この轟雷の剣聖に祝福を!   作:スルメ文庫

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プロローグ/この終焉に花束を・・・

 弓で矢を引く、人が死ぬ。剣で相手を斬りつける。人が死ぬ。弾丸が脳天に吸い込まれる。人が死ぬ。雷撃が、火炎が、氷刃が、人を殺し続ける。そう、此処は地獄。戦という名の、地獄なのだ。

 

 とても現代的とは言い難い戦の最中、俺は部下を逃がすために殿を務め、神剣と灼雷を振るい続けた。

 もうだいぶ血を流したな。心の臓も穿たれたし、脳天もカチ割られた。首も切られたのを包帯で巻き付けて無理やりくっついてる状態だし、眼だって何時見えなくなるか分からない。どの道、俺はもう死ぬだろう。感想としちゃ、ついに俺の番が回ってきたかというものしか浮かばん。

 

 ・・・だが

 

幸兵衛「だが・・・だが!この惨劇を・・・地獄を作るキッカケとなった貴様らには・・・黄泉路への伴として皆等しく道連れになってもらうぞ・・・!だいたい貴様らが最悪なタイミングでこの地獄を作り上げたせいで俺は親友を引きこもりから脱させるという予定を断念するしかなかったしな!!」

 

 うん、まあ、口にすればなんとも言い難い理由ではないか。だが、この方が俺らしい。

 締まらぬが故、思うが儘にならぬが故に人生というものは面白い!!部下たちや同胞たちは無事に元の世界に帰れたようだしな!!部下を巻き込まずに済むだけ、良しとしようではないか!!

 

 そう思うと俺は神剣を神界へと還した後、自らの拳で目を潰し、その瞬間・・・戦場の全てが消し飛んだのだった。

 ───令和三年七月二日十六時五十五分 黒田幸兵衛 戦死 享年十七

 

 こうして、黒田幸兵衛という男は死んだ。親族一同から憎まれ、毒を盛られ、そして殺されかけたが為に家族を、自らの手で殺めるが他に道が無かった哀れな不遇の少年は、神軍の一大将として立派に成長し最後まで己が役目を果たし、その儚く短い命を散らした。

 幸兵衛が自爆し、彼の生命反応が消失した同日の同時刻、とある少年がナイフを持った暴漢に襲われた幼き少女を庇って死亡したのだが、なんとその少年は奇遇にも黒田幸兵衛の親友だったのである。

 

・・・

 

幸兵衛「ん・・・此処は黄泉比良坂か?」

和真「・・・なんだ此処?」

 

 俺はたしか、戦で部下を逃がしきって自爆したはず・・・詰まりは黄泉比良坂にいるはずだ・・・だが、あの世への道である黄泉比良坂とてもう少し明るいはずだ。てか案内の獄卒たちが居ない時点で違うのは一目瞭然だ。

 

幸兵衛「てかお前和真じゃないか!なんでここに居るんだよ!?」

和真「そりゃこっちのセリフだ幸兵衛!俺は下校中にナイフ持った暴漢から小さい子庇って死んだんだぞ!?」

 

 ちょっと待て。お前もか?お前もなのか?

 

幸兵衛「・・・死んだ?お前もか?」

和真「え?お前もって・・・まさかお前。」

幸兵衛「ああ、俺も部下を逃がした後で戦場で物理的に爆死した。」

 

 そう言うと和真は頭を抱えて呻くようにこう呟いた。

 

和真「・・・マジかぁ・・・」

幸兵衛「スマンが大マジだ。」

 

 いやマジでここは一体どこなんだ?

