ZEXAL世界にメルフィー使い復讐者ショタを投下する 〜ナンバーズハントでお兄ちゃんぶっ殺した天城カイト許せねえ!〜   作:同じ顔の別人

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第2話

⭐️遊馬視点

 

 

 宇佐木は泣き疲れたのか、玄関の隅で膝を抱えてうずくまってしまった。

 警察に通報しようとしたら、オービタルに止められた。この件はどうせドクターフェイカーらが管轄する部署まで連絡が飛ぶ、直接報告したほうが早いと言われれば引き下るしかない。オレだって警察呼んだ後どうなるのかとかよくわからないし。

 そうなると、できることはなにもない。オレも、アストラルも、オービタルさえも黙ってその場に腰を下ろす。

 オレはシャークの魂が奪われた時のことを思い出していた。生命力を失い、病院に運ばれて機械の力でなんとか息をしていたあの恐ろしい姿を。もしシャークがあのまま死んじまってたら、もう二度とデュエルすることも、入院することも、一緒に叱られることさえ出来なかった。もしそうなっていたらオレはカイトを許せただろうか。こいつみたいに、ちゃんと怒り続けることが出来ただろうか。そんな考えても仕方のないことばかりがぐるぐると頭の中を巡っていた。

 いつもは苛烈なまでにカイトの味方をしているオービタルも、流石に言葉を失い困り果てていた。いやしかしとか、魂を抜いただけではこうまでとか。小声でブツブツ呟いては飲み込んでいる。

 沈黙を最初に破ったのはアストラルだった。

 

『遊馬、君は死体を見たことがあるのか?』

「まあ……父ちゃんが冒険に連れてってくれたとこは“遭難者”もいたからさ」

 

 アストラルは意外そうな顔をした。まあ、見たことあるって別に言いふらすようなことじゃないしな。

 初心者向けの低山から、大人でも高難易度なクライミングまで。父ちゃんはオレが少しでも興味があるそぶりを見せたら、どんなところにも連れて行ってくれた。知識も技術も、他ならぬかっとビングの精神まで、何だって教えてくれた。そんな中、遭難者に遭遇することも少なくなかった。道に迷った登山者や、怪我をしてルートを外れた同業の冒険家。彼らの微かな助けを求める声を聞き逃さず、必ず立ち寄り、その場で救助を呼んだ。父ちゃんが立ち止まらないのは、完全に手遅れだった時だけだ。

 

(……おんなじ、臭いだったもんな)

 

 父ちゃんは、オレが直接見ないようにはしてくれた。でもアレが何なのかは隠さなかったし、今後山で見つけたらどうすればいいかも教えてくれた。そう言うところも大好きだった。だから今も、何にも知らない奴よりはちゃんと向き合えていると思う。

 でも平気かと言われれば違う。窓からちらりと見えた光景は今でも信じられないし、怖いし、匂いで吐き気がするし、床が何で黒く湿っているのかもあまり考えたくない。肌の薄暗くぶよぶよしたのが頭から離れなくて、しばらく夢に出てきそうだ。今すぐここから離れたくてたまらなくて、でも、うずくまる宇佐木を無理やり連れ出すなんてもっとできなかった。

 

「……あいつに襲われてから、兄さん、動かなくなって、全然起きてくれなくて」

「……!」

『遊馬、気になる点がいくつかある。今全てを聞き出すことは……難しいだろうが』

 

 アストラルは情報を引き出すよう目配せした。出来るだけ宇佐木を傷つけない形で——その点で、二人の意見は完全に一致していた。出会った頃ならアストラルはこんな気は回さなかっただろう。相棒の変化を肌で感じながら、遊馬はゆっくりと言葉を選んだ。

 

「オレは九十九遊馬だ。ええっと、宇佐木だよな。お前の兄ちゃん、カイト、えっとナンバーズハンターに襲われたのか?」

「……うん」

「その……見たのか?」

「うん、兄さん、倒れちゃって、動かなくて、元気になってほしくて」

「……」

「で、でも、びょ、病院とか、そんなのに金使うくらいなら食べて寝た方が早いって、いっつも言ってて、だから、だからぼく、家まで、…………なのに、食べてくれなくて」

 

 だから、亡くなってしまった。かつてのシャークや多くの被害者のように、すぐに延命治療を受けることができなかった。呼吸もままならない状態でゆっくりと体を腐らせていったのだ。泣きじゃくる弟を一人置いて。

 

「……わかってる。ぼくが間違えたから、兄さんが死んだってことくらい」

 

 違う、と思った。お前は悪くない。そう否定するのは簡単だ。だが宇佐木の口調は嗚咽で揺れてはいれど妙に断定的だ。頭の中で何度も繰り返した問いなのだと、遊馬は直感的に理解する。オレもそんなふうに考えてしまう時があるから。なんだかつられて悲しくなった。

