一匹狼とかなれるわけないじゃん、ムリムリ!(※やっぱりムリだった⁉︎)   作:陰陽キャ

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 友人にわたなれを勧められて、面白すぎて一日で読破してしまったので初投稿です。





第1話 第一発見者とか、マジでムリなんだけど

 

 

 

 夢は大きく一匹狼。

 そんなことを大真面目に考えている女子高生なんてものは、日本全国をしらみ潰しに探して回っても、この私、大神(おおかみ)桜歌(おうか)くらいしか存在しないだろう。

 

 理由は単純、一人ならば誰に気を遣う必要もないからだ。私は誰かに媚び諂(へつら)ってまで生きたくはないし、そもそもそんなの全然楽しくないだろうし。

 

 集団とか派閥なんてゴミだよゴミゴミ。

 コミュニティならぬゴミュニティ、なんちゃって。

 

 ……一人でいれば、こうやってスベり散らかしたって誰にもバカにされないし。ほらな? また一つ、私が一人でいる理由が補強されてしまった。

 

 それにそもそも、響きがかっこいいもんな、一匹狼。そのうえ何にも靡(なび)くことはなく、何にも縛られることはなく、そして何よりも自由だから。

 

 今どき小学生でも知っている。友情なんてものはその実まやかしで、日常会話は地雷を避け続けるマインスイーパーだ。どれだけ空気を読めるかが第一優先のスコアアタックだ。

 

 あとはまあ、ああいうのって大抵は嘘が付きものじゃんか。私は何よりも嘘がマジで嫌いだから、そーいうのとかほんと勘弁! って感じなわけ。

 

 だからまあ、私はそういうまどろっこしいあれやこれやから脱却を目指している、というわけ。だって面倒くさいじゃん、いちいち相手に合わせてご機嫌取るのとか。

 

 しかもさ、ちょびっとでも会話をミスろうもんなら即即即座に『あいつ生意気だしハブらね?(笑)』ってなってグループ追い出されたりするわけよ。そんなの惨めだし情けないし、そして何より悲しいじゃん。

 

 だから私はこう思った。

 最初から属してなければいいんじゃね?

 

 それならそもそもハブられないから悲しくないし、自分のやりたいように振る舞えるし、自由で自由で仕方がなくなるってわけよ。私は小学生にしてこのことに気づき、一匹狼を目指したのだった。

 

 私が小中学校で書いた将来の夢聞いたら絶対ウケるよ。だって『一匹狼』だもん。嘘だろって? これ、マジで言ってんだけど。

 

 そんなこんなで孤高の一匹狼こと私も、今となってはこの芦ケ谷(あしがや)高校において花のキラキラJKとして、どこのグループにも属さず日々怠惰に暮らしている。

 

 いや〜、一人って最高!

 だから私は今日も、声高らかに宣言するのだ!

 私は絶対! どのグループにも属さない!

 

 

「桜花ちゃん、どうしたの? あっ、もしかしてもうお腹いっぱいとか?」

 

「……いや全然? むしろいくらでも食べれるって、こんな美味しい弁当。私、この弁当のお陰で毎日生きていけてんだから」

 

「えー、えー? 急に褒められても笑顔くらいしか出ないよ? えへへ」

 

 

 ……ごめんムリだった。

 一匹狼(笑)とかなれるわけないじゃん(笑)、ムリムリ!(※やっぱりムリだった爆笑)。いやマジでムリなんだって。

 

 不可能だって、一匹狼とか。いやさ、私としては一匹狼上等なんだけどさ? 私がそうなろうとするのを、目の前の幼馴染はことごとく邪魔してくるわけ。

 

 瀬名(せな)紫陽花(あじさい)。それが私の幼馴染の名前である。世界で一番天使の羽バングが似合ってる……、っていうか私としては髪型より先に紫陽花の存在があったと思ってる。

 

 鶏が先か卵が先か、じゃなくて。

 紫陽花が先か天使の羽バングが先か。

 なんとこの場合、紫陽花が先らしいよ。いやマジで。

 

 冗談はさておき。

 紫陽花に色々と世話を焼かれてしまっている私は、その激流で流されに流されて、結局グループに所属している……、という風に周りからは見られているらしい。

 

 超弩級のウルトラスーパー絶世の美人モデルである、王塚(おうづか)真唯(まい)を中心としたカースト最上位集団──その名もQueentet(クインテット)。

 

 もぐもぐと、紫陽花が私のために早起きして作ってくれたお弁当を噛み締めながら──以下、クインテットの構成員(メンバー)紹介。

 

 

