マジカル・リテラシー【Magical Literacy】   作:自認コメディ

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説明回ですまない……


5話 入学式に校歌流しても誰も歌えない

 私、友淵(ともぶち)ハナコ!

 

 ハナコって名前はなんだか古臭くて恥ずかしいから、中学校の友達には苗字からとったあだ名で「もぶち」って呼ばれていたよ! えへへ。

 

 そんな私も今日から高校生。それもただの高校じゃなくて、全国から魔法少女の適性を持つ子が集まる高校だ。

 名前は『群馬特異災害……』なんだっけ? とにかく、そんな感じの高校!

 

 私は普通で、明るさしか特技がなかったけど、魔法少女の適性があった。

 

 運命だと思った。

 

 今の生活でも十分に幸せだった。けど、特別な魔法少女になれば、私はもっと私を好きになれる。そう思って魔法少女になることを選んだ。

 そうして私は、花の魔法少女『タンポポの魔法少女』になったのだ。

 

 ……なんだか「モチーフも普通」ってどこかから言われてる気がする。

 

 さて、今は入学式の真っ最中。

 途中で「校歌斉唱」なんて言われて、まだ歌えない校歌が流れてきたときは焦ったけど、声入りだったので安心した。一応、合わせられそうなところは声を出したけども。

 

「理事長祝辞。大戸谷(おおとや)アマネ」

 

 理事長って言われて、おじいちゃんが出てくると思ってたけど、出てきたのは女の人だった。しかも、かなり若い。

 着物を着ていて落ち着いた雰囲気だけど、盛っても30歳にはいかなそうな人だ。

 

「新入生の皆(みな)、入学おめでとう。ご紹介にあずかった、理事長の大戸谷アマネじゃ」

 

 声も落ち着いている。見た目とアンバランスな古風な口調が、なんだか神秘的だった。

 理事長はゆっくりと講堂を見渡した。

 

「式も長くなってきた。そろそろ飽きてきた者もおるじゃろうが、もうしばし耳を貸してくりゃれ。今日は、この学園が生まれた理由について話そうと思う」

 

 学園が生まれた理由?

 

「かつて、この地では大規模な特異災害が起こった。当時は魔法少女を支援する制度も整っておらず、今とは比べものにならぬほど多くの犠牲が出た。魔法少女とて、その例外ではなかった」

「お主らよりも幼い少女が戦場へ駆り出され、傷つき、命を落とした。妾(わらわ)も数多(あまた)の少女を見送った。手の届く限りは守ったつもりじゃったが……すべてを救うことはできなんだ」

 

 そこで一度、言葉が途切れた。

 

 私は思わず、膝の上で握っていた手に力を込めた。

 魔法少女になる前から、危険な仕事だとは知っていた。それでも、私より小さな子まで戦っていたなんて。

 

「魔法少女にしかできぬことがある。それは今も変わらぬ。じゃが、特別な力を持って生まれたからといって、少女が学ぶ機会を奪われてよい道理など、どこにもない」

「普通の子供と同じように学び、友と笑い、時には失敗し、将来を思い悩む。そんな当たり前の時間を守りたかった。魔法少女である前に、一人の人間として生きられる場所を作りたかったのじゃ」

「そうして、この学園は生まれた」

 

 私は魔法少女になりたくて、ここに来た。

 でも、普通の高校生として過ごす時間も大切にしていいんだ。そう考えると、なんだか嬉しくなった。

 

「無論、ここは魔法少女だけの学園ではない。普通科で学ぶ者も、技術を磨く者も、魔法少女として活動する者も、皆等しくこの学園の生徒じゃ。互いに異なる道を歩む者が、同じ学び舎で時を過ごす。そのことにも、きっと意味があると妾は思う」

「まだまだ歴史の浅い学園じゃ。制度に不備もあろう。思いどおりにならぬこともあるやもしれぬ。そんなときは、どうか声を上げてほしい。学園とは、お主らを型にはめる場所ではない。お主らのためにある場所なのじゃから」

「どうか、実りある三年間を過ごしてほしい。お主らの行く末に、幸多からんことを」

 

 理事長は静かに頭を下げた。

 

 なんだか涙ぐみそう。理事長、いい人なんだなぁ。

 この学校に来てよかった。まだ入学式も終わってないけど、そんなふうに思えた。

 

 講堂に拍手が響く。私も精いっぱい拍手を送った。

 そして、式は次の進行へ移った。

 