 だからそこには触れず、もう一つ気になっていたことを質問した。

 

「ひとつ、聞かせてくれ。その……なんでオレも狙ったんだ?」

 

 宇佐木は俯いたまま、それでも声を絞り出して答えてくれた。

 

「…………あいつが、言ったから」

「あいつって、カイト?」

「あいつ、言ったんだ。ぼく、すぐに刺してやるって思ったのに目が合って止まっちゃって、そしたら………

 

──

 ──「貴様の怒りはもっともだ。遊馬とデュエルする前のオレなら殺されてやっていたかもしれん」

──

 

って」

(言いそう)

 

 カイトがそう思ってくれるようになっていたのは素直に嬉しかった。まあ、そのせいで宇佐木の次の矛先が遊馬に向いたわけだが。

 

『やはり……カイトは刺されたのではなく、自分の意志で、刺されるまでは許容したのだろう』

 

 アストラルが呟く。その推理に遊馬は驚いた。かなり飛躍しているように感じたからだ。

 

『刺される前に会話をしている。不意をつかれてすらいないのだ、彼は』

「あ……」

 

 しかし補足されれば多少納得がいった。いつでも逃げ出せただろうに、カイトは宇佐木が攻撃するまで動かなかった。ケジメとか責任とか、そういうことを考えていたのだろうか。わからない。カイトはいつだって難しいことを考えていて、だからかっこいいのだけど、遊馬にはどうしても共感しきれない部分だった。

 

「えへへ、ふざけんなよって感じじゃん。ぼく、それ聞いて、こんなふざけたこと言う奴は殺さなきゃいけないって思った。だから刺してやった。別にどんな顔して欲しかったとか、何もなかったけど……あれで終わったのに、全然ダメで、ぼくぜんぶ、空っぽなままで……だから…………遊馬にまで、」

 

 宇佐木の言葉は要領を得ない。でも、気持ちは何となく伝わった。宇佐木は悲しみ、迷い、そして孤独の中で苦しんでいる。兄を失い、仇を討ち、それでも埋められない心の穴に戸惑っている。だから混乱のままに矛先を遊馬に向けることで、空っぽさから目を逸らそうとしたのだ。

 

「ぼく、消えてしまいたい…………」

 

 だが、宇佐木は一つ勘違いをしている。その勘違いが、彼を追いつめ遊馬へ刃を向けるまでにしてしまったのなら、解いてやるのが先決だ。

 

「……なあ、デュエルしよう!」

「へ?」

 

 遊馬は立ち上がり、宇佐木を表へ連れ出した。Dゲイザーを見せて、自分のを持っているか確認する。うん、問題ない。デッキもちゃんと持ち歩いているようだ。

 

「デュエルだよ! 聞いたぜ、クラスで一番強いんだろ」

「学年で、だし」

 

 小さな訂正に、うんうんと頷く。宇佐木にとってはきっと小さくはない、大きな違いなのだ。大きいのは、デュエルが好きだからだ。だからきっとまだまだやり直せる。遊馬はそう信じると決めた。

 

「っ、もう、離して、ぼく遊んでる気分じゃない! もう、もうぼくは、手遅れでっ」

「手遅れなんかじゃねえ! ——カイトは生きてる! 無事なんだ。それで、もしデュエルに勝ったらオレが責任を持ってカイトのところに案内してやる」

「……え」

「まだ人を殺してなんかいねえんだ。宇佐木、お前はやり直せる。怖かったら、オレが一緒に着いてく!」

《なっ、このトンマ何を勝手なことを!?》

「頼むよオービタル! まあ、止めても絶対諦めねえけど」

 

 宇佐木の目が見開かれる。ナンバーズハンターが生きている——自分はまだ殺人犯ではない——そう知り、真っ先に浮かんだのは安堵だった。すぐに憎しみに塗りつぶされるほんの一瞬浮かんだわずかな希望の色を、遊馬は見逃さなかった。

 カイトの事情も性格も遊馬はよく知っている。すでに犠牲が出てしまっている今、二人が和解できる安易な解決策はすぐに思い浮かばなかった。ただ、遊馬には宇佐木がやり直したいと思っているように見えたのだ。なら、刃物と血で決着をつけるのではなく、どうか宇佐木が“空っぽさ”に怯えずにすむ形まで。とことんまで付き合ってやりたい。こいつのことがもっと知りたい。力になりたい。なにか、別の方法が見つかるまでどこまでも——そのためのデュエルだった。

 カイトもまた、そんな相手を蔑ろにはしないはずだ。

 

「……っやめてよ! この、バカにしやがってぇ!」

 

 宇佐木は少し身震いした後、目を見開き、デュエルディスクへ変形させた。やる気は十分のようだった。

 

 

⭐️

 

 

「「Dゲイザーセット、デュエル!」」

「……」

「来ないなら、行くぜ、オレが先行だ!」

 

