マジカル・リテラシー【Magical Literacy】 作:自認コメディ
待ちに待った新作ゲームのサービス開始日である。
情報が公開された一年前から、サービス開始日に一緒に始めようと約束していたので、楽しみにはしていたのだが……「高校生になったらVCする」なんて言ってしまったせいで、同時にVCも解禁しなければいけなくなった。
クソっ、年齢も徹底して偽るべきだった。
しかし、魔法少女になったのも、クソ高い最新ゲーム機を買ったのも、すべてはこのゲームのためである。
あー、語彙がクソに侵食されている。リセットリセット。清楚でーす。
やりたいのにやりたくない。快不快の法則の矛盾だ。脳がバグって気分が悪くなってきた。
体調不良だな、うん。今日は見送ろう!
『今日はおやすみしm──
メッセージを入力している途中で、新しいメッセージが届いた。
トモエ 19:50
はやくこい
僕が怖気づくのを察していたかのように、釘を刺された。長い付き合いなだけあるな、はは。怖いよぉ……。
「大魔王からは逃げられない」という幻聴すら聞こえてくる。知らなかったのか……?
……いい加減、腹をくくろう。
相談に乗ってくれたモブ子だって「いい変化になる」と言っていた。トモエさんやkonnさんのことは信頼しているし、これからも仲良くしたい。
ふぅ……よし!
満を持して、僕は通話開始のボタンを押した。
『おそい』
『VCへようこそ~』
声は初めて聞いたが、最初に毒舌を吐いてきた高い声がトモエさんで、後のなんかモコモコした落ち着いた声がkonnさんだろう。なんとなくイメージ通りで安心する。
僕は意を決して──テキストメッセージを送った。
『まろは聞き専なんでよろ^^』
『あ?』
き、危機管理ーーーッ!!!
反射的に両手の親指と人差し指で四角いフレームを作り、片目でその向こうを覗き込む。
その瞳に満天の星空が広がり、ひときわ輝く黄金の一等星が瞬いた。
──変身。
星明かりが全身を包み込み、鮮やかな橙色の髪がさらりと流れる。漆黒の衣が身体を覆い、左肩から純白の布が舞い降りた。最後に黄金の星飾りが輝き、光が弾ける。
わずか一瞬。僕は魔法少女に変身していた。
『冗談っ! じゃないですか! ヤダナー↑』
『え~、イメージと声違う』
『ふふ、遂に喋ったね』
あれ? いつの間にか変身してる。
いやしかし、都合がいいぞ!
当たり前だが、僕は男なので変身前後で性別が変わる。性別が変わると、声帯も変わる。つまり、変身後の声で通話をすれば、プライバシーは保護される。
セーフだ! 完璧なネットリテラシーだな!
これなら普段通りに話せそうだ。
『まろちゃん女の子だったんだ~』
『なんで表記♂にしてたの?』
『ネットリテラシーだよぉ』
『徹底しすぎでしょ』
『ふはは』
トモエさんがツッコんで、konnさんが笑う。テキストチャットのときと同じ、いつものやりとりだ。
*
それからはチュートリアルを一緒に始めて、モンスターを倒して、装備を整えて、気づけば日付が変わるまで遊んでいた。
『じゃあ次は続きからやろうね~』
『うん!』
『おやすみんみんみんみん──』
『みんみんみんみん──』
『共鳴すんな』
ジッ、ジジジッ……。
セミファイナル、へへへw
ジー、ジジジージー! ジジー!
『じゃ、おやすみ』
トモエさんの言葉でVCは終わった。
結構、楽しかったなぁ……。
ただ声を出して話しただけで、トモエさんやkonnさんと以前よりも仲良くなれた気がする。
変身を解除して、元の姿に戻る。
あっ、性別の勘違い直してないや。
……ま、男か女かなんて、ネッ友だったら些細な違いか。
ふぁ、もう寝よう。すやぁ。