とか言ってみたりします。
お気に入りで十分なほど嬉しいのでスルーで良いですよ。
只今絶賛全力疾走中です。スパイ
「・・・ぐううっ、もう限界だ」
「俺も・・・!」
体力が切れてしまった人は後ろにある熱湯風呂へ強制的に入れられることになる。
「「んぎゃああああああっつうううう!!!?」」
『10km/h加速します』
待って待って速くしないで速くしないで。
『持久走、お疲れ様でした。次の試験まで10分休憩です』
もう体力ミリでヘトヘトなんですけど。1時間全力はキツイって。
「六美ちゃん、おにぎりありがと・・・」ムシャムシャモグモグバクバクゴクン
「太陽、夕雅お兄ちゃん、お疲れ様!エネルギー補給しなきゃね!」
爆速でおにぎりを胃の中に入れていく僕と太陽。
「むしろごめんね、お兄ちゃんの無茶振りで・・・」
「六美が謝ることないだろ。安請け合いした俺が馬鹿だったんだ・・・」
少し前。
「「スパイ
なんですかそれ。
「20世紀初頭、有志のスパイが設立した『スパイ協会』が発行する由緒あるライセンスだ。合格率1%未満の狭き門をくぐったものには『情報の共有』『任務の斡旋』『スパイ年金』など様々な特典が与えられる。もちろん
「へー、こんなのがあるんですね。・・・了解です。試験っていつですか?」
「このパンフレットに書いてあるから確認しておけ。ただし試験に落ちるという醜態で家名を汚してみろ。ころ「まーた殺すとか消すとかですか・・・あっ」
太陽の失言。一瞬で逃げてるね。
「待て、その生意気な口縫い留めてやる」
「口スベりましたごめんなさいごめんなさい!」
「太陽頑張ってー」
「兄貴助けてええ!」
よっしゃ可愛い弟の頼みだ頑張ろう。
ゴメン無理だった。
「あ、そろそろ休憩時間終了だね」
「もうそんな時間か。・・・とりあえず合格目指して頑張るか」
小さな金属音。ナイフかな。・・・曲がり角にいるね。2人か。太陽の首にかかった賞金を狙う人だねたぶん。
そしてやっぱりこっちに来た。さっさと防ご・・・ん?
「受験生同士の攻撃はご法度だろう?」
「星降てめぇっ・・・!」
片方の人は狙ってるわけじゃなかったっぽい。勘違いしてごめんなさい。
「僕の愛しい人に手を出さないでくれ」
「フン・・・覚えてろよ・・・!」
「えっと・・・助けてくれてありがと・・・」
「礼には及ばないよ。愛するものを守るのは極々自然なことさ。汗ばんだ肌も魅力的だね、直に舌を這わせたいよ」
太陽の頬に残ってたご飯粒をとって口に入れた。誰このすっごいキモい人。
「六美気をつけろ不審者だっ・・・!」
「フフフ可愛いなァ。今更銃を向けてどうするんだい? 僕の心臓はすでに君に撃ち抜かれているというのに」
「何言ってんのコイツ超怖い!!」
「思い出した・・・!この人スパイ雑誌の『婦人密謀』で見たことある!」
「・・・知ってる人なんだ」
「老若男女問わず手を出す、スパイ界きっての
「ご紹介ありがとう夜桜当主」
「週刊スパイの『ウザキモスパイ』ランキングでは、凶一郎兄ちゃんともども優勝争いの常連よ」
「つまりヤバい人ってことね」
うん、太陽に近づかないでいただけると僕としてはかなーり嬉しいんですけどね。
「OKありがとう、とにかくヤバイ奴ってことだな」
「私の配偶者をたぶらかすのやめて下さる?」
「婚姻制度で僕の自由な愛は阻めないよ」
「ただのクズじゃん!」
一応枝垂は手に持っておく。太陽が襲われたときにはどうにかしないといけないし。
「辛い生い立ちにもめげない忍耐力。愛する者へのひたむきさ、誠実さ。端的に言って僕の大好物なんだ」
スマホでパシャパシャ太陽の写真を撮るのやめて下さい。太陽が穢れる。
「オイ、まさかその人形は俺じゃないよな・・・?」
さっきのスマホには1つのキーホルダーが。たしかに太陽そっくり。うん、太陽から(以下略)