 お互いのライフポイントは4000。スタンダードなデュエル方式だ。遊馬の手札には「ゴゴゴゴブリンドバーグ」がいる。遊馬は迷わずカードを並べた。

 

「オレは「ゴゴゴゴブリンドバーグ」を通常召喚! さらにその効果によりデッキから「ゴゴゴゴーレム」を特殊召喚する!」

『レベル4のモンスターが二体……遊馬!』

「ああ! オーバーレイネットワークを構築! 来い、ナンバー……じゃねえ、「ガガガガンマン」を守備表示でエクシーズ召喚!」

 

 いつもの癖でホープを召喚しかけて慌てて止める。アストラルは宇佐木からナンバーズの気配を感じていないし、境遇的にも無駄に怯えさせてしまうだけだろう。だから今回のデュエルではナンバーズは使わないと決めた。絶対だ。ここにはいないシャークと鉄雄に心の中で約束する。

 しかしそれは、決して手加減するという意味ではない。だから遠慮なく一ターン目からエクシーズ召喚をしたし、「ガガガガンマン」ならオーバーレイユニットを一つ取り除くことで、1ターン目からでも相手のライフポイントへ直接ダメージを与えることができる。その効果を発動しようとした。その時だった。

 

「──相手モンスターが特殊召喚に成功したため、手札のモンスター効果を発動!」

「へ?」

「相手がモンスターを召喚・特殊召喚したとき、手札から「メルフィ・ラビィーズ」を特殊召喚する! デッキから「メルフィー・ラビィ」を手札に加えて、その後手札から任意の数だけ獣族モンスター——ラビィとポニィを召喚し、さらに自分の手札・フィールドのモンスターを融合素材とし、「メルフィー」融合モンスター1体を融合召喚できる! 「メルフィー・ラビィ」と手札の「メルフィー・ラッシー」の力を合わせて、さあ来て! 「わくどきメルフィーズ」!」

「え、え、ええー!? 今、オレのターンだよな!?」

 

 宇佐木はレベル4の融合モンスターを自身のフィールドへ召喚した。「メルフィー」——彼のぬいぐるみに似た、ふわふわの愛らしいモンスターたち。しかし登場の仕方のせいで、遊馬の頭の中にはすげーとかやべーとか、そう言う感想しか浮かんでいなかった。信じられない。今はオレのターンで、宇佐木は後攻のはずで、つまりは0ターン目の先制召喚だ。0!?

 

「さらに「わくどきメルフィーズ」の効果で……「メルフィ・ラビィーズ」が手札に逃げ戻る。ぼくが戻した手札と同じ枚数のカードを相手にも戻してもらう。ぼくが選ぶのは当然、「ガガガガンマン」!」

「え、うわあっ!?」

 

 完全に不意をつかれ、ガガガガンマンと一緒に声を上げる。せっかくのエクシーズ召喚が無に帰し、エクシーズ素材とまとめて0に戻ってしまった。これではフィールドはガラ空きだ。せっかく先行を取ったのに——焦りもあるが、遊馬はそれ以上に妙に高揚していた。

 

「っ、オレは手札から3枚カードを伏せてターンエンド!」

 

 遊馬のライバルは年上が多い。それはかっとビングの精神による巡り合わせが大きいが……こんな、下から突き上げられるようなワクワクするデュエルをする年下に会ったのは初めてだった。

 

「宇佐木……お前、すっげえな! 強ぇ、強えよ、こんなデュエルができるなんてやっぱり……!」

 

 言った後にまたオービタルに怒られるかも、なんて考えがチラついた。でもこれは偽りのない本心で、宇佐木に伝えたい言葉だ。飲み込むことはできなかった。

 低い唸り声が響く。怒りを爆発させたのはオービタルではなかった。

 

「——ふざけ、ける、なぁ!」

 

 宇佐木の瞳には最初に出会った頃の強い怒りが戻っていた。遊馬に向かって、いや、そのさらに後ろを睨みつけて、カッと炎を燃え上がらせる。

 

「すごくなかったら……弱かったら、悪いことをしたらすぐに殺しても構わないって言うのか! 兄さんみたいに!」

「! それは違……」

「何がだよ! うう……ぁああ、ぼくの、ターン、ドロー!」

 

 慌てて謝罪しようとするも、弁明の機会は与えられなかった。宇佐木は泣き喚き、そんな態度とは反比例するような冷静な手つきでモンスターを展開していった。

 

「「わくどきメルフィーズ」自身の効果を発動! レベルを2つ下げて墓地から獣族モンスター一体を特殊召喚する! 復活させるのは、当然メルフィー! この二体でオーバーレイネットワークを構築! エクシーズ召喚!」

「!」

『やはり持っていたか』

 

 ナンバーズ……ではない。デュエルスクールの生徒たちから聞いた宇佐木の切り札の一つが姿を現した。

 

