誕生秘話 アソビ★まわり隊!   作:ソッチ

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第2話 交差する運命

〜鈴鳴つづり〜

 

「ふんふんふ〜ん♪」

 

新幹線を降り、栃木の地に足を踏み入れた私は、鼻歌まじりに黒いスーツケースを引いていた。

 

「いや〜、それにしても大きな荷物ですねぇ。これを届けるだけで五千万円……!」

 

思わず頬が緩んでしまう。

 

今回の依頼は、東京から栃木まで、この黒いスーツケースを運ぶこと。報酬は先払いの一千万円に、届け終えた後の四千万円。合計五千万円という、今までにない大仕事だ。

 

「こんなにおいしいお仕事、逃すわけにはいきませんよねっ!」

 

私はスーツケースの持ち手を握り直し、目的地へ向かって歩き出した。

 

……ただ、ひとつだけ気になることがある。

 

この荷物、いったい何が入っているんだろう?

 

依頼主からは中身について一切説明されていない。開けることも禁止されているし、届け先についても必要最低限の情報しか教えられていない。

 

まあ、運び屋という仕事をしていれば、こういう依頼も珍しくはない。

 

「中身を知らないほうが、余計なことを考えずに済みますしねぇ」

 

そう呟き、私は再び歩き始めた。

 

そのときだった。

 

――ピピッ。

 

小さな電子音が、少し離れた場所から聞こえた気がした。

 

私は何気なく周囲を見回す。

 

人通りはそれなりにある。特に変わった様子もない。

 

「……気のせいですかね?」

 

そう思って歩き出したものの、背中に妙な視線を感じる。

 

誰かに見られている。

 

しかも、ただの通行人ではなさそうだ。

 

私は歩く速度を変えず、ショーウィンドウに映る景色をさりげなく確認した。

 

少し離れた場所に、こちらを気にしている少女の姿が映っていた。

 

「なるほどなるほど……」

 

私は小さく笑う。

 

どうやら、今回のお仕事は荷物を届けるだけでは終わらないらしい。

 

〜宙科そぴあ〜

 

「反応が強くなってる……!」

 

私は手元のレーダーを見つめ、思わず声を上げた。

 

東京を出発してから追い続けていた謎の信号。その反応が、栃木に入ってから急激に強くなっている。

 

間違いない。

 

この近くに、例の兵器がある。

 

「ふふっ……! やっぱり本当に存在していたんだね!」

 

私は興奮を抑えきれず、レーダーを何度も確認した。

 

今回調べているのは、宇宙人から提供された技術をもとに開発されたと噂される兵器だ。

 

もし本当に地球外の技術が使われているのなら、そこには私の知らない科学が詰まっているはず。

 

一体どんな仕組みなんだろう?

どんなエネルギーを使っているんだろう?

どうやって動いているんだろう?

 

考えれば考えるほど、知りたいことが増えていく。

 

「絶対に、この目で確かめてみせるよ!」

 

レーダーの反応を頼りに進んでいくと、ひとりの少女が目に入った。

 

頭には特徴的な角。手には黒いスーツケース。

 

そして、その荷物からは、レーダーが示しているものと同じ反応が出ている。

 

「……見つけた!」

 

私は少女の後を追い始めた。

 

もちろん、いきなり声をかけるつもりはない。

 

まずは荷物の正体を確かめたい。あの子が何者なのかも気になるところだ。

 

「ふふふ……待っててね、未知の科学技術!」

 

〜鈴鳴つづり〜

 

やっぱり、ついてきている。

 

さっきから距離を保ちながら、私の後を追ってくる少女。どうやら、こちらに気づかれていないと思っているようだ。

 

「うーん……どうしましょうかねぇ」

 

人通りの多い場所で騒ぎを起こすわけにはいかない。

 

それに、相手が何者なのかも分からない。警察関係者なのか、それとも荷物を狙っている別の依頼人なのか。

 

いずれにせよ、このまま目的地へ向かうのは少し面倒そうだ。

 

私は周囲を見渡した。

 

目に入ったのは、建設途中の大きな建物。まだ工事が終わっていないらしく、周囲には資材が置かれ、建物の上部には足場が組まれている。

 

「……ここなら、ちょうどよさそうですねっ」

 

私は進路を変え、建設現場のほうへ向かった。

 

もちろん、許可なく入るのはよくないことだ。

 

でも、今は少しだけ事情が違う。

 

相手が追ってくるのなら、こちらにも場所を選ぶ権利くらいあるだろう。

 

建物の中へ入ると、私はスーツケースをそっと脇に置いた。

 

そして、足音が近づいてくるのを待つ。

 

「……来ましたね」

 

姿を現したのは、先ほどから私を追っていた少女だった。

 

「あれ? 気づいてたの?」

 

少女は少し驚いたように目を丸くした。

 

「ええ。ずっと後ろにいらっしゃいましたから」

 

「そっかそっか! いや〜、尾行って難しいねぇ!」

 

ずいぶんと気さくな反応だ。

 

私は相手の様子をうかがいながら、ゆっくりと尋ねた。

 

「それで、私に何かご用ですか?」

 

「そのスーツケースについて、ちょっと聞きたいことがあるんだ!」

 

