何故か俺の夢に出てきた最近のな○うみたいな最強溺愛系夢小説【渾ゴア×転生TS夢主】 作:remitea
このたびは、ヴィスマン伯爵家が一の娘、ダリア・デ・ヴィスマンの婚約パーティにお集まりいただき、ありがとうございます。
ご令嬢のお相手は、大変珍しい異世界からの使者、渾沌に呻くゴア・マガラさんです。
もとは異世界で死を待つのみとなっていた希少な竜の一種でありーー。
どうしてこうなった。
言ってることおかしいだろ。
そう思う私(わたくし)は何故か、自らの婚約パーティで伏せり、おかゆをつついていたーー。
ここはいわゆる剣と魔法の世界というやつで、トラックにはねられた男子高校生が生まれ変わる定番の転生先であり、私(わたくし)もその一人だった。
伯爵令嬢でありながら膨大な魔力を持つ私(わたくし)は、学院を飛び級で卒業した七歳のときから、伯爵邸の研究室に引きこもり、日々魔法の研究に明け暮れていた。
そのため知らなかったのだ。
ここが、数多の世界から転生・転移者が集うご都合夢小説の世界だということをーー。
そう、十四歳のあの日だった。
「彼」と出会ったのは。
「ダリア様、ここは危険です!」
ずっと私(わたくし)の側にいて、おろそかにしがちな寝食を世話していた侍女が、しばらくぶりに姿を見せたと思ったら、なんの騒ぎだろう。
顔を上げるも、侍女がいなかった数日間手入れもしていなかった髪が紅色のカーテンをつくり、何も見えない。
低血糖で力の入らない指で髪をかきわけると、馴染みのある侍女の、汗だくになった顔が焦点を結ぶ。
「ダリア様、話はあとです。とにかく、ここは一刻も早く、お逃げください。」
次女は俺の手から実験機材を取り上げると、手早くガウンにくるんだ私(わたくし)の体を抱え上げた。
それからは、あっという間に伯爵邸の外に出て、久しぶりに浴びる直射日光に目を焼かれ、人々の悲鳴と足音だけが俺の脳に届いていた。
ようやく目を開けることができたとき、ちょうど、私(わたくし)をかかえた侍女が、立入禁止をあらわす黄色いテープを超えようとしているところだった。
通行規制のためにその横に立つ騎士たちは、国王陛下の紋章がついた甲冑を着ている。
伯爵家の兵士だけでなく、王宮の騎士団が出てくるというのは、よほどの事態だ。
私(わたくし)はそこでようやく、事の重大さを理解した。
さきほどまで手を付けていた研究は、諦めるしかないかもしれない。
「そちらの方は、ヴィスマン伯爵令嬢のダリア様ですね。」
騎士たちの一人が、私(わたくし)に声をかけてきた。
侍女が、警戒するように私(わたくし)を抱え直す。
「第二王子殿下より、至急、対策本部へ来ていただけないかとのことです。」
「わかりました。すぐにお連れします。」
「助かります。」
侍女ちゃーん?
私(わたくし)、行きたくないよー。
対策本部って、絶対人がいっぱいいるところじゃーん。
しかも、呼び出したのはあの第二王子でしょ?
冷血騎士団長で有名な……。
侍女はすでに駆け出していた。
残念ながら、私(わたくし)が口を開く隙さえなかった。
と、そのとき。
対策本部となった、隣の辺境伯領地の練兵場に足を踏み入れると、空から、黒い粉のようなものが舞い降りてきた。
続いて、強風。
そちらを見上げようとするが、「なりません。」という侍女の言葉とともに、顔を隠されてしまう。
どういうことだ。
私(わたくし)は耳を澄ます。
「ターゲット飛来!ターゲット飛来!繰り返します。辺境伯領対策本部にターゲットが飛来!至急、警戒範囲の拡大と増援をお願いします。未知のウイルスへの対策のためーー」
「特効薬はまだか!」
「まだです、そもそも頼みの綱がーー」
「刺激してはならん!退避を!」
「我がいる。もう大丈夫だ。王子殿下は、伝令を頼む!」
「承知した。」
ターゲット……ウイルス?