「かわいいメルフィーたち! ぼくらを追い詰めるぜんぶに、かわいいだけじゃないってとこ思い知らせてやれ! ——「森のメルフィーズ」!」

 

 そうして、フィールドに、切り株を囲むように集まるモンスターが召喚された。

 

 

⭐️

 

 

(あれが……宇佐木の切り札)

 

 森のメルフィーズはランク2、地属性のエクシーズモンスターだ。ATKは500でDEF2000と控えめなステータスだが、この手のモンスターは大体効果が恐ろしい。

 

「ぼくは「森のメルフィーズ」の効果を発動しオーバーレイユニットを一つ使うことでデッキからメルフィーと名のつくカードを一枚手札に加える。ぼくが選んだのは速攻魔法「メルフィーのおいかけっこ」! この効果により、墓地より融合素材としていた「ポニィ」を復活! さあ、みんなで遊馬にダイレクトアタック!」

 

遊馬 LP4000→LP2900

 

 脅威の三連撃——しかしメルフィー達は決して攻撃力の高いモンスターではない。合計してもたったの1100ダメージだ。手痛い一撃だが、自分のフィールドにモンスターが0体のままターンを渡してしまった時に覚悟したほどの損失ではなかった。

 

「……へへ、まだまだぁ! せっかくのチャンスだったのに残念だったな!」

「それは…………まあ、そう。メルフィーたちは争いごとが苦手なんだ。でもね、これで終わりじゃない。カードを一枚伏せて、「メルフィ・ワラビィ」を通常召喚をさせておく」

 

 宇佐木は「メルフィー・ワラビィ」を通常召喚した。ATKは0。攻撃力も防御力も低い、けれど今までの展開を踏まえれば特殊な効果があるのは明らかだ。

 ふわふわの生き物たちがキュゥと鳴き声を響かせる。メルフィー・ワラビーにキャシーにポニィ、そして森のメルフィーズ。エクシーズも合わせて計4体。小柄ですばしっこいのが入れ替わり立ち替わり、けれど着実に何かが進んでいく。何だか宇佐木自身にも似たデッキだと感じた。

 

「今度はオレの番だ! ドロー!」

 

 ドローしたカードを見て慎重に作戦を立てる。今回のデュエルではどうにもいつもの戦い方が出来ていない気がした。ナンバーズが使えないせいではない、宇佐木の戦い方が遊馬のテンポ感と絶妙に噛み合わない感じがしたのだ。

 

(こいつ、全然っ、おっきな攻撃してこねえんだもんな……!)

『いわゆるコントロールデッキ、というやつだな。コンボ主体の遊馬とは確かに相性が悪い』

 

 加えて遊馬のデッキは高火力な攻撃に対する無効化や反射にかなりリソースを割いている。逆に攻撃してこない相手には反撃のタイミングを逃しがちだ。例えば今伏せているカードのうち一枚「奈落の落とし穴」は、相手モンスターの攻撃を無効にし除外する効果を持っている。強力なトラップだが、攻撃力1500以上の相手でなければ発動できない。宇佐木曰く争いが苦手な「メルフィー」たちにはあっさりすり抜けられてしまった。

 せっかく召喚した「ガガガガンマン」はあっという間にデッキにとんぼ返りさせられ、一方の宇佐木は手札をほぼ消費していない。消耗線を仕掛けられている——彼の守り主体の立ち回りが、ほんの少し前、病院の屋上でシャークに指摘されたような逃避ではないことに遊馬は気づき始めていた。

 

『遊馬、どうやら彼の使うメルフィーモンスターにはこちらの召喚に反応してそれぞれ固有の効果を発揮するようだ。単に攻めるだけではさっきの二の舞だぞ』

「わかってるよ。次はガラ空きになんかさせねえ——こっちはそれ以上にかっとビングしてやるだけだぜ!」

 

 とにもかくにも、モンスターを召喚しなければ話にならない。宇佐木が守りの巧者なら、こっちはかっとビングの凄さを見せつけてやるまで。

 

「モンスターの大量展開はお前だけのセンパイトッキョじゃねえってとこ見せてやる!」

「せんぱい……?」

「オレは魔法カード「ガガガウィンド」を発動し、もう一回ドロー! 手札から「ガガガガール」を特殊召喚する! さらに手札より「ガガガマジシャン」を通常召喚!」

 

 これでレベル4のモンスターが2体、だがエクシーズ召喚にはまだ早い。たった一体のモンスターではあの大量のメルフィーには太刀打ちできないし、何より宇佐木の手札にはまだ「メルフィー・ラビィーズ」がいる。0ターン目の二の舞はごめんだ。

 

