一匹狼とかなれるわけないじゃん、ムリムリ!(※やっぱりムリだった⁉︎) 作:陰陽キャ
スーパーで山ほどの……、つまり大きめのレジ袋ひとつがいっぱいになるくらいの駄菓子を購入した私は、特になんのアクシデントもなく、『この世で唯一の徒歩で行ける極楽浄土』こと紫陽花ん
実は一匹狼ことこの私、大神桜歌は、大体週に一回くらいの頻度で紫陽花ん
普段から何かと苦労の多い紫陽花に、わざわざお弁当作ってもらってる私としては、やっぱり何かしてあげたいと思うわけで。だからこうして、無理やり紫陽花が休める時間を作り出してるってわけだ。
衝撃の事実かもしれないが、一匹狼も子育てくらいするんだぜ──いやまあ、別に広樹と桔平が私と紫陽花の子供だって言ってるわけじゃないから。これ、マジで言ってんだけど!
……気を取り直して。一見すると紫陽花を休ませるにあたって完璧に思えるかもしれないこの作戦……、しかし一つだけ、大きな問題があるのだ。それは──
「ま、また四位……広樹も桔平も私のこと狙いすぎだろが! 一人狙いとか、マジでムリなんだけど!」
「桜歌が緑コウラ全部当たるのが悪いんだよ!」
「それにバナナとか勝手に踏んでるだけじゃん!」
「桜歌ちゃん、アイテム全部当たってたね……。ごめんね、なんだか手を組んだみたいになっちゃって」
「……紫陽花はいいの!」
──全然紫陽花もゲームに参加してくんだけど!
私はあくまで! 普段から共働きのご両親に代わって弟二人の面倒を見ている、健気で可憐な紫陽花を休ませてあげたいだけなんだけど!
当の紫陽花はむしろ、私と遊ぶことが──じゃなくて、弟たちとゲームをやることが息抜きになっている……のかなあ? でもそうでもなけりゃ、休める時間を削ってゲームとかしないだろうし。
ちなみに今やってたゲームは対戦型のレースゲーム。アイテムとか使って加速したり、あとは妨害したりできるタイプ。
このゲームソフト、何年か前に私と紫陽花で半分ずつお金を出して買ったのよね。紫陽花は『うちに置きっぱになっちゃうから、申し訳ないし全部出すよ?』って言ってたけど、そこは
普段から世話になってんだから、こういう時くらい手助けさせてほしいし。一匹狼は仁義を重んじるので、恩は必ず返すのだよ。フハハ。つーかそもそもうちにゲーム機ないし。
……ちなみに私はゲームが下手です。私がレースで一位を取るよりも、猿がタイプライター適当に叩いてシェイクスピア書き上げる方が、よっぽど現実味あると思ってる。
でも、まあ。
負けに負けまくって煽られたりするけど。
この時間は、全然嫌いじゃない。むしろ好き。
「桜歌、ヘタクソ〜」
「ヘタクソ〜!」
「お、お前らなぁ……! 私のことナメすぎじゃねぇか……⁉︎ あと私のことは『桜歌ねぇ』と呼べ! 昔のかわいかったお前らはどこ行った!」
すかさず広樹と桔平に襲い掛かろうとする私。そりゃもちろん演技なんだけど、二人は『桜歌が怒った!』みたいなこと言って、きゃいきゃい楽しそうにしてた。
一応言っといてやるけど、同年代の女子にそれやるなよ、距離置かれるから。……いやまあ、広樹と桔平が
とかなんとか、具体的には『私が紫陽花の妹だった世界線』について思いを巡らせていたところで。紫陽花がコントローラーを置いて一言。
「はい! こーくんもきーくんも、一旦ゲームはおしまい! 学校の宿題、まだやってないでしょ?」
「え〜⁉︎ せっかく桜歌来てるのに?」
「あと一回! あと一回だけ!」
どうやら二人とも、まだ宿題やってなかったらしい。前々から『先にやっといたら後が楽』って言って聞かせてんのに、男子小学生すぎるぞ、男子小学生ども。
……ま、こんなことは織り込み済みだ。
紫陽花に無駄な労力を掛けさせるわけにもいかないし、ここは私が一肌脱いでやるとすっかな。
「広樹、桔平。宿題終わらせたあとでもっかい相手してやるからさ。で、そこでもし次も私に買ったら──この
巧みに隠していたレジ袋をすかさず取り出し、二人に見せつける私。ぶっちゃけ元から渡すつもりだったけど、流石に瀬名家とは長い付き合いなので、こうなることも見越していた。
いいか、よーく覚えておけ。
男子小学生は、
私のやり方では、広樹と桔平はこう動かす。
「分かったら返事! 今すぐに宿題やらないんだったら、私と紫陽花でこれ全部食べちゃうからな! ……って、あいつらどこ行った……?」
「宿題やりに行っちゃった。こーくんときーくん、桜歌ちゃんの言うことだけはやたら素直に聞くよねえ」
「は、早すぎだってば……。にしたって、二人とも現金すぎるだろが!」
「そうかな? 二人ともあんな感じだけど、ホントは桜歌ちゃんのこと、大好きだからだと思うよ。今日だって、すっごく楽しそうだったもん」
……そ、そうすか。
私から見たら完全に、私のことからかって面白がってるだけなんだけどな。いやまあ、それでも嫌われてるより随分かマシだけども。
んまあしかし、確かに結構な頻度で遊びに来ては、その度にあいつらに構ってやってるし? 懐かれてるに越したことはないっしょ。ふはは、鼻が高い。
てな感じで、広樹と桔平の相手をし続けた私が、一息つきつつ、ぐいぃーっと伸びる猫みたいに(一匹狼だけど)身体をほぐしたところで。
なんだかもじもじしている紫陽花が、突如として話題を切り替えてきた。
「……あのね、桜歌ちゃん。今日、教室でれなちゃんと一緒に、私のこと話してたでしょ?」
「んぇっ⁉︎ あっ、あぁ〜……、そんなこともありましたね……? ご、ごめんなさい……」
「あっ、ううん! 全然ね、怒ってるとかじゃなくって。それに、私のお話してくれるのは、気にしてないんだよ? でも、その……、私もひとつ、言っておきたいことがあってね?」
勝手に地に伏してしまいそうになる身体を、なんとかギリギリのところで起き上がらせた私は、そのまま紫陽花に視線を合わせた。
するとそこには、なんだか
予想とはまったく違った
「……さっき、こーくんときーくんは桜歌ちゃんのことが大好きだ、って言ったけどね。それ、
「……そ、そうなの? いや、いやぁ〜ハハハ照れるなぁ……。じょーだん言うとか、珍しいじゃんか」
「冗談じゃなくって、ホントのことだからね……?」
「…………」
あの、えっと。
もしかして私って今日死ぬのか?