「荷物について、ですか?」

 

「うん! それ、どこで手に入れたの? 中には何が入ってるの?」

 

なるほど。

 

やっぱり、この荷物が目的らしい。

 

「申し訳ありませんが、お答えできません。こちらは大切なお届け物ですので」

 

「えーっ! ちょっとくらい教えてくれてもいいじゃん!」

 

「お仕事ですからねぇ」

 

少女は少し考え込むように腕を組んだ。

 

そして、腰に装着していた装備から、小型の光線銃を取り出す。

 

「それなら、ちょっとだけ調べさせてもらうね!」

 

「……あらあら。そういうことですか」

 

私も荷物から手を離し、身構えた。

 

どうやら、話し合いだけで済ませるのは難しそうだ。

 

〜宙科そぴあ〜

 

「わわっ! やっぱり持ってるんだ!」

 

目の前の少女が取り出したものを見て、私は思わず声を上げた。

 

彼女の動きは素早い。見た目からは想像できないほど身軽で、こちらの様子をよく観察している。

 

ただの運び屋ではなさそうだ。

 

「それじゃあ、こっちもいくよ!」

 

私はホバーブーツを起動させ、地面から身体を浮かせる。

 

同時に光線銃を構えた。

 

「おおっ! 空を飛ぶ靴ですか! 便利そうですねぇ!」

 

「でしょでしょ! これは私の自信作なんだ!」

 

「へぇ〜。それはぜひ、あとで詳しく見せていただきたいですねっ」

 

「えっ、興味あるの!?」

 

「もちろんです! でも――」

 

私は身をひるがえし、彼女との距離を取った。

 

「今はお仕事中なので!」

 

次の瞬間、彼女の姿が視界から消えた。

 

「えっ!?」

 

上だった。

 

彼女は驚くほど高く跳び上がり、建物の足場へと軽々移動していた。

 

「うわぁ! すごいジャンプ力!」

 

感心している場合ではない。

 

私はホバーブーツを操作し、彼女の動きを追う。

 

建設途中の建物には、まだ固定されていない資材や、複雑に組まれた足場がいくつもある。

 

彼女はそれらを利用するように、次々と位置を変えていく。

 

「ふふっ。こういう場所は、なかなか得意なんですよ!」

 

彼女の声が上から聞こえた。

 

直後、建物のどこかで大きな音が響いた。

 

私はとっさに距離を取り、頭上を見上げる。

 

揺れた資材が、彼女のいた場所から大きく動いていた。

 

「わわっ! 周りのものまで利用するんだ!」

 

単純に素早いだけじゃない。

 

この場所の構造を見て、どう動けば有利になるのかを考えている。

 

「これは……面白い相手だね!」

 

私はレーダーを確認した。

 

スーツケースからの反応は、すぐ近くにある。

 

あの荷物を確かめるまでは、ここで引き下がるわけにはいかない。

 

〜鈴鳴つづり〜

 

「おやおや、なかなかしぶといですねぇ」

 

相手の少女は、空中を自在に移動しながら私の動きを追ってくる。

 

あの靴も、手に持っている光線銃も、普通の道具ではない。

 

なるほど。依頼主が隠していた荷物の中身とも、何か関係があるのかもしれない。

 

「そろそろ、教えていただけませんか? あなたは何者なんです?」

 

「私は宙科そぴあ! 科学と宇宙が大好きな、天才科学者だよ!」

 

「おおっ! ご丁寧にありがとうございます!」

 

「そっちは?」

 

「私は鈴鳴つづり。荷物を届ける運び屋ですっ!」

 

「運び屋さんなんだ! じゃあ、やっぱりそのスーツケースが目的なんだね!」

 

「お仕事の内容は秘密です♪」

 

「えーっ!」

 

会話は弾んでいるように見えるけれど、互いに譲る気はない。

 

私は足場から別の場所へ跳び移り、そぴあさんの視線をかわした。

 

けれど、彼女もすぐに追いついてくる。

 

「うーん……これは長引きそうですねぇ」

 

そのとき。

 

建物の外から、やけに大きな声が響いた。

 

「ちょっとちょっとー!! そこの二人ー!!」

 

私とそぴあさんは、同時に動きを止めた。

 

「えっ、誰?」

 

そぴあさんが声のしたほうを振り返る。

 

建物の入口に、ひとりの少女が立っていた。

 

明るい表情に、警察官らしい装備。そして、こちらに向かって大きく手を振っている。

 

「いや〜、ようやく見つけましたよ! まったく、こんなところで何をしてるんですかねぇ!」

 

少女は、こちらの状況などお構いなしに、ずかずかと建物の中へ入ってくる。

 

「えーっと……そちらのお二人! ちょーっとお話を聞かせてもらってもいいですか?」

 

その胸元には、警察の身分証が見えた。

 

「私は百灯キョーコ! 警察官です!」

 

彼女は満面の笑みで名乗った。

 

「……あちゃー」

 

私は思わず呟いた。

 

どうやら、面倒なことがさらに増えてしまったらしい。

 

そして、私たち三人はまだ知らない。

 

この出会いが、私たちの今後を左右する大きな騒動の始まりになることを。

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