「永続トラップを発動、「ガガガミラージュ」! このカードが場に存在する限り、自分フィールド上の「ガガガ」と名のついたモンスターをエクシーズ召喚の素材とする場合、1体で2体分の素材とする事できる! さらにさらに、種族・属性の召喚条件を無視できる!」

「! 4体分のモンスター……!?」

「「ガガガガール」でレベル4のエクシーズ召喚、そして「ガガガマジシャン」の効果でレベルを変更しレベル6のエクシーズ召喚! オーバーレイネットワークを同時に構築!」

 

 フィールドに二つの光の渦が現れ、分裂したガガガマジシャンとガールがオーバーレイユニットとして飛び込んでいく。

 

「——さあ、来い! 「H-C (ヒロイックチャンピオン)エクスカリバー!」、「ガントレット・シューター」!」

 

ランク4、ATK2000のエクスカリバーに、

ランク 6、ATK2400のガントレット・シューター。

メルフィーたちと比較できないほど大きな姿に宇佐木は目を見開いた。

 

「っ、この瞬間エクシーズ召喚に反応し「メルフィー・ラビーズ」を再度召喚! その効果により「わくどきメルフィーズ」融合召喚を——」

「二度も同じ手を通すかよ! 「ガントレット・シューター」の効果発動! このカードのオーバーレイ・ユニットを1つ取り除き、相手フィールド上のモンスター1体を選択して破壊する。「メルフィー・ラビーズ」は止めさせてもらうぜ!」

「でもまだメルフィーはいる! 今度は「メルフィー・ポニィ」を——」

「それはどうかな? 「ガントレット・シューター」の効果は1ターンに何度でも発動できるんだぜ! そっちの「メルフィー・ポニィ」も一気に破壊だ!」

「ぐっ、メルフィーたち……!」

 

 アストラルは感心したように頷いた。へへ、どんなもんよ。宇佐木の「メルフィー・ラビーズ」は強力だが、効果を発動するまでに幾つかステップを挟むのが弱点だ。「ガントレット・シューター」ならその隙をつくことができる——即席の策が鮮やかに決まる瞬間は何度味わってもたまらない。

 

「——っ、まだだ、まだメルフィーはいる! 「メルフィー・ワラビィ」はぼくの手札まで逃げ延び、デッキからメルフィーモンスターを2体呼び寄せる!」

「なぁっ、こんだけ倒してもまだ増えんのかよ!」

「「メルフィー・パピィ」に「メルフィー・フェニィ」、集合! この瞬間「森のメルフィーズ」の効果を発動する! メルフィーが怖くてフィールドから逃げ出した時、指定したモンスター1体を、攻撃も効果も発動もできない状態にする! ぼくが選ぶのは——」

 

 宇佐木は一瞬躊躇した。まだ効果を発動していない「H-Cエクスカリバー」か、攻撃力は高いがオーバーレイユニット使い切った「ガントレット・シューター」か——佑佐木が選んだのは後者だった。「ガントレット・シューター」はピシリと音を立て、完全に静止してしまった。

 

『「森のメルフィーズ」——なるほど、これが彼の切り札の力か』

「ああ、だけど運がなかったかもな。なあ「H-Cエクスカリバー」! オーバーレイユニットを2つ取り除いて効果発動! このカードの攻撃力は相手ターン終了時まで元々の攻撃力の倍になる。よって攻撃力は4000!」

「えっ……!? な、」

「さらに「H-Cエクスカリバー」のオーバーレイユニットには「ガガガガール」がいた! この時相手フィールド上に存在するモンスターエクシーズ1体の攻撃力を0にする事ができる! 「森のメルフィーズ」の攻撃力は500から0まで下がる! ……もうどういうことかわかるよな」

「な、わぁ、ああ……」

 

 宇佐木は顔を青くした。攻撃力4000の「H-Cエクスカリバー」が攻撃力を0にされた「森のメルフィーズ」を攻撃したら、ライフは一発で吹き飛ぶのだ。

 宇佐木は慌ててフィールドに視線をやる。その先にはさっき宇佐木が伏せたカードがあった。

 ……そうだよな、あんなすっげえ攻撃を仕掛けたやつがこんなところで終わる訳ねえよな。反撃される恐怖と期待を胸に、遊馬は攻撃を指示した。

 

「さあエクスカリバー、攻撃だ!」

「と、トラップカード発動「メルフィータイム」! 自分フィールドのエクシーズモンスターのオーバーレイユニットを好きな数だけ取り除いて、その数まで相手フィールドのカードを対象として発動できる。そのカードを持ち主の手札に戻す! エクスカリバーを——」

「待ったあ! オレもトラップカード「安全地帯」発動! このカードが存在する限り、オレの表側表示モンスター1体は相手の効果の対象にならず、戦闘及び相手の効果では破壊されない! そのまま攻撃は喰らってもらうぜ!」