「ああ、これは君の任務先などを聖地巡礼する中で拾い集めた君の髪や服の繊維で作っ・・・」
「い゙や゙あ゙あ゙あ゙聞かなきゃよかったああああああ!」
すーごい気持ち悪い。とりあえず太陽(以下略)
『間もなく試験再開です』
あ、そろそろか。
「ここで会えたのもまさに運命。さあ一緒に
「怖い怖い放してくれ!つーか力強っ!?」
・・・試験以外の不安要素ができちゃった。
その後も順調(?)に試験は進んでいった。
普通の計算問題が書かれた筆記テスト。銃弾に書かれた向きを判断する視力検査、肺活量でおもりを浮かせるテスト、っていう感じに結構鬼畜な健康診断。トラップだらけの移動中。なんかもうめちゃくちゃ。
これで本当に見極められるのか心配なんだけど。
あと、試験中にまさかの知り合いがいた。
「おお!? 夕雅じゃねえか!お前もここで受けてんのか!」
バイト先のおじさんがいた。あんたもスパイだったんかい。
「え、おじさん!? なんでここに!?」
「そりゃライセンスを獲得するためだろ? 最近お前話題だぜ〜? 『夜桜の守り手』だってな」
「その呼び方すごい恥ずかしいのでやめてくださいお願いします」
「いいじゃねえかいいじゃねえか」
僕はよくないんです。これ黒歴史確定だー。
星降さんが太陽に話しかけてる。うんさっさと離れ(以下略)
「お疲れだね、太陽、2人揃ってここまで残れたのもまさに運命だね。記念に僕の腕の中で休まないかい?」
太陽の今すぐにでも帰りたそうな顔。うんさっさと(以下略)
『皆さん、ここまでお疲れ様でした。試験はこれで終了です』
あー、やっとか。疲れたねだいぶ。
「よしっ!」
「やっとか・・・」
『皆さまの確かな技量に敬意を表し、その証としてライセンスを発行いたします。順次受け取ってお帰り下さい』
・・・あ、これってまさか・・・。
と思ったのも束の間、後ろの方の床が崩れだした。崩壊スピードは結構速いね。
「やっぱりいいいいい!!」
『情報保護のため、試験会場は毎年破棄されます。ライセンスを取りそこねると不合格ですのでご注意を』
「無茶苦茶だあああ!!」
何人も落ちていく音が聞こえる。
「ゔっ・・・」
「わ!」
「チクショー!!」
『来年の挑戦をお待ちいたします』
また全力疾走。先頭はキープできてるしこれは間に合いそうかな? おじさんも隣。
ガッ
後ろで誰かが殴られた音が。
「ッ・・・!」
「おっとゴメンなァ!!」
太陽が隣の人に殴られて倒れた。さっき太陽を狙った人だ。
・・・へえ?
「ちょっとすみませんねー」
「おい、夕雅!?」
後ろから走ってくる人の前に立つ。僕もそのまま殴り飛ばそうとしてるね。
でも、そんなのわかってさえいたら通用しない。
「邪魔だぁ!どけ!」
「あなたの方が邪魔です・・・よっ!」
腹を蹴って、後ろに思いっきり吹き飛ばす。
「ぶごっ!?」
変な声を出して吹き飛んでいった。さよならー。
・・・ってそれはそうと、太陽もまずい。枝垂でなんとか巻き付けられるか・・・ん?
「絶望した顔も非常にそそるよ。でも、諦めない君の背中は、なお美しい」
「えっ・・・!?」
星降さんが太陽の身代わりになった。
星降さんが太陽をかばってリタイアになろうとしたけど、それを太陽が止めた。ただ、これだと太陽も落ちる可能性がある。
・・・そんな感じで2人ともリタイアになるのは嫌だし、太陽にはちゃんと合格して欲しい。
だから枝垂を飛ばして、太陽に巻き付けた。
強度は問題ない。後は僕が加重に負けないようにするだけだ。
「なんとか捕まえた。・・・太陽!そっちは大丈夫!?」
「大丈夫!引き上げてくれ!」
よし、大丈夫だね。・・・ただ、上げれるかな? 結構ギリギリなんだよねこっち。
って思ってたら、おじさんが手伝ってくれるよう。
「なかなか良い判断じゃねえか。・・・決定だな」
・・・決定ってどういうことです?
