「よっすトラ、新弾買えた?」
「急いで予約してどうにか4箱。もう開封済み」
「おー、結果は?」
「……当てちゃった」
「嘘でしょラクシュミのシク!?大丈夫帰り道刺されない!?」
「マジで心配だから困る、ただ神聖なる歌唱台は1しか当たらなかったしラクシュミもこれだけだ。そこら辺頼むぞパトロン」
「そこら辺は抜かりなく、せっかくだしシクで揃える?コレクションにしておくつもりだったんだけど」
「マジでお前も当てたの!?」
「そのとーり、ペアルックって奴だね」
「カードでペアルックは違うだろ……んじゃ待ってろプロキシと入れ替えっから」
「歌聖」を大会用に調整し始めてはや1週間、今日は待ちに待った新弾発売日。今更予約するとかだいぶ迷惑行為だったけど店長の好意に甘えてどうにか確保してみたが……まさか本当にお目当てのラクシュミ、それもシクが当たるとは思わなかった。
この世界のパック収録数が多すぎてお目当てのカードが当たる確率すこぶる低いしマジで奇跡レベルだからな。これも何かの縁かもしれん、こいつだけハイレアなのはちょっと違和感あるがありがたく使わせてもらおう。
「……2枚ともシクは圧がすげぇな」
「レアリティは高けりゃ高いほど良いってどっかのプロが言ってたし圧はかけて損ないでしょ」
「そりゃどんな富豪だ」
ともかくこれで「歌聖」デッキは完成、琴音の「光魔」と合わせる都合で多少構築は歪だが今回の強化で第一線でもやっていける強さは出たはず……まあそこまで気にしても理想のデッキを組めるやつなんて余程の富豪かプロくらいなんだし気楽に行った方がいいんだが。
「改めて回してみる?」
「プロキシで散々回したしなぁ……ん、あいつら来たわ」
「まあ新弾発売日だもんね、今日もベビーシッターがんばれ」
「だから誰がだ……」
デッキとスリーブを整えファローシャッフルで崩していたら今日も今日とていつもの2人が……あれなんか1人増えた?
「おっ景虎さん!」
「よお燈真、そこの子は?」
「友達!グリモアやってるって聞いたからバトって仲良くなった!」
「あー、えっと……
燈真に連れられて挨拶してきたのはちょっと気が弱いですって感じな青い髪の少年。見るからに青使いって感じの見た目だ、この分だと何れ6人まで増えるんじゃあないか?
「須藤景虎だ、こっちは山吹琴音」
「こっちとはなんだこっちとは」
「……知ってます。あちこちの大会に出没しては優勝を掻っ攫って行く
「えっお前そんな物騒な二つ名あんの?」
「あー……正直ダサいからそれで呼ばれるのちょっと嫌いなんだよね。それに暴君っていうならトラの方が相応しいし」
「はぁ?」
自己紹介したと思ったらとんでもない流れ弾に巻き込まれちょっと顔を顰める。誰が暴君だ、影竜の事を知ってるのはこいつだけだし大会で大した実績出してるわけでもないし変な荒らし方してる訳でもないし……
「だってほら、トラの方が私より強いじゃない?」
「どっこいどっこいだ、お前に教えてた頃は俺の方が強かったかもしれんが今となっちゃ大会荒らししてるお前の方が強いんじゃないか?」
「でもその荒らす大会の調整相手はトラだし」
「そうだがなぁ……」
にしたって暴君はないだろ暴君は。もうちょっとなんかこう……慎ましい異名とかないの?いや欲しい訳じゃないんだが。
「……ってそんな話しにきた訳じゃねえだろ、今日もコーチングか?」
「ああいやその、そうじゃなくて……」
「今日は景虎さんに挑みにきたんだ!」
「ほう?」
意気揚々とデッキを構える燈真の瞳は自信なさげだった数日前とは違って闘志に燃えている。勝ちを重ねて自信を付けたのだろうか、それとも机上の空論で盛り上がってるだけなのか。
「景虎さんに言われた通りあいつを活かせるデッキで戦えるようになってきたからさ、今の俺がどこまで通用するか試したくて!」
「おー、受けてあげなよトラ。自信満々って感じだし」
「元より断るつもりはねぇよ、ただ勝負ってんなら手加減は一切なしだ。どんだけ泣きべそかこうが俺は容赦なくお前に喰らい付く、今の全力を見せてみろ」
「そりゃあ勿論、景虎さんこそ吠え面かくなよ!」
俺に吠え面かかせると来たもんだ、こりゃあ随分と期待できる。いい加減琴音とばっか調整しまくるのも食傷気味だったからな、たまにはこうして油の乗った新人を相手するのも楽しみなんだ。
