朝野家に1人増やしてみた話   作:uruka

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では本文スタートです。


夜桜の一員になりました。弟が無茶してます。

「ご飯は30分後にできるから、卵焼きでも作って・・・「朝野夕雅だな。連れ去らせてもらうぞ」いや誰!?」

 

朝食の準備をしてると糸目の黒服男が台所に侵入してきた。抵抗する時間も与えられず黒い縄で縛られて2階に連れ去られる。

 

いや最初に説明をください。

 

寝ていた太陽も強制的に起こされて僕と同じように縛られた。そして僕と太陽ごと窓から外に逃げ出す。

 

「あのー、ここ2階なんですけど?」

 

と口にしたのもつかの間、その直後に家が爆発。さっきは見えてなかったけど六美ちゃんもいるっぽい。

 

・・・何がどうしてこうなったんだろう。

 

 

 

昨日は太陽が手を怪我して帰ってきたぐらいで、それ以外変わりはなかった日だったはず。職場にも特にこれと言った変なことはなかった。いつものおじさんの猫が可愛かったくらい。

 

怪我のことを太陽に聞いても「ああ、ちょっと学校で」とはぐらかされた。深いところには踏み込まないと決めているためそれ以上聞かなかったけど。

 

 

 

昨日の夜のことを思い出していると、車に乗り込まされた。僕、太陽、六美ちゃん、怪しい糸目黒服の人の4人。あと運転手さん。

 

「さて、今の状況を説明するとしよう。たった今辛三から調査報告が入った。台所に爆弾が仕掛けられていたらしい」

 

はい? 爆弾? それが僕と太陽の家に? なんで? というか「しんぞう」って誰?

 

疑問が溢れ出てくるけど、説明とか一切無しですか。

 

「間違いなく狙いは六美だろう」

 

・・・六美ちゃん?

 

「六美を・・・!?でもなんでわざわざ俺の家に・・・」

 

「当然お前と六美の関係を知っているからだ。この業界は情報伝播がとにかく早い」

 

その時ふと太陽の手が目に入った。その隣にいた六美ちゃんの手も同時に見えた。

 

・・・あれ、昨日はなかった指輪が手にはまっているような気がするんだけど。それも六美ちゃんとおそろいの。

 

これでわからないほど僕は鈍くない。・・・えーっと、2人は幼馴染の関係だったはずなんだけど。僕が知らない間にそこまで進んでいたなんて。

 

喜ばしいことだけど可愛い弟が結婚まで行っちゃってお兄ちゃん悲しい。

 

なんで昨日言ってくれなかったの。というか付き合ってたことすら聞いてない。

 

「六美が・・・・夜桜・・・・・・・・当主・・・」

 

謎の男は僕が太陽が結婚してたショックを受けている間も話していたけど、話は殆ど入ってこなかった。いつの間にか二人が車から消えていたことにも気づかなかったというね。

 

 

 

 

「おい、しっかりしろ」

 

謎の男に額を叩かれた。その時車の窓から見えたのは見覚えのある豪邸。確かここって六美ちゃんの家だったはず。

 

そして屋内に案内されると、そこには何人も人がいた。白髪縦巻きロールのゴスロリ少女。ゴミ箱に入った上裸の緑髪の男。紫髪のヘッドホンを付けた緩い服装の女性。猫耳フードを被った黄髪の男。歪んだ目と口が書いてあるポリバケツを被った白衣の大男。あと黒い犬。

 

全員顔整ってる感じ。

 

「あんたが太陽の兄の夕雅かい?」

 

「え、あ、はい。そうですけど。・・・というかどちらさまですか?」

 

「よし、間違いなかったね。じゃ、あんたも気になっているであろう自己紹介だ。あたしは二刃。あんたもよく知っているはずの六美の姉だよ。ついでにおそらくあんたに何も説明していないであろうそこのバカは凶一郎。あたしの1つ上で、ウチの長男だ。んで、ここにいるのが・・・ほら、辛三。早く出て自己紹介しな」

 

身長低めだけどお姉さんなんだ。

 

「あ、う、うん・・・お、俺は、し、辛三。さ、さっき自己紹介してた、ふ、二刃姉ちゃんの1つ下」バタン

 

言うことだけ言ったらすぐにゴミ箱に潜り込んじゃった。というか声も震えてましたし人見知りですか?