そういえば今気づいたけど崩壊が止まってる。なんで?
そう思ってたら、急に枝垂が軽くなった。見てみると、太陽と星降さんが二人で上がってきてた。風を起こして登ったっぽい。あれ結構良いね。今度練習しよう。
「受験番号159番、朝野太陽。合格だ」
「同じく受験番号158番、朝野夕雅。合格だ、おめでとさん」
「・・・どういうことです?」
「改めて自己紹介したほうが説明しやすいか。俺とあっちの星降は銀級スパイでな。この試験での『試験官』だ。技術や能力もスパイとしては必要なもんだが、こっちだと何よりも『人間性』が重視される。毎試験でお前のような受験者1人1人に銀級スパイが付き、行動を監視する。この試験では受験者が協会の一員として信用できるか、ってのを確認する物でもあるんだ」
「で、その基準を満たしたら試験官が合否を伝えるって感じですか。・・・僕あの人蹴り飛ばしましたけど」
「あいつは基準に満たない行動をした。残ってても間違いなく不合格。お前もそんな行動をしたが、弟を助けたという点で十分プラスだ。だから問題なく合格ってわけだ。あと、スパイライセンスは上から金級、銀級、銅級の3つに分かれている。駆け出しのお前は『銅』のカードだ。銀級に上がるには試験があるからそれを突破してからだな。金級は知らん。一説によると現金級スパイの3人の推薦で変化するらしい」
「ほへー。・・・ああ、ということはあの星降さんが太陽を好きって話も演技ですか」
「いやあいつはたぶん普通にプライベートな発言だぞ」
・・・えっ。
「太陽逃げてー!」
「兄貴助けてえええええ!」
うーん、なんとも締まらない終わり方。
お父さんたちの情報を探しに、太陽が『故人図書館』っていうところに行った。僕も行こうとしたけど二刃さんに連行されて訓練してました。
「・・・だいぶ足元はまともになってきたね」
「投げ飛ばされた後にそれ言われても嫌味にしかならないんですけど。・・・でもまあありがとうございます」
「手元はまだまだ未熟だけどね」
「やめてくだあああああ」
僕を浮かせてぐるぐる回すのやめてください。目が回ります。
「まあ、今日はこんなものだろうね。汗を流してきな」
ガチャ
「四怨ー。今どんなじょうきょ「わ!」
耳がキーンってなった。今何が起きたの。
「・・・六美ちゃん? 今何で大声を・・・」
「あ、夕雅お兄ちゃん。今来たの?」
「うん。ドアを開けた瞬間びっくりさせられたよ」
『・・・音に敏感だから爆音に耐えられなかったのか』
「四怨姉ちゃんのイヤホン性能ならいける気がしたの」
・・・状況はよくわからないけど、とりあえず。
「・・・任務は終わった感じ? 太陽」
『兄貴もいたのか。・・・一応手がかりらしきものは見つけられた。帰ったら伝える』
ん。了解。
「母さんたちが六美のお母さんの結婚披露宴に出席してたってのは知ってるよな?」
「四怨が解析した結果出てきた情報だよね?」
「そう。それで父さんたちの情報がないか探しに行き、父さんの情報は見つけられた」
「あ、よかった見つかったんだね。ないかもって不安だったから」
「で、それで父さんの情報のところにタブレット式の光学体挿入口があった。それであのビー玉を入れたら『朝野一家 タンポポの手により全員処分済み』って情報が出てきた」
「・・・『タンポポ』?」
「俺もまだよくわかってない。あとその後不正アクセスで情報端末が爆発して館長に襲われかけた」
「館長・・・あ、だから六美ちゃんが大声出してたんだ」
「そう。兄貴みたいに耳が敏感だと、爆音を聞いて倒れる可能性が高いからな。兄貴も辛三兄さんの大声で気絶したことがあっただろ」
「あの偽札のときだね」
「四怨姉さんのイヤホンの性能が高くて助かった」
調査していくうちに、僕達の事故の前後一ヶ月で15人、医療関係者が死亡しているってことがわかった。しかも
そして、全員と関与がある人間として皮下って人が浮き上がったらしい。だから皮下医院に太陽が潜入することになった。老人に変装して。
