一匹狼とかなれるわけないじゃん、ムリムリ!(※やっぱりムリだった⁉︎)   作:陰陽キャ

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第2話 これ以上我慢するとか、マジでムリなんだけど

 

 

 

 第一発見者とか、マジでムリなんだけど──とは言ったって、そんなワガママを言っていられる状況じゃないことは、火を見るより明らかだった。

 

 扉に体当たりしたせいで肩は痛いし、全力で走ってるせいで肺は痛いし、嫌な想像ばっかり膨らんで心臓は痛いし……。まあとにかくもう全身痛くて痛くてしょうがなかった。

 

 ……真唯とれな子が屋上から落下したところを目撃したのは、おそらく私だけだろう。ってことは、つまり私がどれだけ迅速に行動できるかに、全てが懸かっていた。

 

 一匹狼がどうだとか、周りから見た時にどう見えるかとか。そんなあれやこれやを気にする余裕は一切なかった。変な目で見られるかもしれないけど、そんなことより二人の安否を確認しなきゃいけないし。

 

 幸か不幸か、二人が落下した(であろう)場所に向かう途中、誰かに呼び止められたりすることはなかった。大騒ぎにならなそうって点ではラッキーだった。

 

 現実逃避気味にそんなことを考えつつ、階段を駆け降り、昇降口を上履きのままスルーして、校舎の壁沿いに全力疾走して……そして、到着。

 

 私の見たものが間違いじゃなけりゃ、この角を曲がった先に、二(・)人(・)の(・)──じゃなくって、違くて、無傷の二人がいるはずだ。真唯とれな子のことだから、五点着地かなんかで無事だろ、うん、そうに違いない。

 

 

「……はは。ま、まぁ悪い夢みたいなもんでしょ、冗談、冗談……」

 

 

 白昼夢白昼夢。あるいは私の幻覚に違いねーんだから、何を恐れることがあるのかって話だし? 膝がガックガクなのも気のせいだろ、きっと。

 

 ……いや。これは嘘(・)だな。私は嘘が何よりも大っ嫌いだから、この際正直に言う。

 

 見たくない。

 ……でも、見ないと。こうしている間にも、もしかしたら──そ(・)う(・)な(・)っ(・)て(・)し(・)ま(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)かもしれないから。

 

 深呼吸を一つ、二つ……、そして三つ。

 きっとひどい顔色をしていたけど、それでも私は意を決して、角を曲がった。

 

 

「…………あれ?」

 

 

 どのような状態であるにしろ、そこには誰かが、あるいは何かがあると思っていたんだけど。しかし私は思いっきり肩透かしをくらったような気分になった。

 

 だって、そこには。

 何(・)も(・)な(・)か(・)っ(・)た(・)か(・)ら(・)。

 

 誰かが落ちたような痕跡なんて、まるでなくて。だからいよいよ本当に、さっき見た絶望的な光景は、私が見た幻覚だったんじゃないかと思い始めてしまう。

 

 ……それか、アレかな。私が知らないだけで、なんかこう、屋上にまつわる七不思議的ななにかがあるのかな。いやでも、流石にそれはオカルトすぎるだろ……?

 

 とかなんとか、早鐘を打つ心臓と混乱する内心を抑え込みながら、一匹狼らしくもなくうだうだと考えていたところで。

 

 視界の端の方──具体的には、それなりの高さの木。

 その上から、真唯とれな子が降りてきた。

 

 ……落ちてるんじゃん!

 やっぱり落ちてんじゃねえかよ、バカ‼︎

 

 

「あっ、桜歌さん……⁉︎ ど、どうしてこんなとこにいるんでしょうかね、へへ、へへ……」

 

「おや、まさか桜歌も休憩しに来たのかな。まあ君は日頃から『一匹狼』を自称していたし──」

 

「なワケないだろ、どんだけ心配したと思ってんだバカぁ‼︎」

 

 

 ……自分でもびっくりするくらい、おっきい声を出してしまった。でも、出るだろ! 誰だって心配するだろ、知り合いが二人屋上から落ちたんだぞ!

