誕生秘話 アソビ★まわり隊!   作:ソッチ

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第6話 秘密結社holoX

 

〜鈴鳴つづり〜

 

「……遅かったな」

 

倉庫の奥から、少女の声が聞こえた。

 

私はスーツケースを抱え直し、声のした方へ目を向ける。

 

暗がりの向こうに、人影が見えた。

 

「ご依頼の品をお届けに来ましたよー!」

 

ようやく仕事が終わる。

 

そう思って、私は一歩踏み出そうとした。

 

そのときだった。

 

「そこまでです」

 

倉庫の奥から、別の声が響いた。

 

次の瞬間、複数の人影が一斉に動き出す。

 

「えっ……?」

 

私が状況を理解するよりも早く、目の前の光景が変わった。

 

〜百灯キョーコ〜

 

「おっと! 新しいお客さんですか?」

 

私は声のした方へ振り返ろうとした。

 

しかし、その動きは途中で止まった。

 

背後から飛んできた矢が、私のすぐ足元に突き刺さったからだ。

 

「動かないでくださいね」

 

落ち着いた女性の声。

 

視線を向けると、弓を構えた桃色の髪の女性が立っていた。

 

「おおっ、弓ですか! これはまた珍しい!」

 

「感心している場合ですか?」

 

「いや〜、つい気になっちゃいまして!」

 

女性は表情を崩さない。

 

こちらが動けば、次はどこに矢が飛んでくるか分からない。

 

「私は鷹嶺ルイ。今は大人しくしていてください」

 

「なるほどなるほど。鷹嶺さんですね!」

 

「……ずいぶん余裕がありますね」

 

「こういうときこそ笑顔ですから!」

 

私は笑顔を崩さず、ルイさんの様子をうかがった。

 

どうやら、簡単には通してくれそうにない。

 

〜熱千めら〜

 

「な、なんじゃ!? 今度は何なのじゃ!」

 

わしが声を上げた直後、目の前に刀の刃が現れた。

 

「そこから先へは行かせません」

 

刀を構えた少女が、静かに告げる。

 

緑を基調とした服装に、腰にはもう一本の刀。

 

その立ち姿には、迷いがなかった。

 

「わ、わしは別に戦いに来たわけではないぞ! ただ帰りたいだけなのじゃ!」

 

「でしたら、その場でじっとしていてください」

 

「むむむ……」

 

わしは思わず両手を上げた。

 

炎を使えば、この場を離れることはできるかもしれぬ。

 

しかし、倉庫の中で火を使うわけにはいかん。周囲に燃え移ってしまえば大変なことになる。

 

「……まったく、面倒なことになったのう」

 

「風真いろはです。抵抗しないでくださいね」

 

少女――風真いろはは、刀を下ろさなかった。

 

〜鈴鳴つづり〜

 

「ええと……そちらの方々は?」

 

私が周囲を見渡そうとしたとき、すぐ横から声がした。

 

「あなたが運び屋さん?」

 

振り向こうとしたところで、首元に冷たい感触が近づく。

 

小柄な少女が、ナイフをこちらに向けていた。

 

「スーツケース、渡してくれる?」

 

「うーん……それはちょっと困りますねぇ」

 

「そっか。じゃあ、動かないでね」

 

少女の声は軽い。

 

けれど、ナイフを向ける手には一切の迷いがなかった。

 

「沙花叉クロヱ。よろしくね」

 

「これはご丁寧にどうも。鈴鳴つづりです」

 

「名前を聞いてる場合じゃないと思うけどなぁ」

 

「それもそうですねぇ」

 

私はスーツケースを抱えたまま、動きを止めた。

 

依頼品を渡すわけにはいかない。

 

しかし、ここで無理に動けば、荷物を傷つけてしまうかもしれない。

 

どうしたものか。

 

〜宙科そぴあ〜

 

「ちょっと待って! あなたたちは一体――」

 

私は目の前の人物に問いかけようとした。

 