「しかし、私はつくづく友人に恵まれたね。もっと慌ただしい日常を送るものだと思っていたけれど……、感謝しかないな」

 

 

 金髪碧眼のクォーター、アパレルブランド「Queen Rose(クイーンローズ)」の筆頭モデル。容姿端麗、清廉潔白、豪華絢爛。付けられた異名は驚くなかれスパダリ──王塚真唯。

 

 

「私も桜歌ちゃん以外に友達できるか心配だったけど……。えへへ、こんなに素敵な子たちと仲良くできるなんて、夢にも思ってなかったなあ」

 

 

 そこらの養殖ものとは出自(ワケ)が違う、十割純粋培養の、天然記念物級大天使。最上級のお人よし、周囲に花とか咲いてそう。私の脳内での呼称は呼吸する天国──瀬名紫陽花。

 

 

「あなたたち、よくもまあそんな簡単に歯の浮くようなセリフを吐けるわね。……それでも、否定はしないけれど」

 

 

 クール系とは彼女を指すためだけに存在する言葉、絶対零度すら震えて眠らせる、本好きの黒髪美人。ツンデレなんて生ぬるい、時代はとっくにツンドラだ。ちなみにそもそもツンデレですらない──琴(こと)紗月(さつき)。

 

 

「およ、もしかして今日はお互い褒めあっちゃおうって日なのかにゃあ? いいねえいいねえ、アタシってばこーゆーの求めてた!」

 

 

 いかなる時であろうとも、みなぎる元気を振り撒く高気圧ガール。あまりの親しみやすさと溢れる愛らしさこそが、彼女を彼女たらしめる。人呼んで芦ケ谷の妹──小柳(こやなぎ)香穂(かほ)。

 

 

「うん……うん! わ、わたしもこんなに素敵な! みんなと過ごせて、その……ほんと、幸せだなって思ってます!」

 

 

 クインテット随一の庶民派、世界有数の聞き上手、あるいは究極の話させ上手。話しやすい、関わりやすい、そして何より推しやすい。一番友達になりたいタイプかつ、話すと一番楽しいタイプ──甘織(あまおり)れな子(こ)。

 

 以上五名が、クインテットのメンバーだ。

 どうやら周囲は私もこのグループに属していると思ってるみたいだけど、別に私は入ってないからな。

 

 

「ところで、桜歌。もしかして、君が食べているそのお弁当……、今日も紫陽花が作ったものかな? いやはやまったく、時折君のことが羨ましくなるよ」

 

「ん、羨ましいっしょ。でも絶対分けたげないかんね。紫陽花の愛がこもったお弁当、文字通りに私の生命線だから。いやマジで」

 

「それにしても、毎日何人分かのお弁当を拵(こしら)えるだなんて……あなたもよくやるわね、瀬名。大変だとは思わないのかしら」

 

「えへへ、ありがとう。でも私、大変だなんて思ったことないんだよ? 桜歌ちゃんが、いつもとっても美味しそうに食べてくれるから……かも」

 

「くっ……アーちゃんの笑顔、破壊力バツグンすぎかよ……⁉︎ ズルいよ、ズルズルだよオーちゃん──このワタクシめに一口、お弁当分けてもらったりできないすかね」

 

「ムリだっつってんだろがい。あー美味い美味い、あまりにも美味すぎるわこの弁当なー。これに比べたらその辺の弁当は……アレだ、原材料だ」

 

「なんっじゃそりゃあ!」

 

 

 ……いやまあこの感じからして、私が『入れて!』っつったら『いいよ!』とは言ってくれるだろうさ。いくらなんでも過ごしやすすぎるんだよ、このグループ。

 

 でもさあ。そしたら、このグループの名前がクインテットじゃなくなっちゃうだろうし。

 

 せっかく真唯がモデルやってる「クイーンローズ」とかかってる洒落た名前なのに、私のワガママで変えさせるわけにはいかないからさ。たまに一緒にお弁当食べるくらいでいいのさ、こういうのは。

 

 ……まあ、私が一人でお昼を食べようとしてると、どこからともなく紫陽花がやってきて、クインテットのところへと強制連行されるんだけどね。

 

 私の幼馴染は私のことをなんだと思ってるんだ。手のかかるバカ犬か? それとも寂しんぼの子犬か? せめて狼として認識されていることを祈るばかりだ。

 

 

「私の言いたいこと、分かっかなあ。つまり紫陽花は現代に降臨した大天使っつーわけよ」

 

「もう、桜歌ちゃん! いっつもそうやってからかうんだから……」

 

「あっ、なんかそれ、わたし分かります……! 紫陽花さんの半径5mだけ、常に優しい雰囲気が、こう、充満してるというか……」

 

