「「光雷魔導士ノルン」でアタック。【迅雷5】発揮、キャスト「雷律の封詔」。アイギオンの効果をこのターン中無効に、【迅雷】でコスト4以上のアーツを使用したのでノルンはこのターン中【覚醒】状態として扱う!」
「アイギオンはまだ【増幅】しかやってねぇからパワーは12000……んでブロック時の2000バフも消えてるから17000のノルンは受けられない……が、トラッシュに嫌なのが見えてるんでブロック、そいつの効果発動タイミングはライフ砕いたときかコスト5以下のユニット破壊だ。」
「知ってるよ、んじゃアイギオンを破壊。ライフ取れなかったからノルンの効果は使えないけど……これでトドメ!「雷炎術師フレイヤ」でアタック時【迅雷4】発揮、キャスト「光翼の加護」。これでフレイヤは自身のコスト……6より低いユニットからブロックされない!」
「おまっ抱え込んでたのかよ!?くそっライフ……負けだ」
昨晩の不審者騒動から数日。今日も今日とて俺と琴音は放課後カドショで大会用の調整、すっかりこいつもメタの貼りかたが上手くなってきたようでこれで本日3回目の敗北だ。
いくら調整とはいえここまで連続で負けるとかなり悔しい、今の敗因はなんだ?アイギオン育てるの遅れたか?それともフレイヤを止めれる中型を処理されたからか?うーむ……あー多分中型が途切れたからだなこれ。消費するタイミングを見誤ったか。
「なんかもうデッキ調整これで終わりがいい気がするんだけどどう?」
「まあこんなもんだろ、これ以上寄せすぎると他デッキへの勝率が落ちかねん。後は光翼の加護の打ち所を意識してれば大丈夫なんじゃないか?」
「流石に最速でアイギオン構えられたらどうにもならないけどね」
「それは諦めろ、こいつ小型多めにすりゃ3ターンで着地する」
大会前に新弾が出るとはいえアイギオンは現環境の一角、黄色は結構な不利対面なので対策しておくに越した事はない。赤と青の効果を受けない19000の2回ブロッカーってなんだよ覚醒したら手付けられねぇぞマジで。
「そういやトラのデッキはどうすんの?」
「お前が俺に何を要求するかによる。タッグ大会は各プレイヤーに持ち回りでターンが回ってくるからな」
そしてこれがシングル戦なら良かったのだが今回拉致られたのはタッグ。琴音のデッキを調整するのはいいとして俺もこいつに合わせたデッキを用意しなければならない。
影竜?あれは残念ながらここ数年「真のバトル」専用デッキだ。正気じゃない戦い方をするから対面からはドン引きされるし場はヒエッヒエになるしそもそもライフ砕きまくる時点でタッグ戦に絶望的なまでに向いてない。
そうやってほぼ使わなくなったから前回序盤拗ねたのかもしれんがグリモアが野球やサッカー並みの世界人気を誇るこの世界ではちょっと刺激が強すぎるんだ、許してくれ。
「色を合わせるなら「歌聖」使うしリソース欲しいって話なら「樹界」使う。今の構築だとリソース欲しそうだし「樹界」の方か?」
「えー、せっかくだし「歌聖」使おうよ。決勝は例のバトルフィールド使えるらしいし盛り上がるって」
「勝利に飢えてる割にはパフォーマンス優先するんだなお前」
「トラと組むならそこまでガチらなくても勝てるかなって」
「じゃあこの調整はなんだ」
「歌聖」はアイドルモチーフの黄の種族、琴音や前のあいつが使った「光魔」よりアーツに特化した奴ら。「樹界」は樹木モチーフの緑の種族、とにかくマナ加速が得意。
黄は比較的余裕があるとはいえマナを毎ターン使い尽くす方のデッキなのでこっちで加速しまくって……と思ったがどうやらこの暴君はお気に召さないらしい、難儀なものだ。