「っ、でもトラップ自体は発動できてる! 追加効果——自分フィールドの全ての獣族エクシーズモンスターの攻撃力はターン終了時までこのカードを発動するために取り除いた数かける500アップする。「森のメルフィーズ」の攻撃力は500に戻、も、も……うゎあああああっ!?」

 

宇佐木 LP4000→LP500

 

 宇佐木は首の皮一枚で繋がった。500ポイントのライフを残し「森のメルフィーズ」は破壊される。エクスカリバーの攻撃の勢いで宇佐木は思いっきり後ろに吹っ飛んだ。あんな細っこいのに大丈夫だろうか——そんな不安をよそに、宇佐木はすぐさま立ち上がり睨みつけてきた。なんだ、やっぱりすっげえ熱いやつじゃねえか。

 宇佐木は静かにドローする。カードを確認して深呼吸する。覚悟を決めたようにゆっくりと目を開いた。

 

「ぼくのターン、デッキから「レスキューキャット」を通常召喚する!」

 

 「レスキューキャット」は、レベル4の猫型モンスターだった。ステータスは低くメルフィーでもない。だが今までの腕前からして何か特殊な効果があるのは間違いない。読み通り、宇佐木は召喚した「レスキューキャット」をすぐに墓地へ送った。

 

「「レスキューキャット」を墓地へ送り効果発動! デッキから獣族モンスターを2体特殊召喚する! さあ、もう一度オーバーレイネットワークを構築——エクシーズ召喚! 来い、もう一匹のメルフィー!」

『これは……!』

 

 アストラルが目を見開く。召喚されたのは「森のメルフィーズ」ではなかった。ぶどうにバナナ、りんご、森の果物が降り注ぎ大はしゃぎしているメルフィーたち——

 

「「わくわくメルフィーズ」!」

『二体目のエクシーズか……!』

 

 最初に目を引いたのは攻撃力だった。ATK2000は、今までのメルフィーと比べれば破格の数字だ。だがそれでも素のエクスカリバーと同値で「ガントレット・シューター」には届かない。この状況を逆転するには至らない。

 だが、宇佐木がここにきて無駄な足掻きをするワケがない。思った通り、続けてオーバーレイユニットを一つ使い効果を発動した。

 

「場にモンスターが何体いようが関係ないんだ。「わくわくメルフィーズ」はオーバーレイユニットを一つ使うことで、プレイヤーにダイレクトアタックすることができる!」

「!」

「「わくわくメルフィーズ」の攻撃力は2000! さあ、遊馬にダイレクトアタ——」

「——させるかよ! ようやく攻撃力の高いカードを出してくれたな! おかげでこいつが発動できる! トラップカード発動「「奈落の落とし穴」!」

「!」

「攻撃力1500以上のモンスターが攻撃を仕掛けてきた時破壊して除外する。——「わくわくメルフィーズ」には退場願うぜ!」

「! メルフィー!」

 

 「わくわくメルフィーズ」がたくさんのご馳走ごとフィールドの大穴に落ちていく。召喚早々に悪いがそれはお互い様だ。宇佐木はすっげえ。メルフィーもだ。だからこそ、遊馬も手を抜くことはしなかった。

 フィールドを見渡す。宇佐木の元には非力なメルフィーが3体。一方の遊馬には攻撃力2000と2600のエクシーズモンスターが2体。お互いに伏せカードも出し尽くした。勝負は決まったように見えた。

 だというのに、宇佐木に動じる様子はない。いや、それどころか——

 

(お前、笑って……)

「ははっ、残念だったね遊馬! ぼくはもう「わくわくメルフィーズ」の効果を発動してるんだよ!」

 

 「奈落の落とし穴」ですでに除外されたはずのメルフィーの声が反響する。もうここにいないはずの声が、小さなメルフィーたちを奮起させている。

 

「このターン、ダイレクトアタックできるのは「わくわくメルフィーズ」だけじゃない。“全てのメルフィー”が効果の対象になっている!」

「っ——! な、でもオレのライフは2900ある! そいつらの攻撃力を合わせたって——」

「言ったでしょ! かわいいだけじゃないってさ! 手札から速攻魔法「スプライト・ガンマ・バースト」発動! このターン、レベル2モンスター……メルフィみんなの攻撃力を+1400する!」

「……! う、うおぉぉ……!?」

 

 メルフィたちの毛が電気を帯びて逆立っていく。「メルフィー・パピィ」に「メルフィー・フェニィ」、「メルフィー・キャシー」——3つの眼光が遊馬を狙い定める。合計5000大火力が一斉に遊馬へ襲いかかった。

 

「いっけぇーーッ!」

「うわぁあああ!」

 

遊馬 LP2900 →LP0

 