 

「すまないね、こいつは極度のビビリでヘタレでさ。初対面の相手じゃまともに会話するのは厳しいんだ」

 

「あ、いえ、それは良いんですけど・・・。というか六美ちゃんに兄弟なんていたんですね。初めて知りました」

 

「ま、うちの家柄とかもあって隠すようにしてたからね」

 

家柄? と思ったけどそれを聞く前に紫髪の女性が話しだした。

 

「ま、次はあたしか。あたしは四怨。そこの引きこもり兄貴の1つ下さ。ま、よろしく」

 

「じゃ、次は俺か? 俺は嫌五で、四怨の1つ下。あと六美の1つ上な。ま、がーんばーれよっ!」

 

・・・ん?

 

「え、頑張るって?」

 

「ま、それはおいおい説明していくよ。あとはそこにいる七悪さね」

 

「僕は七悪。身体は大きいけど兄弟の中では一番年下なんだよ」

 

「で、あとはウチの番犬のゴリアテ」

 

「ゴル」

 

「・・・えっと、上から順に凶一郎さん、二刃さん、辛三さん、四怨ちゃん、嫌五君、六美ちゃん、七悪君で合ってますかね」

 

「合ってるけどもあたしをちゃん付けで呼ぶのはやめてくれ。なんかむず痒い」

 

「俺も」

 

「では四怨さんと嫌五さんで」

 

「じゃ、ここにあんたを読んだ理由を話していこうか。まず、ウチの六美とあんたの弟の太陽が結婚した。それはわかってるね?」

 

「ええ、まあ。ショックは大きかったですけど」

 

「で、その結婚した理由だが、『長年六美の近くで狙っている人物がいる』ってタレコミがあってね。そこのバカ長男が暴走して太陽を殺そうとしたんだよ」

 

うん早速情報量がすごい。

 

「・・・狙っているの意味がよくわかりませんけど、殺そうとしたことに関しては過去形ですし、未遂で終わったことはわかります。・・・それで?」

 

「そこで我が家の唯一のルール『家内殺人禁止』だ。太陽が婿入りすることで家族の一員になり、少なくともそこのバカから命を狙われることはなくなるということさ」

 

「・・・とりあえず、太陽と六美ちゃんが結婚した理由は無理矢理だけど飲み込みました。でも、六美ちゃんが命を狙われる理由がよくわからないんですが・・・」

 

「ああ、すまないね。あたしとしたことがいちばん大事なところを言うのを忘れていたよ。・・・単刀直入に言うと、ウチの家系はスパイなんだ」

 

「・・・え?」

 

「スパイだ、スパイ。よく映画やアニメで潜入してたりするあのスパイだ」

 

ちょっと情報量が多くて理解に苦しみそう。というか現在進行系で苦しんでる。

 

えーっと、スパイ一家で結婚式が殺人で・・・?

 

そして六美ちゃんは命が狙われて・・・?

 

うん。プシュー

 

「情報が多すぎてショートしたな」

 

「頭から煙出てんのは太陽と同じだな。さすがは兄弟」

 

あ太陽もショートしたんだね。

 

 

 

「なんとか飲み込めました。・・・一応聞きますけど、盛大な悪ふざけってことはないですよね?」

 

「流石にそんな嘘はつかないよ。んで、さっき嫌五が言ってた頑張れって言葉だけど、あんたにはスパイの一人になってもらおうかと話しててね」

 

「・・・え?なぜ僕が?」

 

「その方があたしたちにとって都合がいいし、太陽を守る力にもなるからさ」

 

「都合?」

 

「いま説明しなくても今後分かっていくさ」

 

「ウチのバカ長男が太陽を狙ってるからな」

 

「すいません全部聞こえました。いやあの、近くにいる状態で太陽大丈夫なんですか? こちらの人」

 

「「「?」」」

 

「あたしらも目を光らせてる。そもそもソイツは六美大好きのシスコンだからな、六美に嫌われるリスクは取らないと思う」

 

「なら大丈夫・・・なんです?」

 

「そーいやお前も太陽もどこで暮らすんだ?」

 

野宿ですかね?