「言ったな?それじゃあ準備だ、わりぃな琴音、大会前の打ち合わせしようと思ってたが後になる」
「いいよー、トラが私以外とやるの結構見てて楽しいし」
そうと決まれば熱が冷めないうちにさっさとバトるに限る。デッキは……さっきパーツ揃った事だし歌聖でいいか、しばらくこれがメインになりそうだし。
「準備はいいな?」
「おう!お互いのデッキをカット&シャッフル!」
「……これ終わったら餞別にスリーブやるよ」
「マジで!?」
「マジだ、そろそろカードの保護も考えとけ」
ライフを6つ、ストックに4つ。後はデッキをカット&シャッフル……ってしたかったんだけど燈真のデッキは裸だから横入れができねぇんだ、仕方ないので普通に切って戻す。横入れはよく混ざるけどスリーブがないとカードだいぶ傷付くんでやる時はちゃんと相手に聞こう、それがマナーだ。
「先後はコイントスにするか、どっちだ?」
「じゃあ表!」
「OK、それじゃ……残念裏だ、先行は貰った」
歌聖はユニットの育成が何より大事なデッキなので取れるならなるべく先を取っておきたい、試運転で取れたのは良好。
「暴君が自分より強いと認める人……一体どれほどの強さか」
「だからその暴君ってのやめてよー」
「まあまあ、周りが勝手に言ってるだけですし」
俺の振り回し具合に限ればだいぶ暴君だと思うが……というのは心の片隅にしまっておく。言ってしまえば何が飛んでくるかわからん。
「んじゃやるぞ燈真、全力で来い」
「おう!」
これで準備はよし、フルパンマンからどれだけ成長したか見せてもらおう。
「先行、ドロー、メイン」
……初手はだいぶ強いな。このデッキ微妙に事故るから低コスをちゃんと引き込めてるのはでかい。
「2コストで「輪唱聖アシュヴィン」を召喚、追加2コストで【増幅】、ターンエンドだ」
「結構消極的に行くね?」
「対面が分かってるってのもあるが赤相手は3000ライン超えとかねぇと安心できねぇ」
輪唱聖アシュヴィン
(歌聖)
【ターン1回】自分が黄のアーツを使用した時、自分のデッキの上から3枚を確認し、その中の「歌聖」ユニット1枚を手札に加える。残りは好きな順番でデッキの下に戻す。
【増幅2】+2000(指定されたコストを支払うことでこのユニットのパワーを+する)
このゲームにおいてパワー3000は赤の除去札「爆砕火炎」に吹っ飛ばされるラインだ。序盤に立てたユニットをあっさり処られたくないならパワー4000以上は欲しい。
さて、燈真の奴はどう動くか……
「俺のターン、ドロー、チャージ、メイン!2コストで「紅刃兵マグヌス」、軽減1の3コストで「紅蓮闘士ガルド」召喚!」
「そっちも随分と初手がいいな」
「へへっ、バルカン出しやすいように小型を増やしてみたのさ」
紅刃兵マグヌス
(溶巌)
【アタック時】このユニットのパワー+2000。
【増幅2】+2000(指定されたコストを支払うことでこのユニットのパワーを+する)
紅蓮闘士ガルド
(溶巌)
【共鳴:赤2】(このフィールドを配置する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【アタック時】このユニットのパワー+2000。
【増幅2】+2000(指定されたコストを支払うことでこのユニットのパワーを+し、以下の効果を得る。)
【強襲】【アタック時】相手は可能なら必ずブロックする。
以前こいつのデッキはユニット配分が中型に偏ってて事故りやすかったがバルカンを入れるにあたってそこら辺を改善しにかかったらしい。いい兆候だ、デッキは何よりも柔軟さとバランスが大事。
「そのまま紅刃兵マグヌスでアタック!アタック時効果でパワー+2000!」
「ライフだ持ってけ」
赤はとにかく盤面を掃除して打点を叩き込む色だ、効果もわりかし単純な奴が多くて初心者でも回しやすい入門者向け。
ただし単純だからと侮る事なかれ、シンプルはいつだって取り回しが良いのだ。多面展開してアタックする順番を考えりゃ相手は死ぬんだから。
「ターンエンド!」
「ちゃんとブロッカー残しやがって、ハッタリだけじゃないらしい」
「だろ?」