「あ、見えてきた見えてきた」
「あれが皮下医院・・・!」
「さあ、潜入するわよ。太陽!」
シワの刻まれたハゲ頭に白髪がぴょいと生えてる。あと白くて長いヒゲ。
「・・・この太陽、違和感すごいね」
「それなりに変装してきたけど、これは違和感が過去最高かも・・・!」
「ほらほら、患者さんなんだからもっとぐったりしてなきゃ!相手が太陽を知ってるかもしれないしね。太陽は持病で転院してきた昼川恒星75歳!そして私は夫一筋50年の妻、昼川六子75歳!」
「僕はその孫の昼川夕介18歳」
「楽しそうだなふたりとも」
「じゃ、行くよお爺ちゃん!」
そう言って思いっきり車椅子を押し、移動する。なんかやけに重いね。
「速い速い速い速い!老人をもっと労ってくれ!」
「持病の方は落ち着いてますね。つーかこの年で歯に欠けなしなんて超優秀っスね!」
「はあどうも・・・。わ、わしの自慢でして・・・」
「ま、紹介状くれた山下先生に比べりゃ俺なんかまだまだですけど精一杯頑張ります!何かありゃ気軽に言って下さい!」
・・・想像以上にフランクな先生だった。
「じゃ、病室を案内するんであの看護師に付いてって下さいね!」
「わかりました。・・・ああ、夕介は帰っててもいいんだよ? 退屈な話ばかりだろうし」
「じゃ、先に帰ってようかな。お婆ちゃん後はよろしくね」
「はーい」
「お孫さんもお大事にー」
「・・・『ソメイヨシノ計画』、か」
「皮下のパソコンに隠されてた情報を抜き取ってきた。詳細はこのUSBに入ってる」
ならパソコンに繋いで、と。
『ソメイヨシノ計画の概要と課題』
『スパイ一家『夜桜家』
代々優秀な人材を生む裏社会の名家。
だがその生物学的な機構は極めてシンプルである。
夜桜当主の血液に含まれるタンパク質『ソメイニン』は細胞の分裂速度と分裂限界を増強する。
これが夜桜家一族の五感や身体能力の高さの要因である。
この『ソメイニン』は夜桜以外の人間が接種した場合にも効果が出るため、夜桜後は極めて強力なドーピング剤として注目されている。
『ソメイニン』の合成方法は確立されておらず、生物兵器としての大量生産及び流通網形成に必要なのは、『ソメイニン』の生産工場である夜桜六美の『心臓』である』
「だから狙われてるんだ。色々不便なところもあるんだろうね。・・・太陽」
「ん?」
「六美ちゃんを支えてあげてね。それが夫婦だから」
「・・・言われなくともそのつもりだ」
なら、大丈夫だね。
・・・随分と命が軽い世界に来ちゃったなあ。いや、命が軽かったのは前もか。
当たり前は予期せず奪われるんだから。
数日後。
麻薬密輸犯を捕まえる任務だった。今日はこれで任務が終わったことだし、さっさと帰れるね。
「ただいまー」
「あれ、兄貴。早く終わったんだな」
「ん、太陽。六美ちゃんもいるんだ」
「ちょっとゴリアテを散歩させてくるの。お兄ちゃんはどうする?」
「うーん・・・。いや、僕はいいかな。夕飯の準備とかするし」
「そう? ならいっか。じゃ、いってきまーす」
「いってらっしゃーい」
そのまた数日後。
「あれ、今日も2人で出かけるんだ?」
「うん。クラスメイトの道端って人に水族館のチケットを貰ってね」
「デートなんだね。楽しんでおいでー」
・・・道端ってこの前凶一郎さんが言ってた人のことかな。えーっと確か・・・『スパイ技術を乱用する救いようのないゴミ』って言われてた人。太陽と同じ学校にいるって聞いてる。
・・・何か変なこととか起きなければいいんだけど。
結論。やっぱり変なこと企んでたっぽいけどこの夫婦には無力だったと。
太陽が今日のこと教えてくれたけど、とりあえず末永くお幸せにって感じ。
ただ、太陽。人混みの中で暗殺者がいないか探すために奇怪な行動を取るのはやめておこうか。
六美ちゃんも変な目で見られちゃうからね。
さらに数日後。四怨が話しかけてきた。
「夕雅ー、ちょっと手伝ってくれ」
「あれ、何か用?」
「解析だ。あたしは体使うゲーム苦手だからな」
「ん、オッケー」