 

「あ、そうか。ま、あんたの家は爆発して無くなってしまったことだし、ウチで暮らしてもらおうかね」

 

「・・・迷惑ではないですか?」

 

「部屋は結構余ってるからそこんとこは考えなくて良い。というか六美と太陽が結婚したわけだし、お前もあたしたちの家族になってる」

 

「・・・そちらが良いのならお言葉に甘えさせていただきます。どこですか?」

 

「ちょっと待った。その前にこれに着替えてもらうよ」

 

二刃さんがそう言うと、どこから取り出したのかは不明だけども辛三さんが『50kg』と書かれた白いシャツを持ち上げた。・・・流石にロゴみたいなものだよね?

 

「はいはい脱いで脱いで〜」

 

「ちょ、嫌五さん!?」

 

それと同時、嫌五さんが僕の服を脱がしてくる。っていうか力強っ!?

 

その細腕のどこからそんな力が出てるんです!?

 

「んじゃ、これを着な」

 

そう言って二刃さんが僕にシャツを渡してきたけども、なにこれめっちゃ重い。本当に50kgあるのかも。

 

流石に太陽よりは軽いけどこれを着るの?

 

「嫌五、手伝ってやんな」

 

「あいよー」

 

そしてこのシャツを着せられたけど、多分バランスを崩したら僕の体ごと地面にめり込む気がする。

 

そもそも立っているのすらキツイ。

 

「訓練開始はこの家で1か月暮らしてからだ。ま、予行演習みたいなもんさ。まず今日はその重さに慣れな。じゃ、空いてる部屋を・・・って、その前にこの指輪も付けとくれ。・・・・・・・よし。七悪、案内してやんな」

 

桜の模様が描かれた指輪を渡された。僕の指にピッタリはまる。よくこんなちょうどのサイズ余ってましたね。

 

「うん。夕雅お兄ちゃんのペースでいいからついて来てね」

 

そう言って歩き出した。・・・僕歩くの遅っ。身体重いからゆっくり動くしかないんだけども。

 

「・・・あれ? 今さっき僕のこと『お兄ちゃん』って呼びました?」

 

「うん。だめだった?」

 

『お兄ちゃん』って呼ばれたの久しぶりだなぁ・・・。いつの間にか太陽は『兄貴』呼びになったから・・・。

 

「いいえ、むしろどんどん呼んで良いですよ」

 

「良かった。じゃ、ついて来てね!」

 

そして2階の部屋に案内された。着いてくるの速かったねと感心されたけど、そりゃ新しくできた義弟にカッコ悪いところは見せられないからね。

 

ちょっと無理したのはナイショ。

 

とりあえずベッドと机のシンプルな部屋。でも相当広い。

 

 

 

「お、七悪戻ってきた。どうだった? 動けてたか?」

 

「ゆっくりではあるけど歩けてたよ。・・・あ、そうだ。ねえ、辛三兄ちゃん。さっき四怨姉ちゃんが言ってたの聞こえた? 凶一郎兄ちゃんが太陽兄ちゃんを狙ってるとか言ってたの」

 

「いや、何か呟いたのはわかったけど」

 

「聞こえてなかったのか? 夕雅が聞こえたって言ってたからあたしがちょっとでかく言っただけかと思ってたが」

 

「なーんも聞こえてねーぞ。隣ですらな」

 

「・・・読唇術か?」

 

 

 