そのとき、光が走った。

 

「それ以上、近づかないで」

 

光線銃を構えた少女が、こちらを見ている。

 

ピンク色の髪に、白衣。

 

見覚えのない人物だが、その手にある装備は興味深い。

 

「光線銃……? それ、どんな原理で動いているの?」

 

「質問に答える必要はないよ」

 

「ええっ!? そこは教えてくれてもいいじゃない!」

 

「今は黙っていて」

 

少女は光線銃を下ろさない。

 

「博衣こより。あなたの持っている機材も、あとで確認させてもらうね」

 

「私の機材まで!? それは困ります!」

 

私は相手の武器を観察しながら、状況を整理した。

 

弓、刀、ナイフ、そして光線銃。

 

突然現れた四人は、それぞれ私たちの動きを封じている。

 

偶然の集まりとは思えない。

 

この倉庫に、最初から待ち構えていたのだろうか。

 

〜ラプラス・ダークネス〜

 

四人の動きが止まったことを確認すると、倉庫の奥から小さな人影がゆっくりと姿を現した。

 

黒と紫を基調とした衣装。

 

そして、頭から伸びる大きな角。

 

その姿を見たルイたち四人が、一斉にそちらへ向き直る。

 

「総帥!」

 

ルイが声を上げた。

 

「うむ。ご苦労であった、貴様ら」

 

「お待ちしておりました、総帥」

 

「わっはっは! そう畏まるな、ルイよ!」

 

少女は満足げに笑うと、足止めされた四人へ視線を向けた。

 

「さて、ようやく顔を合わせることができたな」

 

「……あなたは?」

 

キョーコさんが尋ねる。

 

少女は一歩前へ出て、両手を広げた。

 

「吾輩こそは、秘密結社holoXの総帥! ラプラス・ダークネスである!」

 

その声が、倉庫全体に響き渡った。

 

「そして、鈴鳴つづり。よくぞ吾輩の依頼を果たしてくれた!」

 

「……えっ?」

 

私は思わず目を見開いた。

 

「まさか……依頼人って、あなたなんですか?」

 

「その通り! 吾輩が貴様に仕事を依頼した張本人だ!」

 

「いや〜、まさかこんなところでお会いするとは思いませんでしたねぇ……」

 

「わっはっは! 驚いたか?」

 

ラプラスは得意げに笑った。

 

「さて、せっかく全員揃ったのだ。貴様らには、吾輩たちの壮大なる計画を教えてやろう!」

 

〜ラプラス・ダークネス〜

 

「まずは、そのスーツケースについてだ」

 

ラプラスは、つづりが抱える黒いスーツケースを指差した。

 

「それはただの荷物ではない。吾輩たちholoXが開発した、特別な装置である!」

 

「特別な装置……?」

 

そぴあが反応する。

 

「そうだ! この装置には、人の持つ才能を探知する機能が備わっている。中でも、ホロライブにふさわしい才能を持つ者を見つけ出し、その情報を吾輩たちholoXへと送信するのだ!」

 

「才能を探知して、情報を送る……?」

 

こよりが口を開く。

 

「そういうこと! さらに、この装置にはもう一つの機能がある!」

 

ラプラスは、スーツケースへ視線を戻した。

 

「探知した才能の持ち主に働きかけ、ホロライブへと導く機能だ。本人がまだ自分の才能に気づいていなくとも、その可能性を見つけ出し、進むべき場所へと誘導する!」

 

「つまり……この箱が、私たちをここへ集めたということですか?」

 

つづりが尋ねる。

 

「その通り!」

 

ラプラスは大きく頷いた。

 

「貴様ら四人は、偶然ここに集まったわけではない!」

 

その言葉に、倉庫の空気が変わった。

 

「鈴鳴つづり。どんな場所へも荷物を届ける運び屋としての能力。状況を見極め、周囲を利用する判断力も持ち合わせている」

 