「で、次はプランク45秒。その次は片手逆立ち20秒な」
「はーい」
なんか普通に筋トレしてる感じ。以前だったらかなりきついお題だっただろうけど、今じゃ楽なもんだね。なんだかんだ肉体改造されてるし。
ガシャンガシャンガガガガガガガ
って思ってたら、家の周りから何かが稼働するような轟音が。
「『冬ごもり』か。どうせ嫌五だろうな」
「・・・『冬ごもり』?」
「当主の指輪でのみ発動できる、ウチの防衛機構の1つだ。外部からの攻撃で破壊することはほぼ不可能だし、ネットワークも遮断される。ウチ単体でネットワークは完結してる所も多いからその点はさほど問題ないがな。このゲームが止まることもまずないと思っていい」
「へー」
ピロピロリーン
「あ、解析完了したっぽいね。まだ何かある?」
「今日の分はあと3つあるな。てことでよろしく頼むぞ」
「はーい」
解析してたら太陽と六美ちゃんがやってきた。
「四怨姉ちゃん、嫌五ってこっちに来た?」
「まーた嫌五と鬼ごっこしてんのか。こっちに来た形跡はねェぞ」
「僕も見てないね。というかここの近くに来たなら音が聞こえたはずだし」
「兄貴、それどういうポーズなんだ」
「逆立ちで直立して1分間不動って感じのお題」
結構きついよ。揺れた時点でミスになっちゃうから。
「というか、一階の振動検知器に引っかかってないんだろ? なら二階を探せばそのうち見つかるだろ」
「それもそうだね。ありがと、四怨姉ちゃんと夕雅お兄ちゃん」
ガガガガガガガガシャンガシャン
またさっきみたいな轟音が。
「お、鬼ごっこが終わったぽいな」
さっきのが解除された音ってことだね。どっちが勝ったのかなー。
ピロピロリーン
「ん、解析完了か。やっぱり肉体派のやつ使うと早く終わる。サンキュー」
「あ、終わった? オッケー」
さっき太陽と六美ちゃんが来てから30分くらいで終わったぽい。
思ったよりすんなりだったね。って思ってたら、また六美ちゃんが来た。
「夕雅お兄ちゃん、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど・・・」
「あれ、六美ちゃん。何かあった?」
「うん。ちょっと嫌五の部屋に来てほしくて」
なんだろーね。
「部屋を片付けるの手伝ってほしくて」
「まずなぜ嫌五が全裸なのかの説明が欲しいんだけど」
「いつものことだからほっといて」
「はーい」
それにしても何このゴミ屋敷。ぐっちゃぐちゃじゃん。
「僕より二刃さんのほうが適任じゃない?」
「二刃姉ちゃん今寝てるの。起こしたくなくて」
「そういうことか、りょーかい。とりあえず嫌五は服を着なさい」
「えー、めんどくせ」
「握りつぶしていいかな?」
「どこを!?」
めんどくさくても隠すところは隠しなさいや。
「じゃ、片付けていこうか」
「めんどくせー」
「あ、何かの資料あったよ。ノリマキグループの潜入工作だって」
「あーそれ? 半年前のやつ」
「どこに行ったと思ってたら嫌五が持ってたのね」
やれやれ。・・・あ、手榴弾。
「太陽ー。手榴弾あるから足元は気をつけてね」
「え? あ、ホントだ」
結局3時間ぐらい片付けしてた。最後辺りからは二刃さん来てくれてだいぶ楽になったけどね。
「あー、・・・・・・・・え?」
寝てたら、体に何かが巻かれる感覚が。目を覚ますとそこには凶一郎さん。
「ん、起きたのか。海に行くぞ」
現在早朝4時。なんですか急に。
「なんですか・・・こんな時間に」
「いや? 兄弟同士、男同士で親睦を深めるために釣りにでも行くかと思ってな。太陽もいるぞ」
そこには糸でぐるぐる巻きの太陽。爆睡してて目は覚めてない。
いやあなたが太陽と仲良くしようとするビジョンが見えないんですけど。
絶対何か企んでる。
「ま、いいか。明日は任務はなかったはずだし。で、どこ行くんですか?」
「船に乗って海釣りだ。昨日六美がお弁当を作ってくれたから朝食は心配いらないぞ」
弁当に頬ずりしてる。いつも通り気持ち悪さ全開だね。
ということで船。
