剣姫に弟がいるのは間違っているだろうか 作:覚醒悟飯はかっこいい
「気をつけてね、姉さん」
50階層の拠点。僕は、カドモスの泉へと泉水を汲みに向かう遠征隊の背中を見送っていた。
今回はディアンケヒト・ファミリアからの高額な報酬付きの依頼ということもあり、確実に泉水を回収するため、姉さんやレフィーアさんたちの隊だけでなく、団長であるフィンさんもまた別の隊を率いて同時に拠点を離れることになったのだ。
「ん……大丈夫。ライスは、リヴェリアの側を離れちゃダメだよ」
姉さんはいつも通り僕の頭をひと撫ですると、フィンさんたちと共に闇の奥へと消えていった。
――だが、二つの主力が不在となった拠点の平穏は、長くは続かなかった。
「地面が揺れている……? 下の階層からか!?」
僕が足元の不気味な振動に気づいた、その瞬間だった。51階層へと続く道から、地響きを伴って、おぞましい数の見たこともないモンスターの群れが這い上がってきた。
二本の触手のような腕を持つ、醜悪な芋虫型の未知のモンスター。誰もその生態を知らない、――のちに『ヴィルガ』と呼称される巨蟲が、まるで『怪物の宴(モンスター・パーティー)』を思わせる津波となって拠点に襲いかかってきたのだ。
「総員、戦闘配置! 初見の魔物だ、各自警戒を怠るな!」
フィンさんに代わり拠点の指揮を執るリヴェリアさんの、張り詰めた怒声が響く。
前衛の戦士たちが迎撃のために刃を振るう――が、次の瞬間、悲鳴が響き渡った。
「ギャァァァッ!? な、なんだこれ! 剣で斬ったら、傷口から肉を溶かす液体が――っ!?」
「しまッ、距離をとれ! 迂闊に近接戦闘を仕掛けるな!!」
その魔物は動きこそ鈍重だが、口から最硬金属であるアダマンタイトすら容易に溶かす強力な溶解液を吐き出すだけでなく、体表が柔らかいくせに、刃物で傷をつければそこから致命的な溶解液が溢れ出し、万が一破裂させようものなら周囲にそれを撒き散らす『生きた爆弾』だったのだ。上級魔法や魔剣による遠距離攻撃でしか、安全に処理できない。
「ライス、前に出るな! お前の風では周囲を巻き込む!」
リヴェリアさんの鋭い制止が飛ぶ。
僕はとっさに『エアリアル』の風を全身に纏っていた。魔力の風で出来た防壁である以上、敵の溶解液がどれだけ激しくとも、僕自身が溶かされることはない。だからといって僕が至近距離でヴィルガを斬り、破裂でもさせれば、僕の『エアリアル』の猛烈な暴風がその致死性の溶解液を四方八方に激しく吹き飛ばし、周囲で戦う仲間たちを巻き添えにして溶かしてしまう。
仲間を危険に晒すわけにはいかず、前衛でありながらまともに手を出せない僕は、ロングソードを握りしめたまま奥歯を噛み締めるしかなかった。リヴェリアさん率いる魔導士部隊が必死に広範囲攻撃魔法を放つが、下の階層から未知のモンスターは大量に湧き出てくる、その物量に拠点の防衛線は一歩ずつ削られ、包囲網が狭まっていく。
「ライス!!」
その時、異変を感じ猛スピードで引き返してきた姉さんやレフィーアさんたち、そしてフィンさんたちの隊が戦場へと合流した。
遠征隊の最高戦力が揃ったことで、幹部たちの強力な遠隔攻撃やレフィーアさんたちの魔法が炸裂し、僕たちは息をもつかせぬ攻防の末、何とか視界を埋め尽くしていた未知のモンスターの大群を殲滅することに成功した。
全員が最悪の危機を脱し、安堵の息を吐こうとした、まさにその瞬間。
ズゥゥゥン……ッ!!