夕方になって太陽と六美ちゃんが帰ってきた。凶一郎さんも一緒だった。

僕がここに住まわせてもらうことを話すと、太陽もここに住むことが決定した。

太陽と六美ちゃんはもう夫婦だし、新婚が別居はないからね。

 

凶一郎さんは反対してたけど二刃さんに殴られてしぶしぶ認めてた。

 

あと、時々僕がプルプルしてるのを見た太陽が変な目を向けてきたけどなんでもないと取り繕った。たぶん気にしてるだろうけど。

 

 

 

『ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛』

 

奇妙すぎる鳴き声の目覚ましで目が覚めた。昨日は色々あってなかなか眠れなかった。たぶん4時とかだと思う。睡眠時間はいつもと変わらないから体調は変化ないけどね。

 

重すぎるシャツに苦戦していると、目覚ましがボッゴォォンと爆発した。

ギャグの世界じゃなかったら十中八九死んでたね僕。いやギャグの世界でも死ぬ時は死ぬんだけどさ。

 

・・・うん。メタ発言はやめておこうか。なぜかそう思った。

 

 

 

この屋敷の廊下や階段は足音を検知してトラップが発動するような仕組みらしい。昨日の夜七悪くんにサービスで教えてもらえた。

 

爆発の衝撃に震えながらもなんとか少ない足音で食堂にたどり着けた。3回失敗して穴に落ちかけたけども。バイトとかでちょっと鍛えててよかった。

 

「ウチの目覚ましは放置10秒で爆発するようになっている。どんな時も迅速に起きれるようにね」

 

「二度と目が覚めなくなりそうでしたよ。・・・六美ちゃんもすごいですね。ここで暮らせるなんて」

 

「ああ、六美はそもそもトラップが作動しないよ?」

 

「そうなんですか?」

 

「そういう設定にしてある。この家はコンピューターでトラップが管理されててね、六美の設定は常時外れるようになっているんだ。あたしたちも怪我だったり面倒なときは外すこともある。あんたもこの家に認められればそうできるさ」

 

「頑張ります」ギュロロロロ

 

急にお腹から変な音が。

 

「言い忘れてたが、六美以外のうちの食事には耐性をつけるための微量の毒が入っている。腹を下す程度だから安心しな」

 

「いや、それでもやば・・・あの、トイレは・・・?」ガクガク

 

「食堂出てすぐだよ。ただ・・・」

 

失礼かもだけど二刃さんの話の途中で走り出してしまった。かなり苦しかったので。でもドアは開かない。鍵穴と数字のボタンに閉められてる。

 

「入室には鍵のピッキングとパスコード解析が必要だ。ちなみに毎分コードは更新される」

 

「嘘でしょっ!? 誰か助けてくださいいいい!」

 

「四怨、指導頼むよ」

 

「へいへい」

 

 

 

本当に危なかったですありがとうございました。

 

 

 

それからも大量のトラップに引っかかる僕。

 

飲み物を取ろうとしただけなのに、冷蔵庫内のマシンガンに蜂の巣にされかけたり。

 

シャワーを浴びようとしたら力を入れすぎたせいで溺死しかけたり。かなり飲んじゃった。

 

・・・風呂場はあの重いシャツを脱げる数少ない場所なんだから、もうちょっと優しくしてほしかったな。せめて熱湯が出てくるくらいに・・・待って僕考えがおかしくなってない? 熱湯でマシって考えるなんて。

 

他にも、テレビを付けるためには遠くのリモコンを赤外線銃で狙う必要があったり、エアコンから神経ガスが出てきたり。

 

七悪くんに解毒薬をもらってなんとか事なきを得たよ。七悪くんは医療に強いらしい。

 

あとその時バケツの理由も聞いてみたけど細胞がなんやらで変異してる顔を見せたくないからだって。僕そんなに気にならないけどね。軽く見せてもらったけど。

 

 

 

翌日。

 

トイレが上手いこと使えないのは致命的な問題なのでピッキングとパスコード解析を重点的に練習することにした。

 

