一匹狼とかなれるわけないじゃん、ムリムリ!(※やっぱりムリだった⁉︎) 作:陰陽キャ
人生のセーブポイントこと紫陽花ん
これまでの私の様子からは信じられないかもしれないけど、一匹狼ことこの私、大神桜歌は今日も今日とて一匹狼ポイント稼ぎに精を出していた。マジだかんな。
実のところ、一匹狼ってのはこれで案外、奥が深いんだぜ。字面だけ捉えると『一人でいりゃいいんでしょ?』って思うかもしんないけど、そうは問屋が卸さないっての。桶屋も儲からない……、これはちょっと、普通に意味わかんないか。今のやっぱナシ。
んんっ……、咳払いして、閑話休題。
ぶっちゃけ言葉の意味、よくわかってない。
でも響きがかっこいいよね、閑話休題。
私が思うに、一匹狼とはすなわち
友達を作れなかったんじゃなく、あえて友達を作らなかったんですよ──そういう態度を平気なツラして取れるやつじゃないと、一匹狼にはなれないのだ。
それから『一匹狼だから人助けとかしません!w』みたいな、ただただ斜に構えてる態度も取るべきじゃない。だって、そりゃそうだろが。
例え話をしよう。
一匹狼であるお前の目の前に、足を怪我して階段を登ることもままならない人がいたとするだろ? 一匹狼の定義を履き違えているやつだと、ここで我関せずの態度を取るという、とんでもない愚行に及んでしまうことは想像に難くない。
バカ、バカ、ばぁか。そーゆーのは孤高なんじゃなくて、
だから私は、とんでもない勘違いバカ犬(バカ狼?)が増えてしまう前に、一匹狼道の先輩としてアドバイスを残そう。清く、正しく、孤高であれ。いやマジで。
「ふふん。いやぁしかし、紫陽花はいつもいいこと教えてくれるよな〜」
そんなふうに独り言を呟く私。
まあ、はい。実のところ今の話は、大昔の『一匹狼を履き違えてた私』に対して紫陽花が教えてくれたことを、私なりにわかりやすく再構成したものです。
呼吸する天国にして、慈愛の女神の代行者こと紫陽花の言うことに、間違いはあんまりない。てか、間違いはない。ないったらない。
この際だから言っとくけど。普通に、紫陽花とそれ以外の全人類で意見が食い違ったとき、間違ってるのは後者だから。これ、マジで言ってんだけど。
てなわけで、私は中学校になったあたりで今のスタンス、というか
とかなんとか、誰に向けてってわけでもない言い訳を繰り返しながら、昼休みの校舎を一人でぶらぶらしていると。あちこちからなんだか視線が飛んできたりする。
耳をすませば、色々と聞こえてくる。『わっ、クインテットのオオカミさんだ……!』だの『もしかして、また人助けかな?』だの……しまいには『王塚さんとはまた別のかっこよさがあるよね……!』だの。好き勝手言いやがって、普通に恥ずかしいだろが。
……はあぁ。わざとらしく大きめのため息をつく私。周囲の声は止み、ぶっちゃけ居心地が悪い──そんでもって、私なんかを真唯と比べたら失礼だろが、バカ。
ここは一つ、きっぱり意思表明しとかないといかんでしょうよ。私がマジなんだってこと、
そんなことを考えた私は、できる限り一匹狼っぽい印象を与えられるような態度を取りながら、一番近くにいた……さっき『王塚さんとは別のかっこよさがある』とか言ってた子に近づき、声をかけた。
「……あのさ」
「ひゃぃ……⁉︎ な、なんでしょうか、オオカミさん……?」
「真唯と比べないで。てか、並べないで。その……、流石に恥ずいんだわ。ほら、私って一般人っしょ? あとクインテットでもないから」
「ぅ、かお、近……!」
「これ、マジで言ってんだけど──
「手、手が……! わ、わかりましてぁ……」
「ん。あんがとね。じゃ、そゆことだから」
キャパいときのれな子みたいな反応しやがって。つっても私はそうなってるとき以外のれな子を知らんけども。なんか知らんけど、常に限界ギリギリみたいな感じだからな、あいつ。
じゃなくて、そうじゃなくて。
ふう。手を取ってお願いしたら、なんとか言うこと聞いてもらえた。これやると、意外と頑固な紫陽花でも
……なんだか余計に視線を集めてしまった気もする。今お願いした子も、どうやら目ぇ回しちゃったみたいだし。……へ、凹んでないから。そんなに怖がらせちゃったかな──とか、思ってないし、全然。
いやでも、小中学校のときとは
周りの連中は私に聞こえないくらいの声量でぼそぼそ言ってるけど、でもそれだって、なんかこう……悪口っ! とかそういう感じではない。もしやクインテット(未所属)パワーか、クインテット(未所属)パワーのおかげなのか?