「そりゃあ勝つために万全は尽くすよ?その上で遊びを残すのが大事ってプロの人も言ってたからさ。せっかくなら盛り上げたいじゃない?」
「まあ理解するが俺が「歌聖」使ったら正直白い目で見られないか?」
「トラわりと中性的だし別にいいんじゃない?」
「こいつそこそこ気にしてることを……!」
自分で言うのもなんだが今世の身体はなんというか……どうも男らしくない、どっちかと言えば女っぽい。小学校の頃グリモアで馬鹿みたいに同級生蹂躙してたせいで男女とか苦し紛れの罵倒されたのも最早懐かしい思い出だ……もうちょっと男らしくてもよかったのに。
「んじゃそう言うわけで歌聖使ってよトラ……あ、そういや歌聖は新弾で強化来るんだっけ」
「事前情報見た限りじゃ中々いい感じだったな、1週間でどれだけ調整できるかってとこだ。「神聖なる歌唱台」は3入れたいし「絶唱聖ラクシュミ」も2は欲しい」
「ラクシュミ2って事はドゥルガー減る?」
「分からん、なんだかんだドゥルガーは多面展開したいからな……まあ揃ってから考える。光魔と合わせるならアーツも多少多めにしないと」
それはさておき歌聖で合わせるとなると購入を見送ろうとしてた新弾を買わざるを得なくなってくる。この世界はホビーアニメの例に漏れずシングル価格がそれはもう凄いことになってるのでパックでどうにかしないと学生の財布では到底足りないのだ。
何をどうしたら3枚必要なキーカードが1枚30万とかするんだ訳わかんねぇ……昔影竜が全部パックで揃ったのは奇跡だった、本当に。
「まあまだ1週間ちょいあるしゆっくり考えようよ、必要なら分けてやってもいいぞー」
「お前新弾どんだけ予約した?」
「いつも通り2カートン」
「歌聖関連だけくれ。他は組む気がない」
「はいはーい。まあ誘ったの私だしそれくらいはしないとね」
尚琴音はどうもいいとこのお嬢様らしくパックを買う時の基本単位はカートン、尚且つシングル買いしまくっても平気というとんでもない財力を持つ。
俺が今環境大暴れ中のアイギオンを始めとした高額カードを確保できているのもこいつが「調整付き合ってー」でデッキを組むために渡してくるからだし財布事情だけはこいつに頭が上がらない、やはり財力は正義……!
「とりあえず欲しいカードのリストちょーだい、用意しとくから」
「いつもの事だがそれで用意できるお前が怖いよ……ほら書いた。貰ったら一旦デッキ組んでみる」
「あ、スリーブは?」
「クイーンの透明とアレイスターのエンボスオーバー。大会全部これで行くって考えると400枚は欲しい」
「りょーかいいつものね。毎度毎度確保してる私に感謝するよーに」
そして不思議な事にスリーブもくっそ高い……がその分質感が最高だ、あの吸い付くようなエンボス加工のザラ付きは一度知ってしまえば戻れない。
そう言う意味でも頼めば持ってきてくれるこいつには感謝以外ない、性格はともかくとして最高のパトロンだ。
「はいオーダー承り。発売日当日に用意できるなら用意しとく」
「助かる……お、あいつら来たか」
「今日もベビーシッター?」
「だからベビーシッター言うな。2人も面倒見るのはキャパオーバー…ん?」
そんな感じでいつも通りの他愛無い話をしていたら燈真達が来店……したのはいいのだが何やらいつもと様子が違う。何か良くないものでも食べたって感じじゃなさそうだしかといって不幸に見舞われたって感じでも……あ。
「どしたの?」
「……燈真の鞄の端、はみ出てる」
「どれどれ……わーお、まじか」
なーんか燈真の鞄から何か出てるなと注視してみたらなんということでしょう、そこには間違えようもない