機械の扱いに慣れているらしい辛三さんに相談することに。四怨さんからのアドバイス。

 

コンコン

「すみません。辛三さんいます?」

 

すぐに出てきてくれた。いてくれてよかった。

 

「どうしたの、夕雅。俺に何か用でもあった?」

 

「実はカクカクシカジカということで」

 

「うん、わかった。ちょっと10分くらい待ってて」

 

そう言うと部屋の中に戻り、何かガチャガチャと音がした。そして10分ほど経ったあとドアが開いた。

 

「はい、これ。夕雅用に作ったピッキング&パスコード解析練習装置。トイレと同じように毎分コードは変わるけど、その設定はオフにできるから最初はオフで練習したほうが良いかも」

 

「ありがとうございます、辛三さん。ありがたく使わせてもらいますね」

 

「うん、がんばって」

 

 

 

その3日後、太陽も僕と同じように1ヶ月この家で暮らすと決めたらしい。見てただろうけど酷い目に遭うよ?

 

 

 

そして更に2週間経った。

 

このシャツの重さにも大丈夫になったし、トイレの鍵は問題なく開けられるようになった。毒の耐性はまだついてないけども。

 

今日もお腹痛いです。

 

「あのダメ婿の兄、まさかたった2週間でほとんどのトラップをクリアするなんてな」

 

「あとは毒の耐性とテレビぐらいか。一般人にしては早すぎないか?」

 

「耐性もある程度は付いてるっぽいし、夕雅俺らより才能あるかも・・・」

 

「まぐれだろ、まぐれ」

 

「異常な成果の影には異常な努力が隠れてるもんさ。・・・なぜか見たところそんな感じはしないけども」

 

「器用なんじゃないかな? ほら、夕雅お兄ちゃん4日くらいでシャワーを問題なく使えてたし」

 

「器用。・・・そんな言葉で表せるのかねぇ」

 

一応全部聞こえてる。一応器用・・・ではあると思いますね。お菓子作りが趣味でしたし。

 

 

 

そしてさらに1週間。毒にも耐性ができてトイレに駆け込むことは無くなった。

 

あと、嫌五さんと四怨さんに「かしこまった感じの敬語で話しかけられるとムズムズするからやめてくれ」って言われて敬語を外すことにした。

 

ついでに『さん』呼びも。

 

「まさか3週間で全部のトラップを突破するなんてね。やるじゃないか」

 

「そうですかね。ありがとうございます、二刃さん」

 

「そうだぞ。あたし達も早くて3ヶ月くらいかかるんじゃないかって思ってたし。引っかかるうちに何かコツでも掴んだか?」

 

「いや、コツと言うか、その・・僕って義理のだけど兄だし。カッコ悪いところは弟や妹に見せたくなかったと言うかなんというか。早く慣れるようにして・・・まあ、そういうことで」

 

「「へぇ〜」」

 

四怨と嫌五がニヨニヨ笑っている。

 

「あの、その視線恥ずかしいんだけど・・・」

 

「良いじゃねぇか夕雅兄ちゃん」ニヨニヨ

 

「そうだそうだ夕雅兄ちゃん」ニーヨニーヨ

 

2人にからかわれていると、凶一郎さんが話しかけてきた。

 

「フン。もうすでに義兄気分とはな。俺はまだ貴様のことを認めたわけではないからな」

 

「何言ってんだい。こんな賄賂をもらってたくせに」

 

数枚の写真を取り出して僕たちに見せつけながら話し続ける。

 

「なっ、二刃がなぜそれを!?」

 

「え、何その写真」

 

「私と太陽が写ってるけど、どうしたの?」

 

「あ、それ? この前僕と太陽の家があったところに行ったんだけどさ」

 

「一応俺も付き添いで行ってたよ。大丈夫だろうけど爆弾が残ってる可能性もあったからね」

 

「へー。それで?」

 

「まだ使えそうな私物だったりを探してたんだけど、幸運にも昔のアルバムが残っててね。3冊のうち1冊は燃え尽きちゃってたし、残った2つもちょっと焦げちゃってたんだけど」