 遊馬は勢いよく吹っ飛ばされた。もふもふたちの総攻撃だ。負けた、ずっと年下の相手に——なのに遊馬は宇佐木が0ターン目召喚を成功させた時と同種の高揚感に包まれていた。やっぱりデュエルって楽しい。もう一度こいつとデュエルがしたい。こいつに勝ちたい。デッキを見直して、すぐにでも再戦をせがみたい。ドキドキして、ワクワクして——今確かに、遊馬は宇佐木と繋がっていた。根源的な楽しさだけがこの場には満ちていた。

 

「はは! やった! ぼくの勝ちだ!」

 

 一方の宇佐木もまた勝利の余韻に浸っていた。興奮して、頬を赤らめて、はしゃいで。そのくらいの接戦で、最高のデュエルだった。デュエルスクールの先生の「宇佐木くんはデュエル大好きだから」という言葉に間違いはなかった。

 

「ぼくの…………」

 

 はたと笑いが止まる。AR空間に浮かぶWINの派手なウィンドウの下で、宇佐木は笑いながら泣いていた。

 

「はは、……は……なんで……ぼく、楽しいの…………兄さんはもう、いないのに……」

 

 

⭐️

 

 

 再びぽろぽろと涙をこぼし始めた宇佐木に目線を合わせるようにして、遊馬はしゃがみ込んだ。

 こいつのデュエルはあんなに凄いのに——宇佐木は自分が楽しんでしまったことに傷ついていた。大切なものを失ったのなら永遠に深く悲しみ続けなければ、全部が嘘になってしまうみたいに、頑張って悲しもうとしていた。まるでもう死んでしまった人をひとりぼっちにさせたくないと祈るように。その生き方は優しいけれど、きっと寂しい。

 

「お前の勝ちだ。約束だぜ、お前が望むならカイトのとこまで案内する」

「あ……そう、だったね」

「……会いたくねえか?」

「…………わかんない」

 

 宇佐木と向き合っていた遊馬は、今度は隣に移動して、同じ方向を見るようにした。

 

「デュエル、楽しいか?」

「ん……でも、楽しみたくなくて」

「それは、お前の兄ちゃんと関係あるのか?」

「……言いたくない」

「そっか」

 

 言いたくないなら今はいい。今度は遊馬の番だ。

 

「オレはデュエル楽しいぜ。父ちゃんと母ちゃんがいた頃も、いなくなっちまった後も」

「! え……」

「へへ、オレ、父ちゃんと母ちゃんいないんだ。ねーちゃんとばーちゃんと三人で暮らしてる。でさ、オレがデュエル好きなのは、父ちゃんと母ちゃんがいたからじゃなかったんだ。このデッキは父ちゃんのカードだけど……バイクとか、キャンプ道具とか、他にも思い出はいっぱいあるのに、それでもカードを選んだのはオレがデュエル大好きだったからなんだ、多分。だから父ちゃんもオレにって、カードを残してくれた。お前はどうなんだ?」

「……ぼ、ぼくもおんなじ……」

 

 今度は宇佐木も話してくれた。父ちゃんと母ちゃんのことは、こうやって思い出話をするだけでも心底寂しくなるけど、明かしてよかったとおもう。

 

「このエクシーズ、兄さんがくれたんだ。うち、お金ないのに。学校も……ぬいぐるみも……いつだってぼくを優先して……」

「そっか、兄ちゃんのこと大好きだったんだな」

「……うん。兄さんがくれたからメルフィーが好きなんじゃない。ぼくが好きだから兄さんはくれたんだ。……ふ、ふふ、ほんとそういうとこ大嫌いだった。ぼくの分を少しでもいいから自分のために回して欲しかったのに……」

 

 多分それは、兄が亡くなってから宇佐木が初めて言った兄の悪口で、矛盾した本音だった。

 

「でも、やっぱ許せないよ。全部。だって兄さんなんだ。ぼくは……全部忘れて幸せになんてなれない」

「許さなくてもいいだろ」

「……えっ」

「それとこれとは全然別の話じゃねえか。デュエルが楽しいのも、寂しいって気持ちも、人を傷つけるのは嫌だって気持ちも。オレだって父ちゃんのこと大好きだった。父ちゃんがいねえと心の底がギューっと震える感じがして……寂しくて……だから、許せねえ奴はいるさ。でも、そいつにも色々あったって知っちまったから、死んでほしいなんて……思わねえ」

「……遊馬」

「もしお前も似たようなこと思ってるなら……朝のこと後悔してるなら……やり直したいって思ってるなら、オレは力になりてえんだ」

 

 宇佐木が立ち上がる。地面に座る遊馬を見下ろす形で問いかける。

 

「遊馬のお父さんも殺されたの?」

「……みたいな、もんかもな」

 

 宇佐木が遊馬の目を覗き込む。じっと。黒い瞳で、見定めようとしている。なんだか本当にメルフィーみたいだった。

 

「……ちょっとだけ待ってて。もう、逃げないから」

 