 

和真「順当にあの世なんじゃないか?」

幸兵衛「いや、冥府はこんな黒一面な場所じゃないぞ。」

 

 議論を続けているとどこか軽薄な声が聞こえてきた。

 

「ここは死者の間よ。」

幸兵衛「!アクア殿!?」

 

 アクア殿が出てきたということは、マジで転生の間なんだな・・・

 

アクア「!?アンタ、幸兵衛!?久しぶりじゃない!」

和真「・・・なあ幸兵衛。この青髪の人と知り合いなのか?」

幸兵衛「ああ。彼女は転生の女神、アクア。神軍異界均衡機関転生部署所属の御方だ。」

和真「・・・そうなのか。」

アクア「ええ!私は係長で偉いんだから!」

 

 和真、言いたいことは分かるぞ。・・・ただ、間違えてもそれ(・・)を言うなよ?泣き喚いて面倒なことになるからな?

 

アクア「それじゃあここから真面目に行くわね、先ず貴方たちにはこれから3つの選択肢があります。1つ目は天国に行くこと。2つ目は地球に転生すること。そして3つ目は異世界に記憶を保持したまま転生すること。一つ一つメリットとデメリットを言うからよく聞いてくださいね。」

アクア「まず天国だけど、メリットは平和ってところですね。・・・正直、お喋りしかできない退屈な場所だからあまりオススメはしませんね。」

和真「魂の墓場じゃないですか・・・」

アクア「端的に言えばそうですね。実際、これをオススメするのはかなり波乱万丈な生き方をした老人くらいですからね・・・。そして転生は記憶を失って別の人間として転生することなんですけど、これも正直いってメリットはそこまで大きくないんですよね・・・まあ、天国よりかはマシですから基本的には此方をオススメしていますね。」

アクア「さて、ここからが本題なのですが、最後の選択肢として剣や魔法が活躍する、ザ異世界みたいな所に魔王を倒すための勇者候補として転生してもらうことです。この場合、肉体と記憶は転生しても引き継げますし此方もサービスとしてその地の言語を理解できるようにします!更に転生特典で強力な武器やスキルを渡せますよ?」

 

 そう聞くと、和真は悩む仕草を見せた。

 

幸兵衛「和真、どの道異世界転生以外は詰み同然だし、異世界転生にしないか?」

和真「・・・まぁ、それもそうだな。」

アクア「じゃあ、こちらのパンフレットからお選びくださいね!」

 

 そして、俺たちは武器やスキルを一通り見てそれぞれ決めた。

 

和真「この、スキル詰め込みセットって奴でいいですかね?」

アクア「勿論大丈夫よ!」

幸兵衛「なら俺はその土地の通貨をくれないか?」

アクア「へ?」

和真「幸兵衛いいのか!?こんなにスゲェ武器とかあるのに・・・」

幸兵衛「いいんだよ。どの神器を選んでも、俺が使いこなせる未来が見えないからな。それなら、転生して材料から見繕った方がいい。その為にもお金が欲しいんだ。」

アクア「なんて言うか・・・相変わらず変わってるわね・・・」

和真「こういうやつなんですよ、幸兵衛は。」

 

 コイツら、俺をどんな目で見てるんだ?

 

アクア「しょうがないわね〜・・・なら、頑張った分も加味して500万エリスくらい渡すわ。さっ!転生特典も決まったところで、そこに乗りなさい!」

アクア「あなたたちが、魔王を討伐することを心より願っているわ!」

 

 アクア殿がそういうと、俺たちの意識が薄くなっていき、異世界に転生されるのだった。

 

・・・

 

 全く、かの臨戦流の八極の一人がまさかあんな変わり者だったなんて・・・まあ、英雄なんて癖があって当然といえばそうだけど。

 大体、神器って作るの大変なのよ!?この間作った改造版グラムなんて作るのに3年かかったんだから!・・・といってもあの子は物作りが得意で私以上に手先も器用だから材料さえあれば作れそうだけど。

 

アクア「とりあえず、テキトーに引き継ぎやって休みましょうか!」

 

・・・

 

 この時の手続きと引き継ぎををテキトーにやったことにより、アクアはとんでもないヘマを犯していたのだが、この時の彼女は気付いていなかった。そしてそのヘマで処分が下ることになることなど、彼女は思ってもみなかったのだった。




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