つまりあいつは何らかの理由であれを手に入れて「真のバトル」に巻き込まれ……って所だろう。大方いつもの癖でフルアタしてライフの痛みをモロに受けたんだろうか、そりゃああんな顔になるわな。
「どうする?」
「知らんフリしとこう。俺たちも持ってるってバレたらこっちはともかくあいつらが危ない」
「りょーかい、秘密のヒーローみたいでちょっとワクワクするね」
「ヒーローってより狂人の方が近い気がするがな……っと、よお、なんか今日は随分と浮かない顔だな?」
この数ヶ月結構「真のバトル」は経験してきたがこういうので一番やばいパターンは実力者に勝つため身内を利用するパターンだ。
深夜にこっそり狩ってるからバレてないだけでうっかりバレたらこいつらが危ない、自分から気付くまで知らない素振りをしておこう。
「あ、影虎さん、琴音さんもどうも……」
「本当に浮かない顔してんな……マジで何があった?」
「燈真、やっぱり言ってみた方がいいんじゃない?」
「でもよぉ……」
この感じだと隣で心配そうな顔してる実里ちゃんも巻き込まれたな?2人はそこまでレアなカードを持ってなかったはずだが
「相談なら聞くぞ、調整も終わったとこだしな」
「……ごめん、何でもないんだ。後、今日はお願いがあってきた」
「お願い?」
「ああ、改めて俺にグリモア教えてくれないか、景虎さん」
「おー、どういう風の吹き回し?」
「茶化さないでくれ琴音さん……その、すげぇバトラー達にあったんだ。すっげぇ怖い奴と、すっげぇ強い奴」
「怖いやつの方向性が気になるなそれ」
どうもこの感じを見るに片方には勝って片方には負けたんだろう。両負けしてんならもっと悲観的になりそうだし両勝ちしてんなら調子にノってる、こいつは色々と分かりやすいからな。
「そいつらと戦って……今までの俺のやり方じゃ全然通用しなくて。景虎さんの教えてくれてたこと何一つできてなかったんだって」
「そこまで悲観するほどか?」
「うん、ライフじゃなくて盤面を見ろとか、そういうの全然できてなかった。あいつにも……すっげぇ強い奴にも言われた」
「まあ突進型だもんねー燈真君」
「琴音、言い方」
相変わらずこいつは人に対する遠慮というものがない、ちょっと釘を刺して大人しく話の続きを聞いてやる。よくある特訓回の始まりだ、精一杯の強がりを聞いてやろうじゃないか。
「だから俺、もっと強くなりたい。強くなってあいつに勝ちたい!だから頼む!俺にグリモア教えてくれ、景虎さん!」
「燈真……」
「んー、んー……」
まあ教えてやりたいのはやまやまだが隣のガールフレンドがすっげぇ心配そうな顔をしてるしいきなりビシバシ行くのもそれはそれで悪影響な気がする。
かと言って何もせずに自分で答えを見つけろってのも無責任すぎるし……あっそうだ。
「じゃ、そういう事なら……ほらよ」
「これは……って、うえぇ!?」
「えっそれ渡すの!?豪勢だなぁトラは」
久しく使っていなかった赤のデッキを取り出し徐にカードを1枚引き抜いて燈真に渡してやる。
「「紅刃竜バルカン」、昔使ってたカードだ」
紅刃竜バルカン
(溶巌・熱竜)
【共鳴:赤3】(このカードを召喚する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【強襲】【アタック時】相手は可能なら必ずブロックする。
【アタック時】このユニットのパワー+2000。
【増幅4】+4000(指定されたコストを支払うことでこのユニットのパワーを+し、追加で以下の効果を得る)
【自分のアタックステップ】このユニットはパワー5000以下のユニットにブロックされた時回復する。
【覚醒5】+5000(指定されたコストを支払うことで【増幅】状態のこのユニットのパワーを+し、追加で以下の効果を得る)