「れなちゃんまで……⁉︎」

 

「いいねえいいねえ、理解(わか)ってるじゃないのさ、れな子ぉ。今の私は気分がすこぶるいーから、弁当ひとくち分けたげる」

 

「は、ははは……。そ、それじゃあいただいちゃおう、かなぁ〜……?」

 

 

 とかなんとか言ってたら、紫陽花は「んんっ!」と咳払いをひとつ漏らした。ちらと視線をやると、頬がうっすら朱に染まってる。

 

 おおっと、こりゃいかんぜ、これ以上ふざけてたら明日のお弁当にトマトを入れられちまうかもしれない。私はトマトが大の苦手なんだ、全面的に受け付けない。

 

 ……もちろん、私が紫陽花の手作り弁当を残すことなど、天地がひっくり返ろうがあり得ないんだけど。せっかく紫陽花が作ってくれたものを残すわけないだろ、この私が。

 

「桜歌ちゃん、私になにか言うこと、あるよね?」

 

「はい、本当にごめんなさい……」

 

「もうっ、からかいすぎはダメだよ? 私だって怒るときは怒っちゃうんだからね?」

 

「ううっ……私のこと、嫌わないで、見捨てないで……」

 

「嫌わないし見捨てないよ……⁉︎」

 

 

 ……ふう、危ない危ない。

 私の夢は一匹狼だけど、それはそれとして紫陽花に見捨てられることだけは避けたいからな。

 

 仮に。もしそうなったら、きっと紫陽花は『ごめんね、桜歌ちゃん。私の言うこと守れないなら、もういいよ。一匹狼(笑)だっけ?w 私にはもう関係ないからなんでもいいけど、無駄な努力、頑張ってね〜』とか言って、私のもとから去っていくんだ……。

 

 

「わたっ、わたしは……、わたしはぁ……」

 

「どうしてどんどん落ち込んでるの……⁉︎ げ、元気出して、桜歌ちゃん……!」

 

 

 紫陽花は私の頭に手を伸ばし、それこそペットを愛でるみたいに、優しい手つきで慈しみのこもった撫でを繰り出した! 脳にダイレクトで紫陽花の癒しパワーが流し込まれているのをはっきりと感じる……。

 

 瞬間、自己肯定感やら体力やらが完全に回復する私。今の私は、控えめに言っても凄まじいぞ。天沼矛(あめのぬぼこ)を寄越しやがれ、ここに国を造ってやるからさ。

 

 ……なんだか冷たい視線を感じる。こういう時は大抵、紗月が熱視線ならぬ冷視線を送ってきているのだ。騒がしくしてごめんなさい、でも私からここに来たわけじゃないから勘弁してください。いやマジで。

 

 

「別に、あなたの好きにすればいいじゃない。今になってそんなことを気にするくらいなら、瀬名のお誘いを断ればいいのよ」

 

「ふっつーの顔して心読むのやめてくれな。あとこの二ヶ月で分かってると思うけどさ、私が紫陽花の誘いを断るわけないじゃんか」

 

「当然分かっているわ。あなたの方こそ、この二ヶ月で私の人格(キャラクター)くらい分かっているでしょう?」

 

「ん。紗月のそーゆーところ、実は嫌いじゃないぜ」

 

「そう。私も私のことが大好きよ」

 

 

 険悪かと思った? 紗月と私が? いや〜ナイナイ! なんてーかなぁ、共通点が少なすぎて逆に馬が合う……みたいな? ともかくそんな感じ。

 

 こういうやり取りすらも、この二ヶ月ですっかりお(・)決(・)ま(・)り(・)になってしまった。紫陽花が心配するそぶりすら見せていないのと、香穂が二割増でにっこにこなのが何よりの証拠だ。

 

 ……ってな感じで、今日もいつも通りに一匹狼ライフ(今日は偶然! 群れてるけど!)を送っています──と、そうなればよかったんだけど。

 

 そこで突如として、私の脳内に飛来する特大の違和感。ふと辺りを見渡してみると──な(・)ん(・)か(・)人(・)数(・)、足(・)り(・)な(・)く(・)ね(・)?