しっかりとアシュヴィンと相打ちになれるパワーの奴らを並べて返しのブロッカーも確保、盤面を俯瞰して見る力が身に付いて来たらしい。良いことだ、ライフだけに囚われてちゃ見える勝ち筋も見えないからな。
「俺のターン、ドロー、チャージ、リフレッシュ、メイン。軽減1の2コスト。テリトリー「神聖なる歌唱台」配置」
「テリトリー?」
「盤面に出て特殊な効果を発揮するカードの事。ユニットじゃないからブロックさせて破壊、とかもできないし使い方次第でかなり厄介なんだよ」
「解説ご苦労琴音、それじゃあ新弾の力を試させてもらうぞ」
神聖なる歌唱台
【共鳴:黄1】(このテリトリーを配置する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【ターン1回】【自分のターン】自分の「歌聖」ユニットが存在する状態で自分が黄のアーツを使用した時、マナ1つを自分のストックに置く。
【増幅2】(指定されたコストを支払うことでこのテリトリーは追加で以下の効果を得る)
【お互いのアタックステップ】自分の手札の黄のアーツのコストを1下げる。
増幅なしでも黄のアーツを使えば無料でマナブースト、増幅すればアーツのコストを下げて【迅雷】や【対抗】に繋げられる。どう考えたって3積み待ったなしの強カード、赤相手だと真価を発揮する前に散りそうで怖いがそこはプレイングでどうにかするしかあるまい。
「続いて軽減2、キャスト「召雷の波動」、2枚ドローする」
召雷の波動
【共鳴:黄2】(このアーツを使用する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
自分はデッキから2枚ドローする。
「俺のフィールドに「歌聖」が居る状態でアーツを使用したので「神聖なる歌唱台」の効果で1マナ追加。そしてアシュヴィンの効果でデッキの上から3枚オープン……ビンゴ、「戦神聖ドゥルガー」を手札に」
「げっ、それって「歌聖」の……」
「そう、大型キーカード。続けて今ドローした2枚目の「神聖なる歌唱台」を配置する」
どうも今日はこの前と違ってドロー運がすこぶるいい、このまま押していけそうだ。せっかくならちょっとこいつの判断能力を試してみるとしよう。
「アタックステップ、アシュヴィンでアタック」
「ガルドが居るのに?……いや、此処はブロックしない!」
「正解だ、軽減2、1コストでキャスト「光天の雷」。マグヌスのパワーを-2000して破壊する」
「げえっ!?」
相打ちになりかねないのに突っ込んできた意図を理解してライフで受けて来た、此処らへんはしっかり復習して来たようで何より。
光天の雷
【共鳴:黄2】(このアーツを使用する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【対抗】(このアーツはお互いのアタックステップにもキャストできる)
相手のユニット1体のパワーをこのターンの終わりまで-2000する(パワーが0以下になったユニットは破壊される)。
「2枚目の歌唱台の効果で更に1マナ追加、さあ1点もらうぞ」
「へっ、1個くらいなんてことないぜ!」
「お前がそんなことを言う日が来るとはな……ターンエンドだ」
ちょっと前までライフが1個減るか減らないかで一喜一憂してたこいつが懐かしい。ようやく視野が広がっていっぱしのバトラーに……って言いたいがまだ全部分かったわけじゃない、お前の成長を見せてみろ。
「俺のターン、ドロー、チャージ、リフレッシュ、メイン!2コストで「紅刃兵マグヌス」2体目召喚!そして軽減2の2コストでキャスト「ボルカニックドロー」、デッキから2枚ドローする!」
ボルカニックドロー
【共鳴:赤2】(このアーツを使用する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
自分はデッキから2枚ドローする。
「盤面を固めに来たか」
「ライフ以外を見ろって言ったのはあんただぜ景虎さん。そして軽減2の3コスト、「焔槍騎士ヴァルケン」召喚!」
いつぞや実里ちゃんをボコした時のキーカード、ヴァルケン。赤デッキの中堅役として申し分ない性能なんだがこっちはそいつが出る前提で動いてる、さあどうする?