ここまでの会話を聞いたときには、人々の逃げ惑う足音と、侍女の人間離れした退避速度によって、現場の声は聞こえなくなってしまった。
しかし、侍女に抱えられて去るときに、ガウンの隙間から確かに見たのだ。
金の角と、紫の触覚を。
つややかな甲殻を。
潰れた目を。
あれは、間違いなくーー渾沌に呻くゴア・マガラだ。
こうして、転生した私(わたくし)は、中二病患者ならば誰もが憧れる半古龍と出会いーーいや、ここからなぜ婚約まで至ったんだ。
擬人化とか、明らかにおかしい。
解釈違い甚だしいが、この世界に訪れたモンスターは、古龍ともなれば人化できるのは当たり前らしい。
なぜ、シビレ罠にすらかかるような半古龍がその力を得たのか。
それは、私(わたくし)の研究の成果に他ならない。
さて、どうやって彼を長生きできるような状態まで回復させたんだっけーー。
渾沌に呻くゴア・マガラが、なんでここに。
限界まで開いた口を閉じることも忘れて、その姿をこの目に焼き付けた。
これは夢の中でも、ゲームの中でもない。
黒い煙のような鱗粉は風向きにそって広がり、つややかな鱗に覆われた頭部は、気持ちの良い秋の太陽を照り返す。
それは、中二病という名の病を発症したあの日から憧れていた美しいその姿が、確かにこの世界に存在していることを示していた。
まさか、転生ーー?
私(わたくし)だけでなく、渾沌に呻くゴア・マガラも、モンスターハンターの世界から転生して、ここに来た、ということだろうか。
おかしくはない。
転生なんていう非現実的な事象が俺を通じて証明されたこの世界では、おかしくはないのだろう。
しかし、なぜ渾沌に呻くゴア・マガラなんだ。
せっかく転生しても、あの不安定な体では、再び力尽きる日は遠くないだろう。
確か、羽化するそのときを間近に控え、古龍の力をいつでも発揮できる状態で眠らせたゴア・マガラが、先に羽化したシャガルマガラの鱗粉を浴びて脱皮不全を起こした状態が、渾沌に呻くゴア・マガラだった。
ん?鱗粉?
待って、今私(わたくし)は、間近でその鱗粉を吸っていないか?
ウチケシの実ーーこの世界にあるのか!?
なら、武器を取って克服するしかない。
殴るのはかわいそうだけど、助けられないならいっそ、眠らせてやらないとーー。
「侍女、私(わたくし)を下ろしなさい。」
「ダリアお嬢様!?」
「あれの出す粉を吸った時点で、私(わたくし)も『感染』しています。戦って、奴の血を浴びなければ!!」
「あれについて、ご存じでいらっしゃいますか!?」
侍女に下ろしてもらうと、コンクリートの道路にしっかりと足をつき、魔力を練る。
「テルビアス・ニムモ・オト・イトタッシ・イジガハワッハ・セリンカ!」
蛍のような小さな光が手元に集まり、実体を結ぶと、輝く刀となっていた。
逆手に持ち、構え、跳躍すると、二歩で奴の目の前に着く。
ちょうど、二段に爆発する龍属性攻撃を放った直後の渾沌に呻くゴア・マガラに、構えた刀を突き刺そうと走り出す。
渾沌に呻くゴア・マガラが振り向いて、まずい、と思ったそのとき、目の前に、人の形をした黒い影がよぎった。
まずい、騎士か?
こっちを向いている、このままでは刺し違えるーー。
慌てて光の刀を霧散させるが、間に合わないかもしれない。
自分を守る余裕はなかったが、さて、私(わたくし)とこの騎士のどちらかでも助かるだろうか?
目を閉じて衝撃に備えるが、よく考えるとこの人は武器を構えていなかった。
再び目を開けると、光の刀を霧散させたことにより、塞ぐものがなくなった傷口から血が吹き出した。
間に合わなかったか、いや、まだ治療すれば、この兵士は助かる。
しかし、奴の、渾沌に呻くゴア・マガラの眼の前でそんな余裕はない。
そこにはないモドリ玉を探して、私の左の人差し指が右上のRボタンに、右の親指が右のAボタンに伸びようと空を切る。
ガキンーー。
金属同士が跳ね返る、重い音が響く。
再び目を開けると、私の髪からしたたる血のすき間から、ロイヤルブルーの甲冑と、その人物の持つ黄金に輝く剣が見えた。
どうやら、この人物が渾沌に呻くゴア・マガラの爪を弾いてくれたようだ。
「大丈夫か、アレク!?って、この傷は……まずい、医者は!?」
この人物は、まさか、私(わたくし)を呼び出した第二王子!?