 宇佐木は玄関の鍵を開けて、異臭のする部屋に入っていった。少しして戻ってくると、手には小さな写真立てと、果物ナイフが握られていた。

 

「遊馬、ごめんなさい。ぼくを兄さんの仇の元まで連れて行ってほしい。これはもう……いらない」

「……ああ」

 

 遊馬が受け取ったのは、果物ナイフの方だった。預かっていて欲しいと頼まれ、了承する。オレを狙い、カイトを刺したと言う——手放す指が震えている。恐ろしいのは丸腰であることか、凶器を他人へ向けてしまった自分自身か。それでも恐怖を抑え込んで、宇佐木は勇気を振り絞った。

 

「兄さんがぼくの全てだったように、ぼくが兄さんの全てだったと信じてる。だから、ぼくだけは絶対に兄さんの味方なんだ。兄さんがいない世界で、ぼくが楽しんだり喜んだりすることが裏切りじゃないというなら、その確認がしたい。何か……違う形で」

 

 宇佐木は、家族みんなが生きて笑っていた頃の小さな写真を抱きしめる。今はもうひとりぼっちだ。それでももう、うずくまって泣き続けることも、自暴自棄で暴力を振り撒くこともない。これが宇佐木のかっとビングだった。

 ず、と宇佐木は鼻をすする。涙目で、目が腫れていて、髪もグチャグチャで、なのにすごくかっこよかった。

 

「ああ、わかっ——」

《なーにをいい感じの雰囲気を出していやがりますか! この、カイト様にお怪我を負わせた分際で!》

 

 オービタルが大声を出した。ここまで黙っていたのだから我慢していた方だろう。さっきまでかっこよかったはずの宇佐木はぴゃ、とかみょ、とか発音しづらい悲鳴をあげて遊馬の後ろに引っ付いて隠れてしまった。

 

《被害者ぶるな!》

「どー考えても被害者ではあるだろ!」

《これだけは言っておかないと気が済まないっ! 今朝の一件についてオイラはまだ許してないでアリマス!》

「ゆ、ゆうまぁ…………」

「ま、まーまー」

《何がマァマァでアリマスか、このトンマども!》

 

 結局、ハートの塔まではオービタルに運んでもらうことになった。宇佐木は高いところが苦手らしくぶんぶん首を激しく横に振っていたが、徒歩では日が暮れてしまう。最上階の展望台エリアにあるカイト用の緊急出入り口を使えば塔内の全てのセキュリティもスキップ出来るらしい。最終的に宇佐木はへにゃりと頼りない角度で眉を下げ、乗せてくださいとオービタルに向けて額を地面に擦り付けた。

 オレと宇佐木、どちらも小柄だがギリギリ定員オーバーな重量をオービタルが気合いで持ち上げる。ぐんぐん高度は上がっていく。逃げ場を失い顔を真っ青にした宇佐木の気を紛らわせるため、家族やクラスメート、トーナメントでの対戦相手との思い出を話してやる。

 ただ、心の中では宇佐木のある言葉がずっと引っかかっていた。

 

——

 ——弱かったら、“悪いことをしたら”すぐに殺しても構わないって言うのか! 兄さんみたいに!

——

 

「…………」

 

 遊馬はナンバーズを手にしたデュエリストが悪の心を増幅されることを知っていた。彼の兄もまた……綺麗なだけではないのかもしれない。内容によっては、カイトと向き合うことで宇佐木がより傷ついてしまう可能性もある。

 それでも遊馬は信じることにした。宇佐木が信じると言った、宇佐木の兄を信じる。

 遊馬の腕の中で、宇佐木がぎゅっと服の袖を握り返した。

 

 

⭐️

 

 

 ハートランド塔内、集中治療室の入り口で、なんとカイトはいつもの黒いコートを着て、自分の足で立って待ち受けていた。体の前で腕を組んで仁王立ちである。

 

「か、カイトぉ!? お前大丈夫なのかよ!?」

「問題ない。貴様は……今朝の子供だな。オービタルから連絡は受けている」

 

 カイト側に立っていた弟のハルトが、遊馬の声を聞いてパッと顔を上げた。見舞いに来ていたのだろう、二人とも元気そうでよかった。手を振りかえし、ふと視線を下げる。

 

「……宇佐木?」

 

 すっかり黙り込んだ宇佐木の肩に手を乗せて、様子を伺う。その目は真っ直ぐとカイト——ではなく、ハルトへ向けられ、ぶつぶつと何か呟いている。

 

「……そんなこと……いいワケない……」

『なんだと……!? この力は……』

 

 アストラルが驚愕する。続いてオレも目を見開いた。

 宇佐木の左大腿部に、光る数字が浮かんでいる。そんなバカな、いつのまに。

 宇佐木の顔色は悪く、呼吸が浅くなっている。

 

 ——ナンバーズだ。

 

 その小さな身体は明らかに震えていた。

 

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