「百灯キョーコ。人を笑顔にしようとする行動力と、困難にも臆さず飛び込む度胸。警察としての経験もまた、貴重な才能だ」

 

「宙科そぴあ。未知のものを追い求める探究心と、科学への深い知識。誰も知らない可能性を見つけ出す力を持っている」

 

「そして、熱千めら。長い時を生きてきた経験と、青い炎を自在に扱う特異な能力。何より、その力を慎重に扱おうとする心もな」

 

「な、なんじゃと……?」

 

めらが驚いたように声を漏らす。

 

ラプラスは、四人それぞれを見渡した。

 

「貴様らは皆、ホロライブにふさわしい才能の持ち主なのだ!」

 

「私たちを……ホロライブに?」

 

キョーコが呟く。

 

「そうだ! 吾輩たちholoXの目的は、ホロライブに所属するにふさわしい新人を確保すること!」

 

ラプラスは、まるでその場のすべてを掌握しているかのように胸を張った。

 

「この装置は、才能ある者を見つけ出すために作られた。そして、貴様ら四人はその装置に選ばれたのだ!」

 

「なるほど……だから、あの信号が……」

 

そぴあは、これまで追い続けてきた反応の意味を理解し始めていた。

 

「そう。あなたが追っていた信号も、この装置が発していたものだよ」

 

こよりが補足する。

 

「装置が才能を探知するたびに情報を送信していたんだ。あなたのレーダーが反応したのも、その影響だと思う」

 

「じゃあ、私が運んでいたのは……」

 

つづりは腕の中のスーツケースを見つめた。

 

自分が何を運んでいるのかも知らず、ただ依頼を果たすためにここまで来た。

 

その道中で、三人と出会ったことさえも。

 

「わっはっは! すべては吾輩たちの計画のうち! 貴様らがここへ集まったことも、決して偶然ではない!」

 

ラプラスは高らかに笑った。

 

「さあ、貴様ら! 吾輩たちholoXとともに、新たな可能性を切り開くのだ!」

 

その言葉に、四人はそれぞれ違った反応を見せる。

 

「いや〜、私はまだお仕事の途中なんですけどねぇ……」

 

つづりは困ったようにスーツケースを抱え直す。

 

「うーん、警察としては見過ごせない話ですね!」

 

キョーコは、ルイの弓を警戒したまま答えた。

 

「私は装置の仕組みをもっと調べたい! でも、あなたたちの言うことをそのまま信じるわけにはいかないよ!」

 

そぴあはこよりを見据える。

 

「わしは餃子を食べに来ただけなのじゃが……」

 

めらは深いため息をついた。

 

四人の反応を見ても、ラプラスは動じなかった。

 

「わっはっは! 今すぐ答えを出せとは言わん!」

 

そして、ゆっくりと右手を掲げる。

 

「だが覚えておけ。貴様らには、まだ自分でも知らぬ可能性が眠っている。それを見つけ出し、世界へ示す機会を与えてやるのが、この吾輩――ラプラス・ダークネスなのだ!」

 

その姿は、まさしく秘密結社の総帥そのものだった。

 

しかし、次の瞬間。

 

「……ところで総帥。装置の反応が、先ほどから異常な数値を示しています」

 

こよりの声が響いた。

 

ラプラスはスーツケースへ視線を向ける。

 

黒いケースの隙間から、青白い光が漏れ始めていた。

 

「む……?」

 

「情報の送信量が増え続けています。このままだと、装置が通常の探知範囲を超えてしまうかも……!」

 

倉庫全体に低い振動が広がる。

 

ラプラスは、先ほどまでの余裕を崩さないまま、口元を吊り上げた。

 

「わっはっは……面白い。どうやら、吾輩たちの想定を超える才能が集まったようだな」

 

その視線の先には、スーツケースを抱えたつづりたち四人がいた。

 

彼女たちの才能を見つけ出した装置は、今まさに、何か新たな反応を示そうとしていた。

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