釣り竿を渡されてのんびり。・・・あれ、ホントに親睦を深めたかっただけ? 凶一郎さんは早速ウキウキで弁当開けてる。
「むにゃ・・・え、どこ!?」
「おはよー、太陽」
「おはようモグモグいい天気だからムシャムシャ太平洋沖にゴクン出てみた」
「説明になってない!」
「なあに、単純なことだ。兄弟同士、男同士で親睦を深めようと思ってな!さて、ウインナーのおかわりでもしようか」
ホントに親睦を深めようと思ってるのかもしれないけど、なんかこの人が言うと歯が浮くようなセリフになるんだよね。不思議。
「あ、大物」
「ほう、今日の昼だな。そこの穴に入れておけ」
「ほいっと」
この船冷蔵室、冷凍室が完備されてるタイプなんだよね。ササッと保存できるようになってるのはありがたい。というかこんな船持ってたんですね。レンタルかもしれないけど。
「いやー、最初は太陽や僕を餌にしてサメ釣りでもするのかと思ったんですけど。違ったんですね」
「無論それは考えた」
考えないでください。人は餌ではありません。
・・・いや場合によっては
「そう不審がる必要はない。訓練に見を投じるものへの手向けだからな」
「はい?」
「訓練?」
その時、太陽の釣り竿に潜水服を纏ってライフルを持った人が。
「太陽回避!」
「わああああああああ!?」
ギリギリ回避して蹴りを入れて制圧。誰この人。
「こいつは・・・!?」
「この程度でうろたえるな。密航を想定した会場訓練はスパイの基本の1つ。俺や二刃も幼い頃よくやったものだ」
「え、じゃあこの人って訓練のパートナーなんですか?」
「いや、夜桜家の戦闘訓練は原則実践だ。たとえば・・・」
そう言ってどこからかチラシを取り出す。
そこにはアホ面にデフォルメされた太陽の顔。周りには『夜桜大出血サービス』とか『最弱の男太陽がやってくる』とか。
「こんなチラシで敵を釣ったりな」
「こんなこったろうと思ったよ!」
「太陽、一旦集中しよう。見えるだけでも8人は来てる」
「ひえええええええ!」
「俺の目的はお前だ朝野夕雅」
あ、僕?
「邪魔です」
「こふんっ!」
蹴り飛ばしたら変な声出した。ちょっと前から思ってたんだけど、断末魔が変な人多くない?
「太陽、夕雅。お前たちはスパイ免許証の銅級に合格したな。銅級の任務難度は一ツ星から二ツ星。下の兄弟たちは小学生の頃すでに銅級か銀級だった。この訓練の難度はせいぜい一ツ星。お前たちも夜桜ならこなしてみせろ。まあ、常人のお前たちではいきなりは無理だろうが・・・」
「勝手に決めつけないでくださいよ」
「やれます。俺達は確かに凡人だけど、夜桜で鍛えられてますから・・・!」
とは言いつつも敵に囲まれて危ない状態。ちょっと一掃しようか。
暴れろ。――守球。
「「「「あぐばあああっ!」」」」
「ほぉ、頼もしい限りだ。ではこの場合はどうする?」
遠くから海中を何かが進む音。・・・まさか、これって。
「ぎょ・・・魚雷だァ!?」
やっぱり魚雷だ。これ避けられ・・・ないね。そのまま船に着弾して爆発。あ、お昼ご飯なくなっちゃった。
あと、なんか場所が良かったのか僕無傷。ラッキーと思っておこう。
「おーい、大丈夫ですー?」ホッペタペシペシ
さっきの人たちを船の破片の上に持ち上げた。全員息はしてるし問題ないね。
「ゲホゲホッ!? す、すまねェ、助かった・・・っ」
「これでおあいこですねー。さっきやりすぎちゃった気がしてたので」
「はっはっはっ、敵を助けるとは余裕だな」
「そういう凶一郎さんこそ余裕そうですけど」
浮き輪でプカプカ浮いてる。
「でも一体、誰がこんな・・・?」
そう言って魚雷の破片を見る。
そこにはあの『タンポポ』のマークが。
「餌で
「製薬だけじゃなく兵器を開発するのも一級品なんですか・・・」
「そのようだな。世界中に敷かれた反社会ルート、国家レベルの武力網。任務何度で言えば五ツ星を軽く超えるだろう。お前たちで太刀打ちできるレベルじゃない。退くなら今のうちだぞ」
そんな選択肢を選ぶとでも?