いや、だってさ。考えてもみなよ。紫陽花ん
死ぬじゃんか。てか告白じゃんか。いやマジで。
だって今後の人生における幸運全部使い切っても、体験できるかどうかの幸運だろ、こんなシチュエーション。
いや女子同士なら『大好き』くらい、そりゃ言うんだろうけどさ。それにしちゃ、なんだ、
きっと前世の私は頑張って立派に一匹狼やってたに違いない。それを見ていた神様が、今こうしてご褒美をくれたんだろう。ありがとう、神様。よくやった、前世の私。
……でも。
私じゃ、紫陽花に……、これ以上の迷惑をかけることになるだろうし。
「……紫陽花。私は──」
「だからね、桜歌ちゃん。桜歌ちゃんが私のことをどう思ってても、私は桜歌ちゃんのこと、大好きで大切な──親友だと思ってるから……!」
…………?
?
「──ぁ、え? し、しんゆう?」
「そ、そうだよ。普通のお友達よりも、大好きで、大切な、
「……は、はは、そっか。それは……」
なぁんだ。
私の早とちりか。
いやあ、まいったまいった。私だけ一人で舞い上がって、バカみたいじゃんか。危ない危ない、危うく自滅するとこだったっつーの。
しかししかし、親友ねえ。
あの流れから、親友かあ。
流石に、それはヘコむなぁ──
「いやそれ普通にありえん嬉しいんだけど……⁉︎」
「──えっ、ええっ⁉︎ そ、そう? ホントに嬉しいって、思ってくれてるの?」
「だって、私も紫陽花のためなら死んでもいいってくらい……、その、大切に思ってるし? だから、まあ……、そんなふうに思ってくれてたんだったら、こんなに嬉しいことないよ、いやマジで」
「そ、そう……? えへへ、ならよかったぁ──けど、冗談でも『死んでもいい』とか言わないの。私、桜歌ちゃんが傷付いたら、桜歌ちゃんより悲しむからね?」
「はは、ごめんって。悪い冗談だったわ、流石に今のはね」
「ほんとに、もうっ……。もうっ!」
はにかみながらも、しかし少しだけ怒っている様子の紫陽花。窓から差し込む夕焼けが、いつもよりも紫陽花の魅力を引き出しているように思えてならない。
いやしかし、随分と恥ずかしいこと言っちまったなあ……。時間帯が悪いよ、時間帯が。なんでこんなにいい夕焼けなんだ。あといきなりとんでもない話を振ってきた紫陽花が悪いんだってば。
そんなことを考えつつも、しばらくの間、私たちは二人揃っておかしそうに笑ったのだった。こういう時間も、たまには必要だかんね。
──それにしても、だけど。
紫陽花のためなら、死んでもいい、かぁ。我ながら大層なことを言ったもんだよね。
まあ、でも。
一匹狼がどうこうとか抜かしながらも、私が今日までまともに生きてこれたのは、まず間違いなく紫陽花のおかげでしかないわけだし。
紫陽花が困ってたら、何が何でも助けてあげたい。
前にも言った通り、私の優先順位において、紫陽花を上回るものは存在しないのだ。
まあでも、紫陽花にわざわざこんなことを言うつもりはない。間違いなくプレッシャーに感じちゃうだろうし。冗談めかして言っとけば、流石に紫陽花も気づかない。
つまりはまあ、それくらいに感謝してるっつーこと。
だから、紫陽花のためなら死んでもいい。
これ、マジで言ってんだけど。
やたら伸びたなと思ってたら、どうやら日間ランキング9位に入ってたらしいです! 感想や評価、お気に入り登録やここすきなどをしてくださった方々には感謝してもしきれません、本当にありがとうございます! 今後ともよろしくお願いします!