焔槍騎士ヴァルケン
(溶巌)
【共鳴:赤2】(このフィールドを配置する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【強襲】【アタック時】相手は可能なら必ずブロックする。
【アタック時】このユニットがバトルで相手ユニットのみを破壊した場合、このカード以外の自分の疲労状態の赤のユニット1体を回復する。
【増幅3】+3000(指定されたコストを支払うことでこのユニットのパワーを+する。)
「アタックは……しない、ターンエンドだ」
「ほう?」
賢い選択だ。此処で殴ればライフが減って守りを固めてくるしそれを強襲で潰せばオッケー……なんて安直な考えに走らないあたり成長が垣間見える。さっき光天の雷を見せたのも効いているだろう、口だけじゃないようでなによりだ。ま、それが正解とは限らんが。
「えっなんで!?」
「むやみにアタックすれば景虎さんのリソースが増えるだけだからですよ、実里さん」
「おー鋭いね雄吾君」
「前のターンで景虎さんがアシュヴィンでアタックしたのはガルドかマグヌスのどっちかを確実に処理するためでもありますがそれ以上にアシュヴィンを【強襲】で失わないためです。疲労していればブロックできませんから」
「一々言わなくても分かってるっての。それに景虎さんが【対抗】のアーツを持ってたら逆にこっちの数が減っちまう」
「そこまで分かってるなら合格だ。基礎はしっかり思い出したようだな」
ガヤもガヤで新入りの雄吾君が分かりやすく俺のプレイングを解説してくれている、概ねそれで正解だ。一見隙だらけにして攻撃を誘い【対抗】からのサーチを目論んでいたのだがそう簡単に引っ掛かる奴ではなくなってしまった。嬉しいやら悲しいやら、とはいえ此処でライフを削らなかった事が後にどう響くかな。
「ターンを貰う、ドロー、チャージ、リフレッシュ、メイン……早速使うか」
「お、引いたな?」
「おうよ、軽減3、4コスト」
ただ俺の思考を読んでるだけじゃ勝ちにはいけない。なにせ俺はコンボを炸裂させて1ターンで決めきるか真綿で首を絞めるかの如くじわじわ相手を追い詰めていくのが好きな捻くれバトラー、受けに徹してちゃ沼に嵌っていくばかり。
「「絶唱聖ラクシュミ」を召喚だ」
今日手に入れたばかりの新しいキーカードを召喚し、さあ突破してみろと言わんばかりの目線で燈真を挑発してやる。新弾の暴力……じゃなかった、黄の手数、お前に捌ききれるかな?
絶唱聖ラクシュミ
(歌聖)
【共鳴:黄3】(このフィールドを配置する時、自分フィールドの対象カード1枚につきコストを1つ下げることができる)
【福唱:黄】【ターン1回】【アタック・ブロック時】自分が黄のアーツを使用した時、そのアーツをもう一度使用する。
【お互いのアタックステップ】自分が黄のアーツを使用した時、相手のユニット1体のパワーをターン終了時まで-1000する(パワーが0以下になったユニットは破壊される)。
【増幅3】+3000(指定されたコストを支払うことでこのユニットのパワーを+し、追加で以下の効果を得る。)
【アタック時】アタック終了後、自分のトラッシュから黄のアーツ1枚を手札に加える。