誕生秘話 アソビ★まわり隊!   作:ソッチ

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第4話 青き炎と黒いスーツケース

〜熱千めら〜

 

「えーっと……お主ら、何か困りごとかの?」

 

わしがそう尋ねると、三人の少女は一斉にこちらを見た。

 

「そのスーツケース、返してもらえませんかー!」

 

頭に角の生えた少女が、真っ先に声を上げた。

 

「待って! その荷物から出ている信号を調べたいんだ!」

 

光る靴を履いた少女が続く。

 

「はいっ! その前に、警察官として荷物の確認をさせてもらいます!」

 

最後の一人は、警察官らしき格好をしておる。

 

……ふむ。

 

どうやら、三人ともこの黒い箱に用があるようじゃ。

 

「これはお主らの荷物なのか?」

 

「はいっ! 私が届けるお仕事を引き受けたものです!」

 

「私は中身の信号を調べたいんだ。少しだけ確認させて!」

 

「私は警察官ですからね! 怪しい荷物をそのまま見逃すわけにはいきません!」

 

三人の言い分を聞き、わしはスーツケースを見下ろした。

 

なるほど。事情はそれぞれ違うらしい。

 

「では、誰に渡せばよいのじゃ?」

 

「私にお願いします!」

 

「いや、まずは調べさせて!」

 

「いえいえ、警察で確認するのが先です!」

 

三人が同時に手を伸ばしてきた。

 

「お、おおっ!?」

 

わしは慌ててスーツケースを抱え直す。

 

これはまずい。

 

誰か一人に渡したところで、残りの二人が納得するとは思えぬ。

 

「わしは餃子を食べに来ただけなのじゃ。こんな騒ぎに付き合っておる暇はない!」

 

「えっ?」

 

三人の視線がこちらに集まる。

 

「さらばじゃー!」

 

わしはスーツケースを抱え、その場から走り出した。

 

〜鈴鳴つづり〜

 

「ああーっ! 待ってくださーい!!」

 

私はすぐさま後を追った。

 

せっかく栃木まで運んできた荷物を、ここで失うわけにはいかない。

 

「そこのお姉さん! それ、私のなんですー!」

 

「知らぬ知らぬ! わしは関わりとうないのじゃー!」

 

めらさんはスーツケースを抱えたまま、人通りの少ない道へと駆けていく。

 

見た目以上に足が速い。しかも、荷物を持っていることを感じさせない身軽さだ。

 

「むむっ、なかなかやりますねぇ!」

 

私は地面を蹴り、大きく跳び上がった。

 

建物の低い屋根を越え、進行方向へ回り込む。

 

「今度こそ、捕まえましたよっ!」

 

「なぬっ!?」

 

めらさんが急停止する。

 

私は着地と同時に手を伸ばした。

 

しかし、めらさんは身体をひねってその手をかわすと、すぐさま反対側へ走り出した。

 

「おおっと!?」

 

「そう簡単には捕まらぬぞ!」

 

そのとき、横から光が走った。

 

「わっ!」

 

私は身をひねって光線を避ける。

 

撃ってきたのは、空中を移動していたそぴあさんだった。

 

「ごめん! でも、そのスーツケースは調べさせてもらうよ!」

 

「そぴあさん! 今は私が先です!」

 

「順番なんて決まってないでしょ!」

 

「だから私の荷物なんですー!」

 

三人の主張が交差する。

 

どうやら、誰も引くつもりはないらしい。

 

私は二人の位置を確認しながら、めらさんを追った。

 

できれば大事にはしたくない。

 

けれど、荷物を取り戻すためには、こちらも手を抜けなさそうだ。

 

〜宙科そぴあ〜

 

「待って! その荷物から出てる信号、まだ追えてるんだからね!」

 

私はレーダーを確認しながら、ホバーブーツで上空を移動していた。

 

スーツケースの反応は途切れていない。

 

ただ、追跡を妨げているのは、荷物を抱えた少女だけではなかった。

 

「うわっ!?」

 

めらさんがこちらを振り返る。

 

その口元に、青い光が揺らめいた。

 

次の瞬間、炎が視界を横切る。

 

「ええっ!? 火!?」

 

「わしはサラマンダーじゃぞ! あまり近寄るでない!」

 

「サラマンダー!?」

 

思わず声が裏返った。

 

まさか、こんなところで本物のサラマンダーに出会うなんて!