「家族が狙われているってことは僕の敵ですよね。そんな相手になぜ退く必要があるんです?」
「太刀打ちできるかは問題じゃないんです。六美が狙われている以上、退くなんてありえません・・・!」
「そうだな、珍しく同意見だ」
それと同時に太陽が糸で遠くに投げ飛ばされた。
「ええええええええ!?」
「太陽ーーーーーっ!!?」
「飛んでったな・・・」
「二発目が発射されたろう。数十秒で着弾する」
あ、太陽は魚雷の方に投げ飛ばされてたのね。
「俺はその程度無傷だが、他の連中は確実に木っ端微塵だな。夕雅も死ぬかもしれんぞ」ハッハッハッ
「えー僕死ぬんですか」
「可能性というだけだ。それに、忘れてるだろうがかつてのお前は身を捧げることでしか他者を守れなかった。だが、今のお前は免許を持つプロのスパイ。では問おう。お前にできることはなんだ?」
そう話した10秒ほど後に、さっきみたいな波しぶきが見えた。
「頼む止めてくれェ!」
「頑張れー!」
そして衝突まで5メートルあるかないかのところで巨大な波しぶきが発生。停止完了。
「止めたああああああああああああああ!」
「すげえよお前!」
「つーか殺そうとしてごめん!」
さっきの襲撃者が一斉に太陽に感謝してる。もっと感謝してもいいんだよ?
「1小隊とミサイル解除。おまけして星2つってところだな。・・・さて、来い夕雅」
「はい」
「太陽が停止させたこのミサイル。今度はお前が復旧し、敵の兵器にぶつけろ」
「あそういう感じですか」
まあ、さっさとやろう。枝垂を基盤に引っ付け、消失した動力を高電圧で強制的に復旧。
そしてスマホとミサイルを接続し、プログラムに侵入後対象を『侵入者』から『味方兵器』に変更。
あとは残存エネルギーを確認・・・6キロくらいならいけるっぽい。
「太陽、魚雷にしがみついてからここに到達するまでの秒数は?」
「えっと・・・推定40秒。長くみても1分」
ということは8キロは必要か。ちょっと足りないね。
「了解。ギリギリ距離が足りないから電気で補う。太陽、八重で充電するからちょっと貸して」
「え、いや充電って・・・」
「違う違う。八重はただの電源。枝垂を接続に使っちゃうから電源が欲しくてね」
「あ、そういう感じか」
そして充電。3キロ分くらいチャージできた。
「とりあえず完了です」
「ほう、なかなか早かったな。小隊制圧にミサイル復旧。スピードを考慮して同じく星2つといったところか。では行くぞ」
そう言って僕と魚雷が糸で繋がれる。・・・え、待って?
「これが酸素マスクだ。振り落とされるなよ」
口に押し付けられると同時、ミサイルが発進。心の準備できてないんですけど。
・・・水圧で体潰れそう。太陽よくこんな状態で解除できたね。
というか凶一郎さん? なんであなたは魚雷の上に直立してられるんです?
とか思ってたら、『タンポポ』の物らしき潜水艦が。いや、らしきじゃなくてタンポポで確定だった。マーク付いてる。
そのまま凶一郎さんが鋼蜘蛛で潜水艦をみじん切りに。うん、やっぱ化け物。
「さて、今日の任務はこれで終了だ。家までほんの1000キロだ。さっさと帰るぞ」ザバッ
「了解でーす」バシャシャシャ
「無理」ゴボ
結局太陽を引っ張って泳いで帰ったよ。帰宅まで3日かかった。
いやどこまで遠出してたんですか。