誕生秘話 アソビ★まわり隊!   作:ソッチ

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第7話 才能の衝突

 

〜鈴鳴つづり〜

 

「……えっと、これって大丈夫なんですかね?」

 

目の前の黒いスーツケースは、先ほどまでとは比べものにならないほど強く振動していた。

 

青白い光が隙間から漏れ、倉庫の壁や床を不規則に照らしている。

 

「大丈夫なわけないでしょ! 明らかに異常だよ!」

 

百灯キョーコさんが声を張り上げる。

 

「装置内部のエネルギー反応が急上昇しています! このままでは――」

 

宙科そぴあさんが手元の機器を確認しながら叫んだ。

 

その表情には、恐怖よりも驚きと興奮が入り混じっている。

 

「コヨリ、どういう状況だ」

 

ラプラスさんが振り返る。

 

「わ、わかりません! 四人分のデータを同時に処理しようとして、装置の許容量を超えたみたいです!」

 

「許容量を超えた……?」

 

私が呟いた、その瞬間だった。

 

装置の光が一気に強くなる。

 

「全員、離れてください!」

 

こよりさんの声が倉庫に響いた。

 

次の瞬間――

 

バンッ!!

 

耳をつんざくような破裂音とともに、スーツケースが弾け飛んだ。

 

青白い光が倉庫いっぱいに広がり、周囲にいた全員が思わず腕で顔を覆う。

 

しばらくして光が収まると、床には装置の破片が散らばっていた。

 

「……うわぁ。五千万円の仕事が……」

 

私は思わず呟いた。

 

いや、正確にはまだ届け終わっていない。

 

報酬がどうなるのか、そちらの方が気になる。

 

「装置が……壊れた……?」

 

そぴあさんは呆然と破片を見つめている。

 

「そんな……せっかく集めたデータが……!」

 

こよりさんも膝をつき、残骸を確認していた。

 

「わっはっは……!」

 

そんな中、ラプラスさんの笑い声が響いた。

 

「まさか装置が耐えきれぬとはな! どうやら、吾輩の目に狂いはなかったようだ!」

 

「総帥、感心している場合ではありません!」

 

ルイさんがすぐさま声を上げる。

 

「装置の破損により、周辺への影響が――」

 

「わかっておる!」

 

ラプラスさんが言いかけた言葉を遮った。

 

そのときだった。

 

「……動かないでください」

 

こよりさんが、そぴあさんへ向けていた視線を再び鋭くする。

 

同時に、クロヱさんが私の前に立ちはだかった。

 

「さっきの装置は壊れちゃったけど、あなたを逃がすわけにはいかないんだよね」

 

「ええ〜……まだ続くんですかぁ?」

 

私は困ったように笑いながら、少しだけ後ろへ下がった。

 

一方、キョーコさんの前にはルイさんが立っている。

 

「警察の方でしたね。ここから先へ進ませるわけにはいきません」

 

「いやいやいや! こっちは警察なんですけど!? そっちこそ、何者なのか説明してもらわないと困りますよ!」

 

「説明する義務はありません」

 

「それなら、こっちも遠慮なくいかせてもらいます!」

 

キョーコさんは笑顔のまま、構えを取った。

 

少し離れた場所では、イロハさんとめらさんが向かい合っている。

 

「その場から動かないでください。これ以上、騒ぎを大きくするわけにはいきません」

 

「わ、わしはもう帰りたいだけなのじゃが……」

 

めらさんは困ったように眉を下げる。

 

「それなら、こちらの指示に従ってください」

 

「むぅ……それはそれで困るのじゃ」

 

めらさんの尻尾がゆらりと揺れた。

 

そして、青い炎が小さく灯る。

 

ただし、その炎は周囲へ燃え移らないよう、彼女の手元に慎重に留められていた。

 

〜百灯キョーコ〜

 

「それじゃあ、始めましょうか!」

 

私は目の前の女性に向かって声をかけた。

 

相手は弓を構えたまま、こちらの様子をうかがっている。

 

なるほど。弓かぁ。

 

距離を取って戦うタイプかな?