 

「すごい……! 青い炎だ! どういう原理なんだろう!?」

 

「そぴあさん! 今は感動している場合じゃないですよー!」

 

「分かってるってば!」

 

私は炎を避けて高度を調整した。

 

めらさんは周囲の建物や人の位置を確かめてから、炎を短く吐き出している。必要以上に広がらないよう、かなり気を配っているようだ。

 

未知の能力に興味は尽きない。

 

けれど、今はあのスーツケースを見失うわけにはいかない。

 

私はレーダーを見直し、再び追跡を続けた。

 

〜百灯キョーコ〜

 

「いや〜、これはなかなか大変なことになってきましたねぇ!」

 

私は二人を追いながら、周囲の状況を確認していた。

 

スーツケースを持って逃げるサラマンダーさん。

 

それを取り戻そうとする運び屋さん。

 

そして、空中から追跡する科学者さん。

 

それぞれ目的が違う以上、簡単に話がまとまるとは思えない。

 

「皆さーん! 人のいる場所で暴れるのは危ないですよー!」

 

「わしは暴れておらん! 逃げておるだけじゃ!」

 

「それはそうなんですけどね!」

 

私は声を張り上げながら、めらさんの進路へ回り込んだ。

 

警察官として、あの荷物を放っておくわけにはいかない。

 

「はいっ! そこのサラマンダーさん! ちょっと止まってくださーい!」

 

「止まれと言われて止まる者がおるかー!」

 

「ですよねー!」

 

めらさんが足を止める。

 

その口元に、再び青い光が集まった。

 

「おっと、今度は何が来ますかね!」

 

私は進路を見定め、すぐに動けるよう身構えた。

 

〜熱千めら〜

 

「火の用心じゃー!」

 

わしは口から青い炎を吐き出した。

 

ただし、周囲には建物も人もおる。

 

無闇に火を広げるわけにはいかぬ。

 

炎は人のいない開けた方向へ短く放ち、すぐに消す。

 

「おおっ!? 今のはすごいですね!」

 

警察官の少女が目を丸くした。

 

「ふふん! わしは火消しのサラマンダーじゃ! 火の扱いには慣れておる!」

 

「火消しなのに火を吹くんですか!?」

 

「火を扱う者こそ、火の恐ろしさを知っておるのじゃ!」

 

わしは周囲を見渡した。

 

残り火はない。近くのものにも燃え移っておらぬ。

 

よし。

 

これなら大丈夫じゃ。

 

「さて、今のうちに――」

 

「待ってください!」

 

角の少女が迫ってくる。

 

さらに上空から、光る靴の少女が回り込んできた。

 

「こっちに来て!」

 

「ぬおっ!?」

 

後ろからは警察官の少女も近づいてくる。

 

三方向を塞がれ、わしは思わず足を止めた。

 

「お、お主ら! いい加減にするのじゃ!」

 

「その荷物を返してくださーい!」

 

「せめて信号だけでも確認させて!」

 

「まずは警察で事情を聞かせてください!」

 

三人の声が重なる。

 

ええい、話が進まぬ!

 

わしはスーツケースを抱え直し、口元に青い炎を集めた。

 

今度も、周囲に燃え広がらないように注意する。

 

炎が三人の目の前で青く揺らめく。

 

その一瞬、全員の動きが止まった。

 

「今じゃー!」

 

わしは空いた脇をすり抜け、再び走り出した。

 

〜鈴鳴つづり〜

 

「待ってくださーい!」

 

私はすぐに追跡を再開した。

 

めらさんは炎を使うたびに、周囲に燃え移っていないか確認している。その慎重さは分かったけれど、だからといって荷物を諦めるわけにはいかない。

 

私は周囲を見渡した。

 

少し先に、工事用の資材が置かれている場所がある。

 

足場を見極めて跳び上がり、資材の向こう側へ回り込む。

 

「今度こそ、捕まえましたよっ!」

 

「なぬっ!?」

 

めらさんが進路を変える。

 

だが、その先にはそぴあさんが待ち構えていた。

 

「こっちだよ!」

 

「またお主かー!」

 

めらさんは急停止し、反対方向へ向かおうとする。

 

そこへキョーコさんも追いついた。

 

「はいっ! 今度は逃がしませんよー!」

 

「もう嫌じゃー!」

 

めらさんの叫びが響く。

 

私はその隙を逃さず、スーツケースへ手を伸ばした。

 

「その荷物、返していただきます!」

 

「いやじゃ!」

 

青い炎が一瞬だけ揺らめく。

 

私は反射的に身を引いた。

 

炎はすぐに消え、めらさんは周囲に異常がないかを確かめている。

 

その間に、私は再び距離を詰めた。

 

しかし、めらさんはスーツケースを抱えたまま身を翻し、三人の間を抜けていく。

 

「おおっと! まだ逃げますか!」

 

「わしは餃子を食べたいだけなのじゃー!」

 

栃木の街に、めらさんの声が響き渡った。

 

四人の追走は、まだ終わりそうにない。

 

そして、その頃。

 

遠く離れた場所では、四人の動きを見つめる者たちがいた。

 

〜???〜

 

薄暗い部屋。

 

壁一面のモニターには、栃木の街を走る四人の姿が映し出されていた。

 

「……ほう。もう四人が揃ったか」

 

映像を眺めていた人物が、静かに呟く。

 

「ふふ……面白くなってきたな」

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