 

 あと、ついでに。

 ちょっともう、歯止め効かないかもしれない。

 これ以上我慢するとか、マジでムリなんだけど。

 

 

「──ふっ。まさか目撃されていたとはね。だけど、どうか心配しないでほしい。見ての通り、私たちは大きな怪我一つしていないよ。そうだろう、れな子?」

 

「えっ、あっ……うん! じゃなくて、はい! 木に落ちたおかげで、ちょっとした擦り傷だけで済んでるっていうか? むしろバンジージャンプみたいでいい経験したというか……」

 

「いいわけないだろが! 屋上だぞ、屋上から落ちたんだぞ⁉︎ 私はそれ見て、もう、もうダメかと思って、こんな、こんな思いにさせといて……バカ、バカぁ……」

 

「あっ、えっと……ど、どうしよう真(・)唯(・)⁉︎ わたし、なんか間違えたっぽい!」

 

「うーん、私が大丈夫だと言っているのだから、本当に大丈夫なんだが……」

 

「それでもなぁ! 心配するんだよ、人が落ちたら普通はな‼︎ 天下の王塚真唯といえど地面に墜落したら……、大変なことになるんだから! だからバカって言ってるんだ、バカぁ‼︎」

 

 

 怒りからか、心配からか、それとも安堵からか。

 私の視界は、意図に反してどんどん滲んでいく。

 

 一匹狼でも、知り合いを案じるくらいはする。クラスメイトが大変な目に遭ってたら助けたくなるし、もちろん心配だってするんだ。

 

 どうにかそれを伝えたかったけど……、どうやら私は自分が思っていた以上にメンタルがヤバヤバらしくって、この後何を話したかとか、全然まったくこれっぽっちも覚えていないのだった。

 

 ……一匹狼目指してるやつの精神状態じゃなさすぎるけど、それも仕方ないだろが。誰に向けてってわけじゃないけど、そう言い訳だけはさせてもらうからな、断固として!

 

 

 

  * * *

 

 

 

 ほんと、もう、ムリ。

 そんなことを考えてたちょっと前のわたしよ、お前は今、クラスメイトをギャン泣きさせちゃってるよ……!

 

 どうしてこうなったか、ちょっと考えてみよっかな……。というか、考えないとダメだよね。れな子よ、現実から目を背けるでない。

 

 わたし──甘織れな子は、高校デビューに大成功した高校一年生である、コミュ障の陰キャだ。確かにそれなりに頑張ったけど、努力が実を結びすぎてる気がする。

 

 わたし、未だにドッキリを疑って、家に帰るたび部屋中探し回ってカメラが隠されてないか確認してるからね……。毎日毎日息苦しくて、無呼吸で遠泳してるような気分です。

 

 そんなわたしは、なんの手違いか、もしくは人違いか……、スクールカースト最上位に位置する陽キャグループ、クインテットの皆様がたと共に、キラキラした学校生活を送っていたわけ、なんだけど。

 

 ……コミュ障陰キャには、耐えられるわけなくってぇ……!

 

 どうしてみんな、そんなに揃いも揃ってキラキラしたオーラを振りまけるのかが、わたしには分からない。どんな人生送ってきたら、あんなに『陽ッ!』って雰囲気を出せるんだろう? 

 

 やっぱり陽キャの皆様がたはわたしと違って、毎晩布団に入った時『今日のあの会話、もっと上手い反応の仕方あったよなぁ……』とか考えたりして、眠れない夜をやり過ごしたりしたことはないんだろうなぁ……。

 

 ──とか! そんなことを考えて屋上に避難したわたしは、後ろから着いてきていた、クインテットのリーダー的存在である王塚真唯に気づいていなかった!

