誕生秘話 アソビ★まわり隊!   作:ソッチ

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第8話 届かぬ一撃

〜百灯キョーコ〜

 

「それじゃあ、始めましょうか!」

 

私は目の前の女性に向かって声をかけた。

 

桃色の髪に、落ち着いた雰囲気。そして、その背中には大きな翼が広がっている。

 

「……随分と余裕そうですね」

 

「そりゃあ、困っている人を助けるのが警察のお仕事ですから!」

 

「ここに困っている人はいません」

 

「えっ、そうなんですか? でも、困ってるかどうかは話してみないとわからないですよね!」

 

「話すつもりはありません」

 

ルイさんの翼が大きく広がった。

 

次の瞬間、彼女の身体がふわりと宙へ浮かぶ。

 

「おおっ! 飛んだ!」

 

私は思わず声を上げた。

 

ルイさんは倉庫の梁よりも高い位置まで上昇すると、手にした弓を構える。

 

「上から狙うんですね!」

 

「ええ。あなたの動きはよく見えていますよ」

 

弦が鳴る。

 

放たれた矢が、私のすぐ横を通り過ぎた。

 

「おっと!」

 

矢は背後の壁に突き刺さる。

 

その正確さに、思わず感心してしまった。

 

「すごいですね! 狙いが正確!」

 

「褒めている場合ですか?」

 

「だって、本当にすごいんですもん!」

 

私は笑顔のまま、相手の動きを見上げる。

 

ルイさんは翼を操りながら、倉庫内を自在に移動していた。

 

高い位置からこちらの動きを見定め、必要な場所へ矢を放つ。

 

一方の私は、警棒を構えて動き続ける。

 

矢が飛ぶたびに身体をかわし、少しずつ距離を詰めていった。

 

「なかなか近づかせてくれませんね!」

 

「近づけるつもりはありませんから」

 

「それなら、こっちから行きますよ!」

 

私は大きく踏み込んだ。

 

ルイさんの翼が羽ばたき、彼女の身体がさらに高く舞い上がる。

 

そのまま弓を引き絞った。

 

「まだまだですよ!」

 

矢が放たれる。

 

私は身をひねってかわしたが、続けて飛んできた矢が進もうとしていた場所を塞いだ。

 

「えっ!?」

 

思わず足を止める。

 

その一瞬を、ルイさんは見逃さなかった。

 

翼を翻し、空中から位置を変える。

 

「そこまでです」

 

「わっ!」

 

気づいたときには、私の警棒は手元から弾かれていた。

 

さらに、ルイさんの矢がすぐそばに構えられる。

 

「……あれ?」

 

私は目を瞬かせた。

 

「いつの間に……?」

 

「あなたの動きは素早い。ですが、動きに迷いが出る瞬間があります」

 

ルイさんは静かに告げる。

 

「その隙を見逃すほど、私は甘くありません」

 

「なるほど……。これは一本取られちゃいましたね!」

 

私は笑顔を崩さなかった。

 

けれど、これ以上動けば、今度こそ身動きが取れなくなる。

 

「参りました!」

 

「ご理解いただけて何よりです」

 

ルイさんは弓を下ろさず、私の動きを警戒したまま着地した。

 

「でも、まだ終わったわけじゃありませんよ!」

 

「……そうですね。あなたの仲間もいますから」

 

ルイさんの視線が、倉庫の反対側へ向く。

 

そこでは、もう一つの戦いが続いていた。

 

### 〜宙科そぴあ〜

 

「うわぁ……! 装置が壊れちゃったのは残念だけど、これはこれで大発見だよ!」

 

私は目の前の少女を見つめた。

 

白衣を着た彼女は、こちらの装備を興味深そうに眺めている。

 

「その機械、少し見せてもらえませんか?」

 

「もちろん、渡すわけにはいきません!」

 

「えーっ! ちょっとだけでも?」

 

「駄目です!」

 

こよりさんは背中へ手を回した。

 

「それじゃあ、これならどうですか!」

 

