復!そして効果により1枚ドロー!」
「トップ解決してんじゃねえライフだ!」
主人公補正もびっくりのトップ解決に若干キレながら再びライフ。こんな序盤で盤面の色を消し飛ばしたくない、死ななきゃ安い!
「うぇ……都合よく引きすぎだっての」
「運命が私に味方している事の現れだ、ターンエンド!」
爆砕火炎でツィツィミメが焼かれたのが少々痛いがテスカを焼かれなかったのはデカい、ライフは考えずリソース差を広げに行く。
「俺のターン、ドロー、チャージ、リフレッシュ。共鳴2軽減「恩讐竜ウツロ」召喚!」
ひとまずは盤面の再展開優先。ツィツィミメが生きてれば3軽減全部満たせたがないもんは仕方ない、まずは最優先でレグナを処る。
恩讐竜ウツロ
(影竜)
【共鳴:黒3】(このカードを召喚する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【逆襲4】【ターン1回】自分のライフ減少時、相手のコスト4以下のユニット1体を破壊する。
【増幅3】+3000 (指定されたコストを支払うことでこのユニットのパワーを+し、追加で以下の効果を得る)
【ターン1回】自分のライフ減少時、自分のライフが2以下ならライフを1つ回復する。
魔法陣から呼び出すは所々が爛れたワイバーン、このデッキの大事な中堅役だ。如何にもコンボしてくれと言わんばかりのこのテキストが大好き。
「続けて共鳴2軽減キャスト「鮮血の代償」、俺のライフを1つ砕く事で2枚ドロー!」
鮮血の代償
【共鳴:黒2】(このカードを召喚する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
自分のライフを1つストックに置き、デッキから2枚ドローする。
当然こいつだけをボッ立ちさせるなんてこともなく続け様にアーツをキャスト、当然のようにライフを要求するがこのゲームに置ける黒はこういう色。
ライフを代償に強力な効果を発動し、砕いたライフをリソースに変えて展開の大爆発を起こすコンボデッキ。
速攻に押し切られるきついという弱点を差し引いても魅力的な色だ、大爆発のドーパミンは他デッキの比ではない。
「ドロー……あーちょっとしくったな、まあいいや。ライフ減少時ウツロの【逆襲】発揮、回復状態のレグナを破壊する!」
「ブロッカーを破壊して攻めに転じるつもりか?」
「どうかな、ついでにテスカの効果で1枚ドロー!」
「やってる事は逆襲というか逆恨みだよねやっぱ」
「そういう効果名なんだから仕方ないだろ」
俺のライフがまた砕けたのを合図にウツロが咆哮、不思議な事に衝撃波に当てられたレグナはそのまま吹っ飛ばされて消滅してしまった。
もうちょっとグロテスクなのを想像してたんだが女性ユニット相手には優しいんだなお前。
「今のライフ減少で増えた残り3マナを使用してウツロを増幅する!」
このゲームにおけるユニットは追加コストを支払うことでパワーの強化と追加能力を付与できる【増幅】を行える。この追加能力が馬鹿にならない強さをしているので余裕があれば入念に育てておきたい所。
状況に応じてとにかく盤面を展開するか、増幅してユニットを育てるかの択を判断して戦況を有利に進める。リソースを幾つ残しておくか、なんてのも含めて結構思考が問われるゲームだ。
「これでターンエンドだ」
「ブロッカーを処理したのにアタックしてこない……?」
「あー悪い顔してる、トラすっごい悪い顔してる」
「うるせぇ琴音。こいつらも暴れたいらしいんだ」
此処でちょっと削っておくかー、と思ってウツロを構えたのだが幸運な事に今のドローで大爆発の準備が整ってしまった。今の盤面をみた感じ次で起爆できそうなので無駄にリソースを与えずに温存、確実に仕留められるよう万全の構えを取る。
「私のターン、ドロー!……クク、いいカードを引いたぞ」
「まーたトップ解決したか?」
「真のバトラーのドローは全て必然よ!チャージ、リフレッシュ、メイン!共鳴により1コスト軽減し6コスト!来たれ我が切り札!」
黄は迅雷でアーツを踏み倒せるからそっち方面の温存しなくていいがここで7コスの大型……?