「新入生代表挨拶。立花アカネ」

「はい」

 

 落ち着いた、それでいてはっきりと耳に届く返事が講堂に響いた。

 

 気の強そうな少女が登壇する。

 私が思わず「気が強そう」と感じたのは、その切れ長な瞳のせいだろうか。彼女はまっすぐ前を見つめ、ゆったりとした足取りで演台へと進んでいく。

 中央まで進むと、こちらへ向き直り、丁寧にお辞儀をした。

 思わず私も頭を下げてしまったけど、周りは誰もしていなかったかも。

 

 は、恥ずかしい……。

 

 壇上の彼女は、静かに話し始めた。

 

「本日は、このような入学式を開いていただき、誠にありがとうございます。私たち新入生は、それぞれの夢や目標を胸に、今日この日を迎えました」

「高校生活は、その夢に向かって努力を重ねる三年間になると思います。授業や部活動、魔法少女科の方は魔法少女としての活動、ですね」

 

 そう言って彼女は微笑んだ。

 ときどき顔を上げて、語りかけるように話す彼女につられて、私の口元にも小さな笑みがこぼれる。

 周りを見ると、私のほかにも彼女にほだされている人がいるみたい。

 

「それらを通じて仲間と切磋琢磨(せっさたくま)し、充実した毎日を送りたいと思います。先生方、諸先輩方のご指導ご鞭撻(べんたつ)を賜りますよう、お願い申し上げます」

「以上で、新入生代表の挨拶とさせていただきます」

 

 すごいなぁ。

 本当に、少し前まで中学生だったのだろうか。私と同じ年齢なんて信じられないほど、しっかりした子だった。

 

 思わず、私の気も引き締まる。

 

 ふんっ!

 

 ……そういえば、魔法少女のお仕事で何度か会ってたポ(・)ル(・)ッ(・)ク(・)ス(・)ちゃん、来てるのかな?

 

 

*

 

 

 理事長がご立派すぎて、もうイジれなくなりそう。

 ご立派ァ!

 

 前々から思ってたけど、すっごいいい人だ。

 

 思えば、病院では魔法少女になることを強要せず、学園という進路を提示しただけだった。

 おそらく、僕が魔法少女にならず、ただの適性持ちであることを選んでも、受け入れてくれたと思う。

 

 ただ、もし僕が魔法少女になったとしても、別の高校へ進学すれば、秘密を抱え込んで潰れてしまうかもしれない。

 そんなことまで心配して、入院したその日に飛んできてくれたのだろう。

 

 お金が欲しかった僕に、中学生でもできる魔法少女のアルバイトを紹介してくれたし、高校でも魔法少女の仕事を続けるならと、いろいろ便宜(べんぎ)を図ってくれた。

 

 その一つが、学籍の問題だ。

 

 僕には二つの学籍が用意されている。

 一つは、普通科の『来島(くるしま)リツ』。

 もう一つは、学園所属の魔法少女として活動する、魔法少女科の『ポルックス』。

 

 要するに、男子高校生の僕と、魔法少女の僕は、学園の中では別人として扱われるわけだ。

 

 これによって、僕の正体が露見することを防ぎ、珍しい男の魔法少女として世間から奇異の目で見られずに済むようにしてくれた。

 

 僕は案外図太い方だと自覚しているが、変な注目を浴びるのは嫌だ。知らない人から声をかけられたり、陰口をたたかれたりするのは、できれば御免こうむりたい。

 

 ちなみに、授業は普通科に出席していればいいらしい。

 魔法少女科の方は、学園所属の魔法少女として仕事をしていれば問題ないように調整してくれているそうだ。魔法少女を辞めたくなったら、そちらの学籍だけ除籍することもできるという。

 

 至れり尽くせりである。

 

 ただ、一つだけ誤算があった。

 

 てっきり魔法少女の適性があれば推薦かなにかで入学できると思っていたのに、普通に学力試験があったのだ。

 しかも、気付いたのは出願締切ギリギリ。

 

 危うく、生徒名簿にだけ名前のある謎の幽霊生徒を残して、本体が入学できないところだった。

 

 危なかった。マジで。

 

 まあ、そんなこんなで無事に入学できたわけだ。

 

 記念すべき入学初日。今日くらいは夜ご飯を豪華にしてもいいだろう。

 

 定食屋でばくだん丼だな。




かりんとう抹茶アイスがオススメです。
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