彼女が取り出したのは、小さな箱だった。

 

ぱかん、と箱が開く。

 

次の瞬間、そこから小さな機械が飛び出した。

 

「わっ!?」

 

機械は空中で展開し、くるくると回転しながら光を放つ。

 

私は慌てて浮遊ブーツを作動させ、床から離れた。

 

「な、何それ!? どういう仕組み!?」

 

「ふっふっふ! こより特製の発明品です!」

 

「すごい! もっと見せて!」

 

「戦闘中ですから!」

 

こよりさんは楽しそうに笑いながら、次々と別の道具を取り出した。

 

小さな球体が床を転がり、突然煙を噴き出す。

 

別の装置は、倉庫の隅で甲高い音を鳴らしながら動き回った。

 

さらに、折り畳まれていた小型の機械が展開し、こちらへ向かってくる。

 

「ちょっと待って! 次から次へと何が出てくるの!?」

 

「それがこよりの発明品です!」

 

「本当にびっくり箱みたい!」

 

私は浮遊ブーツで高さを変えながら、次々と現れる発明品を避けていく。

 

こちらも光線銃を構え、機械の動きを止めようとする。

 

一つ、また一つと発明品をかわし、私はこよりさんとの距離を詰めた。

 

「今度はこっちの番だよ!」

 

光が走る。

 

こよりさんは驚いたように身を引いた。

 

「おっとっと!」

 

「やった!」

 

私は手応えを感じた。

 

しかし、こよりさんの表情にはまだ余裕があった。

 

「ふふっ。そこまで来ると思っていました!」

 

「えっ?」

 

足元で小さな電子音が鳴った。

 

次の瞬間、床に置かれていた別の発明品が動き出す。

 

私は慌てて浮遊ブーツを作動させたが、体勢を立て直すのが間に合わなかった。

 

「しまっ……!」

 

視界が揺れる。

 

体勢を崩した私の手から、光線銃が離れた。

 

「これで終わりです!」

 

こよりさんが距離を詰め、私の動きを止める。

 

「うぅ……! まさか、あんなところにまで仕掛けがあったなんて!」

 

「発明品は、いつどこから出てくるかわからない。それがこよりのびっくり箱です!」

 

「悔しいけど、面白い仕組みだね……!」

 

私は苦笑いを浮かべた。

 

興味は尽きない。

 

けれど、今はもう身動きが取れなかった。

 

〜百灯キョーコ〜

 

「そぴあさん!」

 

私は思わず声を上げた。

 

そぴあさんも、こよりさんに動きを封じられている。

 

これで、私たち二人は敗北したことになる。

 

「キョーコさん、そちらも終わったんですか?」

 

「いや〜、なかなか手強い相手でした!」

 

「こちらもです……。あの発明品、すごく気になります」

 

「ふふっ、気になるのはわかりますけど、今は大人しくしていてくださいね!」

 

こよりさんが笑顔で言った。

 

「わかりました……」

 

そぴあさんは残念そうに答えた。

 

私も警棒を拾うことはせず、その場で動きを止めた。

 

ルイさんは弓を構えたまま、こよりさんの隣に立つ。

 

二人とも、ほとんど息を乱していない。

 

「これが経験の差、ということですかねぇ……」

 

私は小さく呟いた。

 

「そうかもしれませんね」

 

ルイさんが答えた。

 

そのとき、倉庫の奥から笑い声が響いた。

 

「わっはっは! 見事である!」

 

ラプラスさんだった。

 

彼女は腕を組み、満足げにこちらを眺めている。

 

「ルイもこよりも、よくやった! さて、残る二人はどうなるかな?」

 

ラプラスさんの視線が、倉庫の別の場所へ向いた。

 

そこでは、まだ二つの戦いが続いていた。

 

私たちが敗れたことで、残された二人にかかる負担はさらに大きくなった。

 

「めらさん……つづりさん……」

 

そぴあさんが心配そうに呟く。

 

私も二人の姿を見つめた。

 

まだ、諦めるわけにはいかない。

 

そう思っていた。

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