「「光翼天ヴァルキュリア」召喚っ!」
「お前か……」
「あー私がシングルどこ漁ってもなかったやつ!」
奴の魔法陣が一際強く光り、雷鳴と共に巨大な天使が姿を現す。これみよがしに羽ばたいたかと思えば握った剣を殺意満々でこっちに向けてくるその姿はまさしくヴァルキリー。「魔光」デッキの大型キーカードだ。
光翼天ヴァルキュリア
(魔光)
【共鳴:黄3】(このカードを召喚する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【迅雷4】【アタック時】手札からコスト4以下のアーツをコストを支払わずに使用してもよい。
【召喚時】自分のデッキから5枚を確認し、その中の黄のアーツを好きな数手札に加える事ができる。残りは好きな順番でデッキの下に戻す。この効果で3枚以上手札に加えた時、このターンの終わりまでこのユニットを【増幅】しているものとして扱う。
【増幅3】+3000 (指定されたコストを支払うことでこのユニットのパワーを+し、追加で以下の効果を得る)
【ターン1回】このユニットが【迅雷】を使用した時、このカードを回復する。
「ヴァルキュリアの召喚時効果、デッキの上から5枚を確認し黄のアーツカードを好きな数手札に加える!今の私ならば……!」
「うわぁすげぇパチンカスの思考」
「トラー、黄ってデッキトップ操作するカードあったっけ?」
「確か新弾で出るんじゃなかったか?」
「マジか、買わなきゃ」
不審者が意気揚々とパチンコに興じてるのを見た琴音が羨ましいのかは知らないがコンボを考え始めた。これ勝負勝ったらヴァルキュリア強奪できねぇかな……無理か。
「ふっ、来たぞ……!「反雷の護符」「雷律の封詔」「光天の雷」を手札に!3枚のアーツを手札に加えた事でヴァルキュリアはこのターンの終わりまで【増幅】状態になる!」
「本当にツモりやがったよ……」
「これ大丈夫なのトラ?」
「あたぼうよ」
なんとまあ運のいいことか見事3枚のアーツを引き当てやがった不審者に呼応してヴァルキュリアが剣を掲げパワーアップ。外れてくれればウツロで処理できたんだが……
「アタックせよヴァルキュリア。【迅雷】発揮、キャスト「雷律の封詔」!ウツロの効果を封じる、逆襲はさせんぞ!」
「ま、そうくるわな……」
雷律の封詔
【共鳴:黄1】(このカードを使用する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【対抗】(このアーツはお互いのアタックステップにキャストできる)
相手ユニット1体を指定する。このターンの終わりまでそのユニットの効果は無効化される。
さっきツモりやがったアーツ……丁度俺がアイギオン対策として琴音のデッキに仕込んだ封詔。どんなユニットでも無効化する黄金の鎖がヴァルキュリアの手から放たれウツロを縛りあげる。
これでウツロは逆襲と増幅で得たライフ回復能力を失ってしまった、しかもパワーはヴァルキュリアが10000なので負けてる。増幅で上がったパワーは効果無効では下がらないがこれは無理だ。
「そして【迅雷】を使用したことによりヴァルキュリアは回復する!」
「ライフだ、持ってけ!」
「そこまでしてユニットを守りたいか、ならば再び命を砕く感覚に悶えろ!」
「一々言葉回しが厨二病なんだよパチンカス!ってぇ……テスカの効果で1枚ドロー」
ヴァルキュリアの振り下ろした剣が4個目のライフを砕く。これで残り2、所謂大ピンチって奴だ。
「再度攻撃せよヴァルキュリア。【迅雷】発揮、キャスト「反雷の護符」。再びヴァルキュリアを回復させる、これでアタックは打ち止めだがな!」
「ライフだ!」
そして2度目の殴り。ウツロとテスカは此処で消費する訳にいかない、幼生も軽減として残しておきたいので取れる選択肢は当然ライフ。これで俺のライフは1、文字通り風前の灯。
「いっでぇ……テスカの効果でさらに1枚ドロー」
「ターンエンドだ、大勢は決した。貴様のライフは1、逆襲はもう使えん。そしてどれだけ手札が増えようがマナには限界がある、大人しく敗北を受け入れることだな!」
「トラー、あいつすごい調子に乗ってるよ」
「ご丁寧にどうも……ま、関係ないね。どっちにしろぶっ潰すんだし」
「おーやれやれー」
一体どういう理屈で勝利を確信したのかは知らないが勝ち誇った様子の不審者は明らかなドヤ顔で俺にサレンダーを勧めてくる。呑気な物だ、一個もライフ削られてないからって負けるわけないとか思ってる?
「俺のターン、ドロー、チャージ、リフレッシュ……悪いな、俺の勝ちだ。メイン!」
「勝ち?強がりも大概にしておけ、今から私のライフを全て削り切れる訳がない!臆して一度もアタックしなかったのだからな!」
「うるせぇんだよ、そもそも臆してなんかねぇ……あんたのライフは「わざと」削らないでおいたんだ、揃っちまったからな」
「揃う?此処から逆転する必勝のコンボでもあるのか?いいやあるわけなかろう!」
「盛大なマイクパフォーマンスどうも……んじゃ、やるか」
今の手札は10枚、使用可能なマナは12。残りデッキは25枚……うん、足りる。
こっから始める大爆発の懸念はデッキ切れだがギリギリでセーブすれば問題なし、つまりほぼほぼ決まる。
「そのマイクパフォーマンス維持しとけよ?こっから始まるのは世にも奇妙な大爆発ショーだ!」
そういうわけで……
「キャスト「星に願いを」!」
星に願いを
種族を1つ指定する。このターン中自分の手札の指定した種族を持つユニットのコストを自分のライフと同じにする。
「種族は「影竜」を指定、これでこのターン中俺の手札の影竜のコストはライフと同じ数……1になる!」
大爆発の大嵐、影竜祭りの始まりだ。