 

 

「香穂ぉ、ぱっと見た感じ真唯とれな子いないんだけど、あの二人いつのまにかどっか行った?」

 

「うん、どっか行ったよ? んーとね、れなちんがなんか妙ちくりんな雰囲気出しながらどっか行って、それをマイマイが追っかけてったぜい。たった今だよ、どっちもほんの十数秒前!」

 

 

 流石は芦ケ谷の妹、周囲に目を配る力はぶっちぎりのダントツだ。いやしかし、妙(・)ち(・)く(・)り(・)ん(・)な(・)雰(・)囲(・)気(・)、ねえ……。

 

 一匹狼たる私といえど、ちとそれは放っておけないじゃん? さっき紫陽花の弁当のくだりでだる絡みしすぎた自覚はあるし、責任の一旦が私にもあるかもしれないでしょーよ。

 

 つーわけで、一匹狼ことこの私、大神桜歌はすっくと椅子から立ち上がった。人探し、これでも得意なもんで。……『狼だから!w』とかじゃなくて。これ、マジで言ってんだけど。

 

 

「んじゃま、ちょっくら探してくるわ。れな子に弁当分けたいのは全然マジだったし」

 

「そこは本当だったんだね……?」

 

「私が紫陽花に嘘ついたこと、一回もないっしょ?」

 

 

 私の問いに、紫陽花はふわりと微笑みながら頷きを返してくれた。……ほんともうさ、そんな笑顔振りまいたらダメだっての。現に私の脳はとっくにダメダメなんだっての。いやマジで。

 

 ともかく。

 私は紫陽花の微笑みに心を癒されつつ、教室をあとにする──と、教室の前にいた連中がきゃいきゃい騒いでるのが分かった。

 

 ……この感じだと、向かった先にあるのは屋(・)上(・)か? あそこ、一般生徒は立ち入り禁止だったような──ああいや、どうだったっけ? とにかく、柵がガタついてるだとかで一般開放はされてなかったはずだけど。

 

 すたこらさっさ、駆け足で屋上へ向かう私。途中微かに『王塚さん、今日もキレイ……』とか『甘織さん、急いでたけど何かあったのかな?』とか、聞こえるわ聞こえるわ評判の数々。

 

 それらを頼りに小走りしていると、ほとんど一瞬で屋上へと繋がる扉はもう目前だ。こちとら花のJKだもんで、体力的にもこれくらいは朝飯前なんだわ。もう昼飯食っちゃったけど。

 

 さて、と。私の推理が間違ってなけりゃ、この先に間違いなく真唯とれな子はいるはずだ。なんだよなんだよ、グループから二人抜け出してナイショ話か? いいねえいいねえ、青春って感じじゃない。

 

 ん〜……、冗談半分でこんなことを抜かしちゃいるけど、マジでナイショの話だった場合、私がそこに混ざるわけにもいかんよなぁ。あとほら、私は一匹狼なので。マジで。……マジだかんな!

 

 いやあ、とんだ無駄骨だったかねえ。そんじゃま、私は一足お先に帰らせてもらうとするかな──

 

 

「れな子、いけない!」

 

 

 ──れな子、いけない。

 何が? というか、どうして?

 それが、誰(・)か(・)の(・)叫(・)び(・)声(・)を耳にした私が、最初に抱いた感想だった。

 

 れな子、いけない。ここはどこだ? 言うまでもなく、屋上だ。叫び声の主は? あんなにキレイに通る声は、間違いなく真唯のものだ。れな子、いけない。何があった? そういえば屋上は、柵が老朽化しているんだったか。

 

 れな子。そうだ、れな子だ。

 そういえばさっき、香穂は『れなちんがなんか妙ちくりんな雰囲気出しながら──』って言ってたっけ。

 

 ……おい、おいおい。

 まさか、ねえ?

 

 

「おいおい、おいおいおいおいおい嘘だろ嘘だな嘘だよな……!」

 

 

 とある最(・)悪(・)の(・)可(・)能(・)性(・)を思い浮かべた私は、教室へと戻ろうとしていた身体を強引に反転させ、屋上へと繋がる扉に向かって、全速力で駆け出した。

 

 扉は──半開き! ほとんど一瞬でそれを確認した私は、勢いそのまま扉へと体当たりをぶちかまし、痛みなど感じる間もなく、強引に屋上へと身体を捩じ込んで。

 

 そ(・)こ(・)で(・)。

 柵(・)の(・)向(・)こ(・)う(・)側(・)へ(・)と(・)落(・)下(・)し(・)て(・)い(・)く(・)。

 真(・)唯(・)と(・)れ(・)な(・)子(・)の(・)姿(・)を(・)目(・)撃(・)し(・)た(・)。

 

 経過した時間は、一瞬だったはずだ。

 だけど私にはその刹那が、まるで無限のように感じられて。

 

 

「……う、うそ、嘘…………」

 

 

 一匹狼気取りの私には。

 そんな一言を絞り出すのが精一杯だった。

 

 ……よりにもよって。

 第一発見者とか、マジで無理なんだけど……。

 

 

 







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