 

「あ、わかった。小さい頃の六美姉ちゃんが写ってた写真があったからそれを渡したんでしょ?」

 

「正解正解。凶一郎さんが六美ちゃんLOVEなことは嫌でもわかるからね」

 

「おい二刃、それよりも早く返せ。数少ない正規の六美の写真なんだぞ」

 

「お兄ちゃん? 正(・)規(・)って何?」

 

「おそらくこれだろうねぇ。学校の六美の写真が大量にあったよ」

 

二刃さんがさっきとは違う写真を数枚見せる。どう見ても隠し撮りとしか思えないアングルの写真ばっかり。

 

「そっ、それはっ!」

 

「お兄ちゃん?・・・・・・1週間私に近づくの禁止ね」

 

「そんなっ!?」

 

「当たり前でしょう。隠し撮り許す人なんて嫌五以外にいませんよ」

 

「わかってんじゃん夕雅兄ちゃん」

 

「この3週間ぐらいで嫌五が露出狂だってことは嫌でもわからされたからねー。あとそれに関連することだけど四怨はいつもその服で寒くないの?」

 

「・・・ん?」

 

「いや、いつもその服だと肩とかはだけてるじゃん。冷房効きすぎてたりする部屋や冬の日だと寒くない?」

 

「んなことねーぞ。というか冬の寒さぐらいで凍えていたらこの業界やっていけねーし」

 

「そういう特訓でもあるのかな」

 

そう話していると、太陽も起きてきた。

 

「おざーす」

 

「あっ、おはよう太陽」

 

「おはよー、太陽」

 

「おはよう六美。あと兄貴も」

 

「すごいね、もうすっかり廊下とか階段は余裕だね!」

 

「兄貴よりも遅いけどな。そりゃ3週間もここにいるし一通りは・・・」

 

ギュルルルル~

「くっそおおおおおお!」

 

毒で腹をくだした太陽がトイレの方向に走っていった。

 

「だあああああああ開かねえええええええええええ!」

 

「はぁ、3週間いてもトイレのドアはからっきしだね」

 

「辛三がくれた練習道具一応渡しておいたんですけどね。まあ、慣れるまで時間がかかるのはしょうがないことですけど」

 

「でもそれ以外のトラップは総なめなんでしょ? 夕雅お兄ちゃんがいたから衝撃は薄れるけどそれでも3週間ってすごいよね!」

 

「夕雅の時も言ったけど、太陽も俺達より才能あるかも・・・」

 

「それより嫌五、行ってやんな」

 

「はいはい」

 

「あ、僕が行くよ。嫌五はご飯食べてていいからさ」

 

「あ、そう?じゃ、よろしく〜」

 

トイレの方に向かった僕が見たのは、今にも崩れ落ちる瞬間の太陽だった。

 

「太陽!?」

 

「「「「!?」」」」

 

「どうしたの!? しっかり!!太陽!!」

 

・・・すごい汗だし息が荒い。

 

 

 

「過労からくる熱みたいだ」

 

「ここの暮らしについていこうと必死だったからねぇ・・・」

 

「・・・こんなに無茶して」

 

「普通、常人があたしたちのレベルについてくるなんて無理なんだ。なぜか夕雅は問題ないようだけども。・・・ま、とりあえずしっかり体を休めな」

 

「だ、大丈夫です、できます・・・!ちゃんと残り1週間この家で生活してみせます・・・!」

 

「この身体で、かい?」

 

そう言って二刃さんは太陽の皮膚を引っ張った。みょーんと皮膚が伸びて、そのまま引っ張り続けるとちぎれた。隠されていた包帯や絆創膏があらわになる。

 

「こんなこと続けてたら、いくつ命があっても足りやしない。・・・最初から気づいてたよ。異常な成果の裏にはたいてい異常な手段があるんだ」

 

「太陽、いつもトラップに挑んでは対策しての繰り返しだったからね・・・」

 