 

「……随分と余裕そうですね」

 

「そりゃあ、困っている人を助けるのが警察のお仕事ですから!」

 

「ここに困っている人はいません」

 

「えっ、そうなんですか? でも、困ってるかどうかは話してみないとわからないですよね!」

 

「話すつもりはありません」

 

「そっか! じゃあ、まずはお互いに落ち着いて話せる状況を作りましょう!」

 

そう言って、私は一歩踏み込んだ。

 

相手の反応は速い。

 

矢が飛んでくる。

 

私は身をかわし、距離を詰める。

 

もちろん、相手も簡単には近づかせてくれない。

 

「おおっ! なかなかやりますね!」

 

「あなたも、随分と身軽なようで」

 

「よく言われます!」

 

会話を交わしながらも、互いに一歩も譲らない。

 

どうやら、簡単には終わりそうにない。

 

〜宙科そぴあ〜

 

「うわぁ……! 装置が壊れちゃったのは残念だけど、これはこれで大発見だよ!」

 

私は目の前の少女を見つめた。

 

白衣を着た彼女は、こちらの装備を興味深そうに眺めている。

 

「その機械、少し見せてもらえませんか?」

 

「もちろん、渡すわけにはいきません!」

 

「えーっ! ちょっとだけでも?」

 

「駄目です!」

 

「むむむ……!」

 

知的好奇心が刺激される。

 

あの装置についても、彼女たちについても、まだまだ知りたいことが山ほどある。

 

けれど、今はそれどころではないらしい。

 

相手の手にある機器がこちらへ向けられた。

 

私は浮遊ブーツを作動させ、ふわりと床から離れる。

 

「わっ! 浮いた!?」

 

「へえ、あなたも面白い技術を持っているんですね!」

 

「そちらこそ!」

 

互いの技術がぶつかり、倉庫の中に光が走る。

 

ああ、もっと調べたい。

 

でも、まずはこの場を切り抜けないと!

 

〜熱千めら〜

 

「火の用心じゃ〜!」

 

わしは青い炎を小さく吐き出した。

 

目の前の少女――イロハと名乗った者は、刀を構えたままこちらを見ている。

 

「炎を使うのですか……!」

 

「うむ! じゃが、火の扱いには気をつけねばならぬ!」

 

炎が床や荷物に燃え移らないよう、わしはすぐに火を消した。

 

「ここは建物の中じゃからの。むやみに燃やすわけにはいかぬ」

 

「ならば、大人しく捕まってください」

 

「それは嫌じゃ!」

 

わしは首を横に振る。

 

せっかく栃木まで来たというのに、餃子を食べる前に捕まるなど御免じゃ。

 

「わしは帰って餃子を食べたいだけなのじゃ!」

 

「そのためにも、まずは事情を聞かせてください!」

 

「事情なら、わしも聞きたいくらいなのじゃ!」

 

互いに譲る気はない。

 

どうやら、話し合いで解決するのは難しそうじゃな。

 

〜鈴鳴つづり〜

 

「いや〜……まさかこんなことになるとは」

 

目の前にはナイフを構えたクロヱさん。

 

少し離れたところでは、ラプラスさんたちが何やら指示を出している。

 

装置は壊れた。

 

荷物はなくなった。

 

報酬の行方もわからない。

 

そして、私は依然として依頼主の組織に囲まれている。

 

「……これ、完全に赤字じゃないですかねぇ」

 

「余裕そうだねぇ?」

 

クロヱさんがこちらを見て笑う。

 

「いえいえ、そんなことないですよ。私としては、早く帰ってお仕事を終わらせたいだけですから」

 

「じゃあ、ここで捕まってもらおっか」

 

「それはちょっと困りますねぇ」

 

私は周囲を見回した。

 

壊れた装置の破片。倒れた棚。散らばった機材。

 

使えそうなものは、まだいくつかある。

 

「……仕方ありませんね」

 

私は小さく息を吐いた。

 

この場を切り抜けるには、相手の動きをよく見て、隙を探すしかない。

 

クロヱさんがこちらへ踏み込んでくる。

 

私はその場から跳び退いた。

 

「おっと!」

 

「逃がさないよ!」

 

「いや〜、追いかけっこは得意なんですけどねぇ!」

 

倉庫の中に再び騒音が響く。

 

誰もが自分の目的のために動いている。

 

警察として事件を追う者。

 

未知の技術を調べようとする者。

 

ただ帰りたい者。

 

そして、依頼を完遂しようとする者。

 

その誰もが、目の前の相手を簡単に退けることはできない。

 

装置の爆発は、騒動の終わりではなかった。

 

むしろ――

 

四人と秘密結社holoXの、本当の衝突の始まりだった。

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