ロイヤルブルーの甲冑に、黄金に輝く聖剣アレクサンダー。
あの冷血騎士団長の特徴に違いない。
アレク、というのは、聖剣と同じ名を持つ辺境伯家の嫡男、アレクサンダー・ヴェルディライトだろう。
さて、彼の治療は間に合うだろうか。
辺境伯家の嫡男となると、死なせては大問題になる。
ない腹筋に、普段よりも三割増しの力を込めて、慣れた詠唱をはじめる。
「イーサオ・ナートシービ・ヤートイッヒ……ヨートミラ・チガレ・イメ・カダ」
みるみる傷が塞がっていく。
死者には効果のないこの術で癒えるなら、問題ないはずだ。
しばらく戦場には出られないだろうが、この状況ではこの治療が限界だ。
明らかに、彼の傷が塞がる速度は遅かった。
自然回復力の低下ーー狂竜症が発症していることを示している。
「治癒の呪文ーーまさか、ヴィスマン伯爵令嬢か!」
「治ってよかった……。恐れながら、第二王子殿下に申し上げます。傷は治しましたが、この状態で戦場に出るのは危険です。これは、かの龍の出すウイルスーー狂竜ウイルスの症状です。治癒力の低下により、この呪文では、今失った血を取り戻すにも数日かかるでしょう。症状が治まるまで、お二人とも、前線に顔を出すべきではございません。」
「なら、どうすればーー。」
「彼はいかがして、私(わたくし)をお止めになったのでしょうか。私の刀があれば、かの龍を眠らせることも、難しくはございません。私(わたくし)の侍女とともに、安全な場所へ、退避なさってください。」
今も殿下は渾沌に呻くゴア・マガラの前に張り付き、私(わたくし)と辺境伯家のアレクサンダー様が攻撃を受けないよう、剣をふるっている。
私(わたくし)の侍女も二刀の短剣をたずさえ加わっているが、二人とも、ときおり傷を受けている。
退避していただきたいが、殿下はこちらを振り返ることをしなかった。
「ヴィスマン伯爵令嬢は、この竜についてご存じだったか。私たちは、その狂竜ウイルスに対処する方法がわからない。つまり、この竜を倒してしまえば、対処方法を研究する手段がなくなる。」
そして淡々と、私(わたくし)の問いに答えた。
私(わたくし)は、否定できなかった。
この世界の技術で、どこまで対処できるかもわからない。
しかし、この世界の倫理観は、現代日本と変わらない。
いっそ渾沌に呻くゴア・マガラを倒して、感染者も全員燃やしてしまおうなどという手段は取れない。
最善を尽くすならば、生かしておくべきだろう。
私(わたくし)は渾沌に呻くゴア・マガラを見上げた。
奴が飛んでいく気配はない。
しかし、このままではアレクサンダー様も危ない。
「私(わたくし)は、ヴェルディライト辺境伯家のアレクサンダー様を治療いたしました。ふたたび命の危険に晒しとうございませんわ。生きて退避できるよう、力をお貸しくださいませ。」
「わかった。」
そう言うと、殿下はあっさりと協力を了承してくれた。
それからは、さすが騎士団長と、私(わたくし)の侍女と、天才魔法使いの私(わたくし)により、あっという間に対策本部に帰還することができた。
周囲の人間が避難し終えると、渾沌に呻くゴア・マガラはどこかに飛び去っていったらしい。
お腹がすいたのかもしれない。
確か、渾沌に呻くゴア・マガラは個体によって食事ができないのだった。
あの子は、無事にお肉を食べられているのだろうか。
そうそう、ここでふと彼のことを気遣ったこのときが、彼を対等に見て、そして大きな感情を抱くきっかけだったのかもしれない。
そして、彼の状態をなんとかするためには、ウチケシの実が絶対に欠かせない。
それを探すのは難しくなかったものの、治療薬を作ることに難航した。
おそらくはこのために、転生特典らしき超頭脳と超魔力を手に入れたのだろう。
それでも、すごく苦労したのだ。
その疲労のせいか、あのときあんな凡ミスをして、今ここで私(わたくし)が伏せることになってしまったのだ。
渾沌に呻くゴア・マガラと結婚したい。