「データを集めて四怨の解析、夕雅の体験談に攻略のヒント。そして辛三の実践で効率的な成長を補助してもらったり、度重なる怪我の治療や不眠不休用の劇薬は七悪の医術。そしてしまいには傷を隠すための嫌五の偽皮技術。七悪、あんたともあろう男がこんな自殺行為に手を貸すなんて残念だよ」

 

「ご、ごめんなさい二刃お姉ちゃん」

 

「あんたもだよ、夕雅。血の繋がった兄弟として止めなかったのかい?」

 

「最初は、というか何度か止めようとしましたよ。・・・でも、強くならなくちゃいけないんだって言われましてね。これまでに見たことがないような真剣な表情で。弟の身体を案ずる兄としては止めるべきだったんでしょうが」

 

「み、皆は悪くないんです。俺が、強くお願いしたから・・・。一日でも早く、六美を守れる男になりたいって・・・」

 

その言葉を聞いた二刃さんは何かを感じたような表情をしたあと、「馬鹿だね」の言葉と同時に太陽の額にチョップを食らわせた。

 

「痛い!?」

 

「そんなに六美を守りたきゃ、まず自分を守ることから始めな。自分すら大事にできないやつに、誰かを大事にすることなんかできやしない」

 

そして二刃さんは小さな冊子を太陽に放り投げた。『小学生でもできる暗号解読』っていう本。

 

「近道に逃げず忍耐することも訓練の一つだと肝に銘じな。今後もここで訓練する気があるならね。それはあたしのお古だ。治るまでそれで勉強すると良い。勉強しながら夕雅からもらった練習道具で地道に練習していきな」

 

「・・・・・・・・・! あ、ありがとうございます・・・!」

 

「お大事に。夕雅も出な」

 

「はい。じゃ、またね。太陽」

 

 

 

僕と二刃さんが廊下に出たとき、不意に二刃さんが呟いた。

 

「フフ・・・甘いのはあたしだったねぇ」

 

「・・・どうしました?」

 

「いや、前に太陽に『気持ちでどうにかなるほど世の中甘くないよ』って言ったことがあったんだけどねぇ。あんなに自分を追い詰めたら、常人なら体の前に心が限界を超えるはずさ。あの子を支えているのは才能や努力なんて生易しいものじゃない。『気持ち』さ」

 

「『気持ち』、ですか」

 

「そうさ。狂気にも近い六美への愛。・・・もしかしたら、太陽はあたしが思う以上に六美を守るにふさわしい存在なのかもしれないね」

 

「・・・だと嬉しいですね。なら、太陽には凶一郎さんを超えるレベルになってもらわないといけないですかね」

 

「フフ、厳しいだろうけどね」

 

 

 

 

 

そして、太陽の夜桜生活1ヶ月目。

 

キィィ

「あっ・・・開いた・・・!?」

 

最終日にしてようやく太陽もトイレのピッキングをクリアすることができた。

 

「すっげぇええ!とうとうトイレのドアもクリアしたぁあああ!」

 

「わっ」

 

すると、太陽の指輪が輝き出した。僕のときも見たやつだねあれ。

 

「指輪の特殊合金がこの家のパソコンの電磁波に反応して発光している。この家があんたを夜桜の一員として認識したのさ。1ヶ月お疲れ様。これからは夜桜の1人としてしっかり鍛えてあげるからよろしくね」

 

「・・・はい!」

 

「じゃあまずこの100kgのTシャツに着替えてもらおうか。夕雅も着てるから安心しな」

 

「あとクリア特典でトラップ難易度『ノーマル』から『ベリーハード』に上げとくね」

 

「へあっ!?」

 

太陽も同じシャツを渡されてる。・・・結構キツイんだよね、100kgって。

 

ま、頑張ってこー。




本文に書くほどでもないけど一応設定として存在してるのを後書きには書いていきます。

裏設定1
事故は2年前の設定。

裏設定2
夕雅は『家族』に依存している。
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