このまま勘違い放っておくとか、マジでムリなんだけど……。でもこれぶっちゃけるとさ、私一人でどうにかできる範囲を超えてないか? だって
……もしかして私って、マジで人気あるのか? だとして、なんでだよ。いやマジで──マジでわかんないんだけど。
いやまあそりゃ見た目は悪くないとは思うぜ、自分でもさ。確かにこの前とか下駄箱にラブレター入ってたし(いつの時代だよって感じだ)、なんかみんなトイレの鏡とか譲ってくれるし。
でも、だからって。いくら見た目に気を遣ってるからって、ここまで好意的な視線で見られるかぁ? 自分で言うのもなんだけど、日頃から一匹狼自称して、しかも本気でそうなろうとしてるやつとか変だろ。
「……考えつく線としては、まあ香穂がなんかしてるとか?」
脳裏に香穂の無警戒な笑顔が浮かぶ。『オーちゃん、一人のときでもアタシのこと考えてるとか……もしかしてラブなのかにゃ〜?』とかなんとか言ってる。うるせぇ黙れイマジナリー香穂。
とっさに頭を横にぶんぶんと振って、イマジナリー香穂を存在ごと消滅させる私。周りの連中にそれを見られたが、目についたのは二人組の『もしかして今、紫陽花さんのこと考えてたのかな……⁉︎』みたいなひそひそ話。なんだそりゃ。
つーかなんで、私と話すやつはどいつもこいつも紫陽花を引き合いに出すんだ。ちょっと付き合いが長くて、すこぶる仲がいいだけの知り合いだっての。いやマジで。
「ねえ、勘違いしないで。そういうんじゃないから。……ないから」
「えっ、めっちゃ耳いい……じゃなくて、ええ、ええ! そりゃもちろん、十分承知しておりますとも、ええ!」
「しかもめっちゃ耳赤いよ……⁉︎ ではなく、失礼しました! 以後気をつけます、それでは今後のご多幸をお祈り申し上げます」
「えぇ……? んっ、んん、まあ……わかってくれたんならいーや。ちなみに、今の私は!
この学校、キャパいときのれな子みたいなやつ多すぎないか? どうなってんだ、今JKの間でれな子が流行ってんのか? 原宿に行ったら髪色を『れな子ピンク』に染めたやつらの群雄割拠なのか?
じゃなくて。そうじゃなくて。
私は特段深いことを考えずに──あと普通に誤解されるのとか嘘つくのとか嫌なので──そんなバカ正直な答えを寄越したわけだけど。それはどうやら、いわゆる
瞬間──ゴァッとざわめく廊下!
えっ、なになに、私そんなに変なこと言ったっけ……。それかアレか、言っちゃいけないこと言っちゃった? 世界の禁忌とか犯しちゃった感じ?
あまりにも唐突に湧き上がった周囲に、たまらず気圧され縮こまる私。周りは熱気で私は冷や汗。意味不明な形状のサウナかっての──ダメだ混乱しすぎて例えも全然意味わからなくなってる⁉︎
しまいにはどいつもこいつも好き勝手言い始めてしまった。声が重なりすぎて全然なに言ってんだかわかんないけど、ちょくちょく『その発想はなかった』だの『新説キタコレ』だの、『かみかほか⁉︎』だの『かほかみだろ!』だのと聞こえてくる。
暗号か? 暗号だったりするのか? いや絶対違うよな。じゃあホントに何言ってんだこいつら! お前らもっとわかるように話せよ、当事者置いてけぼりだろが! 怖いだろが! バカぁ!
……と、まあそんな感じで。
周囲の雰囲気が明らかにおかしくなったことを察した私は、とっとこ走って教室へと退散し、そこで大人しく休み時間を過ごすことにした。
人の噂も七十五日と言うけれど、ああいう変な噂は大抵の場合、数時間やそこらで立ち消えるものと相場が決まってんだよ。
「……今日はまた随分と疲れているのね。それに、帰ってくるのも早かったし」
「おっと? 紗月が私の心配とは珍しいじゃんか。ついにデレるつもりになってくれたってこと?」
「今すぐ楽にしてあげましょうか?」
「んー、遠慮しとく。そこまで疲れてないし──」
「今すぐに、
「──あ、ハイ、そっちの意味ね……ナマ言ってすんませんっした」
「遺言はそれでいいのね? 瀬名紫陽花には一言一句
紫陽花へ。
わりぃ、私死んだわ。
……いや冗談だけど。お互いにね!
というわけで、これが私の日常風景。
平凡で華麗なる学校生活の様子をお届けしました。
* * *
「オ〜ちゃ〜ん! ちょっとツラ貸して〜!」
平凡で華麗なる学校生活をお届けしてから──おおよそ三時間後。一匹狼ことこの私、大神桜歌は、かつてないピンチに陥っていた。
眼前には微笑みを浮かべながら、
「えっ、と……? 直接会うなら、この果たし状はいらなかったんじゃ……?」
「ツッコミはあとでいいっての。ま、とりあえず、ネ? 空の雲の数数えてたら終わるからさ」
「…………そ、そうっすか……」
香穂、笑顔だけど、笑ってないねこれ。
私は一匹狼であるが故に、
……紫陽花、ごめん。私、マジで死ぬかも。
どうやら私、本当にやらかしたらしい。
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