【自分のアタックステップ】このユニットがバトルでパワー6000以上の相手ユニットを破壊した時、相手のライフ1つをストックに置く。
「いや使ってるも何も俺景虎さんがこいつで戦ってるのよく見たよ!?本当に貰っていいのこれ!?」
「そいつは確かに強いがこのゲームの構造を知らなきゃ真の力は引き出せない……まずはテキストと睨めっこしながらどう使うかを考えてみろ、それが分かったら次のステップだ」
「マジか……ありがとう景虎さん!まずはこいつを使いこなせるように……って、本当にそれでいいのか!?」
「基礎はそこそこ教えたつもりだぞ?お前が忘れた訳じゃなきゃそいつを意識して勝手に思い出す。再レクチャーとか俺はしたくねぇ」
「燈真どっちかというと聞き流してたもんね……」
「うぐっ」
グリモアの基礎であるリソースの駆け引きとボードアドバンテージの考え方はなんだかんだこの2人にレクチャーしきったつもりだ。今更説明した所でただの焼き直しだしピンとこない所もあるだろう。
だったら基盤となるカード1枚渡してそいつを最大限活かすにはって考えさせりゃあいい、もう一回言葉で教えるよりはその方が効率いいだろ多分、知らんけど。
「言っちゃあ悪いがバルカンは少々時代遅れのカードだ、とはいえカードを活かすのは所有者の構築とプレイング次第。ま、上手くやってみる事だな」
「……ありがと、景虎さん。よし実里、構築手伝ってくれ!」
「え、私!?いや、いいけど初心者だよ!?」
おお、流石に意欲が高い、さっそくあげたカードを活かすためデッキ改造を始めやがった。
「ねえトラ」
「なんだ」
「……ほんとによかったの?トラのデッキバルカン3積みだったとはいえ」
「初心者は丁寧に沼に沈めるのが経験者の流儀って奴よ。まずは兎にも角にも勝たせること、いいカードを持ってるか持ってないかってのはやる気に天と地ほどの差があるからな」
「ま、それならいいけど」
まあこいつを初心者扱いしていいかは疑問が残る所だが思考停止の突撃から進んでプレイングを考える段階に入った所だ、軸になるキーカードの1つは持っておいた方がいいだろう。
「んじゃ琴音、デッキも決まったことだし今度は俺の「歌聖」の調整するぞ、新弾の新規はプロキシで回す」
「りょーかい、仮想対面は?」
「「嵐竜」って言いたいが俺のデッキに持ち合わせがねぇんだよなぁ……現状不利が付いてんのがそいつってだけだから一旦「砦機」」
「アイギオンの足切り性能高いもんねぇ、んじゃデッキ貸して。つっても私回せるかどうか分かんないよ?」
「最悪お互い手札オープンして考えりゃいい、ちょっとプロキシ入れるから待て」
そしてこっちも大会用の調整だ。半ば巻き込まれの参加とはいえやるなら勝ちに行く、沼に沈めるのが目的なら別とはいえ手抜きは対戦相手、引いては己のデッキへの侮辱。
40枚あるデッキの1枚1枚に採用理由を見出しそれを極限まで活かすプレイングを練習する、それこそが真のカードゲーマーだ。
「……ねえ燈真、これじゃあ中型多くない?小型もうちょっと入れた方がいいと思うんだけど」
「あー……俺の手持ちにあったかな……」
そういや推定巻き込まれな事といいキーカードを序盤に手に入れる事といい俺には
……まあ気のせいだろ、多分。
「んじゃやるぞ」
「よーしボッコボコにしてやる」
「おう、その気概で頼むわ」
もしそうだったとしてもそれは俺に関係ない。例えどんな奴が相手だろうと全力で挑み、打倒するのがカードゲーマーの流儀というものだからな。
「俺のターン、ドロー……あ」
「どした?」
「事故った」
「マジか」
……こういう場合は例外とする。