下の階層へ続く道から、最後にゆらりと姿を現した『それ』を見た瞬間、僕たちの全身に冷たい戦慄が走る。
「な……んだ、あの大きさは……っ!?」
リヴェリアさんの戦慄した声が聞こえる。
そこにいたのは、優に6メートルを超える巨体を持った、人間の女性のような姿をした異形のモンスター。周囲の個体とは明らかに一線を画す、圧倒的な質量と悍ましいプレッシャーを放つ『女王型』とも呼ぶべき存在だった。
その巨体からは、花粉のように煌めく粒子が周囲に撒き散らされ、直後に激しい爆発を引き起こして拠点の岩肌を吹き飛ばしていく。さらに最悪なのは、あの巨体の中に先程の巨蟲型モンスターを遥かに超える大量の溶解液を溜め込んでいることが容易に想像できることだった。迂闊に攻撃して肉体を損壊させれば、周囲一帯が致死性の溶解液の海に沈み甚大な被害が出るだろう、それを誰よりも早く理解したフィンさんは撤退を指示する。。
「速やかにキャンプを破棄、最低限の物資を持ってこの場から離脱する。リヴェリア達にも伝えろ」
「待てよ、フィン。それじゃああいつはどうすんだよ!?」
「あんなの放って置いたらとんでもない事になるかもしれないんだよ!?」
フィンさんの指示にベートさんとティオナさんが噛みつく。当然の反応だ、ロキ・ファミリアはオラリオ最大派閥の一つだ。
そんな彼らが苦戦するようなモンスターを放置すれば、どれだけの被害がでるか想像も付かない。
だが、そんなことはフィンさんが一番良くわかっている。
「僕も大いに不本意だ。…でもあのモンスターを必要最低限の被害で始末するにはこれしかない。月並みの言葉で悪いけどね」
階層主にも匹敵するあのサイズからして溢れ出した腐食液を躱すのは困難であり、それができるのは風の付与魔法で腐食液が当たらないアイズとライスだけである。しかし、Lv.4のライスではあのモンスターと戦わせるのには不安が残る、そう判断したフィンさんはだからこそ、非情な決断を下す。
「アイズ。あのモンスターを討て」
「……っ!?」
その言葉を聞いた瞬間、僕の胸は激しい動揺と恐怖で満たされた。
爆発の粒子を操り、一歩間違えれば大量の溶解液が噴き出すあの未知のモンスターと、姉さんを一人で戦わせるなんて。風の魔法で爆発を退け、溶解液を跳ね飛ばせるのは姉さんしかいないと分かっていても、心配でたまらなかった。
「待ってください、フィンさん! 姉さん一人じゃ危険すぎます! 僕も残って――」
「ダメだ、ライス、Lv.4の君じゃアイズの邪魔になる」
フィンさんの有無を言わせぬ厳しい声が、僕の言葉を遮る。
「ん……ライス、大丈夫。私は、負けないから」
アイズ姉さんは僕を安心させるように、小さく微笑むと、全身に風を纏い、巨大な女王型へと単身突撃していった。姉さんの無事を必死に祈りながら、僕は自分の無力さに奥歯を噛み締め、リヴェリアさんたちに引っ張られるようにして撤退の途についた。
◇◇◇
姉さんによって女王型は討ち取られ、無事に合流を果たした僕たちは、上層へと帰路についていた。
しかし、中層の最下層である第17階層へと差し掛かった時、ダンジョンはまたしても僕たちに予想外の事態を突きつけてきた。
「ウオオオオオオオオンッ!!!」
17階層の広い通路を埋め尽くしていたのは、文字通り『群れ』を成した、尋常ではない数のミノタウロスの大軍勢だった。
「怯むな! 蹴散らすぞ!」
本来ならば下位団員に経験を積ませるため、フィンさんや姉さんたち幹部が戦うことは無いのだが、今回は数が非常に多い上に、先程のイレギュラーによる疲労もあり、幹部達第一級冒険者も参戦することになった。姉さん達のおかげで瞬く間に大半のミノタウロスが討ち取られたがその時、生き残った数十頭のミノタウロスたちの様子が、明らかに変化した。
「ブルゥゥゥッ……!?」
怪奇な咆哮を上げたミノタウロスたちは、幹部たちの絶対的な強さを前にして、本能的な恐怖を抱いたのか。
次の瞬間、信じられないことに、残った数十頭のミノタウロスたちは一斉に背を向け、猛スピードで逃げ出し始めたのだ。
「「「えええええっ?!」」」
「な……っ!? モンスターのくせに、逃げてんじゃねぇ!!」
その異様な光景に、僕は驚き思わずあっけにとられ、ベートさんの怒鳴り声で正気に戻ると同時に激しい焦燥感に襲われる。
「マズい……! あの数のミノタウロスに逃げられれば、何も知らない冒険者達に被害がでる!!」
フィンさんの顔から余裕が消え、緊迫した表情に変わる。
もしあの数のミノタウロスの大群が、何も知らない冒険者たちの元へなだれ込んだら――待っているのは、一方的な蹂躙だ。
「逃がすな! 追うぞッ!!」
フィンさんの怒号が響き渡り、僕たちは慌てて走り出し、凄まじい勢いで上層の方へ逃げ去っていくミノタウロスの群れを血相を変えて追いかけ始めた。
ダンまちの知識が中途半端なせいで、原作にあったことなのか、それとも二次創作オリジナルなのか分からなくて色んなダンまちの二次創作小説を読み漁っていた。
あと、ドラゴンボール見直してるんですけど、やっぱりいつまでたっても面白いですね。
正直、妹は小さい頃から見ているものが、プリキュア→ドラマ→韓流ドラマという感じで変わってるんですけど、作者はドラゴンボール→七つの大罪→転スラ→ワンパンマン→ドラゴンボールで何にも成長してないんですよね、まあ、男なんて皆こんなもんでしょ。