 

 そして王塚さん……真唯に突然声をかけられたわたしは、それはもう大変大袈裟にビビり散らかしてしまい。結果として、屋上の柵を乗り越え、そこから落下した、と。

 

 しかも、真唯まで一緒に落下するなんてね……。いくら自信があったからって、わたしを助けるため、一緒に屋上から飛び降りるとか……それもうスパダリとかじゃなくてスーパーマンじゃん、みたいなことを思ったりもした。

 

 ……で、問題はここから。

 いやまあ、ここまでも十分に問題だらけだったけど……。

 

 

「れな子お前なぁ……! ダメだろが、危ないことしちゃ! なあ、なあなあなあなあなあ‼︎」

 

「ご、ごめんなさい……?」

 

「ホントに分かってるか⁉︎ 私がなんでこんなに、こんなに怒ってるか‼︎」

 

「えっとまあ、はい……なんとなくは」

 

「いーやお前は分かってないね! もうホント、れな子お前……バカ! とにかくバカぁ‼︎」

 

「じゃ、じゃあなんて答えればよかったんですか……」

 

「知るかぁ‼︎ 私がそんなこと、知るわけっ、ないだろが……」

 

 

 ──わたしのせいでクラスメイトが号泣してしまった!

 

 大神桜歌さん。どこに出しても恥ずかしくない陽キャであり、クインテットの一人……だと、わたしは認識してる。

 

 わたし?

 わたしはほら、添え物なので……。

 

 大神さんといえば、キリッとした顔立ちに濃紺の髪色。ウルフカットはこの人のために開発されたんじゃないかってくらい似合ってる。運動神経抜群──ついでに威圧感も抜群! 今は涙でぺっちょぺちょになっちゃってるけど……。

 

 少なくともわたしの通う芦ケ谷高校において、『ウルフカット』という単語を出せば『ああ、大神さんのことね』ってなる。生粋の陽キャってすごいよね。わたしは、そうはなれない……。

 

 その見た目や振る舞いから、密かに人気を集めているとかなんとか。真唯は王子様的なかっこよさで通っているけど、大神さんは別ベクトルで、それこそ荒々しいかっこよさで通ってるらしい。わたしも、気持ちはなんとなく分かるかも。

 

 ……本人は『一匹狼』を自称しているらしいけど、その割にはよく人助けをしたりしている。香穂ちゃんは『ギャップ萌えすぎやしねえかい』みたいなことを言ってた。

 

 わたしも入学してすぐに、教室の場所が分からなくて迷っていたところを助けてもらったりした。その時は『不良に助けられる捨て猫って、こんな気分なのかな……』とか……、今にして思えばめっちゃ失礼なことを考えたりもした。

 

 ……でも、流石に二ヶ月も同じクラスで生活してれば、いくら擬態型陽キャ……コミュ障陰キャのわたしでも色々と察するところがある。それは何かっていうと。

 

 

「桜歌。見ての通り、私たちは大きな怪我一つしていない。だからそんなに心配せずとも──」

 

「だぁかぁらぁ! 心配! する! だろが! 友達が死んだかと思ってたんだから心配するに決まってるだろがぁ‼︎」

 

「──むう。確かに、それもそうか……?」

 

「ま……王塚さん、普通は大神さんの反応で正解だから──えっ、というか大神さん、いま私たちのこと友達って」

 

「はぁ⁉︎ 言ってないが⁉︎ 私は一匹狼目指してるんだってば‼︎」

 

 

 ──この人、お(・)人(・)よ(・)し(・)す(・)ぎ(・)る(・)!

 いやまあそりゃ、大天使こと紫陽花さんの幼馴染らしいから、なんとなく予想は付いてたけどさ⁉︎

 

 この感じだと多分、幼少期から無意識に紫陽花さんの影響を受けまくっちゃったせいで、一匹狼を目指しつつも他人を放っておけないっていう、ものすごい人格が形成されちゃったんだろうね……。

 

 ……それにしても、友達かあ。それも多分無意識なんだろうけど、これはわたしも……、期待とかしちゃってもいい感じなのでは! なのでは⁉︎

 

 

「れな子ぉ! 話聞いてんのか⁉︎ ホントにお前なあ、次また心配かけたらぶっ飛ばしてやるからな⁉︎」

 

「えっ、えっ?」

 

「『えっ?』じゃない! さっきからずーーーっと、困ったら私にじゃなくてもいいから相談しろって言ってるだろが! 反省しろこのバカぁあ‼︎」

 

 

 ……こ、これは……心配されてるのか怒られてるのか、どっちだろう? しかもやっぱり人のよさを隠しきれてないし。

 

 大神さん。ムリして擬態型陽キャやってるわたしが、言えることじゃないと思うんだけどさ。

 

 一匹狼、向いてないと思う。

 

 

 







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